世界の中央で生を叫ぶ オリバー・ストーン 『ワールド・トレード・センター』
新世紀に浮かれる世界に衝撃の与えた、NY貿易センターの惨劇。それにまつわる1エピソードを、『プラトーン』などで知られるオリバー・ストーンが映画化した作品です。
ニューヨークの港湾警察に勤めるジョン・マクローリン。いつもように家を出て、いつものように勤務につき・・・ ごく普通の一日のはずだった。しかし午前8時46分、ある報せが署に入ってくる。「ニューヨーク世界貿易センタービルの北棟で火災発生」。直ちに出動するジョンと部下たち。その中には身重の妻を抱えるウィル・ヒメノもいた。断片的で不確かな情報を頼りに、なんとか現場にたどりついた一行。とにかく負傷者を運び出さねばと、建物の中に入ったジョンたち。だがその時、膨大な量の土砂が彼らの上に押し寄せる。
映画で見て改めてわかったのは、現場にすぐに急行したグループは、本当に何も知らなかったということ。事故の原因がテロであることも、もう一つの棟にも飛行機がぶつかったことも、損傷を受けたビルが崩壊を始めることも。「下手な操縦士がいたもんだ」とテレビの前で笑っていたりします。でもあの時、事件の首謀者以外は、誰しも似たり寄ったりの反応だったのでは。まさに事実は小説より奇なりというか、酷なりというか。(トム・クランシーが似たような発想の小説を書いていたらしいですが)。
ただ、なにもわからないとしても、そこで災害があれば飛んでいかねばならない・・・ そういうお仕事の人たちもいます。そしてそれゆえに災難に見舞われた二人の様子を、映画は追っていきます。
ややネタバレになりますが、二人が瓦礫の下敷きになるのが始まって50分くらい経過したころ。あとの1時間20分は、ずーっと埋まりっぱなし。ほとんど首から上だけで必死の演技を見せるニコラス・ケイジとウィル役のマイケル・ペーニャを観ていると、なんだかこちらまで息苦しくなってきます。まあそれだけでは映画的にアレなので、彼らを気遣う家族の様子も頻繁に入るんですが、こちらはこちらで胸がつまりそうになります。どちらに感情移入しても大変辛く、「楽しめる」タイプの映画でないのは確かですね。果たして彼らに救いの手は与えられるのか? その結果は実際にご自分の目でお確かめください。わたしゃ、なんかの記事で先にばらされちまいましたけどね・・・
どちらかというと、アメリカを批判するような作品を多く撮ってきたストーン監督ですが、今回は国の事情とかは置いといて、個人の自己犠牲的な精神や、家族への愛情を中心に据えています。「アメリカだけが被害者」という一部の見方には納得がいかないものがありますが、自分の身も省みず懸命に救助に当たった人々には、素直に敬意を表したいと思います。
少し前に同じテロの事件を扱った『ユナイテッド93』という作品もありました。わたしはそっちは観てませんが、『ワールド~』よりもややシビアな作品のようで。どちらかといえば、こちらの方が日本人向けの作品だと思います。


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