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February 26, 2007

老人と陸 ロジャー・ドナルドソン 『世界最速のインディアン』 

20070226112442まずタイトルに物申す! いまは「インディアン」って言っちゃいけないんだぞ! 「ネイティブ・アメリカン」って言わなきゃいけないんだぞ! ・・・え? バイクの名前? じゃ、いいか(えー)。
実在したイージーライダーならぬジジイライダーを、名優アンソニー・ホプキンス主演でドラマ化。地方なんでこっちではやってくれないだろうと思っていたら、こっそりやってやがりました。油断なりません。

ニュージーランドに住む老人、バート・マンローはスピードに異常な執着をみせるサイコ・レーサー。最強の凶器「インデイアン」と、「火の玉ハンニバル」の異名を持ち、その傍若無人ぶりで近隣の人々から恐れられていた。すでに地元でやりたいことをやりつくした彼は、次なる犠牲者を求めてアメリカに渡る。
法の網を巧に潜り抜け、オカマや老婆を次々とその魔力でとりこにし、向かうところ敵なしのハンニバル。じゃなくてマンロー。時に司直の手が及びそうになることがあっても、必殺の「耳が遠いフリ」と「笑ってごまかし」で彼らを翻弄する。その野望を止めることができる者は、果たして存在するのか?

大体こんな話です(ウソつけ!)。「世界最速」というからどれほどのものかと思えば、かなりまったーりしたペースの映画でした。たしかにレースシーンもあります。でもそういうのは全体のいいとこ2割くらい。考えてみれば最初から最後まで走りっぱなしだったら、爺さん心臓が止まっちゃいますからね(笑)。老人にはやはりこれくらいのペースでやってあげるのが、人の優しさというもの。
で、代わりに何がメインになっているかというと、それは爺さんの旅。そしてその途中で出会う、様々な人々とのふれあいです。なんせこの爺さんが相当変わり者なんで、引き寄せられる人々もちょっと変ってる。でもそんな変わり者同士の交流が、なぜだか心をほっとさせます。期待してたのとちょっと違ったけど、これはこれでいいや、と思いました。

マンロー爺さんの何が感心させられるかといえば、それはやはりそのバイタリティ。60を越してもスピードへの熱意は一向に衰えることなく、家財をなげうって地球を半周するほどの旅に出てしまう。その旅は到底楽なものではなく、道中様々な苦労や障害もあるわけです。でもじいさんは「はっはっは」と軽く笑い飛ばして、微塵も「あきらめる」ということを考えません。そして改良してはあるものの、かれこれ40年前のバイクで当時最先端のマシンと張り合おうてんですから・・・・ これ、ハチロクがランエボと勝負するどころの問題じゃありませんよ? しかし事実は小説よりも奇なり。ためにためたスピードがクライマックスで一気に大放出される様は、まことに圧巻です。心臓の弱い方はどうぞお控えください。

映画を観て思ったのが、一体何がそんなに彼をスピードへと駆り立てるのか、ということ。時折語られる「身近な者の死」「残された時が少なくなっているということ」それらが動機・原動力ではないか、という気はします。ですが、こういうのは簡単に理屈で説明できるものではないかもしれません。強いて言うなら、ある登山家が言った有名な言葉・・・・「そこに山があるから登るんだ」 そのスピリットが一番近いようにわたしには感じられました。

冒頭でも述べましたが、主演はご存知レクター博士のアンソニー・ホプキンス。色々ネタにしちゃいましたけど、さすがは名優、某サイコキラーの影も形も見えませんでした。睦月さまのところの情報によりますと、アンソニー氏、「本当は人食いの役なんかやりたくない」んだそうで。京都太秦には「普段悪役をやっている人ほど根は善人」という諺があるそうですが、アンソニー氏もそのクチでしょうか。こりゃ全世界のホラーファンもがっくりだわ(笑)

20070226112532タイトルほどではありませんが、早くも公開縮小し始めてるようです。現にわたしの地元ではもう終っちゃったし(・・・・)。某評論家曰く。「見ないなんてバカ!」 彼女(?)にこう言われて観にいく人、どれほどいるんでしょう(笑)。まあ、わたしは見てもバカですけど。そしてこの映画も、「バイクバカ一代」を描いた作品だと思います。

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Comments

はっはっはっはっはっはっ
いつにもまして、爆笑させて頂きました。
キター!陸!老人と陸!いいなぁ!陸!!

『世界最速のインディアン』ってなにそのタイトル?
しかもインディアンなのにアンソニー・ホプキンス主演って意味分かんね!
・・・と、ロクに映画の内容を調べもせず勝手に不満タラタラだったのですが、
観て良かった。素晴らしい映画でした☆
『世界最速のネイティブ・アメリカン』じゃなくてよかったです。

バートじぃってば、お魚ボディのインディアンに乗っていなくてもいつ召されてもおかしくない状況だったので、人々との出会いに和みながらも常にハラハラドキドキでした。
でも人って案外簡単には召されないのですね。
近年稀に見る大ハッピーエンドもバートじいさんらしくて好印象でした☆

うちの周辺でもやはり公開縮小されつつあるみたい・・・。
こんな良い映画なのになー

Posted by: kenko | February 27, 2007 12:20 AM

さっそくありがとうございます

>いいなぁ!陸!!

いいっすよね、陸! だって海は溺れちゃうかもしれないし、空は落っこちるかもしれないし(←お前は一体バートさんから何を学んだのだ!)

>しかもインディアンなのにアンソニー・ホプキンス主演って意味分かんね!

あっしもてっきりネイティブのおっさんが「ワシ、世界一取る! そして頭の皮剥ぐ!」と、チキチキマシンを駆るバカ映画だと思ってましたよ。タイトルだけで映画を判断してはいけませんね(笑)

>でも人って案外簡単には召されないのですね。

まあレクター博士ですし、そう簡単には死なないでしょう
でもこれがフィクションだったら、バイクを降りた途端感動的な音楽とともに召されてしまったかもしれません

しみじみ良い映画でしたね。じいさんに負けてらんないな・・・

Posted by: SGA屋伍一 | February 27, 2007 08:09 AM

こんばんわ!
記事中でさいげなく私の名が入っていて、ビビリました(笑)。
ありがとうございます。

それにしても、いつものように大いに笑ってしまいましたよ、この記事!
最初の始まりから、最後のオチまでしっかりリズミカルに
サクサクと笑い、読ませていただき、ホントに楽しいひとときでした。

どうしたらこういう風に書けるのか教えてほしいくらいです。

あと、今回のイラスト。
どちらかといいえば、冒頭のオバケみたいな顔のスピード狂の方が
個人的には好みです。

それにしても・・・
すでに上映縮小とは・・・・ホントに観ないなんてバカ!

Posted by: 睦月 | March 01, 2007 07:07 PM

毎度お忙しいところ律儀にありがとうございます
そうそう、お名前の無断使用大変失礼しました

貴女にひと時の微笑みを与えられたようでうれしゅうございます

>どうしたらこういう風に書けるのか教えてほしいくらいです。

アタマ空っぽにして書いてます。だからこうなっちゃうのか(笑)
マジメな話、毎度書いていてボキャブラリーや表現の貧困さを痛感しておりますよ

>冒頭のオバケみたいな顔のスピード狂

相変わらず似てない似顔ですが、一応某博士をイメージしております
お好みに応じて「カモーン!! クラリーーース!!」とセリフをお足しください(笑)

Posted by: SGA屋伍一 | March 02, 2007 08:05 AM

SGAちゃん、こんにちは〜♪
>『老人と陸』
TBもらって、タイトル見た瞬間に思わず唸ってしまいそうになりましたよ。う〜ん・・・こ(小学生レベルなギャグ言っちゃった)
思えばヘミングウェイの『老人と海』も、自分の掘っ建て小屋で自分の死を予感するところから始まるんですよね。
自分の命を賭した最後の戦い、という点でも一緒だし、これって本当に『老人と陸』だったんだ・・・
と考えて、なるほど!と一人納得してしました。
なのに飛んで来て読んでみたら、爆笑してしまいましたよ。
読ませてくれて、ありがとう♪

ところで、居眠り運転こいたことあるって・・・本当、聞くだけで怖いんですけど。止めて下さいよ〜!それだけは本当に。
もうしないと言って下さい(本気と書いてマジと読む←古)

Posted by: とらねこ | September 29, 2007 12:18 PM

>とらねこさま

>自分の命を賭した最後の戦い、という点でも一緒だし、これって本当に『老人と陸』だったんだ・・・

そうそう。そういう深い意味をこめて・・・・ません(笑) 十秒くらいでパパッと思いついて適当につけたタイトルです
でもそう言われるとなんだか「実はそう考えてた」ような気がしてきたなー そうか! オラ、実はおりこうさんだったんだ!

>止めて下さいよ〜!それだけは本当に。

心配してくださってありがとうございます。ご安心ください。最近はわたしもすっかり安全ドライバーですから
そりゃ、若いころはいろいろ無茶もしましたけどね。クスリをきめながら公道を200キロでぶっとばしたりとか、敵対関係にあった族の本部に木刀片手に殴りこみかけたりとか、機動隊のたむろしてるところに火炎瓶ぶち投げたりとか・・・・(さて、どっからどこまでが本当でしょう!)

Posted by: SGA屋伍一 | September 29, 2007 09:29 PM

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