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May 19, 2007

岡山少年野球団 完結編 あさのあつこ 『バッテリーⅥ』

20070519175901一昨年から(!)ポツポツと紹介してきた『バッテリー』も、とうとう最終巻まで来ました。みんな泣いて! オレも泣く!
まあそんな甘っちょろい感傷を許してくれるほど、生易しいお話じゃないんですけどねー。

これまでの記事はこちら
http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2005/05/post_3881.html
http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2005/07/post_2f60.html
http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2006/06/post_4916.html
http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2006/10/post_10b3.html
http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2007/04/post_c43e.html
ついでに劇場版も
http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2007/04/post_28fc.html

横手二中との決戦を前に、ようやく呼吸が合ってきた原田・永倉バッテリー。他のメンバーも調子は上々。そんないいムードの中、キャプテン海音寺は一人不安を抱いていた。(このままでは原田は打たれる・・・)
その不安を払拭すべく、海音寺がバッテリーに課した、ある提案とは?

『バッテリー』は全6巻ですが、わたしはおおむね三部に分けられると考えています(またかい)。
第一部は1巻。ここではまず原田巧がどんなヤツなのか、その紹介に焦点が絞られています。
第二部は2、3巻。こちらでは新田東中野球部の、崩壊(笑)と再生が主に描かれます。
そして第三部は4~6巻。表向きの命題は「横手二中に勝つ」ことですが、ここでのメインは巧と豪の真剣勝負。巧のタマを豪は受けきれるのか。そして巧は豪の期待に応えることができるのか。相手チームそっちのけで、二人は丁々発止のやりとりを繰り広げます。
第三部ではサブ要素として、門脇・瑞垣の複雑な関係も描かれていますね。これまた一筋縄ではいかん絆ということで、原田・永倉コンビの奇妙な対比となっております。

最終巻の殊勲賞はキャプテン海音寺。彼は登場時は単なる「野球大好き少年」でしたが、いつの間にやら「腹黒大王」瑞垣すら、舌を巻くほどの策士へと変貌してしまいました。
この巻では「誰がバッターだろうと関係ない」とうそぶく巧に対し、意外な仕方で「人の怖さ」というものを教えます。そんな老獪さを存分に発揮する一方で、試合の最中に「野球ってマジ面白え」とつぶやく彼は、マジかっこよい。わたしより20近く下の人間なんですけど、あんまり年下という気がしません。

さて、あさの先生は文庫版第一巻のあとがきにおいて、「『バッテリー』を単なる少年の友情物語・成長物語にしたくなかった」と語っておられます。では巧は果たして6巻かけて、何も成長しなかったでしょうか?
確かに根っこの部分は何も変っていません。相変わらずタマを投げることしか考えていないし、「こう」と決めたらテコでも動かない。大人や先輩に対しても相変わらず礼儀知らずです。
でもいろいろなことを知り、いろいろなヤツに出会い、たくさんのモノを得た・・・・ そういう意味では確かに「成長」していると思います。あさの先生の意図がどうあろうと(笑)。
「変らなきゃ」と人はいうけれど、何もかも変わる必要はない。芯の自分を変えなくても、人間はよりレベルアップできる。それが『バッテリー』という物語から、わたしが受け取ったメッセージです。

この際ですから半バレくらいで結末の印象も書いておきましょう。これはあるバッテリーのストーリーです。ですから彼らが一つの到達点に達したところで、終るべきなんでしょう。また、風呂敷を全部キチンとたたまずに、読者が自分でたたむ余地を残しておく・・・ それがブンガクってやつなんでしょう。
よくわかります。大変よくわかります。でもやっぱりこう思いました。

「あっけね・・・・」

仕方ありません。この「ポッカリ感」は自分で想像して埋めるほかないでしょう。番外編『ラストイニング』もそれを助けてくれるようです。

20070519175955最後はちょっとグチっぽくなりましたが、本当に久しぶりに腹の底から「面白え」と思えた小説でした。あさの先生と彼女の生み出した少年たちに、心より御礼申し上げます。

「こんな感覚がまた味わいたい」という方には名作マンガ『キャプテン』、あるいは『SLAM DANK』をおすすめします。わたしはそろそろ、『おおきく振りかぶって』でもチェックしてみようかなー

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Comments

>「あっけね・・・・」

いやー、あれは、めっちゃ美学を感じましたけどねー。
「野球小説じゃない」って、あさのさんが、いろんなとこで書いてるのは、こーゆー意味かーって思いましたねー。

海音寺は、うちの中では「天然」の位置づけっすね。中身は「典型的なキャプテン」像って感じで、「これで男前やったらしばく」ちうくらい、出来上がってるモテモテくんなイメージです。

「おお振り」は、こないだ7巻まで読みましたが、「バッテリー」と年齢設定を交換したほうがよくね?ちうくらい、かわいいことになってます。

Posted by: やまわき | May 21, 2007 at 10:47 PM

やまわきさん、コメントありがとうございますです

>いやー、あれは、めっちゃ美学を感じましたけどねー。

その辺が芸術を解する人とそうでない人の違いでしょうか(笑) でもそういえば『キャプテン』も『スラムダンク』も、読み終えたときは「ここで終り?」と思ったっけなー 「未完」こそが真に美しい形なのかもしれませんね

>「これで男前やったらしばく」ちうくらい、出来上がってるモテモテくんなイメージです。

それはどうでしょう(笑)。「ジャガイモ」と言われていた野々村君にすら彼女がいたのに、彼にはそういう話がまったくありませんでしたから
あるいは、その手のことに全く興味がないのか? イケメンらしい巧も、たぶん三年間色気なしで卒業することでしょう

>「おお降り」

確かにかわいらしげな画風ですね。いまブックオフで一生懸命探してるんですけど、なかなか見つかりません(定価で買えよ)


Posted by: SGA屋伍一 | May 22, 2007 at 08:12 AM

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自分がやってたスポーツの小説ってのは、どーしても見る目が厳しくなっちゃうのであります。すぐ「ありえへん」とか思っちゃうのですよ。ってなわけで、中学・高校とソフトボールをしていたワタクシ(野球がしたかったけど野球部なかったし)にとっては、「野球もの」は「ギャク」か「ノンフィクション」以外は受け付けんかったのです。しかも「バッテリー」って、「『天才ピッチャー』が主人公で感動話」って前情報が入ってたもんやから、「はいはい、『速い球でみんながビックリー』とか『天才くんがみんなになじめなくってどーちゃらら』っ... [Read More]

Tracked on May 22, 2007 at 11:10 PM

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