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November 19, 2006

硫黄島からの写真 クリント・イーストウッド 『父親たちの星条旗』

20061119190522太平洋戦争を日米の双方向からステレオ形式で描く「硫黄島二部作」の第一部。アクション俳優から名監督へと華麗な転身を遂げたクリント・イーストウッドの最新作です。

「時として、一枚の写真が大きな力を持つことがある」
勝敗もおおよそ決した太平洋戦争末期。日米両軍は洋上に浮かぶ重要拠点・硫黄島にて戦火を交える。お気楽ムードで上陸した米軍の兵士たちがそこで見たものは、姿の見えぬ敵に次々と蜂の巣にされる友軍の姿だった。
それでもなんとか戦いに一段落がついたある時、衛生兵「ドク」ら6人は、景気付けに島のてっぺんにたかだかと星条旗を掲げる。この様子を写した写真が本国で大きな話題を呼び、彼らは至急アメリカに呼び戻されることになったのだが・・・・

この映画のテーマは「英雄」ですね。この言葉に男は弱い。なかでもアメリカのボーイたちには、効果抜群の殺し文句だと思われます。
恐らく兵士たちの多くは西部劇の保安官なんかに自分を重ねて、「無法者たちから世界を守る」くらいの気持ちで戦地へと向かったのだと思います。この映画のメインとなる若者たちはみないいヤツです。朗らかで仲間思いで、純粋で正直。だからこそ彼らは戦場へ行き、それゆえに深く傷つくことになります。現実は当時の映画ほどかっこよくはなく、ひたすらむごく滑稽なものでしかない。混乱した戦場で仲間から撃たれる兵士たちがそのいい例です。
主人公たちを英雄としたのはその戦果ではなく、「ただ旗を掲げた」という単純な行為でした。別に困難を乗り越えたわけでも、彼らでなければならなかったというわけでもない。しかし大衆は勝手に想像を広げ、国は彼らを資金繰りの材料にします。それまでの地獄からはおおよそ思いも付かない歓待をうけながら、彼らはまた別の苦しみを経験します。(オレたちは英雄でもなんでもないのに) ・・・その自覚のために。

アメリカにとってはいわば「正義の戦い」とされている太平洋戦争。その実態を、イーストウッドは極めて真摯に忠実にえぐりだそうと努めています。むしろ日本に遠慮しているくらい。自信も生粋のアメリカ人であるのに、醜い部分からも目をそらさない東木さんの意気や良し。そうした姿勢が本作品を太平洋戦争を学ぶための優れた教材としています。
同時に彼はそこで戦った父たちを愛情をこめて清々しく描きます。そう、みんないいヤツなのに、どうしてみんなあんなにひどい目に遭わねばならないのでしょう? その答えは、映画の中ではっきりと提示されています。

難点を幾つか。時系列があっちに行ったりこっちに行ったりするので、途中どの出来事がどの前(後)に起きたのかわからなくなります。も少しわかり易い構成でも、問題なかったと思いますが。またメインのキャストがみんな有名ではなく、しかもそろって同じ格好をしているので、誰が誰なのかわからなくなります。ネイティブ・アメリカンの人だけはさすがにいつでも見分けが付きましたけど。
あとせっかく「日米双方向から」とうたってるんですから、もう少し日本側の様子も写して、第二部にシンクロするようなシーンが欲しかったですねえ。今回日本人は顔すらまともに映ってませんでした。

20061119190634その穴倉でもぞもぞやってた謎のヤーパンたちは何を思い、何を考えていたのか。それは年末に続いて公開される第二部『硫黄島からの手紙』で明らかにされます。第一部よりさらに内容的に辛い映画になりそうですが、とりあえず観にいく予定です。


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Comments

真っ当なレビューについては、sga様がお書きの内容で尽くされていると思いますので、私は不謹慎な脱線感想をおひとつ。

硫黄島といえば、世間一般には「激戦地の島」でしょうが、私らの間じゃ何をおいても「イオウマメクワガタの島」なんですよ。

イオウマメクワガタは、1993年に発見された、日本で一番新しい(そしてたぶん最後の)新種クワガタムシです。
日本国内に未知のクワガタが残っていたことに、当時昆虫関係者は仰天したものです。

またイオウマメは、日本一採集困難なクワガタの一種でもあります。
なにしろ現在の硫黄島は全体が自衛隊の基地なので、島に上陸すること自体が一般人には不可能。
このクワガタを採るには、
 (1)偉い学者になって学術調査を許される(難度A リスクD)
 (2)戦没者慰霊祭や議員の視察団にまぎれこむ(難度C リスクA)
 (3)自衛隊に入隊して硫黄島配属を志願する(難度B リスクB)
 (4)密航する(難度A リスクS)
  くらいしか手段がないのです。
まあ、そんな島だからこそ最近になって新種のクワガタが見つかったりするわけです。。
もともと小さな火山島なので、わずかな樹林地でひそやかに生き抜いてきたんでしょう。

そんなイオウマメの島をですよ、映画の日本軍ときたら一面塹壕だらけにしよるやないですか!
そこにアメリカさんは艦砲射撃バッコンバッコンですよ!
もうね、上映中はワタシ、気が気ではなかったですよ。
迫撃砲がバボーンと表土を粉砕するたび「あっちゃ~」ですよ!
火炎放射器がボボーと植生焼き尽くすたび「あ~~ぁ」ですよ!
私に断りもなく、あんたら何しよるんやと、
イオウマメに何かあったらどうしてくれるんやと。

さいわいイオウマメクワガタは現存していますが、太平洋戦争当時の攪乱は、太古から続くこのクワガタの歴史のなかでも最大級の災厄であったはず。
戦争はしばしば最悪の環境破壊をともないます。
今なら世界遺産になってもおかしくない小さな海洋島で、あれだけの狼藉を繰り広げたこと、まことに愚かしく悲しく思いました。

Posted by: 秦太 | November 27, 2006 at 01:12 AM

いやあ、「まっとう」と言われると気恥ずかしいですな・・・
秦太さまが前に教えてくださいましたが、「硫黄島」ってたしか九州にもあるんですよね。クジャクがわしゃわしゃ繁殖してるという
こっちの「硫黄島」は小笠原諸島。林子平が調査してたあたりじゃあーりませんか
あの島に生き物なんていたんですね・・・ なんと言うか火口から毒ガスがもうもうと吹き出ているようなイメージがあったもんで。てっきりほぼ「死の島」なんではないかと

で>イオウマメクワガタ
画像探してみましたが
http://homepage1.nifty.com/pame-loux/Genus%20Figulus2.htm
小さい上にあんまり見栄えしませんね・・・
いや、しかし貴重な種であることには間違いないんだから、研究なり保護なりしなきゃいけないのに自衛隊は融通が利かないようで
4つの選択肢のうち、秦太さまならAも不可能ではないと思いますが、ここはひとつDに挑戦していただきたい(無責任)

マメクワガタが生き残ったのはよかったですけれど、戦争は人間だけじゃなく環境にも多大な被害を及ぼすわけで(核実験なんかそれはもう・・・)。月並みですが世界平和を心から願う次第です

Posted by: SGA屋伍一 | November 27, 2006 at 09:57 PM

SGA様、ご挨拶が遅れましたが明けましておめでとうございます。
ずっとファンだったSGAさんにかまって頂き
とっても楽しい2006年でした!
2007年も引き続きどうぞよろしくお願いします☆

確かにお話があっち行ったりこっち行ったりするし
若い兵士たちのお顔の見分けがつかなくて
混乱してしまう箇所もいっぱいありましたが
東木さんに敬意を表さずにはいられない硫黄島二部作でした。

Posted by: kenko | January 07, 2007 at 03:40 PM

こんばんはー 今年もひとつごひいきのほど

>ずっとファンだったSGAさんにかまって頂き
て、てれるでゴンス。サービスとわかっていても

>東木さん
何か物足りない・・・と思った理由のひとつは、イーストウッド監督作品なのにイーストウッドが出てないこともあったりして

とりあえず明日『硫黄島』を見に行く予定
『武士の一分』『カジノロワイヤル』もレビュー予定
『パプリカ』『鉄コン』も鑑賞予定
・・・ということで、少々頻繁におじゃまするかもしれません。よろしく

Posted by: SGA屋伍一 | January 07, 2007 at 09:24 PM

うわー,3年前の記事なんですね~!
2006年の11月と言えば
わたしはまだブログも始めてなかったし
(ついでに言えば家にインターネット引いてなかった。PC歴も始まったばかりでした)
このイーストウッドの2部作も実は劇場では観てません。

「父親たち~」の方はつい最近DVDでやっと観たばかり。
そうそ,これ,時系列があっちこっち行ってわかりにくいんですよね。
そして確かに,あんまり知名度の高くない俳優さんが
同じ軍服姿なんで誰が誰だか・・・
でもジェイミー・ベルやバリー・ペッパーって前から好きな俳優さんだったので
なんとか区別はつきました。
イーストウッドが描きたかったのは本当はこっちの物語だったんでしょうが
「ついで」にその気になって撮った「硫黄島~」の方が有名になってしまいましたよね。

Posted by: なな | December 02, 2009 at 09:07 PM

>ななさま

お返しありがとうございますhappy01

そうか・・・ 気がつけば三年前でしたか・・・
このころは映画関連ではわりと一匹狼をきどっていたんですが(笑)、ありがたいことにkenkoさんがぼちぼちコメントをくださるようになって、徐々に他の映画ブロガーさんとも交流するようになっていきました。私生活面ではまったくといっていいほど変わりなし・・・
 あ、車は変わったかな

で、この映画、二・三回見ないとすべて把握できないかもしれませんね。イギーの最後なんかはあえて謎を残すような感じで描かれていたし
ただネイティブ・アメリカンの彼だけはいつでもはっきりわかりました(笑) 彼が歓迎会でベロベロ泣いてたのも印象深いシーンのひとつです

正直、見た直後は「イマイチかなー」なんて思っていたのですが、三年経ったいまもそれなりに覚えているシーンがいろいろあります。それってやっぱり「いい映画だった」ってことですよね

Posted by: SGA屋伍一 | December 03, 2009 at 07:21 AM

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