« パン太の日記 5ページ目ほど | Main | 帰ってきたウルトラマンたち 『ウルトラマンメビウス』 »

May 23, 2007

しゃべる・トラブル・スクランブル アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 『バベル』解体編 

20070523185928「なんかスゴイらしいぞ!」という噂とは裏腹に、公開されるや否や全国の映画ファンに混乱を巻き起こしている『バベル』。
わたしもどちらかといえば「ぽかーん」組でございましたが、皆様の記事など読んでいましたら、それなりに気づかされたこともありまして。もう一回このやっかいな作品について語ってみたいと思います。完全ネタバレなんで未見の方は避難よろしく。

最初に元ネタの聖書のお話を振り返ってみましょう。
はるか昔、全ての人々はひとつの国で、ひとつの言語のみを用いて暮らしていました。そんな時代に、ニムロデという野心的な男が現れます。彼は権力を得ると「神の領域に赴こう」と人々を炊きつけ、天にも届くほどの高い塔を作り始めます。しかしその身の程をわきまえぬ所業に怒った神は、突如として多くの言語を生み出すことにより、彼らに混乱をもたらします。結果、プロジェクトは頓挫。人々は同じ言語を話すもの同士グループを作り、世界の方々へ散っていきました。こうして世界に「国」と「言語」が生まれたのでした。

天地創造、失楽園、ノアの洪水ときて、その直後に位置する話。このお話から導き出されるキーワードは、「異人種同士が接触することにより起きる混乱」それと「人間の高慢さ、浅はかさ」。まず前者について考えてみましょう。

今の世界は、お金さえあればわりと簡単に外国へ行けてしまう時代です。しかしそれが時として、悲劇を生むきっかけになることもあり。
例えばアメリアおばさんの息子の結婚式が国境の内側で行なわれていたなら、彼女が自分の安定を失うことはなかったかもしれません。またブラ・ブラ夫妻がモロッコに行ったりしなければ、預けっぱなしにされた子供たちが死にかけることもなかったはず。ブラ夫人が鉄砲で撃たれることもなかったでしょうし、医療の行き届かぬ地域で生死の境をさまようこともなかったでしょう。さらに元を正せば、ヤッさんが異国の地で現地の人に「ぽい」と高価な銃をあげたりしなかったら、これらすべての悲劇は生じなかったはず。そう考えると、ほいほい海外旅行に行くのもちょっと考えものです(ヒガミあり)。

ただ、上記の理由はあくまで表層的なものにすぎないような気がします。根本的な原因はじゃあなにかと申しますと、「隣の評論家」さまが指摘されていた「登場人物の傲慢さ」(http://cinemaniac-eiganikki.cocolog-nifty.com/weblog/2007/04/post_6178.html)、「浅はかさ・愚かさ」じゃなかろうかと。考えてみればバベルの塔のお話は、人間の傲慢さを戒めるためのお話ですし。
やっさんや羊飼いのオヤジは、鉄砲を人に与える時、「それがあとでどうなるか」とか考えなかったのでしょうか?(これはkenkoさまも指摘されてますね) さらにやっさんは精神的に参っている奥さんのそばに銃を置いといて、危険だとは考えなかったのか?(あるいは奥さんのそういう状態に気づいてすらいなかったのか?) ブラ・ブラ夫妻は子供を何日もおばさんに預けておいて、迷惑になるとは考えなかったのか? おばさんは隣とはいえ国境の向うに子供たちを連れ出して、「なにかあったら」とは考えなかったのか? 彼らはその高慢さ・浅はかさゆえに罰を受けます。ただ、そのしわ寄せが、年少者にまでどんどん及んでしまうのが辛いところです。

じゃあどうすれば彼ら彼女らは救われるのか? それが傲慢さゆえの罰なら、傲慢さを捨て、謙虚になるほかありません。愛する人のために力になろうと努力し、身を投げ出すことによって。あとメビウスさまのおじさんの『そんなもん(英語)出来なくてもジェスチャーとかでなんとかなるもんだって。ホテルや道訪ねる時とか俺は英語使んねーぞ』という言葉などを読んで思ったのですが、「わかってもらおう」という思いがあれば、多少言語が通じなくたってそれなりになんとかなるようです。つまり、「真剣に相手の気持ちを理解しようと努力しなければダメなんだ」ということなんでしょう。

こういう風に強引に理解しようとがんばってみましたが、それでもわからんところはまだまだあります(笑)
例えば冒頭でブラ夫人はダンナに対して相当怒ってましたけど、その理由は? 「子供を亡くしてほったらかしにされたのが辛かった」みたいなことを言ってましたが、子供を亡くして辛いのはダンナだって同じはず。たぶんダンナがその間浮気の一つもしてたんでは・・・・というのがわたしの説です。
あと上の条件にあんまりあてはまらない(笑)「チエコ」のお話。「チエコがなんであんな変態的な行動をするのか理解できない」という意見をよく目にしました。わたしは「なんとかして自分をちゃんと見て欲しい」という欲求の表れではないかと考えております。お母さんは自分を置いて死んでしまうし、お父さんは話をしていてもどこか上の空だ。同世代の男の子は彼女が口を開くとひいてしまう。誰も自分を見てくれない。どうすればみんなわたしを見てくれるのか・・・ そんな孤独感が彼女を過激にさせたんではないでしょうか。

20070523185913勝手に引用させてもらった皆様、すいません&ありがとうございました。たまには難解な映画を見るのも、なかなか勉強になりますね。でも6月はカリブやマヤ、スパルタのバカ時代劇を楽しみたいと思います。


|

« パン太の日記 5ページ目ほど | Main | 帰ってきたウルトラマンたち 『ウルトラマンメビウス』 »

Comments

おぉ!SGAさん、果敢にバベルに取り組まれてますね~
なにげに自分の名前が出てきてちょっとビビりました。えへ♪

大人たちの身勝手さ、傲慢さがとても気になった本作でしたが
最後の方でやっさんが刑事に「銃を譲りましたか?」と質問されて
「あぁそういえばあげたけど、それがなにか?」みたいに答えた時、
もうこの人、無責任大人チームの代表選手だなと思いました。
などと憤りつつ、自分もそんな傲慢な大人のひとりだったりするわけで・・・
謙虚な気持ちを忘れずに、身近にいる人ならなおのこと
相手を思いやることを忘れないようにしなきゃ。。。
チエコの突飛な行動は正にSGAさんが考えられている通りなんじゃないかと
私も思います。

Posted by: kenko | May 23, 2007 at 11:36 PM

こんばんは。TBありがとうございました。
大変興味深く、感想読ませていただきました。
僕の感想には、「浅はかさ・愚かさ」が抜けてたように思います。
また2回目を鑑賞したら、気付く事もあるかなと。。。

>どうすればみんなわたしを見てくれるのか・・・ 
直接言葉で会話できないストレスは、相当なものだと思います。
だから、言葉の要らぬ、ああいう一連の行動で、
相手のリアクションが得られるのは、変な意味ではないんですが、
面白いものなんじゃないかなと思います。
ただ、それはまわりから見ると、哀しいものです。
いや本人も、哀しいとは思ってるでしょう。

ホントにこういう難解そうな映画も、たまにはいいものです。
行間を埋めていく作業も楽しいですね。

Posted by: SHINGO。 | May 24, 2007 at 01:05 AM

>kenkoさま

無断引用失礼しました
>もうこの人、無責任大人チームの代表選手だなと思いました

ですね。言ってみれば彼が全ての元凶といえなくもないわけで(笑)
ただやっさんもまた、お話が始まる前に十分すぎるほどの罰を受けていますね

kenkoさまはとても思いやりに溢れたかただと思いますよ。ブログから読んでて暖かい人柄が伝わってきます。ネコさんには特に(笑)

>チエコの突飛な行動

前記事でTBくださった「とらねこ」さんという方は、「十代特有のイタズラ心」では、と指摘しておられました。言われてみると、そういう風にも見える気がします

Posted by: SGA屋伍一 | May 24, 2007 at 07:49 AM

>SH_INGOさま

コメントありがとうございます。
そちらのイラストに感銘を受けたので勝手に挑戦させてもらいましたが・・・ かなわなかったようです。おみそれしました

>チエコ

あのくらいの歳の子って「自分を見て欲しい」「受け入れてもらいたい」という気持ちが人一倍強いと思うのです。ほんで無理してハメをはずして、あとで後悔したりして そういう「飢え」が人からは変態のように見えてしまうのは、本当に滑稽で哀しいものでありますね
と、まるで他人事のように(笑)

Posted by: SGA屋伍一 | May 24, 2007 at 07:57 AM

SGA屋伍一さんこんばんわ♪TB有難うございました♪

表面鑑賞しかしてない自分にとって、正直こういう社会派な映画は内容が難しいのもあってあまり進まない作品でもあるんですけど、菊池凛子や日本編で問題になってた観てて気持ち悪くなるシーンなどの話題性(笑)が自分の足を映画館に向かわせたんだと思います(^▽^;)
しかし何でも菊池凛子、噂じゃ次回作が口の利けない詐欺師とか言う役でまたセリフ無しですかいとか速攻突っ込んじゃいましたねー。
気持ち悪くなるって言う問題のディスコシーンでも、パッパッと点滅してる間に変な映像が流れるサブリミナル効果も期待していたんですが、普通に観難いだけでガッカリです。

※それと今度ウチのおじさんに次の海外旅行はモロッコがオススメだ!と伝えておきます。ジェスチャーのみでどこまで思いが伝わるか楽しみです(^▽^;)

Posted by: メビウス | May 24, 2007 at 10:37 PM

メビウスさま、度々お返しありがとうございます

>菊池凛子や日本編で問題になってた観てて気持ち悪くなるシーンなどの話題性(笑)が自分の足を映画館に向かわせたんだと思います(^▽^;)

わたしも似たりよったりです。前記事にも書きましたが、観にいった動機は「オチがすごい」というデマに惑わされたからだし(笑) この言葉にも何度だまされたことやら・・・ 『シックス・センス』はマジで腰を抜かしましたけどね

>噂じゃ次回作が口の利けない詐欺師とか言う役でまたセリフ無しですかい

あらー、すっかり『バベル』のイメージが定着しちゃったってことですかね
しかし口を開かずにどうやって人を騙すんだろ? 脚本の離れ業に期待ですね

>今度ウチのおじさんに次の海外旅行はモロッコがオススメだ!と伝えておきます。

そうそう、勝手に引用してもうしわけありませんでした
その際にはぜひ防弾チョッキの着用をおすすめください

Posted by: SGA屋伍一 | May 25, 2007 at 08:59 AM

おおおおお!素晴らしーですねー
そうそう、引用して頂きまして、ありがとうございます。それなのに、反応が遅くなってしまい申し訳ありませんでしたー。
この作品は、1度見ただけでは何をどう感じていいのかよくわかりませんでしたけど。こうして、色々な方のレビューを読んでみて初めて「あーだったのか、こーだったのか」と少しずつ理解できてきたような気がします。
私が一番強く感じた「傲慢さ」って、小さいものなら誰でも持ち得る部分だと思ったりなんかして。人が集まると、ついつい傲慢さが出てしまったりする場合もあるので。人と接することの難しさ・大切さを実感できた作品でもありました。

とまぁ、何だか生真面目なコメントになってしまいましたが。そ、そ。またしてもTBがこちらから送れませんでした。最近ちょっとずつ回復の兆しを見せたいたのに、悔しいですわ。でも引用して頂いているので、良しとしたいと思います。
それでは、それでは。また、お邪魔させて頂きますのでヨロシクです。

Posted by: 隣の評論家 | May 26, 2007 at 10:52 AM

>隣の評論家さま
>そうそう、引用して頂きまして、ありがとうございます

いえいえ、こちらこそありがとうございました。そして無断引用申し訳ありません

>色々な方のレビューを読んでみて初めて「あーだったのか、こーだったのか」と少しずつ理解できてきたような気がします。

わたしも日ごろいろいろな方の記事を読んで、改めて気づかされる点が多くありますが、特にこの『バベル』という映画はみなさんそれぞれの意見があって面白かったです。なかでも隣の評論家さまのご意見は参考になりました

>傲慢さ

本当に誰にでもあるものですよね。特にピンチに陥ると、それが爆発しやすいということを作品から学ばされました
わたしなどもブログの記事を書いていて、けっこうえらそうになってしまうことが多々あります

TBの件、本当に毎度すいません。
映画はここ三週間ばかり見てないんですが、これからは『パイレーツ・オブ・カリビアン』『300』『アポカリプト』『プレステージ』などを鑑賞予定。なんかネタがかぶったら、またお邪魔させていただきます。

Posted by: SGA屋伍一 | May 26, 2007 at 08:53 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/70832/15177843

Listed below are links to weblogs that reference しゃべる・トラブル・スクランブル アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 『バベル』解体編 :

» バベル [日っ歩~美味しいもの、映画、子育て...の日々~]
壊れかけた夫婦の絆を取り戻すため、リチャードは、妻スーザンを誘い、モロッコを旅します。その旅の途中、バスで山道を走行中、どこからか放たれた銃弾が、スーザンの肩を撃ち抜いてしまいます。なんとか医者のいる村までたどり着きますが、応急処置しかできません。リチャードは... [Read More]

Tracked on May 23, 2007 at 11:35 PM

» #71.バベル [レザボアCATs]
モロッコを旅するアメリカ人夫婦、リチャード(ブラッド・ピット)とスーザン(ケイト・ブランシェット)の乗ったバスに突然、一発の銃弾が放たれた。テロを政府が警戒し、国際問題にまで発展するが、実はその銃はとある現地の案内人に、旅行で狩猟に来た、とある日本人が与....... [Read More]

Tracked on May 24, 2007 at 02:34 PM

» バベル(評価:○) [シネマをぶった斬りっ!!]
【監督】アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 【出演】ブラッド・ピット/ケイト・ブランシェット/ガエル・ガルシア・ベルナル/アドリアナ・バラッザ/役所広司/菊地凛子/二階堂智 【公開日】2007/4.28 【製作... [Read More]

Tracked on May 24, 2007 at 10:18 PM

» バベル(試写会) [カリスマ映画論]
【映画的カリスマ指数】★★★★★ 壁を越え、繋げよ・・・その心  [Read More]

Tracked on May 25, 2007 at 10:30 PM

» 話題作 バベル 観てきました。 [よしなしごと]
 公開前はいろいろな意味で評判だったけれど、いざふたを開けると反応は微妙な映画、バベルを見てきました。 [Read More]

Tracked on June 10, 2007 at 12:47 AM

« パン太の日記 5ページ目ほど | Main | 帰ってきたウルトラマンたち 『ウルトラマンメビウス』 »