岡山少年野球団 捕球編 あさのあつこ 『バッテリーⅣ』
天才少年投手原田巧と、彼の速球に魅せられた者たちを描く野球小説第4巻
できればⅠ~Ⅲを読んだ人に読んでほしいです。これまでのレビューは以下の通り
http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2005/05/post_3881.html
http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2005/07/post_2f60.html
http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2006/06/post_4916.html
念願かなって強豪・横手との試合に臨む、原田・永倉バッテリーと新田東の面々。だが、開始早々、相手校の策士・瑞垣の言葉に、キャッチャーの豪は動揺させられる。
“おまえじゃ、キャッチャー、無理やな”
自分に全力の巧の球が受け続け続けられるのか。豪の不安は巧にも伝わり、バッテリーは自分たちを見失ってしまう。試合後、巧と目を合せられない豪。彼は完全に自信を失ってしまい、新田東の一年バッテリーはこれまででもっとも深刻な危機を迎える。
ただ投げられた球を捕る。並みのピッチャーならばどってことないことなのに、ここに「天才」がからむとことはこんなにもややこしくなる。前に「手加減したらぶっ殺す」と言った手前、豪くんは完全に立つ瀬がなくなってしまいます。そんなわけでこの巻ではタックンの前に立てなくて悶々と悩む豪ちんの心象がえんえんと描かれます。名前も知らなくてもうしわけないけれど、例のハンカチ王子のキャッチャーも同じような思いをしたことあるんでしょうか。
これに対する巧の反応がまた意外です。「捕れないんならやめちまえ」「キャッチャーがいないなら審判めがけてぶん投げるまで」と言いそうなものですが、豪のキャッチに魅せられていた彼もまた、投げることが思うようにいかなくなってしまいます。「巧を変らせない」とおっしゃっていたあさの先生ですが、これは変化と言っていいんじゃないでしょうか。あるいは、彼がもともと持っていた弱さなのかもしれませんが。
この巻にはもう一組いささか変ったコンビが登場します。強豪のキャプテンで、いままで自分を抑え続けることに腐心してきたはずなのに、巧の速球を目にしたことで、はじめて本気でファイトを燃やす門脇。そして彼を主に作戦面でフォローする瑞垣。この瑞垣という男が面白い。和歌とオネエ言葉を駆使して相手を煙にまく一方で、門脇に対して友情と嫉妬の両方を抱いている少年。今回のトラブルに火を足してくれたりして、まことに小憎らしい。
ほかに気づいた点としては、二人の力になろうとする新田東の先輩たちがまことにかっこいい。中学生のくせにこんなにかっこよくていいのか。それに輪をかけて、顧問のオトムライ先生がまたいかしている。最初は高圧的ないやな大人でしかありませんでしたが、この巻では「かっこいいとはこういうことさ」みたいないいところを見せてくれます。まあ彼に気遣われても、たっくんにとっては屈辱でしかないんですけど。
話は変わりますが、作者のあさのあつこさんは岡山出身で在住。ほかに岡山出身の女性作家というと『ぼっけえ、きょうてえ』の岩井志麻子さんがおられます。まるでかけ離れた作風のおふたりですが、人と人とのつながりのややこしさを描いているという点では共通してるのでは。・・・って岩井作品よんだことないんですけど(コラ)
まあそれが当たってるとするなら、岡山の女性には恨みをかわないよう気をつけたほうがいいかも(岡山のみなさん、すいません)
そんなわけで豪と巧はまたバッテリーとして横手のつわもの達の前に立てるのか? 『バッテリー』は全六巻で文庫版は5巻まで刊行中。たぶん最終巻は映画とあわせてだすんじゃないかなあ
Comments
こんばんはー。
瑞垣はやっぱしヒョウタンになるわけっすね。チョウチンアンコウとかも言われてて、もううちにはビジュアルが想像付かない状態っす。
「Ⅳ」は、やっぱし三角ベースのとこがいいっすねー。吉貞はいいです。結構話がおもーくなってきちゃうとこを、救ってくれちゃうとこがニクイっすね。
Posted by: やまわき | March 24, 2007 10:42 PM
お返事ありがとうございます
>瑞垣はやっぱしヒョウタンになるわけっすね
はい。わたしにとっては瑞垣=「ひょうたん頭」です。すいません
あとやまわきさんの記事を読むまで、ずっと彼の名前「端垣(はしがき)」だと思ってました(上の記事は既に修正しております)。こちらもすいません
>吉貞はいいです
いいですね。自称美形キャラ。タックンはかなりうざったく思ってるようですが
Posted by: SGA屋伍一 | March 25, 2007 08:52 PM