お嬢はつらいよ 川原泉 『笑う大天使』
またすこし前の少女漫画の話題です。なんでかいま、映画版が公開されてるので。独特の作風で根強い人気を誇る川原泉先生の代表作。「大天使」と書いて「ミカエル」と読みます。
とある庶民の少女・司城史緒は母の突然の死により、それまで顔も見た事がなかった兄の豪邸に引き取られる。テーブルに出される名前も知らない高級料理や、「超」の付くお嬢様学校・聖ミカエル学園。つましい生活を続けてきた彼女は、あまりの環境の変化にノイローゼに陥ってしまう。ある日隠れて校庭でアジの開きを食っていた史緒は、その現場を二人の同級生・斎木和音・更科柚子に見つかってしまう。すると何たる偶然か、その二人も学園内で庶民派の素顔を隠し、ネコをかぶり続けてきたことを告白。意気投合する史緒たち。
その後ひょんなことから超人的な怪力を身につけてしまった三人は、世界的な犯罪者集団と死闘を繰りひりげることになる・・・ って、あれ? 最後思い切りはしょってます。スイマセン。
川原作品の魅力を説明するのは難しいです。えー、まずテンポ、画風、ギャグ、全てがゆるい。その合間をぬってやけに小難しく、格調高いロングネームが展開。恋愛的要素はかなり薄味。それでもってラストにはあったかくてホロリと来る余韻を残す・・・ まあ実際に一編読んでもらったほうが、手っ取り早くわかってもらえるんですけど。
この『笑う大天使』は少々変った構成がとられています。まず全体の三分の二くらいを占める本編が書かれ、その後続編的な短編が三本書かれました。本編がひたすらおバカでのんびりしたお話であるのに対し、後日談はそれぞれ家族の再生・喪失・確認を描いた内容。いま思い返してみても、ついしんみりさせられてしまういいお話です。
むくつけき野郎にとっては、一生立ち入ることがないであろう「お嬢様学校」の内部を観察できるという点でも、貴重な作品。「ごきげんよう」という挨拶がかわされ、先輩方は「○○の君」と呼ばれ、「とても不思議な子猫ちゃんですね?」なんつーセリフが飛び交ってたりする・・・・ そんな世界、果たしていまの日本に存在するのか? つーか、あったらいいですねえ。
そう言えばいま『マリア様が見てる』という女子校小説が人気らしいですね。やっぱり「少女だけの世界」ってみんなのロマンスをかきたてるものがあるんでしょうか。ただ『笑う大天使』にはそういうものを期待しないでください。裏切られます(笑)
Comments
>川原泉先生
思い出しました。前に読んだ「事象の地平」の
先生でした。
SGA様の絵、雰囲気がよく似ていますよねw
カーラ先生という方、先生自身の自画像に似ていたような。
事象~は哲学者の絵やそれに関する合ってるような合っていない
ような解説が面白かったです。
頭のいい先生ですね。
>マリア様が見てる
今の世の中みんな異性との恋に疲れているのでしょう。
(本当か?)
>友情出演
あ、レイズナーのエイジだ。
Posted by: 犬塚志乃 | September 07, 2006 07:38 PM
>「事象の地平」
その作品は読んでないです。『花とゆめ』コミックスで出ていたものは読破しましたが・・・・
「頭のいい先生」という印象は同意です
>レイズナー
そういえば放送中当時、よく『北斗』との類似点が指摘されてましたね
Posted by: SGA屋伍一 | September 08, 2006 08:03 AM