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June 04, 2007

「さんびゃく」と読まないで フランク・ミラー 『300』

20070604174224各国で大ヒットを記録し、いよいよ日本上陸となるスペクタクル映画『300』。本日はその原作について語ります。

むかすむかす、ここからえんれえ東に、「すぱる田」つー変ったまちがあったんだべな。そのまちのおとこ衆は、ガキのころからいくさの訓練をみっちりしこまれていて、使いモンにならねえガキは谷底さ投げ捨てられるちゅー、おっとろしい慣わしがあったんだと。
その「すぱる田」へ、ある日あたり一帯をしきってる「ぺるし屋」つー国の使者がやってきただ。「滅ぼされたくなきゃあ、貢ぎモンをたんとよこせ」っちゅー、そりゃあ無体な要求を言いに。なんせ「ぺるし屋」には100万人からなる大軍団がある。それに対し「すぱる田」の軍隊はせいぜいウン百人程度。逆らうわけはなかろうと、「ぺるし屋」の連中はたかをくくっとったんだな。
だが連中はわかってなかったんだべ。「すぱる田」のおとこどもは算数がえらい苦手だ、っちゅうことを。そしてやつらは売られたケンカは必ず買う、ちゅうことを。

歴史上名高い「デルモピュライの戦い」を題材にしたコミック。作者はアラン・ムーアと並び称されるカリスマ・ライターのフランク・ミラー。代表作は『バットマン:ダークナイト・リターンズ』や『シン・シティ』などです。
横長のちょっと変った版形で、ほとんどのコマに背景が描かれているので、かなり絵本に近い印象。
ジム・リーの端正なアートからアメコミに入ったわたしとしては、ミラー先生の荒削りなタッチってそれほど好きではないんですけど、この作品ではセピア調のバックにいかしたシルエットが多用されてて、なかなか良いなー、と思いました。

この作品を読んでまず思ったのは、ミラー先生は本当に「権力にものをいわせて力ずくで言うこと聞かせようとする連中」が、大大大っキライなんだなあ、ということ。
だから映画を観たアメリカの兵隊さんたちが「オレたちみたい!」とはしゃいだり、イラン政府が「我々を悪者にしたな!」と怒ったりするのは、勘違いも甚だしいわけで。他のミラー作品を二・三読めばすぐわかると思うんですけどね。『ダークナイト・リターンズ』なんて、それこそ老いたバットマンが、合衆国政府に公然とケンカを売る、つう話ですし。
それにレオニダス王率いるスパルタ軍も、「正義」とは少々言いがたいところがありまして。国を守るためとはいえ、連中のやることはあまりに過激。敵軍はもちろん、自軍の兵の命すら屁とも思っちゃいません。こうしたあっけらかんとした狂気は、『シン・シティ』にもありました。

ただ話の流れが、「米国版忠臣蔵」である「アラモ砦の戦い」を思わせるところがあり、兵隊さんたちの愛国心を刺激してしまった理由は、たぶんその辺にあるんじゃないかという気がします。
しかしこの手の「多勢に無勢で真っ向勝負」という話は、欧米の専売特許ではありません。わが国にもあります。それは関ヶ原の戦いにおける薩摩武士たちのエピソード。
味方であった小早川秀秋の裏切りにより、敵に退路を塞がれてしまった1600名ほどの薩摩武士たち。
せめて君主だけでも国許に帰そうと、彼らは全て「死兵」となり、十余万の軍勢に対し真正面からぶつかっていくのですが・・・・ その結果はみなもと太郎氏の『風雲児たち』第一巻か、平田弘史氏の『薩摩義士伝』第二巻でお確かめください。両方ともマンガです。
実はミラー先生は日本の劇画にも詳しく、平田作品もけっこう読んでおられるそうで。もしかしたら『300』って『薩摩義士伝』のインスパイアもちょっと入ってるのでは・・・ と、勝手な妄想をめぐらせております。

20070604174239その『300』原作本は小学館プロダクションより発売中。2800円という買い手の勇気が試される値段でありますが、レオニダス王なら「臆病者は去るがよい!」とおっしゃられることでしょう。きっと。
あと映画のメイキングブックがとってもよく似た装丁で横に並んでいたりするので、買う時くれぐれもまちがわれませんようお気をつけください。

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Comments

つい言っちゃいます、さんびゃくって。
ミラーマン・・・じゃなくてミラー先生、ゴメン。

原作本買うって決めてたので迷いなく買いましたが、
ちょーっと高かったなぁ。
他のアメコミ本も基本的に高いですよね。
あれこれ読みたいなーと思いつつ、結構ガマンしてます。

『300』、あっちやこっちでやいのやいの言われているようですが
深読みし過ぎなんじゃないかと思いました。
とりあえず私は映画も原作もクールなビジュアルを満喫いたしました。

Posted by: kenko | June 05, 2007 at 10:01 PM

どうも。お返しありがとうございます。

>つい言っちゃいます、さんびゃくって

つか、最近までずーっとそう読んでました。ははは(^^;)

>他のアメコミ本も基本的に高いですよね

高いですねえ(TT)。わたしが買い始めたころはまだ一冊千円台だったんですけど、今は普通に三千くらい。でも少しでも翻訳が続けばと思って、泣く泣くお金出してます

>深読みし過ぎなんじゃないかと思いました

まあアメ○カとイ○ンは最近何かにつけて、お互いの揚げ足を取ろうとしてる感があります
先日もアメ○カが「イ○ンがやばいから」と、欧州にミサイル施設を配備する計画を発表したんですが、それに対しイ○ンの政治家は、「俺らのミサイルが欧州まで届くわけねーだろ。バーカ」とコメントしたとのこと

もっと大人になろうぜ!(両方な!)

Posted by: SGA屋伍一 | June 06, 2007 at 07:24 AM

SGA屋伍一さんこんばんわ♪TB有難うございました♪

>算数がえらい苦手だ、っちゅうことを

オチが秀逸ですw
まあでもレオニダス王も細かい事や政治に向かないタイプに見えましたし、どっちかと言えば単純にパッチギとかして解決するタイプに見えますしね(笑

げっ、2800円もするんですか原作(--;)そいえばかなり前にスポーンの漫画を買った事あるんですが、あれも高かったような・・・

Posted by: メビウス | June 17, 2007 at 10:09 PM

メビウスさま、毎度お忙しいところありがとうございます

>算数がえらい苦手

文武両道・・・とはなかなかにいかんもんですよね。ハンカチ王子みたいな憎たらしいヤツもたまにいますが

>レオニダス王も細かい事や政治に向かないタイプ

その分映画では奥様が必死に根回しに動いてましたね。夫が何も考えてないと、その分奥さんが苦労するという好例でした。実はあの辺、原作にはない部分なんですけど

>スポーンの漫画

ありましたねー。確か一冊千円くらい。10巻くらいまでつきあったけど、途中で脱落。今思えば意地でも全巻買っときゃよかったなー

Posted by: SGA屋伍一 | June 18, 2007 at 08:21 AM

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