勝手にシロクロ 松本大洋 マイケル・アリアス 『鉄コン筋クリート』
松本大洋原作のコミックを、『アニマトリックス』などもてがけたマイケル・アリアスが映画化。毎度のこってすけどもうすぐ公開終わりそうなんで、興味のある方はお早めに。
近代化が進む都市部にあって、唯一取り残されたような区画・宝町。そこには昔懐かしい風景と品の無いアートが所狭しとひしめいている。主人公は宝町に住む孤児、クロとシロ。中学生か小学生ほどの年齢でありながら、数人のチンピラさえ叩きのめす凶暴性を持っている二人。「この町はオレの町だ」 そう豪語するクロは、町を我が物にしようとする「ヘビ」率いる暴力団と、激しく対立することになる。
恥ずかしながら、松本大洋のマンガは今まで『ZERO』くらいしか読んだことがありません。だってこの人の本って高いんだもん。ただ彼の原作である映画『ピンポン』は観ました。『ZERO』も劇場版『ピンポン』もとても深く心に残った作品だったので、この『鉄コン』も大いに期待して観にいきました。
子供は天使である、と言います。それは間違いではないと思います。しかし子供は無垢であるがゆえに、野獣の部分もまた持ち合わせています。主人公クロは、その「獣性」が著しく発達した少年。自分よりもはるかに大きな男を、笑いながら傷だらけでぶちのめすクロ。その姿は爽快でもあり恐ろしくもあり、痛々しくもあり。
そんなクロを辛うじて狂気の世界から守っているのが、相棒のような弟分のような少年シロ。お互い守り、守られながらなんとか生き抜いてきた二人。ですがその絆は、時代と大人たちの牙の前に、深刻な危機を迎えます。
なくてはならない片割れが目の前からいなくなってしまった時、彼らは果たしてどうなってしまうのでしょうか。
作品のもうひとつの主人公は、舞台である宝町。まるでおもちゃ箱をひっくりかえしたようなその風景は、子供にとっての理想郷にほかなりません。なんせ遊園地がど真ん中にありますから。
クロにとってこの町は文字通りの宝箱です。その宝を手放すということは、彼が「大人になる」ということを意味しています。クロはそれを激しく拒絶しますが、悲しいかな、彼のような少年は普通の家庭の子供より、いち早く大人になることを迫られるものです。かけがえのない宝か、唯一無二の相棒か。なんとも厳しい二者択一であります。
とまあ、例によって堅苦しいレビューになってしまいましたが、このバカらしさ、品の無さ、そしてアナーキズムは我々にたくさんの元気を与えてくれることでしょう。クロを演じる二宮和也、シロを演じる蒼井優の透明感のある声が、さらに元気を追加してくれます。
それにしても松本大洋氏の物語は、どうしていつもオトコがオトコを求める話であるのでしょうか。モーホーだから、とは思いたくありません。それはきっと彼もまた、未だにコドモだからなんでしょう。女性と恋を語るよりも、頼もしく気のおけない友達と遊ぶことの方が何倍も楽しく思えるから。そしてわたしは、できれば彼にずっとコドモでいてほしいと思います。
Comments
こんにちわ。
TB&コメントありがとうございました!
松本大洋ってリアルモーホーなんですか?・・・違いますよね(笑)。
ピンポンも然り本作も然りで、男の子同士の宿命的な絆みたいなものが強く描かれていますが、これって、女の子同士じゃこんな関係性は絶対にありえないからだと思います。
友情っていうとやっぱり男同士の方が想像しやすいっていうか・・・硬く揺ぎないものを感じるんですよね。
松本大洋は、こういう人間同士の絶妙な結びつきを描かせたら非常にウマイなあと思います。
あ・・・・。
今回はボケるの、忘れちゃいました(苦笑)。
Posted by: 睦月 | January 29, 2007 10:15 AM
『ZERO』って、松本大洋のマンガの中でも特にくら~いお話ですよね。
読んだ後ズーンって心に重くのしかかってくる。。。
鉄コンもどちらかと言うとそっち系だと思うんですけど
子供が主人公であるせいかかろうじてハッピーエンドである点が救いです。
>どうしていつもオトコがオトコを求める話であるのでしょうか
それもそうですね。
でもなぜかオトコとオンナの物語よりもよりピュアで
繊細な印象が残ります。
私も松本さんにはいつまでもコドモであって欲しいですわ☆
それとあのー、鉄コンとは全く関係のない話題でアレなのですが、
SGAさんのアドバイス通り、アギトと龍騎をホントに観てみました。
(あとクウガも。オダジョーがスキだから)
まだ途中までしか観ていませんが、正直、とっても、
おもしろかったです。特にアギトが。
「やっぱりか」と言われてしまいそうですが
ビーストじみたギルスに萌えました。むふふふふ。。。
Posted by: kenko | January 29, 2007 03:18 PM
>睦月さま
>松本大洋ってリアルモーホーなんですか?
たぶん違うと思います。そう信じたい(笑)
おそらく男×女だとなんかべたつくような感じがしてやりにくいんでしょうかね。そのシンプルな絵柄と同様、「カラッ」と乾いたような関係が好みなんじゃないでしょうか
最近は『下妻物語』や『NANA』など女の子の友情を描く作品もちらほらありますね。『下妻』のそれはお互い認め合いながら自分の道を行くという、かなりカッコイイものでありました。『NANA』は未見
>今回はボケるの、忘れちゃいました(苦笑)。
お構いなく(笑)。ウチはマジメに作品を論じ合うところですから(ツッコミ不要)
Posted by: SGA屋伍一 | January 29, 2007 10:10 PM
>kenkoさま
>ZERO
確かにおかわいそうな話でしたが、それゆえ印象深いマンガです
みんなが「五島さんすげー」と言ってる中、金さんが一人うつむいて「・・・かわいそうなひと」とつぶやく
そのシーンが特にじわじわっと来ました
>でもなぜかオトコとオンナの物語よりもよりピュアで
繊細な印象が残ります
そうですか。まあ『BANANA FISH』なんかもそんな感じですよね
でもオトコ同士の関係を描いた作品にも、ドロドロネチョネチョしちゃった作品もあると思います。そういうの、読みたくないですけど(笑)
>ライダー
面白かったですか。「あんしんあんしん」(笑)
『クウガ』は昔のテレビ番組としての『仮面ライダー』を、今風にやると・・・という作品だと思います。そして『アギト』『龍騎』と続くにつれ、どんどん従来の『ライダー』から逸脱していくという(笑)
ギルスがお気に入りですか。あれアマゾンに似てますもんね
あと初変身のシーンがどう見てもジョン・ウーでした
わたしもいまkenkoさまが薦めておられた『バイオメガ』読んでます
うーん、大迫力
Posted by: SGA屋伍一 | January 29, 2007 10:21 PM
こんにちは★こちらでは初めまして。
コメント&TB,ありがとうございました!
宝町の映像を見ているだけで、とても心が和んできました。
>女性と恋を語るよりも、頼もしく気のおけない友達と遊ぶことの方が何倍も楽しく思えるから。
いつも女性は蚊帳の外・・・という気がして、とっても寂しいです。
男同士でツルんでいるのって、とっても楽しそうで・・・
「私も入れて欲しいのに・・」と、仲間はずれにいつもされて、悲しい気分になります。
Posted by: とらねこ | February 10, 2007 11:45 AM
どうもさっそくお出でくださりありがとうございます
>いつも女性は蚊帳の外・・・という気がして、とっても寂しいです。
>男同士でツルんでいるのって、とっても楽しそうで・・・
まあ女性より男といるほうが楽しい、という男はガキかホモかですよ
どちらにしてもレディに寂しい思いさせちゃいけねェよな・・・・ フッ・・・・
あとご婦人に相手にされないので仕方なく野郎同士つるんでる、という例もあります(まるで他人事のように)
Posted by: SGA屋伍一 | February 10, 2007 08:57 PM