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December 09, 2006

山のあなたの奥深く パク・クァンヒョン 『トンマッコルへようこそ』 

20061209190941ぼやぼやしてる間に公開大体終わっちまってる・・・ ボクのバカバカ。2006年も終盤に来て、とりわけすんばらしい作品に出会うことが出来ました。韓国発『トンマッコルへようこそ』です。

時代は朝鮮戦争まっさかり。北朝鮮から二人、韓国から三人、そして米軍から一人の兵士が、それぞれ事情があって境界線近くの山奥にある「トンマッコル」という村に迷い込んでしまう。そこの住民は戦争が起きていることはおろか、銃の存在さえも知らなかった。はじめはいがみ合っていた両陣営の兵士たちだったが、村民の「お気楽極楽」なペースに次第に調子を狂わされて行き、しまいには嬉々として農作業を手伝うようになる。しかしそのとき、トンマッコルにはゆっくりと危機が近づいていたのだった。

まず「いかにもバカ映画でござい」といった感じのポスターにだまされます。アジア系のコメディって波長が合わないことが多いんですよ(チャウ・シンチー除く)。ほんで敬遠してたんですけど、あちこちで評判がいいのを目にして(略)。ま、いつものパターンです。
映画が始まって10分も経たぬうちに、激しい血しぶきを伴う盛大な銃撃戦が展開されます。予想していたものとははるかに異なる光景に不安を覚えますが、物語が進んでいくうちにだんだんバカ映画らしくなっていきます。そしてゲラゲラ笑っているうちに、色々あって、最後は嗚咽と鼻水で呼吸困難になるという・・・ なんとも摩訶不思議な作品でした。これほど「泣ける」作品も珍しいのに、あえてその点を全面に出さないあたりに、宣伝屋さんの意地が見えます(笑)

監督は「宮崎駿に影響を受けた」と語っております。久石譲氏が音楽を依頼しているあたりに、その傾倒ぶりがうかがえます。でも、わたしはどちらかというと宮崎氏より高畑勲氏の方に近い空気を感じました。
宮崎さんって、社会的なテーマを扱っても醜い・厳しい現実はオブラートに包んではっきり見せない人です。それに対し高畑さんは(そして監督がもうひとり「影響を受けた」と言っている今村昌平氏も)現実を「これでもか」と鼻先につきつける人。
猪とか、幻想的な森の風景、一昔前の飛行機・・・こういったガジェットは確かに宮崎風です。しかし作品の根底にある流れはむしろ高畑風。現実をきちんと見ながら、でも夢も見させてくれる。そんな両御大の作風を融合させたような姿勢が、『トンマッコル』のスバラシイところであります。

昨年から今年かけて、幾つかの戦争映画が上映されております。わたしなぞも『男たちの大和』で鼻水をダラダラと流しましたが、どこかに物足りなさというか、ひっかかりを覚えていたのも確か。それが『トンマッコル』を見ていてわかりました。日本の戦争映画ってどうしてもマジメになりがち、というか、マジメにやらざるをえないのでしょう。しかし世の中にはバカの形を取ることではっきり伝わることもあります。では『トンマッコル』が伝えている真理とは? それは「戦争は人々からバカ笑いを奪い去ってしまうからこそ、悪なのだ」ということです。
わたくしこれまで「南北分断もの」は『シュリ』『JSA』『シルミド』と見て参りました。どれも見ごたえありましたが、このバカさと切なさが表裏一体となったスタイルゆえに、『トンマッコル』はそれらよりも強く印象に残る作品となりました。

劇場を出ると立て看板に映画の感想がびっしりと貼られておりました。「期待してなかったけど面白かった」「コメディだと思ってたけど感動した」という意見が多かったです。その「けど」ってなんだよ! おれもそうだったケド!!
20061209191123というわけで『トンマッコルへようこそ』、首都圏ではあらかた公開終わっちゃいましたが、まだ細々とやっているところもあるようだし、地方の劇場にも順次回っていくようです。もし見逃された方はDVDが発売されるまで、このタイトルを忘れずにいてください。


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Comments

こんばんは!いつもありがとうございます!
この映画は、戦争反対、仲良くしようyo、あたりまえ。
もっと、何か、人間本来のすばらしさを描いた、
そんなスケールの大きさを感じました。
期待以上に、良い映画でした。

Posted by: 猫姫少佐現品限り | December 11, 2006 at 12:59 AM

こちらこそコメントありがとうございました

上にも書きましたけど、こういうテーマを扱うと大上段に構えたり、ひたすらしかめッ面になってしまうものが多い中で、お笑いを交えながら、自然体でさらっと語っているところがとても良かったです

過去が舞台の作品ですが、こんな現代だからこそ必要なお話だと思いました

Posted by: SGA屋伍一 | December 11, 2006 at 08:33 PM

毎度出遅れます。

監督のジブリ作品への入れ込みようは、もうオマージュというより、自分の世界観の一部になってる感じですね。
村映像ののどやかさにかけては、ホビット村に並ぶと思いました。
(イノシシ退治はスウィングガールズ混ざってた気がする)


はちあわせにらめっこの後で、最初に和解を申し出る道理のわかった人は、北側の兵士でした。
そのあたりから韓国人の複雑な心情が伝わってきて、なんかやるせなかったですね。

朝鮮半島の人々にとって分断状態は大きな災厄に違いありませんが、映画などの創作物に絶好の素材を提供し続けてきたのも、また事実。

南北分断ものの韓国映画は数々ありますが、今回はむかし視た『SPY リー・チョルジン 北朝鮮から来た男』というB級映画を思い出しました。
むちゃくちゃデキの悪い北の工作員が韓国に潜入するコメディーなんだけど、これがまたラストは非常に重暗悲しいんですわ…。

Posted by: 秦太 | December 14, 2006 at 01:51 AM

>ジブリ作品への入れ込みよう

上に書き忘れましたが、農業や素朴なジジババを礼賛している点も似ていますね

>朝鮮半島の人々にとって分断状態は大きな災厄に違いありませんが、映画などの創作物に絶好の素材を提供し続けてきたのも、また事実。

たしかに『シュリ』なんか「お国の大事をこんなお洒落アクション活劇にしちゃっていーのかなー」と思いましたが、これは自国民が作っているからこそ許されるようなもんですよね
とはいえ北側の人は「けしからーん!!」と感じるでしょう
>最初に和解を申し出る道理のわかった人は、北側の兵士でした。
このあたりとか、我々から見ればなかなか公平に作ってあると思うんですけど

>『SPY リー・チョルジン 北朝鮮から来た男』というB級映画

さすがにそれは知らない(笑)。秦太さまもブーム到来以前によく見てましたね・・・・ おみそれしました

Posted by: SGA屋伍一 | December 14, 2006 at 07:56 AM

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