罪とバッテン ブレット・ラトナー 『X-MEN ファイナル・ディシジョン』
あらかた公開終わってしまいまして、今さらという気もしますが、劇場版最新作『ファイナル・ディシジョン』をレビューいたします。ちなみに原題は『LAST STAND(最後の対決)』といいます。
先のミッションでかけがえのない仲間を失い、その痛手もいえないX-MENに、次なる試練が降りかかる。合衆国政府はミュータントの特殊能力を消滅させる新薬「キュア」を開発。これの投与を強制させようとする動きが議会で出始める。野に放たれたマグニートーはこれに激怒。政府に反感を持つミュータントたちを集め、大々的な反攻を計画する。一方悲しみにくれていたX-MENのリーダー・サイクロップスは、死んだはずの妻・ジーン・グレイの声を度々耳にする。その声に誘われるように、ジーンを失った地へ赴いたサイクは、そこで最愛の妻と再会。だがジーンはもはや以前の彼女ではなかった・・・
かすかな希望を予感させる前作ラストでしたが、その希望は瞬時にして絶望へと変わります。こんなことなら復活なんかしなきゃよかったのに~ まあ、このあたりは原作のターニング・ポイントになったお話「ダーク・フェニックス・サーガ」が元になってまして、劇場版にひと区切りをつけるためには、やっぱこれかな、という気もします。
今回監督が娯楽志向・サービス旺盛なブレット・ラトナーに変り、公開前からそれを危惧する声が聞かれていました。実際「アクションは増えたがドラマは空っぽ」みたいな意見をあちこちで読み聞きしましたし。でもわたしは今回の作品が今まででもっともX-MENの本質をとらえていたように感じます。
ミュータントを普通の人間にする「キュア」に関し、登場人物は様々な反応を見せます。できれば特殊能力をそれによって捨て去りたいものがいる一方、持って生まれた才能を奪われるなんて恐ろしいという者もいます。どちらが正しいわけでも、悪いわけでもない。人にはそれぞれの選択があり、決定がある。悪いのは他者のそういう権利を奪うこと。そしてX-MENはその権利を守るために、再び同じミュータントであるマグニートーと対決することになります。
そして今回もウルヴァリンは大暴れ。前にも書きましたけどこの三部作は、彼が主役みたいなもんですから。
実際、この物語は宿無し風来坊だったウルヴァリンがお家を見つけるまでのお話と考えれば、非常にしっくりきます。
帰るところを見つけるために、懸命に記憶を取り戻そうとするウルヴァリン。しかしせっかく得た記憶はあまりにも恐ろしく、しかも断片的なものにすぎませんでした。結局彼は過去を捨て、仲間や次世代のために生きていこうと決意して、初めて帰るべき場所を見つけます。もうそこに彼をつなぎとめていた二人はいません。しかしだからこそ、ローガンはそこに残ろうと思ったのでは。そんな気がするラストの笑みでした。
この『ファイナル・ディシジョン』、X-MEN40年の歴史でもやらなかったような思い切ったことを色々やってくれまして、全編に「完結編」みたいなムードがぷんぷん漂っています。そんなわけで「もうお別れなのね」と感傷的な気持ちにひたっていたら、全世界でのヒットを受け、すでに「4」の製作が決定したとのこと。これだからハリウッドは・・・
さらに『ウルヴァリン』『マグニートー』(ええ!?)ほか、十本近くのスピンオフが企画に上がっているという噂。収拾がつかなくなるのは目にみえてますが、それでこそ『X-MEN』といえるかもしれません。
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