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April 20, 2007

GTI(グッバイ・ティーチャー・イトシキ) 久米田康治 『さよなら絶望先生』

20070420184149お先真っ暗 望みを捨てる
捨てて はかない命絶つ
誰が呼んだか 誰が呼んだか 絶望先生
とかくこの世は 諸行無常
今日も決め手の 今日も決め手の 「絶望したああああ!!」

新学期が始まるその日、女子高生・風浦可符香(ふうら かふか)は、桜の木で首を吊っている一人の男を見つける。幸い一命を取り留めたその男の名は糸色望(いとしき のぞむ)。なんと可符香の担任教師であった。物事を何でもネガティブにしかとれない望。物事を何でもポジティブにしかとれない可符香。出会ってはいけない二人が出会ってしまったそのとき、物語は動き出す。他にも望のクラスには、何でもきっちりしていないと気が済まない木津千里(きつ ちり)、何でもボーイズラブに結びつけて考える藤吉晴美(ふじよし はるみ)など、ツボにはまると行くところまで行ってしまう生徒が多数在籍。絶望先生は彼女たちと共に社会の矛盾を糾弾し。日本の明日を模索する。って、あれ? そんな話だったっけっか?

実はワタクシ、作者の久米田先生のことはデビュー作『行け! 南国アイスホッケー部!』のころから存じております。昔はサンデー派だったので。この作品、はじめこそコミカルなスポーツものでありましたが、その内ホッケーの「ホ」の字もでてこなくなり、しまいにはダジャレと下ネタが紙面を埋め尽くすという、こう言ってはなんですが「ゴミ」のようなマンガでございました。しかしゴミの中にも時折「お、これはなかなか・・・・」というものがあるように、『南国アイス』においてもまれに興味深い実験がなされることがないでもなかったです。
さてそれから月日は流れ、少年マガジンを立ち・拾い読みをしていたわたしは、久しぶりに久米田先生の名前を見つけました。それがこの『絶望先生』だったわけですが。
いや、読んで驚きました。『南国アイス』の時と基本的なスタイルは変らないのに、びっくりするほど洗練されていたからです。学術・政治・芸能・マンガ・スポーツ・日常と、あらゆるジャンルからネタをかき集め、一つのテーマを徹底的に追求するとともに、ギャグマンガの本質である「ナンセンス」も忘れない。下ネタもあるにはありますが、あくまでアクセント程度にとどめられています。
例えば単行本第6巻に収録されている「デトックス」を題材にしたエピソードはこんな流れ。
ある温泉宿にやってきた一行。温泉で身も心も清められた生徒たちは、すっかりいつもの毒気を失ってしまう。それに危機感を覚える絶望先生。「毒が抜けてしまったものは何かとモノ足りないものです」
「保険の利くブラックジャックは 何か魅力に欠けるもの!」「毒の抜けた秋葉原は ただの電気街になる!」「毒の抜けた細木数子は ズバリ言わない!(遠まわしに言う)」
さらに挙げられる「毒が抜けたらどうなるか」という多くの実例。
(ワイドショー→はなまるマーケット BUBUKA→Myojo 蠅の王→十五少年漂流記 べジータ→恋に落ちたべジータ 2チャンネル→ミクシィ・・・ほか)
では絶望先生から毒を取ったらどうなるのか? というところでオチへ続きます。
ネタが多すぎてわからないものもあると思いますが、そこで役立つのがこのHP。
http://zetubou.hewl.info/wiki/
『絶望先生』に出てくるほぼ全てのネタが解説されています。管理人さんのひたむきな情熱には、ただ頭が下がるばかりです。

ところで一体なにが久米田先生をここまでレベルアップさせたのでしょう? それは単行本第一巻のあとがきの一文から察することが出来ます。
「運よく音羽で拾われた。あれからもう8ヵ月が経っていた。」
このマンガを始める八ヶ月前、久米田先生は長年相愛関係にあった少年サンデーから、一方的な別れを告げられます。まさにサンデーに、マンガに、自分の才能に、将来に「絶望した!」状態だったことでしょう。
奇跡的にマガジンで復活の機会を与えられた先生は、それこそ半端じゃない意気ごみで連載に臨まれたものと思います。そして一度辛酸を舐めているがゆえに、「いつ捨てられるかわからない」という緊張感も絶えずあるはず。そうした「いつでも崖っぷち感」が、この作品に一定のレベルを保たせているものと思われます。

20061225190403_1そんな『絶望先生』ですが、驚くべきことになんとこのほどアニメ化が決定いたしました。
http://www.starchild.co.jp/special/zetsubou/
うーん。やばいネタも多いだけにどっからクレームが来て、打ち切りになるような気がしてなりません。
たぶん最終回の最後のセリフは「不寛容な社会に・・・」
←で決まりじゃないでしょうか。

『さよなら絶望先生』は少年マガジンコミックスより7巻まで発売中。近日第8巻も発売予定。
第一巻はなんとなくまだノリがゆるやかなので、できれば二巻あたりからの鑑賞をおすすめします。

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Comments

 なんというか富樫よしひろもそうですが、
久米田はあまり甘やかさない方がいいですね。

Posted by: 犬塚志乃 | May 05, 2007 at 01:57 PM

『ハンター×ハンター』、とうとうなし崩しに終ってしまったとか
まあ『BASTERD!!』や『忍空』みたく復活しないとも限りませんが

単行本のあとがき読むと、久米田先生だいぶ自信なくしてるようですよ
ポーズなのかもしれませんが

Posted by: SGA屋伍一 | May 07, 2007 at 06:37 PM

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