愛と青春のクモ男 サム・ライミ 『スパイダーマン』
久しぶりに旬の映画ネタが尽きてしまいました。こんな時には(ちょいと)昔の話をしましょうか。最新作も迫っていることですし、映画『スパイダーマン』について語らせてもらいます。その前にこの愛すべきクモ男の誕生について少し。
いまをさること45年前、すでに『ファンタスティック・フォー』などのヒット作を手がけていた敏腕編集者兼漫画作者のスタン・リーは、ひとつの風変わりなストーリーを思いつきます。主人公はさえないメガネくん。放射能を浴びたクモに噛まれたことにより、自らも壁をよじ登れるクモ能力を有するようになる。
編集部はそのアイデアを、「キモい」の一言で却下。しかしさすがはスタン・リー。彼はスタッフを丸め込んで作品を形にすると、もうじき廃刊になる雑誌に、こっそりその漫画を載せてしまいます。するとなんたる不思議、その雑誌『AMAZING FANTASY』15号は、けっこうな売り上げを記録してしまったのです。これが以後現在まで続くことになる「スパイダーマン伝説」の始まりでした。
90年代に入ると、映画『バットマン』のヒットを受けてか、『スパイダーマン』も「映画化」の動きが出てきます。ところが版元であるマーヴル・コミックスが権利のことで色々ごねたため、企画は難航。結局最初に話が出てから8年以上経って、マニアックな作風で知られるサム・ライミの手によりスパイディは銀幕デビューを果たします。その後の世界的なフィーバーに関しては、みなさんご存知の通り。で、今日は「ピーターがなぜ『ピーター』なのか」ということについて(またしても)妄想大全開で考えてみましょう。
日本において「ピーター」と言ったら普通は池畑慎之介ですが、欧米ではかなり知られた「ピーター」が二人います。
一人は童話のヒーロー「ピーター・パン」。永遠に少年の心を持ち、夜の摩天楼を自在に飛び回るピーター・パンは、なるほど、スパイダーマンのご先祖と言えるかもしれません。
そしていまひとりはイエス・キリストの弟子であるピーター。我々が「ペテロ」の名で知っている人物です。
ここで映画『スパイダーマン』冒頭のストーリーを思い起こしてみましょう。
クモ能力をゲットして、もやしもんからマッチョマンへ華麗なる転身を遂げたピーターは有頂天になり、遅めの反抗期も手伝って、つい育ての親であるベン叔父さんにこころない言葉を言ってしまいます。本当は誰よりも大切に思っているのに。「あとで謝ればいい」ピーターはそう考えたことでしょう。しかしその機会は永遠に訪れませんでした。叔父さんはピーターがわざと見逃した強盗の手により殺されてしまったからです。衝撃に打ちのめされるピーター。
ここでまた使徒ペテロに話を戻します(せわしねえなー)。
この方は「聖人」として世間に認知されていますが、聖書を実際に読んでみますと、失敗したり怒られたりといったエピソードに事欠かない、よくいえば「人間臭い」人物です。それがよく表れているのがキリストの死の直前のくだり。
キリストの裁判を遠巻きにして見ていたペテロは、そばにいた女性から「あなたは彼の弟子ではなかったか」と問い詰められ、激しくうろたえます。そこで三度にわたって「あんな人のことは知らない」と言い、ついには「のろったり誓ったりした」と聖書にはあります。その後ペテロは激しくそのことを後悔し、以後身を投げ打って師の教えを広めるわけですが。
ピーターも最愛の叔父さんを失ってようやくその力の真の使い道を悟ります。正義感、義務感・・・そういった気持ちももちろんあると思います。しかしわたしにはピーターがその仕事に打ち込む最も強い動機は、「いまは亡き叔父さんにほめてもらいたいがため」であるような気がしてなりません。
キリストが弟子に課した重要なおきてのひとつに、「あなたの隣人を自分自身のように愛せよ」という言葉があります。この「隣人」という言葉は、単に隣近所のひとを指すのではなく、自分が関る苦しみ悲しんでいるひとたち全てにあてはまるんだそうです。そしてその人たちに親切を示すとき、自分もまた彼らの隣人になるのだそうで。
ピーター・パーカー=スパイダーマンもまた、ベン・パーカーの息子として恥じない生き方をするべく、その糸が届く限り全てのひとの命のために奔走します。だからこそ彼の二つ名は「鋼鉄の男」でもなく「暗闇の騎士」でもなく、「あなたの親愛なる隣人」なのでしょう。
余裕がありましたら『2』と、「なぜスパイダーマンが日本でこんなにうけているのか」についても書いてみたいなー、と思います。
Comments
まいどです。
>、「なぜスパイダーマンが日本でこんなにうけているのか」
巨大ロボ、レオバルドンが出たからさっ(違!
と言うのはともかく(これも書くんでしょ?)
アニメ(アメリカ版)は見ていたまさとしです。
ではさらばっ!
Posted by: まさとし | April 08, 2007 12:54 AM
「スパイダーマン」はちゃんと見たことがないので、
作品については何らコメントできないのですが、
行きつけのブログで去年紹介されていたタランチュラの新発見http://ghop.exblog.jp/4224910
には非常に驚きました。
Posted by: 秦太 | April 08, 2007 01:09 AM
>まさとしさま
>レオパルドン
もってたぜえ! このオモチャ!
わたしの乱暴な扱いにもなかなか壊れなかった、よくできた玩具でした
旧アニメ版は噂聞くのみで見たことないです。Dr.オクトパスが「タコハチハカセ」という名前になってるとか
Posted by: SGA屋伍一 | April 08, 2007 08:52 PM
>秦太さま
リンク先見ました
基本的に『スパイダーマン』はバカ映画ですので、「クモの生態について非常に勉強になる」ということは全くございません(笑)ので、何かの機会にご覧になられることがありましたら、その辺期待されませぬよう
クモの糸は確か蚕のそれより強度がずばぬけて強いものの、製品化はかなり困難、と聞いたことがあります。いつかは実現するのでしょうか
それにしてもあなたたちはせっかくいい話書いてるのにレオパルドンだのタランチュラだの(^^;)
でもそういうのが家の基本姿勢でありました。ありがとうございました
Posted by: SGA屋伍一 | April 08, 2007 09:00 PM
今回怪人が3人もいますが、大丈夫でしょうか?
バットマン等怪人は2人まで、と思っていたのですが。
スパイダーマンは怪人ひとりで来たのにいきなり三人
ですよ。
きみ~はな~ぜ~、が耳に残っている東映版スパイダーマン
http://vision.ameba.jp/watch.do?movie=166147
張っておきます。
でも今回スパイダーマンがダークサイドに落ちてしまうそうですが
だから東映版でスパイダーマンを演じていた人もヘドラー将軍に
なってしまったんでしょうね。
http://vision.ameba.jp/watch.do?movie=175713
Posted by: 犬塚志乃 | April 17, 2007 10:48 PM
>スパイダーマンは怪人ひとりで来たのにいきなり三人
ですよ。
そりゃやっぱり「3」だからじゃないでしょうか。原作では「シニスター・シックス」という6人チーム(ドクター・オクトパス、サンドマン含む)も機転で退けているので、なんとかなるんじゃないでしょうか。たぶん
>東映スパイダーマン
実は物心付いて初めて第一回を見た特撮が、これでした(スターウルフなんかもおぼろげに・・・・)
色々言われてるように中身はまったくの別物(というか別人)ですが、まあこれはこれでアリかと
Posted by: SGA屋伍一 | April 18, 2007 07:19 AM
>シニスター・シックス
そんなチームがあったんですか。悪党はつるむのが
好きですね。
ていうか2で出た教授がリザードマンで新聞社の編集長の
息子の宇宙飛行士も怪人になるそうですがピーターの周りは
怪人が多いですね。しかもほとんど知り合いw
2人のピーターの話ですがペテロもピーターパンも思いつきません
、よく書けましたよね。
おじさん殺害の犯人が脱獄する訳で過去とどう向き合うかですが
同時に友人がグリーン・ゴブリンになり、また過去と対峙し、
そして自分とも対峙するんですね、ピーターは。
結構真面目に書いていますねw
みんなSGA様に話合わせて書いてくださいよ、自分の事ばっか
書かないでw(もちろん私含む)
Posted by: 犬塚志乃 | April 20, 2007 08:47 PM
>2で出た教授がリザードマンで新聞社の編集長の
息子の宇宙飛行士も怪人になるそうですが
よくご存知ですね。今回その設定はオミットされるようですが
あとピーターの通う大学の先生も二人ばかり怪人になっております
まあ上の記事は「ピーター」という名前から思いついたこじつけにすぎないので、『コードギアス』の記事と同様「ま、そういえなくもないかもね」くらいに考えてください
原作の方ではピーターとおじさん、別に仲違いとかしてませんし
ともあれ早く来月にならんかなーとじりじりしている毎日です
Posted by: SGA屋伍一 | April 21, 2007 11:44 AM