平成ライダーの六年間を振り返る 555編①
555と書いて「ファイズ」と読みます。2003年1月から、翌2004年1月まで放映された、平成版仮面ライダー第4作です。
両親と恋人に囲まれて幸福な人生を送っていた青年・木場勇治。彼は突然の事故により命を含む全てを失った。しかしそれとひきかえに、勇治は人を超えた存在・オルフェノクとして復活する。
一方理容師を目指して九州から東京に向かっていた少女・園田真理は、道中謎の怪人に襲われる。真理は父が送ってきたベルトを、たまたま行き会った青年・乾巧に託す。その瞬間、巧は光の超人・ファイズへと変身した。
物語にはさらにもう二本の変身ベルトや、それらを狙う巨大企業・スマートブレイン、真理の養父が設立した学校兼孤児院の「流星塾」らがからみ、複雑な展開を見せていきます。
人類の進化、ワケありな過去を持つ主人公、力に対する不安や恐れ・・・こういった要素は第2作『アギト』を彷彿とさせます。実際この『555』は、『アギト』のリターンマッチ的な作品と言えるかもしれません。『アギト』でけっこう好きにやっているように見えた白倉・井上コンビですが、『555』を観ますと、「ああ、あれでもまだ色々やりたりなかったんだなあ」ということがよくわかります。その一つが、通常ヒーローものではやられ役である「怪人」を、ヒーローと対等の立場にもっていくこと。第一回は上にも書きましたように、怪人オルフェノクである勇治の話から始まるので、「ありゃ? こいつが主人公?」と思ったほどでした。
さて、当コーナーでは『クウガ』~『龍騎』まで、無理矢理平成ライダーを石ノ森章太郎マンガと結び付けてきました。ですが、どうも『555』では石ノ森マンガを飛び越えて、原作『デビルマン』まで行ってしまった感があります。特に終盤における幾つかのシーンは、原作『デビルマン』を強く匂わせます。まあ永井豪氏はもともと石ノ森先生のアシスタントだったので、間接的に石ノ森リスペクトといえないこともないですが。ついでに言っておくと、この両巨匠は「正義」に対し懐疑的なところや、「あきっぽい」というところもよく似てます。
60年代から70年代にかけて少年誌の主軸とも言えた「ヒーローもの」が、ほぼ絶滅してしまったのはなぜか? 理由はいろいろあるでしょうけど、ひとつには「『デビルマン』がとどめをさしてしまったから」というのがわたしの持論です。要するに「人間なんて守る必要はないし、むしろ滅びた方が地球のためになる」・・・この主張にみんな納得してしまったからでは、ということです。
そんなわけでその後「正義とはなにか?」を真剣に扱う上で、原作『デビルマン』は避けて通れない、大きな壁でした。それでも近年『デビルマン』のテーゼを受け入れた上で、「もっと考えてみよう」という作品が増えてきたことは喜ばしいことです。この『555』も、そうした一連の作品のひとつと言えるでしょう。
さて、例年秋に公開される平成ライダー映画ですが、『555』の時はなぜか夏に公開されました。幸いなことに好条件が重なり、いまのとこシリーズ最大の興行収入を誇っております。夢よもう一度&35周年ということで今年も夏にやっておりますが、更新は無理でも、なんとかヒットして次につなげてほしいものです。
Comments
>ひとつには「『デビルマン』がとどめをさしてしまったから」というのがわたしの持論
面白い説ですねー。それに言えてると思います
地球をひとつの生命体として見た時、現在の人類というのはどうしてもウィルスやら、病原菌っぽい役どころですからね・・・「世界は人間のためだけに存在しているわけではない」という認識が、昔よりも定着しているのは『デビルマン』のお陰だったということかぁ。。。大袈裟?
>「もっと考えてみよう」という作品が増えてきたことは喜ばしいことです
日曜の朝は、たまに観ているだけなのですが確かに、主人公の敵方という立場であってもさまざまな事情や葛藤があったり悩んだりと、ずい分と人間らしいキャラ作りがしてあって好感持てます。
世の中は単純には出来ていないし、大変なことがいろいろあるけど、「それでも人生って悪くないよね(キラ☆キラ~ン)」みたいなスタンスの作品は結構好きです
Posted by: ほーりぃ | August 08, 2006 12:48 PM
>デビルマン
実はこの説、別のサイトで主張した時にけっこう反論喰らったりしたんですが(笑)
かの作品が発表されたころは冷戦真っ只中で、「明日世界が滅んでもいおかしくない」ようなご時世でしたから、このテーマに説得力があったんでしょうね
>昔よりも定着しているのは『デビルマン』のお陰だったということか
ぁ。。。大袈裟?
いや、そうにきまってます! エコロジーブームの陰にデビルマンあり!
・・・マジメな話、漫画界には大きい影響与えてますよね。『寄生獣』とか『ベルセルク』とか『ARMS』とか『BASTERD』とか(以下えんえんと続く)
>主人公の敵方という立場であってもさまざまな事情や葛藤があったり悩んだりと、ずい分と人間らしいキャラ作りがしてあって好感持てます。
アニメではけっこう前例がありますけど、特撮で本格的にこういうスタイルを持ち込んだのは、たぶんこの『平成ライダー』からだと思います
前にも何度か書いてますが、登場人物の進んでいくベクトルがそれぞれ微妙に違うところが、なんとも魅力なのであります
Posted by: SGA屋伍一 | August 08, 2006 11:14 PM