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June 25, 2007

動かすチカラだ ベルナール・ウェルベル 『蟻の革命』

20070625194215人間の物語と蟻の物語が同時進行し、やがてシンクロするフランス発のヘンテコ小説『蟻』三部作の完結編。
第一部『蟻』のレビューはこちら
http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2006/09/post_b115.html
第二部『蟻の時代』はこちら
http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2006/11/post_3df1.html

19歳の多感な少女、ジュリー・パンソンは父が管理している森を散策中、不思議な一冊の本を見つける。それはフォンテーヌブローの一連の奇怪な事件に関っていた、『相対的かつ絶対的知の百科事典』の第三巻だった。

一方ジュリーの父ガストンは、同じ森の中で、奇妙な小さいピラミッドを発見する。一体それは、誰がどんな目的で作ったものなのか?

そして幾多の冒険を経た勇敢な働きアリ、103号。彼女は人間たちから得た情報を利用して、アリの社会に新世界をもたらそうと計画していた。しかし悲しいかな、働きアリである彼女の寿命はもう残り少ない。果たして103号の望みはかなえられるのか。

この三つの話が平行して語られていき、やがて一本のストーリーに収束していきます。


この作品(角川文庫)が日本で出たのも、もう4年前。てっきり二部で終っていたと思っていた『蟻』シリーズに第三部があったとは驚きでした。紹介文を読むと「痛恨の刊行中止事件」とありますが、一体何があったのでしょう。たぶん版元が潰れたとかその辺の事情だと思われますが。

それはともかくこの完結編、1部、2部よりも読むのに時間がかかりました。理由としては①初読だった ②話が本格的に動き出すのが遅い ③1部、2部の合計にも匹敵する大ボリューム ④主人公のジュリーが可愛げがなく、萌え辛く感情移入もしにくい などがあります。しかし中盤のあたりでジュリーが学園のアイドルになるあたりから、以前の勢いが戻ってきた感じがしました。

例によって怪しいウンチクが話の合間合間に多数織り込まれているのですが、今回はムシのそれよりも「社会」にまつわる小話が多かったような気がします。タイトルにあるように、完結編は「革命」がテーマ。
おフランスの方々って、どうも常に「理想の社会」を思い描いているようなところがありますね。そして同時に知識偏重でもある。だから頭ではあれこれ考えるんでしょうけど、実際に実行に移すとなると、どうも及び腰になってしまうようです。
しかしジュリーには「若さ」という力があり、103号には旺盛な探究心があります。一人と一匹は自分の理想を実現させようと、困難や失敗にもめげず、悪戦苦闘・試行錯誤を繰り返します。おじさんにさしかかった身としましては、どうも「革命」なるものには冷ややかな思いがあるのですけど、傍でそういうのを見ているのはけっこう楽しかったりして。どうやら自分もイヤーなフランス人にだいぶ近づいてきたようです。

フォンテーヌブローの森に人間の女王と蟻の女王が合間見えたとき、物語は完結編にふさわしい最高潮を迎えます。ついでにぶっとび具合も最高潮に。このトンデモな展開に、あなたはついていけるでしょうか。

20070625194231『蟻の革命』はまだ普通に角川文庫から買えます・・・・が、今調べてみたら、第一部『蟻』のみ品切れになってしまった模様。ああ! もたもたしてる間にこんなことに!
もし店頭か古書店でみかけたら、とりあえず確保しておくことをおすすめします。もしついていけなかったら、その時はすいません!

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Comments

今度キャンプに行くので
これを読んで子ども達に
ウンチクをひけらかそうと思ったのですが、
あんまり信用できないそうなので残念です。
おまけに品切れ?

所でお話を伺っていると手塚の『0マン』みたいな
もんか?と思いました。興味アリます。なんちて。

それにしても秦太さん、こんなに虫に詳しい方とは
存じ上げませんでした。ぜひ、いろいろと
お話を伺いたいものです。

Posted by: かに | June 26, 2007 at 03:27 PM

そういえばわたし手塚先生が書いた『蟻人境』という小説(!)を読んだことがありましたよ。内容は完全に忘却の彼方ですけど

で、『蟻』。確かに内容はとんでももいいとこですが、このセンス・オブ・ワンダーは大したもの。おすすめです。ひねくれた『みつばちマーヤ』みたいなもんでしょうか

虫の入門書としては北杜夫氏の『どくとるマンボウ昆虫記』を推薦します。西原理恵子『むいむい』というのも面白いんですが、これまた入手困難

秦太さまは「ムシがお仕事!」な方なんで、それこそ虫プロです(笑) いっつもいろいろ教えていただいて、本当お世話になってます
最近すごかったのは映画『ブラッド・ダイアモンド』で頂いたコメント
http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2007/04/cc_ad44.html#comments
こういうすごい話をさらっと言わはるんですよ

Posted by: SGA屋伍一 | June 26, 2007 at 09:49 PM

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