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August 29, 2006

風と雲とギャグと 『風雲児たち』を語ってみたい⑫

20060828213100久しぶりの風雲児コーナーです。今回は潮版18巻から20巻、ワイド版(リイド社)13巻・14巻のお話。この部分では文政年間に来日した外国人医師・シーボルトにまつわるエピソードと、世に名高い「大塩平八郎の乱」の顛末が描かれます。

それなりに「知ってるつもり」だったけど、ある本を読んでその人のイメージがガラリと変わった・・・・ そんな経験ないでしょうか。わたしは『風雲児たち』で、何回かそんなことがありました。
たとえばシーボルト。まず医師であり、それ以外にも様々な分野に通じた人物。ですから「まあかなりのインテリだったんだろうなあ」と、線の細いひょろっとした男をイメージしておりました。ところがどっこいシーボルトは若いころとっても血気盛んで、百回以上も決闘したことがあり、一度たりとて負けなかったというから驚きです。その証拠に顔にはたくさんの傷跡が刻まれていたとか。もちろんマンガではそれが忠実に再現されています。インテリかつ武闘派で、どちらも半端じゃないレベル。まあそんな人でもなければ、当時ほとんどブラックボックスだった日本に「行きたい!」なんて思ったりしなかったでしょうねえ。
制約の多い中、懸命に日本に医学を伝えようと奮闘するシーボルト。その様子が長崎の遊女・おタキとの恋を絡めて語られます。

もう一人の大塩平八郎。彼についてのイメージは、「まずしい人々のため、身を投げ出して幕府に抗議した高潔な人物」というものでした。まあこれはこれでまちがいではない。しかしみなもと先生の描く大塩さんは、どうにも口が悪すぎる。助けに来た貧民たちに対し、「おお、来さらしたか土百○ども!!」などと言い放つ始末。先生、すこし戯画化しすぎじゃないか?と思っていたら、ワイド版ギャグ注には「本当の大塩平八郎はもっと口が悪かった」などと書いてあったからぶっとびました。200年ぶりに起きた徳川幕府への反乱。幕府直参大塩平八郎を、一体なにがそこまで駆り立てたのか? 先生流の陽明学の解釈を背景に、その謎にせまります。

そしてこの巻より『風雲児たち』は天保年間に突入。黒船来航もだいぶ近いところまでやってきました。ですがその前に、大きなイベントをまだ幾つか消化しなければなりません。次回はその一つである「蛮社の獄」について語りたいと思います。
話は変りますが、ワイド版13巻の帯には、シーボルトの子孫の「あの方」が推薦文を寄せておられます。その時は後にこの方とネットを通じてあれこれおしゃべりできるようになるなんて、夢にも思いませんでした。世の中、こんな不思議なこともあるんですねえ。
20060828213008

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Comments

オハヨゴザイマース。
「あんたの日本語なんとかならないの」byタキ
>大塩平八郎
芦辺拓『殺しはエレキテル 曇斎先生事件帳 本格推理小説』(光文社カッパノベルス)2003年
では、この人は悪役で出てきます(笑)まあ悪役というか、若い、頭の固い与力として毎度笑い者にされる敵方ですね。
芦辺さんといえばPNからもわかる通り、大阪ものには並々ならぬ拘りのあるらしい人なので、もしかしたら地元民がみた平八郎って案外ヤな人だったりして。
シーボル父さん決闘百回は、『風雲児たち』で知りましたねえ。
当時、医学部の学生は「メナーニア騎士団」という相互親睦組織に入っていて、そこでは若気の至りというか決闘こそ男!みたいな状態で、でもみんな医学生だから(笑)ちょっとぐらいの傷は友達が「あいよっ」と縫っていたという…。医者の感覚って、これを患者にそのままやるから本当に無神経です。
この騎士団、この大学に今でもあります。シーボルトは団長だったか副団長だったからしいです。(今は決闘はしてないだろうけど)
つまりは、「偉大な人物」について知っていることなんて、本当に「針小棒大」ってことですよねえ。
ほら、だからアタシだってこうやって毎日バカやってるけど、決してそれだけじゃなくって…え?アタシは全部バカだ?(沈)

シーボルトとお滝といえば、山田風太郎の超初期短編「芍薬屋夫人」で重要な役割を…でもないか。でも主要人物の1人です。シーボルトの資料を見に都立日比谷図書館に行ったことが戦後かなり早い時期(か、戦争中)の日記にも書かれており、短編とはいえかなりきちんと資料を調べていた様子があります。
この短編では、お滝さんが「椿の花のような」とか、ハデな美貌の女性として描かれているのが珍しい。どっちかというと清楚だから気に入られたみたいなのが定説っぽいんですが。ハデな方が外人好みなのか、山風の、「外人に愛される女性」のイメージがそういう人なのか…。鳴滝のいかにも女主人然とした(まだ20かそこらなのに)振舞いが色っぽいお滝さんです。

Posted by: 高野正宗 | August 30, 2006 at 09:03 AM

あり、何か急いだので文章がところどころ変。
この騎士団というのは、シーボルトのいた大学(どこだっけ)にあったもの。勿論全部の医学生が入っていたらイヤン。でもバイエルンって本当に血気盛んだったのかしら。
「芍薬屋」けっこうキツい話です。シーボル父さんも真っ青♪でも山風好みの美女?になったお滝さんは好きです。

Posted by: 高野正宗 | August 30, 2006 at 09:07 AM

さっそく解説ありがとうございます
>大塩平八郎
>地元民がみた平八郎って案外ヤな人だったりして。
マンガでは「彼のおかげで大阪は焼け野原になったが、恨む声は少しもなかった」とありましたが、あとでやっぱり文句も出たんでしょうか(笑) 頭が固い、というのはそのまんまギャグになってましたね。「頭の固い魚をバリバリ食って怒ってたなあ」なんてセリフもありました

>父さん
>医学部の学生は「メナーニア騎士団」という相互親睦組織に入っていて、そこでは若気の至りというか決闘こそ男!みたいな状態
いまでいうところの「運動部連盟」みたいなもんでしょうか。でも仮にも医学生が「決闘大好き」って(笑)。命を大事に! もしかすると治療の訓練も兼ねてたんでしょうか

>「芍薬屋夫人」
こないだ買った古本(ちょっと汚い)『伝馬町からこんばんは』に収録されてたので、読むのを楽しみにしております

最後にどうでもいい話を。あれは去年だったか、深夜に『サムライガン』というコミック原作アニメをやってたんですが、その中に「シーボルトの息子」を名乗る巨漢の殺し屋が出てきまして。「これは高野さん見たら怒るだろうな」と思いました(^^;)

Posted by: SGA屋伍一 | August 30, 2006 at 09:48 PM

医学生A「大丈夫、切れちゃっても縫うから」
医学生B「でもこんなに腸がはみ出てちゃまずいよ」
医学生A「チョウっとお待ちを」
医学生B「それ、唐沢なをきのネタだよ」

>芍薬屋
おうっと、お滝さんばかりではなかった。冒頭が、シーボルトが帝王切開の実演をして弟子に見せているシーンなのですが、山風は勿論、シーボルトが日本の医学に与えた影響も、流石よく調べただけあって、医者としての興味を持ってしっかり書いているようです。
帝王切開の技術が確立されるまで、産婦と胎児がいっぺんに死亡する場合、大抵は「お産が始まっているのに胎児が下りて来ず、それまでの内科的手法ではどうにもできないうちに、母子共に力尽きる」というパターンだったらしい。確かこの話の中では、そのうちでも微弱陣痛を扱っていたかな。
切って出す、ということができるようになって、画期的に助かる確率が上がったらしいです。

>シーボルトの息子
確か別のアニメでは、本人が何かタイムマシンだったかタイム懐中時計だったか、「秘密道具」を持って出ていたという話を聞きました。
有名税ですねぇ
片や江戸期のブラックジャックなら、表裏一体で殺し屋というのもアリなんでしょうか(息子はキリコかい)

Posted by: 高野正宗 | August 30, 2006 at 10:03 PM

医学生A「いやあ、おなかの中ってけっこうパンパンにつまってるんですね」
医学生B「チョウびっくり」
・・・失礼しました

>帝王切開
とすると、こちらも最初に伝えたのはフランツ・フィリップさんだったんでしょうか。「腹を裂く」といったら、切腹しか思いうかばなかったであろう日本人にとって、かなり抵抗があったのでは・・・と憶測します
それで命が助かるなら仕方ないでしょうけど、やっぱり体を切るというのは人体にとって大事ですから、どちらにせよ出産って大変だなあとつくづく思います

>表裏一体で殺し屋というのもアリなんでしょうか
たしか事情があって闇の組織に拾われたという話だったような。ま、バカ話です

Posted by: SGA屋伍一 | August 31, 2006 at 07:37 AM

>事情があって闇の組織に拾われた
あははははは(爆笑)
いややっぱ親父の素行が素行だからな。『ふぉん・しいほるとの娘』だったかな、再来日の時の女癖の悪さが凄いぞう。だから多分その息子って、隠し子(笑)
そうでなくても、闇に身を落したヤツならほらここに既に1人(以下略)

Posted by: 高野正宗 | August 31, 2006 at 07:49 PM

>『ふぉん・しいほるとの娘』
宮沢りえのドラマでは非常にさわやかに親子・夫婦の再会を描いてたと思ったのですが・・・・ 原作はかなり違うのでしょうか(未読)。いっそ読まない方がいいのか?

>闇に身を落したヤツならほらここに既に1人(以下略)
謹んで「必殺読書人」の称号を進呈します(え? いらない?)

Posted by: SGA屋伍一 | September 01, 2006 at 07:59 AM

 大塩「わてはあのくそ○百姓どもを救うんや。
おおっ来さらしたかくそ土百○ども」
 口は悪くても救う気持ちはあったのかもしれません。
その時歴史が動いた、ではがんばれキッカーズ
の人が描いていたような気がします。
 がんばれ大塩。
 
 >本当の大塩平八郎
 表紙で「おいおいこれがわしかい」とおっかなそうな大塩
の絵がありましたので本当にそういう人だったのかもしれません。

 会川昇のヒヲウ戦記でも冒頭シーボルトさんが出ていました
が、懐中時計が重要アイテムになっていました。

Posted by: 犬塚志乃 | September 01, 2006 at 09:14 PM

 >サムライガン
舞台は幕末だったと思いましたがシーボルト先生の
息子さんが出てきたのですか?
 有名なんですね。NHKでなんとか蝶の特集をしていたら
オランダと来てやはりシーボルト先生が輸入した蝶でした。
 昆虫や植物はこの人が多いです。
>決闘
 メナーニア騎士団、決闘で傷ついても医師団だから
一石二石ですw
 でも町山さんがリドリー・スコットのデュエリストの解説で
「ナポレオンは決闘を嫌った」なんて書いていましたが、
主人公は決闘をしてなければもっと出世したかも?
と思いながらついついしてしまったそうです。
 >殺しはエレキテル
 あれ?某マンガで源内さんがやってしまったような、、、、、。

Posted by: 犬塚志乃 | September 01, 2006 at 09:25 PM

>表紙で「おいおいこれがわしかい」とおっかなそうな大塩
江川さんもそうですが、昔の方は誇張して顔を描くのが好きですねえ。
たしか穏やかなヴァージョンもあったと記憶してますが

>>サムライガン
わたしも全部のうち数話しか見てないのですが、一話限りのゲストでした

>デュエリスト
初めて聞くタイトル・・・
「決闘者」という意味があるんでしたっけ。『少女革命ウテナ』なんかで使ってたような

Posted by: SGA屋伍一 | September 02, 2006 at 12:54 PM

うわ、レス数が10になってる・・・・・。
まいどです。とうとう大塩ですか・・・・・となれば真打ちは
常に後からやってきます(笑)。
>決闘
これは初耳でした。しかも傷だらけとは・・・・・。
>口が悪すぎる。
所詮京都者と大阪人とでは価値観違うか(えー
とはいえ、マンガ系の大塩サンでは口の悪さは
随一と言う気もします。
ここで余計な知識をば(えー
『大塩の乱』で大砲に驚いて落馬した某というのは水野忠邦の弟
跡部良弼と言う奴です。しかも乱の原因を作った主犯格(!)
困った事にこいつも鳥居某同様生きて明治維新を迎えるという
『憎まれっ子世にはばかる』を地で行ってます。
おまけに小学館の歴史マンガではこいつが『大塩を撃退した』
風にかかれるというトンデモナイ『誤植(あるいは捏造ともいうか)』を
やっちゃってます。いっそホントに首もってかれればよかったのに(えー
横レスっす。
>高野様
ご無沙汰です。贔屓の鉄道沿線がちょうど『幕末編』舞台の一つに
入り大喜びでいます。世にも一つしかない『風雲児たち』を応援する
京阪電車のブログだからさ(笑)。
>地元民がみた平八郎って案外ヤな人だったりして
とはいえ、原因作った奴が前述な有様だからそれは大分少なかった
と思います。それは関西人以外が『悪人』だと100%矛先は
そっちに向かうという性があるから・・・・・。
>犬塚様
ご無沙汰です。
>その時歴史が動いた
わあっ、見てねえ(笑)。
『~キッカーズ』最近コンビニで見かけた。
>本当にそういう人
肖像画は案外都合よく描きますからね。
高野長英なんか超ゲキ痩せだからねえ(えー
>SGAっち
大塩はんのイラストには悪いがちょっぴりダメ出ししたいと
思ってしまった。シーボルトはOKだけど(オイ
ではでは。

Posted by: まさとし | September 02, 2006 at 09:26 PM

おばんです。
>所詮京都者と大阪人とでは価値観違うか(えー
そうか・・・ 大阪ではあれが標準なんだ!(失礼!)

>大塩に攻められた奉行ふたり
解説ありがとうございます。相当腐敗してたのでしょうね。でも「大塩反乱」の報を聞いても露ほども彼のことを疑わないあまりののんびりぶりは、なんだか憎めなかったのでした

>ちょっぴりダメ出ししたい
どうぞ。きびしい意見もお待ちしてます。わたしのガラスのハートが砕けない程度に(^^;)

Posted by: SGA屋伍一 | September 03, 2006 at 07:41 PM

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