誰がためのボイン 大橋誉志光 『ウィッチブレイド』
今回はややひんしゅく買いそうなタイトルですなー。先日放映が終了したばかりの深夜アニメ。アメコミ原作+『仮面ライダー龍騎』の小林靖子女史が脚本ということでチェックしておりました。
大震災に見舞われた近未来の東京。娘の梨穂子と仲むつまじく暮らしていた天羽雅音は、ひょんなことから古代から連綿と受け継がれてきた謎の武具“ウィッチブレイド”の装着者に選ばれてしまう。ウィッチブレイドは女性にしか装着できず、それを手にした者に莫大な力を与えるという。雅音はウィッチブレイドを研究していた大企業導示重工の依頼により、様々な事件に立ち向かうことになるのだった。
このヒロインの雅音さん、顔立ちはボーイッシュながら、胸のサイズは超ド級。変身後の姿もなんとなく「キューティーハニー」をほうふつさせるとあらば、お色気うっふん大サービスな作品のように受け取られても仕方ありません。ところが実際に見てみますと、あまりあざといその手の描写は少なめで、むしろ母と娘の深い絆を描くことのほうがメインとなっております。さらに雅音さんが敵対する重要なキャラもまた「母」だったり、あるいは「母」に関してトラウマを抱えていたりと、作品のそこかしこに「母性」が強調されています。ですから雅音さんのあの巨大なバストは、お色気のためというよりか、「子供を抱きしめるためのクッション」の役割を果たしていることがわかります。
このアニメでは、お互いの絆を確認するために雅音さんと梨穂子ちゃんが全速力で駆け寄って、ひし、と抱き合うシーンが頻繁にあります。もしこの時雅音さんのバストが大きくなかったらどうなるか? まずまちがいなくどちらかがケガをします。わたしは実際にそういう例を聞いたことがありますが、ダッシュしている子供の頭というものは、時として凶器となることがあります。肋の二三本は確実にもっていかれることでしょう。また肋に頭を強打した里穂子ちゃんも、いささかバカになることは免れません。しかし豊満なバストのおかげで、そうした不幸な事態は避けられます。かつて歌にもありましたが、ボインはお父さんのためのものではないのです。
雅音さんをそれぞれ公と私で支える鷹山と斗沢というキャラクターもよかったです。タイプはまるで異なるものの、自分なりのスタイルを貫くかっこいい男として描かれていました。惜しむらくはせっかくアメコミが原作なのに、そっち方面との関連がほとんど見られなかったこと。東映版スパイダーマンみたいなもんでしょうか。一応設定上は「原作のその後」ということになっているようですけど。
互いに強く惹かれあう雅音さんと梨穂子ちゃん。その姿に、「真の親子とはどうあるべきか」ということを教えられた気がします・・・・と最後に畏まってみましたが、やはり無理があったでしょうか。
アニメ版『ウィッチブレイド』は現在二巻までDVDが発売中。オンラインでの放映も継続中だか予定中だか
Comments
>「子供を抱きしめるためのクッション」
あはは、そんな事考えても見ませんでした。ところで“里穂子”ではなく“梨穂子”、ね。
Posted by: K | September 27, 2006 09:42 PM
>“里穂子”ではなく“梨穂子”、ね。
すいません。修正いたしました
こんな風に思ったのは「世界の宮崎駿」氏が「ナウシカの胸はなぜ大きいのか?」と聞かれたとき、「あれは風の谷の老人たちがこれから死ぬ時に抱きしめてあげるためなんです」と答えていたのが頭にあったからかも。まあ宮崎さんの答えは体のいい言い訳に聞こえないこともないですけど
Posted by: SGA屋伍一 | September 27, 2006 10:29 PM
実は監督の大橋氏はアニメでの乳揺れとか巨ぬーとかパンチラとか嫌いだ、とか申しておりました。そいつを振りきっての、うの氏の作品を達観するかの如くのデザイン、全くもって見事としか言いようがありますまい。 ・・・・・・・・なんてね(笑)。それこそ“体のいい言い訳”ですな。
Posted by: K | September 28, 2006 11:16 AM
>大橋氏VSうの氏
「・・・・とか嫌いだから、こうこうこういう風に頼むよ」
「あー、はいはい(と言いつつ全然聞いてない)」
こんな感じだったのでしょうか
こういうスタッフ同士の意見のぶつかりあいというか、出し抜きあいもまた、アニメ製作の醍醐味のひとつなんでしょうね
この作品、GONZOで少し前に製作された『スピードグラファー』と色々似てるところがあった(画風など)ので、スタッフが共通してるのかなあと勝手に思ってましたが、いま調べてみたら全然かぶってませんでした
Posted by: SGA屋伍一 | September 29, 2006 08:00 AM