セーラー服と日本刀 藤咲淳一 『BLOOD+』
一月ほど前に終了した、近頃なにかと話題を振りまいている土曜午後6時代の作品。タランティーノの『キル・ビル』にもインスパイアを与えたという『BLOOD THE LAST VANPIRE』の続編というか異バージョンのような位置づけです。
物語は現代の沖縄から始まります。血はつながっていないけれど、暖かい家族に囲まれて幸せに暮らしていた少女・小夜(さや)。その平凡な日常は、「翼手」と呼ばれる怪物と謎の男「ハジ」の出現により、もろくも崩れ去る。不死身に近い翼手を倒せるのは、特殊な遺伝子を持つ小夜の「血」以外にない。そのことを知った小夜は、翼手による悲劇を食い止めるため、彼女を見守ってきた組織「赤い楯」とともに果てしない戦いに赴く決意をする。
このTBSの時間帯を担当している?プロデューサー竹田菁滋 氏の作品・・・『ガンダムSEED』二部作、『鋼の錬金術師』。『交響詩篇エウレカセブン』など・・・には、なんとなく共通点のようなものがあります。それは「罪・失敗を犯してしまった少年たちが、それに対してどう向き合うか」というテーマ。本編の主人公小夜も、自分が誰かを殺してしまう記憶におびえ、期せずして怪物を世に解き放ってしまったことに自責の念を抱いています。さらにまだ十代なのにあまりにも大きな責任を課せられて、少年たちが苦しみもがく様子もよく描かれています。この辺は先達の『ガンダム(第一作)』や『エヴァンゲリオン』の影響かもしれません。
本編の主人公である音無小夜嬢は、いうまでもなく女子であるため、これまでのヒーローよりもさらに繊細なキャラクター。先ほどのべた自責の念や仲間への不信感などから、時々そのココロをぽっきり折ってしまいそうな時がありました。そうした時小夜を支えてくれるのが、彼女の「兄」であるカイという少年。このカイくん、序盤からなんとか妹の役に立とうと発奮しますが、悲しいかな普通の人間でしかないので、怪物たちとの戦いにおいてはほとんど役に立ちません。また小夜の守護者にはハジという極めてダイハードな男がいて、ますます立つ瀬がない。このあたり見ている側としても最初はなかなか歯がゆかったです。
けれども彼は微力なりに(笑)、一生懸命自分にできることを行ない続け、なにより精神面で小夜をあたため続けます。そのひたむきな努力は、最終的に彼女を死の寸前から連れ戻すことにさえ可能にしました。まさに「一年見続けてよかった」と思えた瞬間でした。
他によかった点を二つほど。まずベトナム、ロシア、フランス、イギリス・・・と舞台が世界各国をまたにかけて移動していくので、なかなか海外旅行に行けない身としては背景を眺めるのが楽しかったです(泣)。ハリウッド作品をよく手がけているハンス・ジマーのサントラも重厚でした。
「うーむ」と思った点も。せっかく色々誉めたあとになんですが、これ、やっぱり50話も要らなかったんじゃないかな・・・と。サブキャラに焦点をあてた番外編的なエピソードがけっこう多く、それゆえ間延びしているように思えたことが度々ありました。そうすることで各キャラに深みを持たせようという狙いだったのかもしれませんが、途中でこの緩いテンポに飽きてしまった人もいるんじゃないでしょうか。わたしは全話付き合いましたけど。
そんなわけで『BLOOD+』 は現在DVDが順次リリース中。アニプレックスやaii なんかで配信中です。
竹田Pの次回作も続けて放映されてますが、今回はなんと39歳のオヤジが主人公(!)。どういう心境の変化でしょうか。
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