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April 13, 2007

北斗の剣 アスカ伝 富樫倫太郎 『太子暗黒伝 壱 厩戸皇子篇』

20070413183733「次にわたしの筆は、古代に向かうことになると思う」
そう富樫先生が『雄呂血』で予告されてから6年(笑)。ようやくその現物を拝むことができました。大河伝奇小説『陰陽寮』(http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2005/06/post_fe50.html)のプレ・ストーリー、『太子暗黒伝』です。

時は飛鳥時代。大和朝廷は様々な難題を抱えていた。統治者である用明天皇は病弱で床に臥せリがち。それをいいことに権力抗争にあけくれる豪族たち。なかなか定まらぬ後継者問題。そして大奈無智率いる属国・出雲の軍勢が、朝廷の領地を荒しているとの報告が入る。
後の聖徳太子・厩戸皇子はこの時14歳。類まれな才能を持ちながら「政治のことなんか知ったこっちゃない」と、自由に野山を駆け巡る日々を過ごしていた。だが迫り来る戦火の波は、皇子を否応なしにその渦へとたぐりよせていく。

聖徳太子といいますと、小学校の歴史の授業で、卑弥呼・ヤマトタケルについで最初に出てくる人物。「神話」と「歴史」を分け隔てるわかりやすい目印でもあります。それほどにメジャーな人物なのに、よくわからないことも多く(なんせ大層昔のひとですから)、「実在してなかったかもね」とまで言われてしまう有様。
しかし「よくわからない」ということは、伝奇作家にとっては「腕の奮いがいがある」ということでもあります。
かくしてこの神秘的な逸話には事欠かない皇子様を素材に、富樫流伝奇ワールドが展開されます。
とはいっても一応きっちり史書を調べた上で無茶をやらかすのが富樫流。今回もこの時代の政争の様子などを、想像で補完しつつ丁寧に再現しております。
その中で特に興味深いのが、用明天皇が「わし、仏教に帰依する」と言い出すくだり。
今でこそ日本は仏教国ですが、この時代はまだまだ「外国の教え」でした。例えるなら陛下が突然「おれ、クリスチャン(もしくはムスリム)になる」とでも言い出すようなものでしょうか。当時の大臣たちのビックリぶりが目に浮かびます。
一方で、日本史に平気で異国の神話・伝説を組み込む無茶振りも健在。「蟻留宇」&「摩修宇」、「円木戸」というネーミングからすると、今回はバビロニア系で攻めてくる模様。その内「丸毒」「墳馬場」なんてキャラも登場してきたりして。

さて、聖徳太子をモチーフとした物語で思い出すのは、やはり山岸涼子のコミック『日出処の天子』(というか、これくらいしか思いつかない)。で、この小説、『日出処の天子』から影響を受けたのでは?という部分がいろいろありまして(例えば、皇子が実の母にわけもなく疎まれてたり、渡来人二人が皇子の両脇をがっちりガードしてたり、など)。蘇我さんちのご家族ももれなく登場します。ですから、かの名作コミックのファンの方は、別ヴァージョンとしても楽しめるかと思います。ただし、あちらにあった背徳的な要素は全てカット。むしろ健康的ですらあります。『暗黒伝』なのにねえ(笑)。

大和朝廷が確立されてる時代に普通に九州に「ヤマタイ国」があるので、面食らわれる読者もおられるやも。実はこの設定、富樫さんが前から自作で練り上げてきたものでして、その辺の事情に付きましては先の『雄呂血』(光文社文庫より・上下あり)などで説明されています。興味を持たれた方はそちらもどうぞ。

20070413183634この『太子暗黒伝』、すでに第二巻にあたる『出雲燃ゆ』が発売中。『陰陽寮』の時は大抵続きが出るのに一年かかったのに、この早さは・・・・ ノリノリってことですか!? 富樫先生!!
というわけで、『太子暗黒伝』はトクマノベルスより発売中であります。

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Comments

どうもです。
…まずはこのシリーズも、無事に、かつ尻すぼみせず終わることを祈りますね(笑)。
この作品でも、出たー、「カタカナ名前に漢字無理矢理あてたキャラ」。実はこれが出て来るとげんにゃりしてしまうのですよね。
今回も、いきなり冒頭からそれだったもんで、その冒頭数ページを乗り越えられず、一旦読み始めた後数日間、職場の机の引出しに放置(笑)
この作品ではトジコちゃんは皇子と普通にラブラブでいきそうなのが…普通(笑)
10巻ぐらいかかりますかねえ。無事に最後まで読みたいものです。

Posted by: 高野正宗 | April 14, 2007 at 07:36 AM

おはようございます

今回は『陰陽寮』のように主人公格が複数いるわけではなく、主人公が皇子一本に絞られているので、前よりもコンパクトにまとまるんじゃないでしょうか。そうなるといいなあ(笑)

>「カタカナ名前に漢字無理矢理あてたキャラ」

いやあ、相変わらずわかりやすいネーミングです(笑)
わたしはもう慣れました

>トジコちゃん

中学生のような恋愛描写(というか、実際それくらいの年齢だし)、ちょっと気恥ずかしかったですね。まあ『日出処』の彼女はあまりにも不憫だったので、こちらでは「普通」にいってほしいものです。相手が相手ですけど

Posted by: SGA屋伍一 | April 14, 2007 at 11:06 AM

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