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February 06, 2007

アンフェアなアフェア マーティン・スコセッシ 『ディパーテッド』

お・・・ やっと旬の流れに追いついたような。
香港映画の傑作『インファナル・アフェア』を、名匠マーティン・スコセッシがリメイクした異例の作品です。

人には誰しも、運命の絆で結ばれた「誰か」がいます。コリンはマフィアから警察へ送り込まれたスパイ。ビリーは警察からマフィアへ送り込まれたスパイ。ある日突然、彼らはお互いの存在を強く意識するようになります。顔も名前も知らないのに、燃えあがるふたりの思い。「あの人に会いたい」 しかし自分の素顔をさらすことは、彼らの立場上、即、死につながりかねない。そうとはわかっていても、ますます強く引かれ合うコリンとビリー。彼らは果たして願いをかなえることができるのでしょうか・・・・ って、あれ。どこでおかしくなったんだ? んー、まあそういう話です(違)。

原作『インファナル・アフェア』はこの「スパイ対スパイ」という奇抜な発想と、練られた構成・重いテーマなどで熱心なファンを獲得。わたしは「Ⅰ」しか見てないんですけど、好評を受けて「Ⅱ」「Ⅲ」も作られました。ちなみに「Ⅱ」は「Ⅰ」の前日談、「Ⅲ」は後日談という構成(ややこしい)。まず足りない頭でもって原点とリメイクの違いについて考えてみました。

「正体ばれたら即投獄・もしくは処刑」というシビアな状況のため、両作品の主人公たちは全編通じて苦しみ、嘆き、もがき、あがきます。その有様は見ていて本当に気の毒。
ただ、本家の方には少しギリシャ悲劇っぽいというか、シェイクスピア的な趣があります。つまり、苛酷な運命に翻弄される自分に、浸っちゃってるというか、酔っちゃってるというか。そんでまた主演のトニー・レオンとアンディ・ラウが、そういうのが似合うカッコエエ男なんですわ。
それに対してリメイクの方は、二人とも明らかにお尻に火がついちゃってます。自分に酔ってる余裕などなく、始終目を血走らせ、泡を吹かんばかりのデーモンとディカプリオ。はっきり言って全然かっこよくありません。
ま、簡単に言うなれば(←最初からそうせいや)、そこに「美学」があるかないかの違いなんでないでしょうか。ロマンか、リアリズムか。その辺の好みは人それぞれだと思います。

わたくし今までスコセッシ作品は『タクシードライバー』『アビエイター』と見てまいりました。『ディパーテッド』を含め共通しているのは、主人公らがいっつも強迫観念にとりつかれているということ。眠れない、菌が怖い、正体バレちゃうかもしれない・・・ そんな不安をふりはらうべく、彼らは悪人狩りや飛行機事業や色恋に没頭します。しかしそれは決して問題を解決することにはなりません。そして彼らはさらに追い込まれていきます。で、実はスコセッシさんもかなり精神的に沈みやすい方なんだそうで。こんだけ名声を得ていると言うのに・・・・ 生きていくって大変ですね。
『ディパーテッド』では本当によく人が死にます(本家でもけっこう死んでるけど)。そして大抵ろくに苦しむこともなく、ある時などはほとんど気づきもせず、「バタッ」「サクッ」と非常にあっけなく往生していきます。たまにじわじわ死ぬ人もいますが、彼らも恐怖に怯えたりはせず、「まっ、しゃあねえか」という感じで潔く死を受け入れます。
こういう描写を見て思うのは、この作品における「死」というのは、処罰ではなく「救済」なんでないかな、ということ。苦しいのは死ぬことよりも、むしろ罪を背負ったまま生き続けること。この辺は本家にもあったテイストです。
まるで「あーあ、早く誰かぶっ殺してくれねーかなー」という監督の呟きが聞こえてくるようで、わたしは少々げんなりしたのでした。
生き残るためとはいえ、自分の正体を偽りつづけなければならないコリンとビリー。彼らに臨むのは処罰でしょうか? 救済でしょうか?

最後に。実はデイモンとディカプリオ、この前にも別の形で対決しております。1998年の第70回アカデミー賞で、それぞれの主演作が作品賞でノミネートされてたんです。結果はご存知の通り『タイタニック』の圧勝でした。しかしデイモンがこの時主演男優賞でノミネートされたのに対し、ディカプリオはスルーされてました。どっちの勝ちかといえば・・・引き分けですかね。ちなみに今年はディカプリオが他作品で候補にあがってるのに対し、デイモン氏はノー・ノミネートです。
2007020621354320070206213612アカデミー賞といえばスコセッシ作品は、これまで三回も候補にあがっていながら、一度も作品賞を受賞していないそうです。果たして今度は「4度目の正直」となりますや否や。

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Comments

あー!私これ観たいと思いつつまだ観てないのです。
プリオもデイモンもスコセッシもあんまし好きくないのですけど
『インファナルアフェア』とジャック・ニコルソンは好きだから。
でもSGAさんの感想読むと、イマイチだった・・・のかな?
やっぱ本家にはかないませんかね?

それはそうと、エラゴン観てきましたよ。
なかなか良かったです。感想はのちほど!!
それとアギトもコンプリートしました。
後半、アギトがいかついボディに変身したり
お気に入りのギルスにトゲトゲがいっぱい生えてきた時は案の定興奮しましたが
何より、木野さんが初期のライダーを激しく連想させる姿に変身した時がテンションMAXでした。

Posted by: kenko | February 07, 2007 12:08 PM

こんばんは
>ジャック・ニコルソンは好きだから。

プリオよりもデーモンよりも ニ コ ル ソ ン ですか(笑)
マニアックですね。他で印象的な仕事というと『バットマン』『マーズ・アタック!』ですが、彼っていっつも遊んでますよね。それが普通に演技になってるところがすごいのかも

>やっぱ本家にはかないませんかね?

うーん・・・ 確実に言えることは、「本家より下品」ということですね(笑)
他の本家ファンのレビュー見ますと概ね好評のようなので、やはりご自分で確かめられたほうがいいかと。kenkoさまのレビューも読みたいですし。ニコルソンも弾けてましたし。はずしたらスイマセン・・・

>それとアギトもコンプリートしました。

はや! 劇場版『プロジェクトG4』も燃えます。未見でしたらこちらもどうぞ。

>木野さん

迷惑振りまいたけど、最後は泣かせてくれましたね
名場面みたいのまとめた記事ありましたので、よかったらご覧ください
http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2006/02/post_836f.html

エラゴンレビューも楽しみにしてます。自分は『墨攻』が観たいと思いつつまだ行けてません。原作については近々書く予定です

Posted by: SGA屋伍一 | February 07, 2007 10:50 PM

ニコルソンってマニアック??(全く自覚症状がない)
『バットマン』も『マーズアタック!』もいいけんど
いちばん好きなジャックは『シャイニング』なんす。

アギトですが・・・コンプリートすなわち劇場版も観たってことでございますよ。
大人買いならぬ大人借りをして、夜な夜なライダーを観たおすっつーのも
これまたなかなかオツなオトナの醍醐味ってことでw
謎だらけアギト、私は一気観できたから良かったけれど
週イチでこんなんやられちゃあ堪りませんね。
かんじん要潤さん、最初はあまりの演技の拙さにビビりましたし
いつもアンノウンにボコられっぱなし、みたいな印象が強かったですけど
結果的にはおいしい役どころでしたね。
翔一くんや小沢さんとのミニコントもとても楽しかったです。
超シブい木野さんの退場は、ホンット残念無念で。。。
SGAさんのマイベストシーンにはどれも激しく同意!

『墨攻』原作、ぜひとも読んでみたいと思ってたとこでした。
レビュー楽しみにしてます。

『バイオメガ』は、いかがでしたか?
ライダーに似てなくもない・・・でしょ?(強引)
とは言え結構ドロドログチャグチャなのに、大丈夫かなSGAさん・・・と
ちょっぴり心配だったのでした。

Posted by: kenko | February 08, 2007 11:41 AM

こんばんわ。参上遅くなりまして大変申し訳ありません。
興味深く読ませていただきました。特に美学という言葉を使われているあたりは、「なるほどなあ・・」と納得した次第でございます。私はオリジナル未見ですが、アジアンムービーにはそういった美学だの哀愁だのをとても大事にするところがありますよね。なんとなくフランス映画のそれに似ています。
そういう微妙なテイストをハリウッドでそのままリメイクすることは不可能なわけで、どうしても大味感が出てしまうような気もします。
でも一応、個人的にはとても面白く観ることができる作品ではありました。多くの方に「オリジナルを観なさい」と口すっぱく言われつつ、まだ観れてない状況が歯がゆいです(苦笑)。

デイモンが過去に『リプリー』という作品でロケをしていたとき、よくレオ様に間違えられたそうです。たしかにあの2人は顔の種類が似ているんですよね・・。「レオに間違えられて、俺は嫌な気がしなかったよ♪」なんて言っていたデイモンですが、私はデイモンが激しく嫌いです。こんなエピソードを踏まえても、彼らは宿命・・・いや運命の糸で結ばれた関係だったのかもしれません。

刑事(デカ)プリオ・・・・
大変懐かしくて心がとても温かくなりました。
私はレオ様がCDMAONEのCMに出ていたおかげで、携帯をセルラーにし、そして名前が変わったauをいまだに使い続けている隠れレオ様ファンだったりします。

Posted by: 睦月 | February 09, 2007 01:50 AM

>kenkoさま
>ニコルソンってマニアック??

そりゃうら若き女性がレオかニコルソンかと聞かれたら、普通は(笑)

>『シャイニング』

映画は未見ですが(怖そうなんで・・・)原作は読みました。ただ世評高い映画版を見てキング氏は激怒したそうで、あとでわざわざ自分で作り直したりしてますね

>あぎと
>私は一気観できたから良かったけれど
週イチでこんなんやられちゃあ堪りませんね

ええ、そりゃあもう、毎週「ここで終るのかーっ」状態でした。特に木野さん登場のあたりはひどかった(笑)。しかしこの「次回へのヒキ」、連続モノでは大事な要素ですよね

>要くん

結局今じゃ一番の出世頭ですよね。ブレイクした人もあり、もう引退しちゃった人もあり・・・(物思いにふける)

>倍オメガ

確かにドロドログチャグチャですが、全体的に乾いたタッチなんでOKです。生身で核弾頭を打ち落とす造一くんはすごいですね・・・ このケレン味と広大なパースにアメコミ野郎の血が騒ぎました

Posted by: SGA屋伍一 | February 09, 2007 07:45 AM

>睦月さま
>参上遅くなりまして大変申し訳ありません

とんでもございません~  ご多忙なのにわざわざ拙宅に来てくださることだけでありがたい、というか、こちらこそ申し訳なきことでございます

>アジアンムービーにはそういった美学だの哀愁だのをとても大事にするところがありますよね

そうですね。一概には言えませんが舞台的というか、スクリーンの向うのお客さんの目を意識しているような印象を受けます
ただ時々舞台美術に走りすぎて「そこ、ワイヤー吊ってんだろ!」とツッコミたくなることもしばしば。『インファ』本家にはそういうのありませんでしたけど

>たしかにあの2人は顔の種類が似ているんですよね・・

よかった・・・・ オレだけじゃなかったんだ、そういう人。てっきり目が悪くなったのだとばかり(笑) レオくんの方がアクが強くなってきた分、デーモンに似てきたような気がします
睦月さまは「○レオ ×デーモン」ですか。自分はブ男の方をひいきしてしまいますので、デーモン氏の方が好きです。「ボーン」二部作も良かったし。レオさまも昔は「けっ」でしたが、『アビエイター』の全裸ヒッキーを見て、「兄ちゃん、がんばってるなあ」と感動し、今では認めております

Posted by: SGA屋伍一 | February 09, 2007 07:58 AM

ようやく観てきました。
あんまり期待していなかったせいか非常に楽しめました。
とは言えやはり本家の方が好きかな。
ラストもあっちの方が好みです。

SGAさんのおっしゃる通り、
特に刑事プリオの方のお尻が燃えさかっててなんだかおかしかったのですが、
久々に大画面で見る彼はなかなかに見応えがありました。

大好きなジャック・ニコルソンのやり過ぎくらいの変態っぷりも
ファンとしてはとても楽しく、死んで当然のワルなのに、最期は寂しかった。。。

Posted by: kenko | February 20, 2007 12:08 PM

>あんまり期待していなかったせいか非常に楽しめました

ホッ(笑) わたしもラストは本家のほうが良かったかな。ただ「真のラスト」である「Ⅲ」の結末はまだ見てないわけですが

>久々に大画面で見る彼はなかなかに見応えがありました

こんなことを言うとファンに怒られそうですが、どうも彼の顔、前より横に伸びたような気がしてなりません。ワイドスクリーン向けですね
それはともかくどんなえげつない役でも真摯に取り組む姿勢は評価してあげたいです

>ニコルソン

弾けてましたね・・・・ みんな悶々と悩んでるなか、彼だけはファンキーに人生を楽しんでいるように見えました
ニコルソンといえば彼が幼きデーモンに「マンガ読むだろ?」と「ウルヴァリン」を買い与えるシーンがありましたが、
「そこでお前がすすめるべきは  『 バ ッ ト マ ン 』 だろ!」
とどうでもいいことに熱くなったりしてました。バカですね

Posted by: SGA屋伍一 | February 20, 2007 09:29 PM

こんばんは☆コメントTBありがとうございました。
そうですね、ここでのレオナルド・ディカプリオ、ずっと怒って、コメカミに血管をたぎらせていて、あのままプチっと切れて死んでしまうのではないか、と想像してしまいました。
まあ、でも、彼、一生懸命ではあったと思います。

2、3となると、なかなかシリーズものって、必ずしも傑作ぞろいとは限りませんし、
見てガッカリした挙句に、1の素晴らしさを損なってしまうような気がして、
映画の続編ものって、ちょっとダメなんですよね、私。
なので、SGA屋伍一さんが、2、3はなんとなく敬遠してしまうのも分かる気がするなあ。
続編を見に行って、特に映画館なんかで、ガッカリしてしまうのって、本当、好きな映画であれば余計、いやなんですよね。

Posted by: とらねこ | March 17, 2007 05:37 PM

>とらねこさま

さっそくお返事ありがとうございます

>あのままプチっと切れて死んでしまうのではないか、と想像してしまいました。

そうですね。というか、いつの間にか涼やかな笑顔より青筋の似合う男になってしまっておりました。上にも書いてますけど、『アビエイター』でもなかなかいい青筋の立てっぷりでしたよ

>2、3となると、なかなかシリーズものって、必ずしも傑作ぞろいとは限りません

前に「続編は正編の80%の出来で成功」と聞いたことがあります。前作のクオリティを保つのは難しい、ということなんでしょうね。最近明らかにパワーダウンしてたものというと、『マスク2』なんかが思い浮かびます
あとちょっとニュアンスが違いますが、ホラーシリーズなんかでありがちな例。前作でやっとの思いで生き延びた人物が、続編の冒頭であっけなく殺されてしまう。わたしはアレが、非常にイヤです

Posted by: SGA屋伍一 | March 17, 2007 08:12 PM

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