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June 06, 2007

それでもボブはやっていない アントワーン・フークア 『シューター』

20070606170853いきなりあらすじから。

ボブは米軍でも随一と噂されたほどの腕を持つ名スナイパー。上層部の裏切りにより友を失った彼は、退役し山奥で隠遁生活を送っていた。そんなボブの元に政府のお偉いさんが、「テロを未然に防ぐため力を貸して欲しい」と頼みにやってくる。気乗りしないながらも、結局依頼を引き受けることに。
そういうわけで捜査を始めたボブ。その途上で満員電車に乗り込むよう指示された彼は、隣に居合わせた女性に手をつかまれる。
「この人、痴漢です!」
彼女はそう叫んだ。全ては巧妙に仕組まれたワナだったのだ。辛くも逃げることに成功したボブは、自分の名誉を傷つけた者たちに対し、完全なるリベンジを果たすことを誓う。
↑ウソが混じってます。上手に見分けてください。

原作はスティーブン・ハンターの傑作冒険小説『極大射程』(原題は『POINT OF INPACT』)。シリーズごとこちらにレビューしてあります。
http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2007/02/post_6716.html

途中ネコが本の上にゲロを吐いてしまうというアクシデントはあったものの、その絶妙なストーリーテーリングに手に汗握らされ、あっという間に上下あわせて800ページを読みきってしまいました。
んで、その時「これ、映画向きの話だなあ」と思ったんですね。読んでいて非常に頭に情景が描きやすいお話であったし、小難しいテーマの一切ない王道的エンターティメントだったんで。
だからこの作品が「映画化」と聞いた時にはさもありなん、と思いました(一回企画流れてるんですが)。

しかし入ってくる情報を聞いてみると、「おや?」と思う点が幾つかありまして。例えば原作のボブはベトナム帰還兵で、もういい年のオッサンだったりするんだけど、映画の舞台は現代で、主演もまだ若めのマーク・ウォルバーグが務めるという。
実際見てみると冒頭からけっこう違う話になってまして、その時点でわたしはもう「これはこれで別物のアクション映画として楽しもう」とハラを決めました。たぶんスタッフもそのことを意識して、映画タイトルを違うものにしたのだと思います。とはいっても一応シンクロしてる部分も多々あり、完全に切り離して見るのはなかなかむずかしゅうございました。やっぱり「映画向き」とはいっても、上下たっぷりの大ボリュームがネックだったんでしょうか。これを忠実に映像化するのであられば、スペシャルドラマで二時間×二本くらいの尺が必要だったと思います。

一応原作のテイストが生かされてるところがあるとするなら、それは「ボブさんがスナイパーである」ということ。
普通アクションヒーローというものは、画面の中央で仁王立ちになって、「どっからでも来いや!!」とマシンガンを乱射してたりするものです。
しかしボブさんはスナイパーなんで、基本的にできるだけ遠く離れた安全な位置から銃を撃ちます。実に男らしいやり方じゃないでしょうか(笑) ムダ撃ちもほとんどしません。一発一発ていねいに狙いを定めてトリガーをひきます。「モノを大切に」ということが叫ばれている昨今、非常に賞賛すべき態度だと思います。ついでに人命ももう少し大切にしてくれたら、もっと良かったです。
この「狙撃」にこだわった幾つかの演出が、本作のウリといえるでしょう。文字通りの離れ業がバンバン成功するのを見てると正直胸が空く反面、この手の快感に目覚めるのは危険だなあとも思ったり。
「スナイパーは普通観測手(スポッター)とペアで行動する」という描写も、これまであまりなかったんではないでしょうか。この映画で初めてそのことを知った人も多いかと思います。まあわたしも原作読んで知ったクチですが。

しつこいようですが原作のことを考えないようにすれば、ピンチに次ぐピンチ、逆転に次ぐ逆転の展開になかなか引き込まれます。たった一人ならまだしも、選んだパートナーが頼りない新米警官であるため、一層危機感が増して感じられました。
また冒頭でいかにも善人そうなダニー・グローバーや、秘密めいた素性の車椅子の男(役者の名がわからん)も、なかなか深い印象を残します。

20070606170927ツッコミどころもいろいろあり、着地もちょっと難があるんですが、青筋立てて怒るほどでもなく・・・・・ つくづく煮え切らねえ批評だなあ(笑)

わりと早めに上映終りそうな気がするんで、興味おありの方はお早めに。現在公開中です。

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Comments

SGAさんの虚実織り交ぜた文章すごい好き♪

てゆーかこちら、原作のレビューもなさってたんですね。
いつも拝見してるのに気付かなかったです。
ネコちんが本の上にゲロを!本とか新聞の上に乗っかって邪魔することはあるけど・・・
大丈夫でしたか?ネコちんの具合の方は。

私この映画にはまったく期待していなかったおかげかとても楽しめたんですけど、
原作のファンの方にはあまり評判がよろしくないようで・・・

>一応原作のテイストが生かされてるところがあるとするなら、それは「ボブさんがスナイパーである」ということ

いかされてるのそこだけ?そりゃあ原作ファンびっくりですね。
SGAさん的には、別物として割り切って楽しめたのかしら。
車椅子の男がスワガーになんだかんだ諭す辺りは結構考えさせられるものもありました。

Posted by: kenko | June 06, 2007 at 11:05 PM

kenkoさま、毎度ありがとうございます

いやー、今回は配給会社に見つかったらちょっと怒られそうだ(^^;)
たぶん大丈夫でしょうけど

>ネコちんが本の上にゲロを!

まあ正確に言うとゲロというか毛玉です。そのニャンコももう亡くなってしばらく経ちますね・・・・ べコベコになった文庫本を見るとヤツのことを思い出します 本当に、なんでわざわざこんなものの上に吐いたのやら

>いかされてるのそこだけ?

いや。まー他にもいろいろあるんですけど。例えばラストの法廷のあのシーンとか。ただあれにしても、原作ではもっとかっこよく決まってるんですよね
「原作よりよくできてる」って映画は滅多にありません。それでもついつい足を運んでしまうのはなぜなんでしょう?(マニアだから)

>車椅子の男がスワガーになんだかんだ諭す辺り

このシーン原作にあったかな・・・・ 忘れてる・・・
自業自得と言えばそれまでですが、生き返って飼い殺しにされて、最後はエサにされて。あの時の彼の心境、そして行動を思うと、kenkoさまがおっしゃるように「考えさせられるもの」がありました

Posted by: SGA屋伍一 | June 07, 2007 at 07:19 AM

こんにちわ。訪問ありがとうございます。
またTBの調子が・・・(泣)。

原作を読んでいらっしゃったんですねー やっぱり、2時間程度にまとめるには、無理があるくらいにスケールが大きそうですね。原作を既に読んでいる方の意見としては、どちらかと言うと冷たい声が多い印象があります。私は、それなりに楽しむ事ができたんですけど。原作にも興味が湧きました。お恥かしいことに、この映画がくるまで存在すら知らなかったんですが。いずれ読みたい本として覚えておきたいと思います。

今更ながら、ネコさんがお好きだった事を知りました。私も、相当の猫好きです。飼ってはいないんですけど、たまに人ン家のネコさんの写真を載せていく予定です♪

Posted by: 隣の評論家 | June 07, 2007 at 10:41 PM

>隣の評論家さま

お返しありがとうございます
TB届いてますけど、今回は自分の方が届かない・・・ 後ほどまたチャレンジしてみます

>2時間程度にまとめるには、無理があるくらいにスケールが大きそうですね。

そうですね。原作が長くても上手にまとめてある映画だってあるんですけど(例:『ハリー・ポッター』『羊たちの沈黙』)、こちらは込み入った話だけに限界があったかな・・・という感じです

まあ隣の評論家さまみたいに、映画を観て原作に興味を持ってくれると、原作ファンは嬉しいです。たしかミステリーもお好きでしたよね? 謎解きの要素もあるので楽しめると思いますよ。映画で少々ネタバレしてますが・・・

>私も、相当の猫好きです

同志!(笑) 右の「カテゴリ」の「ペット」の項にいろいろありますんで、気が向いたらご覧ください

Posted by: SGA屋伍一 | June 08, 2007 at 07:49 AM

 ゲロを吐いたのはモン吉ではなく、あの猫ちゃんでしたか。

Posted by: 犬塚志乃 | June 10, 2007 at 02:49 PM

>犬塚志乃さま

そうです。『モン吉』第1話で伸びてたあいつです

Posted by: SGA屋伍一 | June 11, 2007 at 07:10 PM

こんばんは!
こちらの記事にTBさせて頂いたのですが、反映されないようで・・・
でも時間差で反映されるかもしれないのでコメント残させて頂きます。

私も原作を読みました。
原作がとっても面白かったので、どうも映画にはのりきれず・・・
もっとスワガーはカッコイイんだぁぁぁ~って思いながら観ていました。
孤高のスナイパーとしての雰囲気をだして欲しかったなぁ~と思いました。

Posted by: 由香 | September 21, 2007 at 08:50 PM

>由香さま

TBの件、手間をとらせて申し訳ありません
あと、こんなしょぼくさいブログ覚えててくださってありがとうございます

わたしが映画のスワちゃんで気になったのは、人に迷惑かけてもまったく謝らないところ。原作のボブはもう少し礼儀をわきまえていたとおもったけどなあ。それでも健気にスワちゃんに尽くすマイケル・ペーニャに涙が出ました。このFBI捜査官も、原作の方が魅力あるキャラクターだったと思います

Posted by: SGA屋伍一 | September 21, 2007 at 10:03 PM

SGA屋伍一さん、こんばんは。
やっとおスガさんと鑑賞作品がかぶりました。
ちなみに、オニオン・ブラッサムを食べながら見た作品です。

>一応原作のテイストが生かされてるところがあるとするなら、
>それは「ボブさんがスナイパーである」ということ。
大事ですね。
これがなかったらストーリーは裁判所へと舞台を変えていたかもしれませんからね、大事です。

物を大事にする姿勢・・・
そうですね。
これも大事です。
そして、人命を奪いすぎたというおスガさんにも賛成です。
スウィニーのように再利用できないのであれば控えるべきですね。

(一部不適切な発言があるためR-15指定)

Posted by: swallow tail | February 03, 2008 at 11:45 PM

>スワロさま

毎度ご来訪ありがとうございます。オニオンブラッサム、おいしかったですか? わたしにもくださいよー

>これがなかったらストーリーは裁判所へと舞台を変えていたかもしれませんからね

あるいは普通に今風の『ランボー』になっていたかと思われます

こういう「スナイパーもの」、あとで思い出したんですけどほかには『ジャッカルの日』『レニングラード』がありました 『ジャッカル』はスナイパーもののようで微妙に違います(笑)

>物を大事にする姿勢・・・

大事ですね。だからわたしは消費期限がすぎていても、何のお肉かわからなくても、迷わずに食べます

>不適切な発言があるためR-15指定

というわけでお若いみなさん、お酒とタバコと人肉は、15歳を過ぎてからたしなんでください
・・・っておっとお酒とタバコは二十歳だったな

Posted by: SGA屋伍一 | February 04, 2008 at 07:29 PM

ジェイソン・ボーン「どうもボブ・リー・スワガーは昔『黒の組織』に
いたらしいぞ。」

ジャック・ライアン(ベン・アフレック)「『名探偵コナン』の黒の組織か?」

ジェイソン・ボーン「ああ、そこでも狙撃の名人でコルンと名のっていたら
しいぞ」

ジャック「ところで、ボブ・リー・スワガーってなんかお前に似てない?」

ジェイソン・ボーン(マット・ディモン)「いや、似てないだろう」

 マーク・ウォルバーグとマット・ディモンは似ているように
見えませんか?


 シューターでボブ・リー・スワガーの声をやった木下浩之さん、は
名探偵コナンの黒の組織で狙撃の名人コルンも演じています。

 なにかこだわりがあるのでしょうね♪

Posted by: 犬塚志乃 | January 24, 2010 at 12:15 PM

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