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October 17, 2006

風と雲とギャグと 『風雲児たち』を語ってみたい⑭

20061016193317_1アニメ『天保異聞 妖奇士』のスタートで図らずもタイムリーな話題になってしまいましたが、今回は「天保の改革」とそれに関る奇人たちをご紹介いたします。潮版で22巻半ばから26巻半ばまで、リイド版で16巻から18巻191Pまでのお話です。

歴史の教科書にもあるとおり、徳川幕府はその治世中、三回の大きな改革を行ないます。徳川吉宗の「享保の改革」、松平定信の「寛政の改革」、そして水野忠邦の「天保の改革」です。これらの改革に共通している姿勢は、よく言えば「ムダを省くこと」、悪く言えば「ケチること」です。人口増加やそれまでのツケのため、この路線はあとにいくほどジリ貧になっていきます。

そんで最後の改革を指揮した水野忠邦。このひとがまたえらいガンコ者というか変わり者というか。普通政治家ってお金が好きなものと相場が決まってますが、彼は儲けることにはまるで興味を示しません。念頭にあるのは、ただ、自分の理想を実現させることのみ。あれ? じゃあ立派なひとじゃん! でもこの理想ってのが現状をまるで無視したサムライ中心のものだったため、江戸の庶民はえらい迷惑をこうむることになります。頭でっかちのリーダーに振り回されたことのある人だったら、この辺よくわかるかも。

さて、この水野氏には大変対照的な部下が二人おりました。ひとりは前回名を挙げた鳥居耀蔵。表向きは水野の理想に心酔しているフリをしながら、裏では政敵を陥れ、私腹を肥やすことに精力を傾けます。みなもと先生の人物描写ってまことに公平でして、難のある人物でも評価すべきところや長所はきちんとすくってるんですが、この鳥居氏に関しては「まるでいいとこひとつもなし」な書かれっぷり。よっぽど腹に据えかねたんだなあ、と思いました。そんなわけで彼はいまのとこファンの間で憎まれ№.1の座をほしいままにしております。

で、もうひとりはご存知入れ墨奉行・遠山の金さん。あれ? 金さんって架空の人物じゃないの?と思ったアナタ、遠山金四郎は確かに実在した人物です。まあわたしもこのマンガ読むまでは、時代劇の中だけの人だと思ってましたけど。さすがに毎回お白洲で脱いでたわけじゃないようですが、入れ墨をしていたとか、若いころぐれて家出してたというのは本当のようです。青春時代町人たちと親しんでいたということもあり、庶民の味方であろうと決意する金さん。しかしそれは上司とその腹心を敵に回すことでもありました。そんな極めて厳しい状況で、金さんがどのように戦っていったのかは、本編をご覧いただきとうございます。

20061016193340無印編の(ぞんざいな)レビューも残すところあとわずかとなってまいりました。次回は夜明け前に志士たちに先駆けて海外と格闘することになったおイネ&ジョン・万についてやりたいと思います。それを含めてあと三回くらいで次のステージにいけるかしらん。

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Comments

最近。アニメから遠ざかった理由は、
娯楽の本質を無視した作品の乱発に失望したせいだと
信じたいまさとしです。
日本橋もアキバ化著しく、足がだんだん遠のきつつあります。
>アニメ『天保異聞 妖奇士』
また、面倒な奴を使ったものだ・・・・・。
>金さん
時代劇ドラマはいろいろな人が演じてましたね。中には
女鼠小僧と絡ませた作品も・・・・・・。

>腹に据えかねたんだなあ
いや、同感(笑)。
金さんのイラストがナイスに描けていい感じと思うまさとしでした。

Posted by: まさとし | October 21, 2006 at 01:41 AM

おばんです
>アニメ
確かに最近の数の多さは異常ですね
ただ、わたしはその中にも宝石があるもんだと信じてちょこちょこチェックしております。こないだ終了した『ゼーガペイン』という作品はめっけもんでした

>また、面倒な奴を使ったものだ・・・・・。
まあこの人ならいくら悪く書いてもクレームこないんじゃないでしょうか(笑) 『風雲児』みたいな小悪党ではなく、それなりの風格のある書かれ方でしたが

>中には
女鼠小僧と絡ませた作品も・・・・・・。
青春時代の金さんと本家鼠小僧が共演する作品がみたいですなあ

イラスト誉めていただきありがとうございます。秦太さまのアイコンに比べるとなんとも芸がありませんけど(^^;)

Posted by: SGA屋伍一 | October 21, 2006 at 09:27 PM

これは、おもわぬところでお褒めにあずかり光栄です。
でもね、あれ、基本的に「塗ってる」だけですから。
あんなのその気になれば誰でも作れますよ。
ココだけの話ですけどね(笑)

じつは長屋のアイコン職人は私で3代目なんです。
先代(「村田蔵六」~「大谷吉継」の作者)はご自分で「描いて」らっしゃいますね。
絵心のない私にはできない芸当です。

それはそうと、鳥居耀蔵。
幕末編前夜の『風雲児たち』を盛り上げたMVPは間違いなくこの人でしょう。
いまの連載では、もう天保改革期の主要登場人物はみんな死んじゃったのに、
鳥居一人だけが、幽閉の身で、丸亀城下の一室でしぶとくしぶとく生存している。
やっぱりタダもんやないですね。

なお、長屋に進呈した鳥居耀蔵アイコンは、我ながらいいデキだと思うんです。
でも当然誰も使ってくれないんで、さみしいからたまに自分で選んでます。

Posted by: 秦太 | October 27, 2006 at 12:31 AM

どうもっす
>あんなのその気になれば誰でも作れますよ。
いや・・・ パソコン不得手な者のにとっては、なにをどうやれば出来るのかまことに「???」ですから 最近は微妙なアニメーションも入っていて、これまた芸がお見事なことです

>幕末編前夜の『風雲児たち』を盛り上げたMVPは間違いなくこの人でしょう。
これはまた意外な意見が出ました(笑)。でも確かに悪役が強烈であればあるほど、退場する時はメチャクチャスカッとしますからね。他の例でいうと、知らないかもしれませんが、田中芳樹氏の『アルスラーン戦記』に出てくるジャン・ボダンなんかがそうでした
そういえば最近宮部みゆきさんが、鳥居をモデルにした『弧宿の人』という小説を書いて話題になりました。こちらでは「ちょっとかわいそう」な書かれ方だそうですが・・・・

>鳥居一人だけが、幽閉の身で、丸亀城下の一室でしぶとくしぶとく生存している。
そういえばそうでした。もうたぶん出てこないでしょうから、みんなそのことを忘れてるんじゃないでしょうか。天保改革期で生き残っている人というと、あと川路利聖さんがいましたね。この人も吉村昭作品の題材になってたと思ったんですが

Posted by: SGA屋伍一 | October 27, 2006 at 07:53 AM

『弧宿の人』はまさに幽閉時代の鳥居をモデルにしているんだそうで。
松岡英夫さんの書かれた耀蔵の伝記を読むと、丸亀では医術や学識で人々につくし、それなりに尊敬されてもいたらしく、人間なかなか分からんものですね。
(でも天保期の所業はぜんぜん反省してないんだなこれが)

考えてみると、鳥居の没年は明治7年ですから、川路や阿部どころか、龍馬や土方よりも後の世まで生きてるわけで・・・やっぱり妖怪だこのコイツ!
『風雲児たち』が構想のとおり五稜郭で終わるとすれば、作品完結時点でも余裕で存命。
「勝負はわしの一人勝ちじゃ」

>吉村昭作品
『落日の宴』ですね。川路さんのユニークな私生活が楽しい一作でした。
『風雲児たち』では出番が多いわりに、まだその強烈な個性は伏せられているように思います。
みなもと先生、取り上げるタイミングを計ってるのかな?

>アルスラーン戦記
これで退場が印象的だった人というと、私のばあいルシタニア王イノケンティス七世でしょうか。

最後になりましたが、鳥居アイコン、さっそく使ってくれてありがとうございます。

Posted by: 秦太 | October 29, 2006 at 01:04 AM

>弧宿の人
読んでみたいんですけどね。たしかまだハードカバーだったかな。宮部作品も最後に読んだのはだいぶ前だな・・・ 一時期はまってましたが(現代モノのみ)

>人間なかなか分からんものですね。
わからんですね(笑)。『風雲児』でのイメージと全然結びつかない。やっぱり100%悪人という人ってなかなかいないもんなんでしょうか。だけど「これくらいじゃ到底許せない」みたいなことを、先生ギャグ注に書いておられましたっけ

>「勝負はわしの一人勝ちじゃ」
宇喜多秀家と違ってなんとイヤミに聞こえることか・・・ 吉村作品もご存知でしたか。わたしは実は未読っす

>私のばあいルシタニア王イノケンティス七世でしょうか。
いましたね・・・ そんなおじいさん。この人も相当罪が重いですけど、後半の落ちぶれぶりがひどかったのもあって、なんだか憎めませんでした。まあ最後は大金星でしたが

>鳥居アイコン、さっそく使ってくれてありがとうございます。
どういたしまして。こんなことでよければバンバンリクエストにお応えいたします

Posted by: SGA屋伍一 | October 29, 2006 at 09:57 PM

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