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August 10, 2007

スーパーマンになりたい ブラッド・バード 『アイアン・ジャイアント』(再挑戦)

20070810183425現在絶賛公開チュウの『レミーのおいしいレストラン』。なんだかんだでまだ観にいけてないのですけど、幾つかレビューを読んでるうちに、ブラッド・バード監督の『アイアン・ジャイアント』について猛烈に語りたくなってきました。
思えばブログはじめたてのころ、一回とりあげたことがありましたが、まだレビューの要領がよくわからなくて、言いたいことの十分の一も書けなかったような。
そんなわけで今日は存分に書きます。

この映画の内容を一言で言うと、「少年と巨大ロボットの友情物語」。筋立てはこれ以上ないくらいベタベタです。それがどうしてこうも自分の心をとらえてしまったのか。「ツボにはまった」としか言いようがありません。ただ一言断言できるのは、「こんなにムダのない映画は滅多にない」ということ。全てのシーンに意味があります。
以下は最初から最後まで完全にネタバレしてます。できれば先に実物をご覧になってから読んでいただきたいもの。

舞台は冷戦華やかなりし頃の米国。一人の老人が荒れ狂う海の中、巨大な怪物の影を目撃したところからお話は始まります。まるで『ゴジラ』を思わせる登場シーン。日本では「ヒーロー」という印象の巨大ロボットですが、欧米においては「怪物」の延長であることがわかります。前の記事では「ロボット版E・T」と書きましたが、どちらかといえば『フランケンシュタインの怪物』の方がより近いかもしれません。

どうやらどこかの星で作られた秘密兵器らしいこのロボット。長旅の空腹を満たすため、闇夜にまぎれて発電所をバリバリとかじろうとします。ものの見事に大感電するロボ。彼はこのショックで、自分が何ものだったのか、すっかり忘れてしまったようす。そして最後まで彼の出自が明らかになることはありませんでした(笑)
ショート寸前のロボを救ったのは、不審な物音にひかれてやってきた、近所に住むホーガスという少年。ホーガスはなにもわからぬこの巨人を、突然できた弟のように可愛がり、なにくれとなく世話を焼きます。けれどもサイズの違いもあって、それは並大抵の苦労ではありませんでした。なにせこのロボ、ちょっと目を離したすきに、線路を食べようとして列車ともろに激突してしまったりするからです。

それでもなんとか一人と一台は、落ち着ける場所とエサ場を発見。そこで少年はロボに様々なことを教えます。
あるときは漫画を教科書にして、「スーパーマンは決してその力を自分のためには使わず、正義のために役立てる」ということを。ある時は撃たれた小鹿を前にして、「生き物は死ぬ」ということを。そして武器が、その命を奪うのだということを。

別れは突然に訪れます。ある時遊びでホーガスが向けたオモチャの銃に、ロボの防衛プログラムが作動。一瞬完全な戦闘マシンとなりかけたロボは、あやうく少年の命を奪いかけます。我に返り、自分という存在の恐ろしさに呆然とするロボ。意気消沈した彼は、警戒心を忘れて、フラフラと街の方へ向かっていってしまいます。
たちまちパニックに陥る市街。東側からの攻撃だと思い込んだ軍は、戦闘機や戦車をロボにさしむけます。
防衛プログラムのため、内部からせりだしてくる銃を、懸命に押し込めようとするロボ。それはまるで飛び散る内臓を必死でかき集めているようで、痛々しいことこの上ありません。
しかし軍の攻撃により少年が吹きとばされたのを見て、ロボは今度こそ理性を失います。おぞましい異形の姿に変り、街をまさに灰燼に帰そうとしたとき、彼を止めたのはやはりホーガス少年の言葉でした。

「銃になんかなるな キミのなりたいキミになれ」

済んでのところで、穏やかな自分を取り戻すロボ。ですがその時街に向けて基地から核ミサイルが発射されます。
少年に別れを告げ、ロボは天空よりせまりくる弾丸へ向かって飛んで行きます。脳裏に再びよみがえる少年の言葉。

(キミは自分のなりたいものになれる。キミがなりたいのは?)

「すーぱーまん・・・・」

一瞬光を放ったあと、また暗さを取り戻していく空。こちらに背を向けて、微動だにしない少年。
果たしてロボは粉微塵に砕け散ったのか。それとも・・・・


「今度こそバッチリ決めるぜ!」と意気込んだわりに、普通にネタバレしただけで終ってしまいました。お恥ずかしい。
わたしは男塾出身なので、「親の葬式といえども人前で涙を見せない」ことをモットーとしております。しかしこの時ばかりはあふれ出る鼻水を抑えることができず、周囲の人たちから大層不気味がられました。

20070810184952もしかするとこの時得た以上の感動を、わたしはいまだ劇場で味わっていないかもしれません。
それでもいつかまた同じ感動を得られることを待ち望んで、わたしはまた映画館へ足を運ぶのでした。

とりあえずは『レミー』と『トランスフォーマー』か・・・

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Comments

>男塾出身なので
「わしは男塾塾頭江田島平八であ~る!」
とイッパツ言えばいいかな?
とまあ、冗談はともかく・・・・・・
おはようございます
>先に実物をご覧になってから
遅いわ(笑)。
>「こんなにムダのない映画は滅多にない」
その通りですが、今の作品に無駄が多いともいえますね。
この構成を振り返ると現代のアニメにも
どこか影響を与えたフシもありますね。
例えば「意思」を持ったが故に身を犠牲にしてまで
友を救う事を全うするあたりや
生まれ持った宿命が故冗談でも本気に行動した結果
友の命を奪う寸前まで行ってしまう点等等・・・・・。
最近、「YOU TUBE」で懐アニメのOPを見ることを日課(えー
としてますが、実は「勇者シリ-ズ」とか意外な作品に
その片鱗を見ることが出来ます。
>人前で涙を見せない
すいません。俺、泣き虫だからムリ!(笑)
>『トランスフォーマー』
アニメ版は大分見てるのでレビュー書けたりして(笑)。
ではでは。

Posted by: まさとし | August 11, 2007 08:02 AM

わしが男塾落第生、SGA島伍一であーるっ!!

・・・こんばんは

>遅いわ(笑)。

ごめん(笑)。

そういえば公開時、あさりよしとおはじめクリエイター筋の人たちが大絶賛してたっけ。

人造の命に芽生えた自己犠牲の精神・・・
この手のお話の元祖はやっぱし『鉄腕アトム』か『ジャイアント・ロボ』ですかね
『アトム』はむこうでもかなりメジャーらしいので、バード監督ももしかすっとみたことあるかもしれません

勇者シリーズは見たり見なかったりでした。一番好きだったのは『勇者警察ジェイデッカー』。たしか脚本メインが會川昇さん
映画版『トランスフォーマー』ですが、紹介記事読んでみたらなんか『エクスカイザー』か『ダ・ガーン』みたいなストーリーでしたよ

Posted by: SGA屋伍一 | August 12, 2007 07:51 PM

SGAさん、こんにちは~!
『レミーのおいしいレストラン』アカデミー受賞、おめでとうございました

この作品、ずっと前にオススメされていたのですが、遅くなってしまってすいませんでした。
これ、本当に隠れた名作でしたね。
「無駄がない作品」、本当にそうだと思います。
こういうすごくいい作品を作ることが出来るなんて、本当に素晴らしいことですよね。
この作品は、ブラッド・バードが本当に心のこもった、贈り物みたいな作品だと思いました。
すごく大事なメッセージが詰まっていましたよね。

Posted by: とらねこ | February 29, 2008 02:37 PM

>とらねこさま

お返しのコメント・TBありがとうございます
バード氏は「天才」と言われながら、監督のチャンスがなかなかめぐってこず、やっと監督したこの『アイアン・ジャイアント』も興行的に振るわなかったんですよね

そんなバードさんがオスカーを手にできたとは、本当にめでたきことであります

これを見たとき劇場には大人も子供もたくさんいたんですが、みんな良く笑い、よく泣いてました。ハコの中がそこまで盛り上がることって珍しいので、その点でもいい思い出となっています

つづく『Mr.インクレディブル』『レミーのおいしいレストラン』はもう少し力 が抜けてますけど、やはり楽しいながらも大事なメッセージがこめられてますよね。そしてあふれんばかりの童心に満ちていて
バードさんにはこれからもそういった映画を作り続けてほしいと思いました。せめて二年に一本くらいは・・・・

Posted by: SGA屋伍一 | February 29, 2008 09:37 PM

こんにちは~♪
こちらにもお邪魔します。

夏休みということもあり、アニメや子ども向け映画に目が向く今日この頃。
さっきは『ティンカー・ベル』を観ておりました。
夢のあるお話っていいですよね~
「いいなぁ~妖精になりたいなぁ~」と呟いたら、息子に「無理でしょう・・・魔女にならなれそうだけど」と言われました・・・

アイアン・ジャイアントはTSUTAYA(鴨○○店)に3本も置いてありました。沢山の子どもに観て欲しいなぁ~いい映画ですよね!

Posted by: 由香 | July 24, 2009 12:36 PM

>由香さま

おはようございます。こちらのほうにもありがとうございます~!

由香家ではいま「夏休みアニメ劇場」状態なんですね!
「ティンカーベル」は確か6部作と聞いていたけれど、ほとんど話題にならないあたり、ちゃんとそこまで作れるのか心配です・・・

>「無理でしょう・・・魔女にならなれそうだけど」と言われました・・・

息子さん、ナイスツッコ・・・ いや、なんてデリカシーのない子だ! そういう子にはぜひ愛のムチを! あーでもいいかもしれませんね『魔女っ子ユカさん』

・・・・・・

・・・・・・

あ、『アイアン・ジャイアント』素晴らしいですよね!
わたしもこれからも折りを見て引き続きプッシュしていく所存であります! 鴨○○店はコ○ナのほぼ向かいのところですよね? なかなかわかってるじゃないか!

Posted by: SGA屋伍一 | July 25, 2009 07:03 AM

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