死体・オブ・エンジェル ブライアン・デ・パルマ 『ブラック・ダリア』
ジェイムズ・エルロイの暗黒小説を鬼才ブライアン・デ・パルマが完全映画化。果たしてその成果は?
あらすじですがこないだ紹介した原作↓
http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2006/10/la_1f6c.html
と大体同じです。違うのは2時間で終らせるために後半ガンガン早回しになってしまうこと。できればあと三十分は欲しかったかなー。『LAコンフィデンシャル』なんかこれより長い原作を上手にまとめてましたけどね。
で、久々にストーリーを賞味してわかったのは、記憶にある以上に変態的な話だったということ。なんせ惨殺死体に萌えてしまったり、欲情してしまったりする話なもんで。もしエルロイがダリアさんに母親を重ね合わせているとしたら、なんか相当やばいと思います。
むごたらしいエリザベス・ショートの亡骸に面したことで、徐々に精神に余裕がなくなっていくブライチャート。最初は節度ある紳士だったのに、下半身にも暴力にも無節操になっていきます。ロバート・K・レスラーの『FBI 心理分析官』でしたか。あれの中に「暗闇の中を覗き込んでいるときには、向うも我々を覗き込んでいるということを忘れてはならない」という一文がありました。あまりに深い精神の暗闇と接してしまうと、警察官といえどもその毒気にあてられて参ってしまったり、同化してしまったりする。おそがい話ですね。
で、監督のデ・パルマ。この人がまた変態的な方でして、そういう意味ではこの映画にはとてもふさわしい方でした。どう変態かと申しますと、この人は根っからのサド気質なんじゃないかと。作中人物をいろいろひどい目にあわせて「あひゃひゃ」と笑ってるような、そんな話が多いですね。そんでこのいじめ方がまたねちっこい。ブライチャート=エルロイ、エリザベス=その母みたいなことを先回書きましたが、デ・パルマにとっては二人とも他人でしかないので、いじめかたも情け容赦ありません。そんな作中人物に対しての距離の違いが観ていて面白かったです。
デ・パルマ氏は凝りに凝ったカメラワークでも定評のある方です。今回も幾つかやってくれました。たとえば映画の中で映画を上映してたりとか(ただその「映画」の内容があまりに痛々しい)。同じ場面を違う角度から二度写して、最初の時に隠されていた事実を暴き出したりとか。他にも幾つかありますんで、興味のある&湧いた方は探してみてください
俳優さんで言うと悪い意味で目立ってたのが、エリザベスにそっくりな悪女マデリンを演じたヒラリー・スワンク。ここまで女らしい格好が似合わないとは・・・ これからはボーイッシュ路線一筋でいったほうがいいんではないでしょうか。
ま、題材が題材だけにあまりスカッとする話ではありません。それでも「観てみたい」と思った方(いるかなあ)はどうぞ。現在まだ辛うじて公開中です。
Comments
SGAさん、TBとコメントありがとうございました☆
こちらからも送ったのですが、やっぱり反映されないみたいです。。
同じココログ同志なのになぜだー
死体・オブ・エンジェル・・・うふふ♪
SGAさんのそんなタイトルのセンス大好きです~
こんなこと書くと誤解を招いてしまいそうですが、
私も”惨殺死体に萌えたかった”のです。
あまりに深い精神の闇を覗き込んでしまった者の気持ちを
味わいたかったというか・・・
変態的なデパルマ監督なら(ホントはよく知らないんですけど、そんなイメージw)、
その点では期待できそう!と思っていたのですが、
理解しにくいストーリー展開に気をとられてしまったせいか
ちょっと萌え損ねましたw
Posted by: kenko | November 15, 2006 03:35 PM
>やっぱり反映されないみたいです。。
・・・・す、すいません。一体どうなってるのだろう、ココログは・・・
とりあえずそちらのリンク先貼らせていただきます
http://kenko-note.cocolog-nifty.com/blog/2006/10/post_aaa6.html
どうも申し訳ございません
>死体・オブ・エンジェル
なんせ三日寝ないで考えましたから
>私も”惨殺死体に萌えたかった”のです。
なかなか怖いことをおっしゃられますな・・・
昨年の『コープス・ブライド』も死体萌えというかゾンビ萌えの作品でしたけど、あれはまだなんか理解できました。まだ原型をとどめていたので
わたしはむしろすでにフィルムの中に映し出されるエリザベスの方に萌えました。ただこれも「萌え」よりは「同情」に近い感情のような気がします
>変態的なデパルマ
実はそんなにわたしもたくさん見てるわけじゃないんですけど(汗)、心理的サドのほかにも「のぞき大好き!」なあたりもやばいですね。映画内でやる分には問題ありませんけど
Posted by: SGA屋伍一 | November 15, 2006 10:39 PM