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September 24, 2006

グルメなグエムル ポン・ジュノ 『グエムル 漢江の怪物』

20060924201128ブームのためここのとこ頻繁に公開される韓国映画。とうとう怪獣映画まで飛び出しました。社会派映画『殺人の追憶』などで知られるポン・ジュノ監督の作品です。

韓国のデートスポットで知られる漢江。そこに突然巨大な怪物が出現。川原の人々を片っ端から食べ始める。漢江で売店を営んでいたカンドゥの愛娘・ヒョンソもその怪物に飲まれてしまう。悲嘆にくれるカンドゥとその家族だったが、なんと死んだはずのヒョンソから、助けを求める電話がかかってきた。娘が生きていることを確信したカンドゥは、政府があてにならないことを知り、自分たちだけでヒョンソを助けだすことを決意する。

冒頭で「怪獣映画」と書きましたが、これ正確には「怪物映画」です。どう違うのかというとでかいのが「怪獣映画」、比較的小さいのが「怪物映画」ですね。前者はゴジラやガメラ、後者はジョーズやエイリアンなんか。そもそも「グエムル」ってハングルで「怪物」という意味らしいです。
怪物映画というのはなかなか「そいつ」の全身を見せず、一部一部をチラッと映して恐怖感をあおるのがセオリー。ところがこのグエムルくん、しょっぱなから全身丸出しで現れます。たぶん「ごく平凡な日常が、一瞬にして殺戮の場に変る恐怖」を描きたかったからではないでしょうか。その辺はなかなか効果的でした。

そんなわけで怖いところは怖いんですが、合間合間にやけにユーモラスだったり、シュールな場面が入ったりして面食らいます。ヒーローであるはずのカンドゥ父さんにしてからが、明らかに頭のネジがゆるんでいるような人物で、しょっぱなからずーっとヘマばかり。ハリウッドに影響を受けているところもありますが、その辺実に独特な味わいでした。味わいといえばこの映画、怪物も人間もやけにモノを食っている場面が目立ちます。

政府や某大国への強烈な反感も感じられました。向うの人って、けっこうア○リカのこと嫌いなんですねえ。ニッ○ンほどじゃないでしょうけど。ただ匂わす程度ならいいんですけど、今回それを強調したいがためか目に余るような展開があり、自分にしては珍しくアタマに来ました。監督は怪獣映画をやりたいのか? それとも社会批判をやりたいのか? 「二兎を追うもの一兎も得ず」だ!・・・・と言いたいところですが本国では超ヒットだそうです。韓国のみなさん! それでいいんですか!!
えー、ただこの「目に余る所業」、見ようによっては無理矢理ソフトに解釈できないこともありません。その辺本国でもちょっとした議論になったそうです(モロネタバレなので要注意)
http://www.asahi.com/culture/korea/TKY200608310244.html
自分ですか? もちろんぬるく解釈しました(笑)
どういうことなのか興味を持たれた方は劇場へどうぞ。ただし責任は持ちません。『グエムル 漢江の怪物』は現在それなりにヒット公開中。あと2週間というとこかなー
20060924200830

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Comments

こんばんは!TB&コメ、ありがとうございました!
あたしはこれ、社会批判という部分、完全に無視しました。
二兎を追うもの・・・と言う感もありますが、文化の違いと考えて、
怪物映画、特撮映画として、楽しみました。

Posted by: 猫姫少佐現品限り | September 26, 2006 12:02 AM

さっそくお返事ありがとうございます
>社会批判という部分、完全に無視しました。
まあそうした方が純粋に映画を楽しめるでしょうね。なんだかつい「製作者の意図」を探るクセがついてしまって

純粋な娯楽映画を作ろうとして、ついついメッセージをこめてしまうのは日本もコリアンも一緒かもしれません。アメリカさんはもっとその辺割り切ってますからね

Posted by: SGA屋伍一 | September 26, 2006 07:18 AM

こんばんは、SGA屋伍一さん。
社会批判も怪物映画も・・・私は、特に家族の物語の部分では感動できた、という感じでした。変なズッコケユーモアには本当にトホホとなりましたけれども。
“製作者も意図”はついつい考えてしまいますね。何もここまで色々なものを盛り込まなくても・・といった感じでしたよね。

Posted by: とらねこ | February 14, 2007 11:29 PM

お返事ありがとうございます
>特に家族の物語の部分では感動できた、という感じでした。

そうでしたか。しかしカンドゥ父さんに感情移入しながら見ると、この映画なかなかに辛いですね・・・・ こういう力をもたない家族に対して政府がそっけないのは、こちらもあちらも同じなんでしょうか
カンドゥさんに幸あらんことを

>何もここまで色々なものを盛り込まなくても・・といった感じでしたよね。

映画監督も「必ず次がある」とは言い切れない職業ですからね。「やれるうちにやりたいこと全部やっちゃおう」というハラだったのかも(笑)
でも『グエムル』のヒットで、当分は仕事保証されたんじゃないでしょうか

Posted by: SGA屋伍一 | February 15, 2007 07:59 AM

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