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December 12, 2006

ミス・チルドレン アルフォンソ・クアロン 『トゥモロー・ワールド』

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これも公開はおおむねあと三日くらいかな・・・・ そんなんばっかしや・・・・ 冬の大作ムービーの前にひっそりと公開された地味系SF映画です。

どういうわけか人類に子供が生まれなくなってしまった近未来。世界はますます殺伐とし、英国では暴動やテロが絶えない。主人公は元活動家でいまはサラリーマンのセオ。ある日彼はバリバリ活動中の別れた妻から、ひとつの依頼をされる。それは「キー」という少女を国外へ脱出させてほしいというものだった。やがてセオは、少女が人類がひさしくその腕に抱いていないもの・・・・「赤子」を、胎内にやどしていることを知る。

原題は『CHILDREN OF MEN』。原作者の名前を見たとき、「P・K・ディックの人気も根強いよなあ」と思いましたが、すいません。「P・D・ジェイムズ」でした。男っぽい名ですけど英国の女流作家です。大変重厚で文学性の高いミステリーを書かれるとか。『このミステリーがすごい』にランクされたタイトルを見ますと『策謀と欲望』とか『原罪』とかそんな感じですからね・・・・ 固そうです
わたくし彼女の作品はひとつも読んでないので、そのカラーがどれほど反映されてるのかはわかりません。しかし、わかりやすくスカッとするいつものハリウッドのものとは確かに違う感触でした。

宣伝のをコピーを聞くと、マッチョなヒーローが「人類の未来はオレが守る!」とばかりにマシンガンを乱射す
る・・・・そんな映画のように思われます。しかしセオは立ち向かうことよりも逃げ延びることが目的なので、発砲は必要最小限。またこの瀬尾さんというかた、滅多に感情を言い表しません。もっとも悲しかろうという場面でも、ただ無言でうなるのみ。「状況と表情から察してくれ」と言わんばかりです。
そんな主人公とあいまって、作品全体もそっけないと言うか辛気臭いというか。
SFといっても美麗なCGアートがあるわけでもなく、造語があってもていねいに説明してくれない。人が死ぬシーンもすごく淡々としています。そしてセオが目的を遂げたとしても、人類が救われるという保証はどこにもない・・・・
そういった「突き放し具合」を「奥が深い」「リアリズム」と見るべきか、「不親切」「暗い」ととるべきか・・・・ そのあたりがこの映画を評価する分かれ目になりそうです。わたしは個性的なものが好きなんで面白く見られましたが

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「英国人の原作」「ネガティブな未来」「オヤジと少女」というあたりは、春にやっていた『V・フォー・ベンデッタ』とよく似ています。
あと意味もなく小動物の出番が頻繁にあったり、未来のはずなのに70年代のサイケなミュージックがずっと流れていました。「絶望の中に一縷の希望を・・・」そんな作品の好きなかたにおすすめします

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Comments

こんにちは!お先にTB失礼しまっす!

もう一度観たいと思いつつまだ行けてない。。。

私も原作は読んでいませんが、読まれた方によると
映画とはなんか全然違うらしいです。
どこがどう違うのかは・・・すいません、失念致しました。

瀬尾さんの淡々具合がこれまた良くって~
突き放されて身悶えつつも、ラスト近くでは何度も涙しました。

Posted by: kenko | December 13, 2006 at 03:13 PM

お先にいただきありがとうございます

原作とは全然ちがうですか(笑) 前作『ハリポ3』は普通に映画化したようですがねえ(ただこちらは矛盾・ミスが多いとか)

わたしが「ぐっ」ときたのは瀬尾のサイケな友人が奥さんに別れを告げるところ。Kenkoさんがおっしゃってた「赤ん坊を抱いていたら泣けてきた」のところも泣けてきました

Posted by: SGA屋伍一 | December 13, 2006 at 10:45 PM

こんにちは!いつもありがとうございます!
TBいった?かな??
SFっぽくなし、アクションでもないし、子供が生まれない理由も、イマイチ納得させようと言う気がない感じ。
でも、十分伝わりました。
最後も、あれでよかったと思います。
またよろしくお願いしますね!

Posted by: 猫姫少佐現品限り | March 29, 2007 at 03:23 PM

おはようございます。最近ライブドア系のTBはすぐ反映されないようになってるみたいで・・・・ 確認が遅くなってすいません

>最後も、あれでよかったと思います。

そうですね。ただ主人公にはもうちょっといい目をみてほしかったなあ、とも思いました。本人は満足してると思いますが

Posted by: SGA屋伍一 | March 30, 2007 at 07:35 AM

観ますた。
く、クラカッタ…
申し訳ないけど、「劇場で」「1800円払って」見てたら暴動起こしてたと思います。
最後の方の銃撃戦(というかこういうとこだけハリウッドらしくやたら撃ちまくる)の方は流石にもう早回ししましたね…
きっと原作はこんなんとは全然違ってとてもいいものなんじゃないか、という確信を余計に深めてしまったのでありました。尤も、ブログにも書きましたが私はSFってのが好きじゃないのでP.D.ジェイムズ(怒ってへんかなこんな映画で)作品で唯一読んでないのがこの『人類の子供たち』なんですがね。
P.D.ジェイムズらしくやっぱり重厚なんであろう原作を無理矢理忠実にあの時間に詰め込んだのでしょう、背景の説明が最低限になっており、「子供が生まれない」ことと「不法移民に厳しい」ことと「治安が悪い」ことの関係が最後まで全く理解できなかったのも、途中でやんなっちゃった原因でしょうなあ。
まあ、日本に比べれば、町を歩いていても半分近くは移民であろうロンドンであそこまで厳しくなってるっていうのは、ショックを受ける人にとってはショックで、それなりに効果はあるんでしょうけど。
ちなみに、映画では最初しか出てきませんが、確かセオのいとこの偉い人って、原作ではもっと重要人物のはず。
(それにしても「トゥモロー・ワールド」っていうの、ただ単に邦題であって、原題はちゃんとChildren of Menなんですねェ)
まあCGやりゃあ売れるってわけでもないのは自明ですが、問題はこの映画、製作費をかけたっていうのを売りにしちゃってたんですよね。それでこの内容はどうかと…CGに関しちゃ別に好きでもないからいいけど。
セオさんはいいんだけど、ジュリアン(偶然にも演じてる女優さんと同じ名前…っつーかジュリアン・ムーアにしては珍しく硬派な役)は大物女優な割にあっさり死ぬし、ミリアムって女はうざいだけだし。ああ、原作にやっぱり期待してしまう(読まんけど)。
ラストは多分、重厚かつ暗い作風の原作通りなんでしょうね。
最後の方、折角先進国の人口減少がヤバい、という時代に映画化したにも拘らず、結局赤ん坊を押し立てれば無問題という表現に落ち着いてしまったあたり、そもそもこの原作が書かれたのが所謂「少子化問題」が日本で騒がれ始めるよりはるかに前だったこととか、イギリスやフランスは現在では対策が功を奏して人口が増加に転じていることなど、大事な点はすっぽり外しちゃっての単なるブーム便乗と言われても仕方ないかな…今の時代にこのテーマの作品を映画化するなら、何か現状を踏まえたメッセージ性なんかも盛り込んで、映画にする意味を持った映画にしてほしかった感あり。(ひたすら暗いのもいかにもキュアロンだなー)
セオ(クライブ・オーウェン)は、「キング・アーサー」ですね。相方がDVD買ってて偶々昨日も見てたんですが、常に眉間にシワで、相方曰く「イギリス版ニコラス・ケイジみたい」だそーです。確かに暗い役多いな~。ついでにちょっとシェフチェンコ(ウクライナ代表、チェルシーFW)に似てます。

Posted by: 高野正宗 | April 22, 2007 at 06:51 PM

おばんです。P.D.ジェイムズに思い入れの深い高野さんには色々ご不満な点もあったようですが、わたしにはけっこう印象深い映画でした
たぶん小子化問題よりも、テロが横行してる現在の殺伐としたご時世を描きたかったのだと思います
あと「終末モノ」というと「滅亡まであと○日!」という非常に切羽詰ったものがほとんどですが、こういう真綿でじわじわと首を絞めるような「終末」もあるんだなーと。この辺は原作の功績でしょうかね
ハリウッドにありがちな強引な予定調和に逃げなかったところも高ポイントでした。暗いけど

クライブ。オーウェンはハードアメコミ映画『シン・シティ』のワンパートでも主役をはってました。が、この映画とっても趣味が悪いのでおすすめできません(笑)。フロドの中の人も人肉むしゃむしゃ食う役で出てました

Posted by: SGA屋伍一 | April 22, 2007 at 09:29 PM

こんばんは、SGAさん♪
私は、この映画がとても好きでした。色々な事を、原作そのままにせず、全て改変してしまっているんです。だから、比べる必要はないですね。
SGAさんも、結構読書家なんですね。本の好きな方がどうやら多いのかな、って思います。

この原作は、前半部分なんて特に、映画よりずっと暗かったですよ。
私はそういうの全然平気なんで、難なく読めましたけど。

ところで、ぶちネコの顔が、パタリロみたいでかわいいですね~。
ネコとパンダは、お互いにトンカチを持っていますけど、あれは、威嚇し合っているんでしょうか?^^;
今度、ネコがビックリした顔をUPにして書いてください♪リクエストです。

Posted by: とらねこ | August 01, 2007 at 12:19 AM

とらねこさま。こんばんは

原作が違った形で映画化されると、やっぱファンとしてはいい気はしないでしょうね。ただわたしはいわゆる「映画化作品」を、「この人(監督)はそういう風に解釈したのね」という気持ちで鑑賞しております。そうして観てみると、自分との解釈のズレなんかがわかって面白かったりするのですよ。
映画『トゥモロー・ワールド』は、公開時期も公開期間もあまり恵まれた扱いではなかったと記憶しています(一応全国でやってましたが)。内容も暗いし、役者も地味。それでもたくさんの熱心な支持があるところをみると、それだけの「力」があった作品だったんでしょうね。いずれまた見返してみようと思いました

>あれは、威嚇し合っているんでしょうか?^^;

パンダのキャラクターというのはたくさんあるもんですから、差別化&インパクトをもたせるためにトンカチを持たせました。で、相棒がてぶらだとさびしいので、ニャンコにはノコギリを持たせてみました。億が一にも商品化されることがあれば、「過激だ」ということでPTAから抗議がされるかもしれません(笑)
リクエストもありがとうございます。前向きに検討してみます・・・

Posted by: SGA屋伍一 | August 01, 2007 at 08:55 PM

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