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July 31, 2006

お嬢はつらいよ 川原泉 『笑う大天使』

20060730223708またすこし前の少女漫画の話題です。なんでかいま、映画版が公開されてるので。独特の作風で根強い人気を誇る川原泉先生の代表作。「大天使」と書いて「ミカエル」と読みます。

とある庶民の少女・司城史緒は母の突然の死により、それまで顔も見た事がなかった兄の豪邸に引き取られる。テーブルに出される名前も知らない高級料理や、「超」の付くお嬢様学校・聖ミカエル学園。つましい生活を続けてきた彼女は、あまりの環境の変化にノイローゼに陥ってしまう。ある日隠れて校庭でアジの開きを食っていた史緒は、その現場を二人の同級生・斎木和音・更科柚子に見つかってしまう。すると何たる偶然か、その二人も学園内で庶民派の素顔を隠し、ネコをかぶり続けてきたことを告白。意気投合する史緒たち。
その後ひょんなことから超人的な怪力を身につけてしまった三人は、世界的な犯罪者集団と死闘を繰りひりげることになる・・・ って、あれ? 最後思い切りはしょってます。スイマセン。

川原作品の魅力を説明するのは難しいです。えー、まずテンポ、画風、ギャグ、全てがゆるい。その合間をぬってやけに小難しく、格調高いロングネームが展開。恋愛的要素はかなり薄味。それでもってラストにはあったかくてホロリと来る余韻を残す・・・ まあ実際に一編読んでもらったほうが、手っ取り早くわかってもらえるんですけど。
この『笑う大天使』は少々変った構成がとられています。まず全体の三分の二くらいを占める本編が書かれ、その後続編的な短編が三本書かれました。本編がひたすらおバカでのんびりしたお話であるのに対し、後日談はそれぞれ家族の再生・喪失・確認を描いた内容。いま思い返してみても、ついしんみりさせられてしまういいお話です。

むくつけき野郎にとっては、一生立ち入ることがないであろう「お嬢様学校」の内部を観察できるという点でも、貴重な作品。「ごきげんよう」という挨拶がかわされ、先輩方は「○○の君」と呼ばれ、「とても不思議な子猫ちゃんですね?」なんつーセリフが飛び交ってたりする・・・・ そんな世界、果たしていまの日本に存在するのか? つーか、あったらいいですねえ。

そう言えばいま『マリア様が見てる』という女子校小説が人気らしいですね。やっぱり「少女だけの世界」ってみんなのロマンスをかきたてるものがあるんでしょうか。ただ『笑う大天使』にはそういうものを期待しないでください。裏切られます(笑)
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July 29, 2006

戦国鬼嫁日記 ~大河ドラマ『功名が辻』より⑫

みなさん、こんばんは。ういっす。チヨっす。
またちょい前の話で悪いけどさあ、やってくれるわよねえ、北○鮮。ひとんちシマにぼんぼこタマを撃ちこんでくれちゃってさ~ せめてもの救いは命中率がゼロに等しい、ってことかしら。まあうちの宿六もチャカの扱いにかけちゃあ、似たりよったりだけどね。

ほんじゃ今回の鬼嫁日記参ります。えっと、うちらと柴田一家が緊迫したムードになってた、つー話はしたわよね。今回はその辺の決着なんかを。
前にも話したけどさあ、この柴田さんて人、腕は立つんだけど、まあそれだけの人。だってさあ、いまどき「尊敬する人は?」って聞かれて、堂々と「高倉健」とか答える人なのよ!? 織田興業に入ったのも、ボスが石原プロ出身だったから、なんつー説もあるくらい。まあ要するに昔かたぎのヤクザってこと。
まあそんなだからアニキにおだてられたり、なだめすかされたりされてるうちに、気がつけば田舎の方においやられてたってわけ。ただびっくりしたことに、そんな不器用な柴ちゃんを見ているうちに、例のイッチーがよろよろっときちゃったみたいで、あれよあれよと言う間に再婚しちゃったのよ。あー、この娘にちょっとだけでも、「男を選ぶ才能」ってもんがあればねえ。こんな将来性皆無の結婚はしなかったでしょうに。
案の定追いつめるだけ追い詰めると、兄貴は柴田一家に総攻撃を開始。怖い男よね、うちのアニキも。そんなアニキにも極道らしからぬことがひとつ。それはアニキがイッチーにベタぼれだったってこと。男ってどうしてこうお姫様に弱いのかしらねー? アニキもきっと昔の宮崎作品とか、大好きだったに違いないわ。
で、そこで宿六に「イッチーを連れ帰して来い」とか命令したわけ。ただ困ったことにはイッチーってアニキに対してひたすらツンツンツンツンツンツン・・・・な性格な訳よ。兄貴の名前を伏せときゃいけないのに、堂々と宿六がばらしちゃったもんだから、イッチーは「死んでもこっから出ない」とか言い出して
けっきょく子供だけ逃がして、柴田夫妻は壮烈爆死。最近壮烈爆死が流行ってるみたいだけど、あれ近所に半端じゃなく迷惑だからやめたほうがいいわよ。
このとき生き延びたイッチーと前夫の子供に、「ちゃちゃ」とかいう冗談みたいな名前のコがいたんだけど、こいつがまた相当なタマでねー。そいつについてはまた今度話すわ。

さて、戦い終わって織田興業は完全に豊臣興業になり、宿六もいよいよ暖簾わけしてもらえるんじゃないかなー、と思ったわけよ。ところがどっこい恩賞は日当が500円上がっただけ。これにはわたしも宿六も怒り狂ったわねー。宿六なんか「もう極道やめて田舎で畑でも作る」とか言い出してさー。すねたくなるのもわかるけど、子供の教育費とか家のローンとか、いったいどうんすんのよ! そんなわけでキック一発でだまらしました。
それでもあいつまだ納得いかなかったらしくて、今度は実家の義母んとこにグチりに言ったのよ。そしたら案の定顔に青あざつけて帰ってきた。やっぱ姑も、極道のオンナよねー。さすがだわ。

どうもアニキの真の狙いは、宿六の忠誠心がどれほどのもんか見極めたかった、ということだったらしい。つくづく怖い人よねー。サルだけど。
こうして柴田一家は倒したものの、今度はさらに別の強敵がアニキの前にたちはだかります。これについてはまた次回。バーイ!ハドソン
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July 26, 2006

機械じかけのオレんち 綾辻行人 『びっくり館の殺人』 

20060726201029本日は「新本格」の第一人者、綾辻行人氏の最新作『びっくり館の殺人』をお届けします。
 十年半ぶりにかつて暮らした街を訪れた青年・永沢三知也。ふと古書店で『迷路館の殺人』なる本を手にした彼は、それをきっかけにそこで体験した様々な出来事を思い返していた。お屋敷町の一角にそびえたつ不思議な館『びっくり館』。そこに住む病弱な少年・俊生と友達になったこと。『びっくり館』の中に内蔵された様々なびっくり箱。そしてクリスマスに起きた『びっくり館』での殺人事件・・・・ 果たしていま『びっくり館』はどうなっているのか? 三知也の足は再び忌まわしいあの屋敷へと赴いていく。

綾辻作品の魅力は、以前にも書きましたが、それまでの世界がひっくりかえってしまうような(誇張表現に非ず)「大どんでん返し」。果たして今回はどうだったかと言うと・・・・ うーん、タイトルほどには「びっくり」しませんでした(笑)。前作『暗黒館の殺人』から一年半くらい。その前が十年以上待たされたことを考えるとかなりハイペースですが、その分作品もあっさり風味でしたね。
まあ今回は「本格ミステリー」というより、心理的ホラーの色が強い気がしました。断片的な記憶を探っていくうちに恐ろしい真実に行き当たってしまう・・・ これも綾辻作品の黄金パターンです。
その不気味なムードをかもし出すのに役に立っているのが、七戸優氏が書かれる古風な挿絵。年代の割りに昭和初期をイメージさせるその画風は、作品のカラーとあいまって楳図かずおの世界を連想させます。
特に210・211Pにまたがったシュールな挿絵には、形容しがたいインパクトがありました。
こんな風に感じるのは、最近わたしがあまり挿絵のある本を読んでいないせいかもしれません。その分お金がかかるのでしょうけど、もっと新書・文庫に味のあるカットを入れてもいいんじゃないでしょうかね。ライトノベルとはまた違う形で。

さてこの本、講談社の「ミステリーランド」というレーベルから出ています。一見児童書風の凝った装丁で、「かつて子どもだったあなたと少年少女のためのー」というコピーが書かれています。「じゃあ子供向けなのか?」というと、これがむずかしい。少年が主人公というだけで完全に大人向けの作品もあれば、一応子供向けだけど変にマニアックな作品もあるそうで。「子供向けの皮をかぶった大人向けミステリー」という表現が一番しっくりくるかも。
ただ児童が自分で好きな本を選ぶ「うつのみやこども賞」は、ここ三年連続でこのレーベルから選ばれているそうなので、一応年少者からの支持もあるようです。そういや自分も小学生時『三毛猫ホームズ』シリーズを読み漁っておりましたが、あれもいま考えりゃ子供には少々早い内容でしたしねえ。

『館』シリーズは全10作になるそうですが、この『びっくり館』も正当なシリーズとしてカウントされるとのこと。そうするならば残る館はあと二つ。こころして待ちたいと思います。
また『動物のお医者さん』などで知られる佐々木倫子さんとの共著『月館の殺人』下巻もそろそろ発売。こちらも楽しみでやんす。
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July 25, 2006

三度目の不正直 J・J・エイブラムス 『M:ⅰ:3』ほか

20060718142049でんでんでんでんででんでけ でんでんでんでんででんでん・・・・
現在最新作「Ⅲ」が公開中の『M:ⅰ』こと『ミッション・インポッシブル』シリーズについて、きょうは語ります。

わたくし『007』を見ているときに、いつも疑問に思っていることがありました。それは「スパイがあんなに目立ってしまっていいものか? もっとこそこそやらなくちゃいけないんじゃ?」というもの。ま、「そ-いう話だから」と言われてしまったら、それまでのことなんですけど。
そんな疑問を解消してくれたのが巨匠ブライアン・デ・パルマ監督によるシリーズ第1作(1996)。テレビドラマ『スパイ大作戦』を大胆にリメイクし(やりすぎて旧ファンは怒ったらしい)たこの作品は、アクションのけれんみも十分に取り入れつつ、スパイの醍醐味である「こそこそ感」「後方との連携」「だまし・盗み」といったテイストが存分に発揮されていました。それだけでなく、職業上ウソをつかなければいけない、人を信じてはいけない・・・といったスパイの悲哀感も、物語に厚みを加えていました。

思わせぶりなラストシーンから、当然続編が作られるものと期待したら、やっぱり来ました。監督を香港出身のジョン・ウーに変えて製作された『M:I-2』(2000)。ところがですねー、これがー、ですねー、前作にあった「こそこそ感」がさっぱりどこかに行ってしまいまして。目立ちまくり・鉄砲撃ちまくりのごく普通のアクション映画になっていました。主人公イーサン・ハントの性格も青臭い若者から気障なジゴロに変貌していて、少なからずがっかりいたしました。普通の一本の映画として観るならば、そこそこ楽しめるんですがねえ。

さて、この度公開されました第三作。二作目がそんな感じだったのであまり期待していませんでした。予告編を見ても「まーた、派手にぶっこわしてるなあ」という感じでしたし。それでもかすかな希望を抱いて見に行ったところ・・・やっぱり派手にやらかしておりました(笑)。ただ今回はどちらかと言うと、第一作の方に空気が近かったように思えます。平凡な生活とスパイという職業の両立に悩むハント。数人のスペシャリストが綿密な計画を立てて挑むミッション。誰が敵で誰が味方なのか・・・という不安。冒頭からクライマックスまで、腰の落ち着かないような緊張感が漂っていました。フィリップ・シーモア・ホフマンとローレンス・フィッシュバーンの不気味な演技がそれを増幅させています。

個人的な評価で言うと、1>3>2といった具合です。最近のハリウッド大作は「三作で終らせる」という風潮がありますけど、果たしてハント君の再登場はこの先あるのでしょうか。
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July 22, 2006

適当掲示板32&ナルニャー国物語 ライオンとネコ

みなさん、こんばんは。毎度ぱっとしないこのコーナーです。ご意見ご感想その他お寄せください

「mixi」はじめました。はやくもいっぱいいっぱいです(笑)
さて、今回は任侠Vシネ路線でお送りします。おひけえなすって

2006050312572320060625134607伊豆一帯でその名を知らない者はいないと言われている、伝説の極道がいた。
その名はモン吉。
ある日モン吉は敵の卑劣な罠にかかり、全身の毛を全て剃られてしまう。
仁義を忘れた非道なやくざたちに対し、いまモン吉は復讐の牙を研ぐ。


20060702202617_1「アニキ・・・ どうしてもいくんですか?

お願いですから考えなおしてください!

いくらアニキが強いからっていっても、あいつら数が多すぎる

多勢に無勢だ! かないっこありませんよ!!」


20060629175232「いいか、SGA。よく聞け。
男にはたとえ無理とわかっていても、やらなきゃならねえ時ってのがある。
いまがその時よ
獅子の誇りのたてがみを奪われて、黙ってひきさがるほど

このモンさまのプライドは安かねえのさ」


20060721185518(すげえ・・・ 
アニキ、すげえよ! 超かっこいいよ!

・・・・でも一言言わせてくれ、アニキ
アニキは獅子じゃない

「ネコ」だ!!)


20060629175232_1「わかってくれたか

それでこそ、オレの舎弟だ

じゃあ行くぜ! SGA!

狂犬狩りだ!!」


20060721185518_1
「へい!
がってんだ!!

・・・って、アレ?

オレも行くの?」


つづかない


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July 21, 2006

風と雲とギャグと 『風雲児たち』を語ってみたい⑪

みなさん、こんばんは。
今日は『風雲児たち』三大悲劇(勝手に作った)の一つである、いわゆる「爆走」について語ります。潮版で17巻、リイド版で12巻101Pから最後までのお話です。

子平、彦九郎、良沢、光太夫・・・・ それぞれの物語が幕を閉じ、『風雲児たち』も大きな節目を迎えます。ここにひとつ大きな問題が持ち上がりました(笑)。それは『風雲児たち』は幕末の群像を描くのが目的だったのに、単行本(潮版)が18巻に達しても黒船来航はまだ50年先、という事実です。もともとこのマンガ、10巻ないしは15巻で終る予定だったそうです。歴史って怖いですねえ。
そこでとうとう編集部より指令が下されました。「大至急幕末へ向かわねばゆるさーん!!」 先生は切腹前の誰かさんのように悩みまくり、しまいに連載を落っことすという事態にまで発展。
しかしこのままではいつまで経っても幕末にたどりつけないのも確か。かくして単行本一冊で30年をぶっとばす、「爆走」の開始とあいなります。
そのために犠牲となったエピソードも数知れず。特にいろいろ前フリがあったのに、結果的にスルーされてしまった頼山陽の物語などは、いまなお読者から「読みたい」という声が寄せられております。他に割を食った人というと、田沼意次の回でちらっと述べた最上徳内さん。彼に関しては奇跡的な命拾いやら、愛妻との感動的な再会やら、けっこう描かれているのですが、まだまだ面白い事実があったという後半生は、まるまるオミットされました。近藤重蔵、伊能忠敬らも同様です。
そんな慌しい中でも、高田屋嘉兵衛とゴローニンに関するエピソードは非常に感動的なものになっています。日露交渉失敗のため、両国の間に生まれた緊張関係。それを和解させるべく、体ひとつでおろしやに向かっていく嘉兵衛。「こっから先どうなるんじゃー!!」というところでバサッと話は飛んじゃいますが、続きは司馬遼太郎は『菜の花の沖』で読めるそうです。

マンガの連載ってなかなか計算どおりにいかないもんですよね。構想ウン年かけて何ヶ月で打ち切りとか、人気が出てしまったために無期限に渡って連載が延長されたりとか。『風雲児たち』もそんな「計算違い」な作品のひとつなわけですが、このマンガにはこの先まだまだ試練が待ち受けているのでした。それについてはまた。
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July 19, 2006

山田風太郎に関しては色々言わせてもらいたい⑫ 『風来忍法帖』

こないだ「ワースト忍法帖」について書いたので、今回はマイベスト忍法帖について語ります。その名は『風来忍法帖』!

時は戦国時代。アナーキーな環境をいいことに、やりたい放題な暮らしをしていた七人の香具師たち。ある日道中行き会った姫君から恥をかかされた彼らは、男の意地にかけて姫の貞操を奪うことを決意する。ところが姫の苛酷な運命を知るにつれ、香具師たちはいつのまにか姫の味方に。かくして姫が守る忍城(おしじょう)を舞台に、七人の香具師たちと、城をねらう怪物のごとき風摩忍者の壮絶な戦いが始まる

なにがすごいってまずこの香具師たちの名前がすごい。悪源太(ワイルド)、昼寝睾丸斎(軍師)、弁慶(強力)、七郎義経(イケメン)、陣虚兵衛(ニヒリスト)、夜狩りのとろ盛(トレモロ)、馬左衛門(巨根)・・・ この名前だけでわたしは本作の面白さを確信いたしました。彼らはそれぞれ特技を有しているんですが、これがおおよそ非実用的なものばっかりで、そこがまた面白い。
『魔界転生』や『甲賀』もすごい作品でしたが、強いて不満をあげるならば、ちと主人公が強すぎるところ。それなりに手に汗握るものの、「こいつなら大丈夫だろ」的な安心感があるのもたしかです。ですが本作の香具師たちはもともと遊び人みたいなもんですから、戦闘においてはどうにもこころもとない。しかも相手はバラバラにされても死なない戸来刑四郎や、分身の術を使う累破蓮斎など、ほとんど化け物みたいな忍者ばっかり。普通ならどう考えても香具師たちが勝てる見込みはない中、それをどうやって打破するのか・・・ そいつは読んでのお楽しみです。

また『風来』はキャラだけでなく、ストーリー展開もまことに痛快です。前半ではなんとか姫に仕返しをすべく、連中があっちへ行ったりこっちへ行ったり、予測不可能・爆笑必至の活躍を見せてくれます。それが話が進むにすれ、香具師たち(狙う側)VS風摩忍者(守る側)の構図が逆転。ツンデレの祖先たる麻也姫を守るべく、ほとんど絶望的な戦いに彼らは身を投じることになります。それでも馬鹿と誇りを失わない風来坊香具師たち。数ある忍法帖のなかでも、これほどまでにリリシズムとユーモアが溶け合った例を、わたしは知りません。

豆知識1 作中に出てくる「トーン、トーン、唐辛子」という歌はそれから27年後に書かれた『室町お伽草紙』にも出てきます。元ネタがあるんでしょうか?
豆知識2 本作品は1965年に東宝により映画化されています。主演はなんと渥美清。香具師→寅さんという発想でしょうか? しかも「八方破れ」という副題のついたオリジナル続編まで製作されています。

もっと評価されてもいいと思う『風来忍法帖』。お見かけの際はぜひ手にとってみてください。
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ほのぼのゴンほのぼのドレイク 仮面ライダーカブトを語る③

「ざびー」のつぎに「ぜくと」がおくりこんだしかくは、「まほうのとんぼ」をもつおとこ「どれいく」でした
けれど「どれいく」はおはなやちょうちょおいかけるばっかりで、かぶととあまりたたかおうとしません
しまいにさいあいのようじょにふられた「どれいく」は、しついのうちにどこかへさってしまいます
それでもまだだとう「かぶと」をあきらめられない「ぜくと」は、「まほうのさそり」をもつおぼっちゃまくん、「さそーど」をおくりこみます。ですが「さそーど」は「さそーど」で、じぶんがなんなんだかはっきりわかっていないようす
こんなふうにつぎからつぎへとへんなむしたちがやってきて、しぶやのもりはきょうもおおさわぎです

そんなわけで24話までを消化し、劇場版公開も迫っている『カブト』の最近の印象について書きます。
前回わたくしドレイクの立ち位置について、「報酬をもらって組織のためにはたらく」ようになるんじゃないか・・・なんてことを書きましたが、ご存知のように大はずれでした。こういうことがあるからリアルタイムで番組をおっかけていくのは楽しいですね(苦笑)。
で、ドレイクについてですが、彼と他の二者の違いを図るには、「組織」ではなく「正義」という物差しが必要だったんじゃないかと考えます。たとえばカブト=天道は国や時代を超えた、普遍的な正義のために戦っています。ザビー=影山はまず組織の正義のために。そしてドレイクは、一個人の正義・・・自分を頼っている少女のために戦っているというわけです。だからその少女を守りきった・・・本来の保護者のもとに返した時点で、彼が戦う目的はひとまずなくなります。彼がまた戦場に立つのは、その少女が再び危険にさらされた時か、新たにだれか守るべき存在をみつけたときでしょう・・・・と思ったら来週また出てくるみたい。またしても大はずれの予感です。

で、代わりといってはなんですが、ドレイクと交代するように出てきたサソリ型ライダー、サソード。「報酬をもらって・・・」の立場はこちらだったよう・・・なんですが、その設定もたった四話で変更されてしまいました。おまけに彼の正体は怪人(宇宙人?)だったという驚愕の真実(ただし本人は自分が人間だと思ってる)も明かされ、「カブト」ワールドはますます混沌を深めていっています。自分だって「怪人」(ワーム)のくせに、「すべてのワームはオレが倒す!」と息巻くサソード。それはあえてワームを敵視することで、「自分が人間ではない」という疑念を振り払っているようにも見えます。ですからドレイクが自分の庇護する少女のために戦っているとすれば、サソードは自分のアイデンティティのために戦っているんじゃないかなあ、と考えてみたりします。

えー、ただ正直申しますとドレイク登場の辺り(11話くらい)から、どうもそれまでのがんがんかとばすような勢いが若干緩くなったように感じていました。で、このあたり脚本をそれまでの米村正二氏に代わり、ほとんどミスター平成ライダーの井上敏樹氏がてがけてるんですね。そんで、公式サイト(東映)を見ると「今回のメインライターは米村氏」と書いてあります。メインの人がえんえん十話近く休めば、そりゃ話の進行も止まるでしょうよ(正確に言うと途中二話のみ米村氏が担当)。
今回なぜこうした編成になったのか? ぶっちゃけ米村さんが劇場版の脚本を書くのに忙しかったからでは、と考えております。で、彼が本格復帰した21話からまた話が動き出していくわけですが。
ここにいたってわたしは確信しました。『仮面ライダーカブト』の主人公はカブト=天道ではなく、副主人公だと思われた加賀美くんであると。なんでかってえと米村氏が担当している回は、ほとんどが加賀美くん主体のエピソードだからです。対してサブの井上氏のパートではもっぱらその他のキャラ・・・ドレイク・サソード等が主体となっています。
白倉プロデューサーのてがけた他のライダー作品・・・『アギト』『龍騎』『555』は、いずれも主人公が悩み、葛藤しながら成長していく物語でした。ですからカブトの「今回の主人公は絶対的に強い」というコンセプトを聞いたとき、わたしはなんか違和感を感じたのでした。でも今では白倉氏の狙いがわかったような気がします。つまり『カブト』というタイトルなんですけど、実質的な主人公は加賀美でいこうと。『天才バカボン』みたいなもんでしょうか。
だからこのレビューの一回目に「主人公(天道)もこれから迷ったり自信喪失したりするのでは」みたいなことを書きましたが、そういう方向にはたぶん行かないと思います。悩むのは加賀美くんに任せて、天道はこれまでと同様、絶対的な存在として君臨し続けるでしょう。
新たなライダー、ガタックとして生まれ変った加賀美新はどう変っていくのか? それに対してカブト=天道はどう動いていくのか? 劇場版ともども、これからも注目していきたいと思います。
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July 16, 2006

第1回北極アカデミー賞 ティエリー・ラゴペールほか 『ホワイトプラネット』

20060714194918「北極アカデミー賞とは」
現在公開中の、北極の自然をテーマとしたドキュメンタリー映画『ホワイトプラネット』
そこに登場するさまざまな動物たちを勝手に表彰してしまおうという、きわめて意味のない企画である
一応「第一回」とつけられているが、第二回がある確立は極めて低い

★努力賞 カリブー
このみょうちくりんな角を持ったトナカイは、毎年数千キロにも及ぶ旅をする。この時期に生まれた赤ん坊は、この世に出でたその日からひっこしが始まってしまう。引越し魔の家族を持つと、子供は苦労するのだ

☆アクション賞 ジャコウウシ
このウシは縄張り争いの際、ガチンコの頭突きで勝負する。そのがっつんがっつんぶつかりあう様は、痛い痛しくも爽快。パキケファロサウルスもこんな感じだったのであろうか

★献身賞 あるホッキョククジラさん
群れを抜け道へと導くため、狭い氷の隙間を縫うように航行する一頭のホッキョククジラ。クジラにはバック機能がついていないため、袋小路に入り込んだらそこで死ぬのを待つしかないそうだ。大きいことはいいことなのか否か

☆ユーモア賞 ズキンアザラシ
顔が面白い。ただそれだけ

★インパクト賞 ウミガラス
名前も見かけもぱっとしないこの鳥は、なんと100メートルの深さまで急速潜航できるという、驚異の特技を持っている。まさに究極の水空両用生物

☆特別出演賞 イッカク
イッカクが動いている映像って、ほとんど見たことないので。槍にも似た長い犬歯を振り回しつつ、密集して泳いでいるところは非常に危なっかしい

★ムツゴロウ賞 セイウチ
じつは畑正則氏がこの映画でもっとも感動したのが、セイウチの授乳シーンだそうだ。彼はほとんどの動物の乳を飲んだことがあるそうだが、セイウチのそれは「どろっ」としたほとんどアブラみたいな代物らしい

準優勝 アザラシの子供
なんというか、ねらい済ましたような、「計算どおり!」みたいな可愛さである。それでもその実力(?)は認めざるをえない

大賞 ホッキョクグマ 
こちらは問答無用の可愛らしさ。ほとんどぬいぐるみである。特に冒頭に出てくる「シロクマ三段がさね」のプリチーさは殺人的ですらある。ただ二位のアザラシとは食う・食われるの関係にある。自然はきびしい


総評 昨年の『皇帝ペンギン』のヒットを見て「南極のつぎは北極!」という勢いでつくられた・・・のかどうかは知らない。『皇帝』とくらべると出演者は非常に多様だが、その分「ひとつの物語」として追っていくのはむずかしい
だが動物好きならば、冒頭15分のホッキョクグマとアザラシだけでも見る価値がある。そして納涼にはぜひもってこいの一本
公式サイトはこちら
http://www.whiteplanet.jp/
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July 14, 2006

平成ライダー委員会

20060714183652「えー、前回の議題について、ヒビキさんより『オレばかり部外者扱いされるのは納得いかん』という意見がありました」
「劇中で『ライダー』と呼ばれてないのは俺だけじゃないぞ」
「たしかに」
「まあ、ヒビキさんは呼称だけじゃなくて、顔がアレだからなあ」
「なんだとおお!!」


20060714183806「ちょっとお前こっちこい! 鍛えなおしてやる!」
「おやおや、図星をつかれて逆ギレかい」
「まあまあ、穏やかにいきましょうよ」
「そうだ! ライダー同士の戦いはやめよう!」
「そんなわけで『仮面ライダー』の自覚がない人は向かって左に、ある人は右に並んでください」


2006071418395820060714184055「ちょっとクウガさん! 司会のあなたまでなんですか!」
「ごめん。実はオレもよくわかんなかったんだけど、呼ばれたから来ただけだったんだ。すまん」
「しかし『ある』っていう人たちも微妙な外見のヤツが多いな・・・」
「んだとおお!!」


20060714184111「まあまあ、とりあえず聞いてみましょうよ。まず龍騎さんから。『仮面ライダー』って一体なんなんですか?」
「えーと、仮面ライダーというのは、最後の一人になるまで戦い合わなきゃならないらしい。ほんで『人間はみんなライダー』なんだそうだ」
「・・・・なんか聞いてた話と違うなあ」
「オレもオレも」


20060714184225「ほかの意見も聞いてみましょう。ブレイドさん、どうぞ」
「ウェイ!」
「はい?」
「ウェ━━━━━━(0w0)━━━━━━イ !! 」
「・・・はい。じゃ次、カブトさん」
「その前にひとつ気づいたんだが・・・」


20060714184418「・・・一人多くないか?」
「その話は前回したでしょーが!!」

で、どうなったんだっけ?

つづく


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July 10, 2006

摩天楼の山猫 吉田秋生 『BANANA FISH』

20060710180542_1なんでいまごろ『バナナフィッシュ』かと申しますと、先日共通キャラが登場する『YASHA』が文庫化されまして、いまそれをコツコツ読んでるからです。

たぐいまれな容姿と知性をもちながら、NYの不良少年たちをたばねる少年アッシュ・リンクス。自分の縄張りで恐るべきドラッグ「バナナフィッシュ」が出回ったことから、アッシュはその出所を探る。だがその背後にはマフィアや米国政府までもがからんでいた。自身の呪われた過去におびえながら、巨大な敵と戦うことを決意するアッシュ。その最中、彼はジャーナリスト志望の日本人青年・英二と出会う。英二の温かな人柄に触れ、安らぎを覚えるアッシュだったが、闇の組織たちは二人に平安を許さない。

90年代は「男が主人公の少女漫画」がいろいろ脚光を浴びた時代でもありました。『動物のお医者さん』『CIPHER』『陰陽師』etc。そんな中でもっともドッ硬派を貫いていた作品が、この『BANANA FISH』であります。
ストリートギャングにコルシカ・マフィアに黒社会。謀略戦に銃撃戦。そのなかで奏でられる男たちの哀切と誇り(おまけに女性キャラほとんど登場せず)。少年マンガファンやハードボイルド好きにも楽しめること請け合いな、一大アクション巨編となっています。

その一方でこの作品がまぎれもなく「少女漫画」でもあるのは、一貫して「真実の愛」(恥ずかしいな・・・)というやつを描いているところにあります。といってもアッシュと英二のアレな描写があるわけではありません。なんつーか『バナナ』の世界ではそういう欲望は「汚らわしいもの」とされています。おおよそありとあらゆる天分にめぐまれながら、それゆえに幼いころから被虐の対象とされてきたアッシュ。その彼に初めて無償で暖かく接してくれたのが英二でした(あ、兄ちゃんもいたか)。やがて二人はお互いになくてはならない存在になっていきますが、やはりそういうのって単なる友情以上の関係ではないでしょうか。「恋愛感情に似たものはあったかもしれない。・・・だが魂のもっと深いところで結びついていたんだ」 後にある人物が二人のことをそんな風に評します。
万能だけどトラウマを抱えた者と、目立たないけど人を癒せることのできる青年。そういったところは『日出処の天子』の厩戸王子と蘇我毛人と似てます。またちょっとネタバレになりますが『ウエストサイド物語』なんかも意識されてると思います。

基本的にこの物語は、主人公であるアッシュのために存在しているようなものですが、脇を固めるキャラたちも実に個性的かつ魅力的です。ギャグメーカーのショーター。カリスマと子供らしさをあわせ持つシン。暗い宿命を背負う、裏アッシュ的な月龍。アッシュに父親のような愛情を注ぐマックスやブランカ、などなど。

マンガって美しく終るのが難しいメディアだと思います。人気作品であればなおさらそうでしょう。ですが『BANANA FISH』はそんな中にあって、じつに美しい終り方を迎えた作品と言えます。
「君は一人じゃない ぼくがそばにいる」
この言葉と共にしめくくられるエピローグの感動は、読後十年を経たいまも変わることはありません。
吉田先生の画風がどんどん変っていくという点でも貴重な作品。『BANANA FISH』は現在小学館漫画文庫より全11巻+外伝1巻が発売中です。
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戦国鬼嫁日記 ~大河ドラマ『功名が辻』より⑪

うい~っす。チヨっす
パッとしなかったわねえ。ジーコジャパン。あたし今回の敗因はズバリ、選手の高年齢化にあると思うの。ほら、あの大空翼さんとか、もういいトシじゃない? ドライブシュートも昔ほどのキレがないし。まあキン肉マンも流れ星銀も代替わりしたってえのに、未だに現役でがんばってるのはすごいけどさあ。

で、今日はボス亡き後の天下のスウセイ?と豊臣B組キチベエ先生の話。
本能ビル事件のときウチの宿六と兄貴は、広島に出張、じゃなくて遠征に行ってたの。ここの毛利組ってのがなかなかに手ごわくってさあ。知ってる人は知ってると思うけど、広島の極道ってけっこう気合い入ってんのよ。
さしもの兄貴も攻めあぐんでいたとき、なんと宿六が毛利組の組員のものらしき携帯を拾った。そしたら「親分、織田のやつ、くたばったそうですよ!」ってメールが入ってきたわけよ。たまげた兄貴と宿六は、2ちゃん○るとかみて、そのメールが本当らしいってことを確認。光の速さで毛利と手打ちして、ミッチーを討つべく中国自動車道を時速200キロで北上。まあミッチーのタマを取ったやつが織田興業の二代目ボスになるわけだから、兄貴としては手柄を他のだれかに取られるわけにはいかなかったのよ。だから移動中、一家のものにはトイレ休憩さえ許さなかったって。気の毒にもらしちゃった人も何人かいるみたい。
まあその甲斐あって豊臣一家はミッチー軍の急襲に成功。「こんなに早く!?」ということで動揺したミッチー軍はあっけなく総崩れに。ほんで戦場から離脱したミッチーは、地元の族だかチンピラと衝突。刺されてあっけなくあの世に行っちゃったんだって。こうなってみると、あの人もなんか可哀想よね~。死んだフリして坊主になった、っていう話もあるみたいなんだけどさ。
この時兄貴の最大のライバルとなったのが、前に話した武闘派の柴田さん。この人はこの時越後の方に遠征に行ってて、ボスの訃報も聞いてたんだけど、「サルは広島だし、余裕でわしの方が早く着くだろう」と余裕かましてたら、兄貴に先をこされちゃったってわけ。「ウサギとカメ」を地でいくような話よね~。その後柴田さんはボスの妹でアンチ豊臣のお市さんとくっついて、色々巻き返しを図ろうとしたんだけど、やっぱこういう頭を使う勢力争いとかむいてないひとなのよ。ぶっちゃけ筋肉バカだから。ことごとく兄貴に先手とられて、「織田興業」はだんだん「豊臣興業」へとシフトしていったわけ。

さて、このころ宿六も兄貴に天下とらせるために、日夜抗争にはげんでいたんだけど、そんな中ちょっとした事件があった。
みんな吉兵衛っておぼえてるかしら? 通称吉公。先代からうちに仕えている説教好きのおっさん。こいつ実は早くに奥さん亡くしてて、それ以後ずーーーーっと一人身だったのよ。「わしの女房はあいつだけ」なんてかっこのいいこと言ってたけど、早い話が「もてなかった」ってこと。ほら、あいつすぐ授業始めようとするから、そいでみんなひいちゃうわけよ。
ただこの時うちで雇ったメイドの中によくできた子がいてさあ。色々吉公の身の回りのこととかやってくれてたのよ。いぶかしんだわたしが尋ねてみたら、なんでも吉公がなくなった親父さんにそっくりだったんだって。そうとは知らない吉公は、「これでやっと再婚できる!」と勘違い&おおはしゃぎ。ところがねえ。このあと宿六は滝川一家に殴りこみにいくことになったんだけど、吉公はあまりにはりきりすぎて、出入りの最中にぎっくり腰が出ちゃったんだって。ほんで往生してるところに、タマを撃たれて、本当に往生するはめに。
さすがにこいつとは長い付き合いだったから、あたしも宿六もけっこうがっくりきた。あの人のまったりとした授業とか、はっきり言ってウザかったけど、聞けなくなるとまた淋しいものよね。また新シリーズとか始まらないかしら。

次回は柴田一家との決着とか、そのあたりをやります。♪さよーならーだけではー さびしーすぎーるからー
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July 07, 2006

『ゲド戦記三部作』のおもひで アーシェラ・K・ル・グウィン 『ゲド戦記』

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最近どーでもいい自分語りが多い当ブログですが、今回はさらに20年前の記憶を掘り起こして話題沸騰中の『ゲド戦記』について語りたいと思います。いつも以上に記憶違いが多いかと思われますが、勘弁したってください。

たしか小学校5,6年のときだったでしょうか。図書館でその無骨な装丁とタイトルに魅かれて、わたしは『ゲド戦記』の第一巻「影との戦い」を手に取ったのでした。
架空の世界アースシーに住む利発な少年ゲドは、魔法に興味を持ちその学校に入ります。しかし持ち前のプライドが災いして彼は禁忌の術に手を染め、結果自分の邪悪な「影」をこの世に呼び出してしまいます。「影」を再び封印するため、ゲドの辛く長い旅が始まります。

この「自分の呪われた半身を追い求め、最果ての地へと向かう少年」という設定に、ガキんちょだったわたしはとってもロマンチシズムをかきたてられたのでした。この第1部のみ後に同時代ライブラリーというレーベルから出版され、その時に再読しましたが、やはりベラ棒に面白かったです。「魔法学校」というアイデアを『ハリポ』に先駆けて用いている点も注目に値しますね。
「次はゲドにどんな冒険がまっているのだろう?」わくわくしながら第2部「こわれた腕輪」も手に取ったのですが、少々あてが外れました。こちらはある囚われていた?巫女の少女が主人公でして、ゲドが出てくるのは中盤から。少女がゲドに誘われて安住の地を捨て、外界へと旅立つまでが描かれます。「あてが外れた」と書きましたが、こちらもそれなりに楽しんだと記憶してます。
その後当然のように第三部「さいはての島へ」にも手を伸ばしたんですが、これがどういうわけかほとんど記憶にありません。理由としては読まないうちに返却期限が近づいてきてしまい、ななめ読みで済ませた、ということなどが考えられますが、主人公ゲドがこの巻ではすでに「じじい」になってしまっていて、子供には感情移入しづらかったこともあると思います。

こんな頼りない調子で思い出して言うのも恐縮ですけど、この『ゲド戦記』、少々邦題に偽りありじゃないかと。ゲドってあんまり戦わないですから(笑)。彼にはむしろ「探求者」「冒険者」という称号のほうがしっくりくる気がします。まあここでの「戦」ってのは剣や拳を使うものではなく、もっと深遠で精神的なものをさしてるのかもしれませんが、英雄が剣を振り回して怪物をやっつける物語を期待して、がっかりする子も多いと思います。ちなみにこのシリーズ名は日本独自のものらしく、母国では「アースシーの本(物語)」と言われているとのこと。

この『ゲド戦記』、三作で完結したものと思われていましたが、長いブランクの後、「最後の書」と銘打って第4作「帰還」が発表されました。原題は「テハヌ」。これは作品のメインとなる、かなり深刻な生い立ちを背負った少女の名です。この「帰還」はフェミニズムをテーマとしていることもあり、ますます子供にはとっつきにくい内容になっているとか。ちなみにゲドはまたしても脇役扱いだそうです。

で、今度こそ終ったはずだったのに、驚くべきことにこのあと第五作「アースシーの風」が発表されてしまいました(笑)。それでも「帰還」から「最後の書」の冠を外さない岩波さん。男だぜ! さすがに最近出されたソフトカバー版では普通に番号振ってますけど。いまのところはこの五作目が最新の作品となっています。

さて、みなさんご存知だと思いますが、この度『ゲド戦記』、スタジオジブリの手により映画版が製作され、あとは公開を待つばかりとなっております。ル・グウィンさんは「なかなか首を縦に振らなかった」そうですが、どうやって納得させたのか、気になるところであります。情報によると一応第3部をベースに他の作品の要素も色々取り込んであるとのこと。わたしもすでに予告編を何度か観ましたが、大変地味~な(笑)いい感じで仕上がっております。ただパパ宮崎の作品によく見られた「(映像的な)悪趣味」が控えめになっているので、「もののけ」「千尋」ほどはヒットしないんじゃないかと思います。わたしの予想って、よく外れますけどね。
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July 03, 2006

悪い子の学習帳 劇場版 金子修介 『デスノート(第1部)』

20060703202248少年ジャンプに連載された超人気コミックの映画化。原作に関してはこちらをどうぞ
http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2005/09/post_71e0.html

21世紀の日本。名うての犯罪者ばかりが突然死を遂げるという謎の事件が頻発する。それは魔界よりもたらされた死を司る帳面「デスノート」と、それを拾得した大学生夜神月(ライト)の仕業であった。この人知を超えた怪事件に対し、警察はICPOの名探偵「L」の出動を要請。かくしてライトとLの、熾烈な戦いの幕が切って落とされる。

えー、当初はあまり見る気なかったんですけど、劇場で見本のパンフをパラパラ見てたら、ライト(藤原達也)とL(松山ケンイチ)が並んで立っている絵が出てまして、それが大層かっこよかったんですねえ。それでころっと態度を変えちゃいまして。
で、そのパンフを見ると金子監督が「ライトは世界を相手にたった一人で戦っている革命者」とかおっしゃっております。おいおいカネやん、ライト全面肯定かよ(笑)。そういえば金子監督は『クロスファイア』や『ゴジラ・モスラ・キングギドラ』で、無軌道な若者を片っ端から惨殺してたしなあ。ライトやLについて「子供っぽい」と劇中で語られてますが、カネやんもなかなかに子供っぽい方だと思います。純粋であり、残酷であり、無邪気であり、空想好きで、正義感が強くて・・・ そんな彼に『デスノート』の映画化はうってつけだったといえるでしょう。
ただやはり「原作と微妙に違うな」と思ったのは、夜神月の人物造形。原作ではクールでニヒルな印象のあるライトくんですが、映画では金子氏の愛情と藤原君の個性のせいか、やや情熱的なキャラになっている気がしました。
対する「L」は原作のキャラがそのまま絵になったような書かれ方でした。松山ケンイチくんは『男たちのYAMATO』で純情熱血な少年兵を演じているのですが、今回はとてもその役とはむすびつかないようなはまりっぷり。本作品の演技賞はこの人にあげたいです。

映画で一番むずかしいと思われたのが、「死神リュークをどう扱うか」でした。マンガを中途半端に映像化すると、お笑いになってしまうことが多々あるからです。ここはいっそ「リュークを出さない」という選択肢もあったと思います。しかしそこは漫画好きで怪獣好きの金子監督。出さないわけにはいかなかったのでしょう。
で、結局CGによる処理とあいなったわけです。わたしとしてははじめこそ違和感があったものの、見続けているうちに次第になじんでいってしまいました。ごく普通の住宅街を藤原くんとリュークがのほほんと散歩している図なんかは、なかなか面白かったです。この辺でひいてしまう人もいるかと思いますけど。

マンガを映画化するのは、ある意味小説を映画化するのより難しいです。しかし今回金子監督は原作を最大限に生かしつつ、独自のアレンジを加えてこの難題をクリアしました。原作を読んだ身としては中盤ややだれますが、それはクライマックスを堪能する上で必要な忍耐だったと考えます。
とりあえずラストで一区切りつけているものの、この「ヒキ」がまたうまい。原作とは異なるラストが用意されてることもあり、はやくも第2部が待ち遠しいです。20060703202315

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適当掲示板31&マスコットキャラ紹介

毎度どうもっす。ご意見ご感想、その他よろず受け付けております。

当ブログも開設してはや一年半を過ぎました(一年で終るんじゃなかったのか?)。そんでここらでマスコットキャラがほしいなあ、と思いまして。ほんでもって、そいつで女子高生のハートなんかギューとつかめないかなーと考えまして。幾つか考案してみました。行きます。

20060620212012一発目はこいつ。このキャラ、自分の中ではけっこう古いキャラなんですが、ずっと名前がありませんでした。しかし今回公に発表するにあたり、いいかげん名前つけてやらないとなあ、と。それで三日三晩寝ずに考えました。その名は・・・
「パン太くん」
シンプル・イズ・ベストです。
パンダのキャラクターというのは腐るほどあるので、差別化のためにトンカチを持たせてみました。こいつで気に入らないヤツは片っ端から殴り倒すというちょっと剣呑な熊猫です。

20060702201307二匹目はこいつ。名前は「ニャン太くん」
「おっとピッチャー続けて同じ球です!」
「強気ですねえ」
パン太くんと対になるキャラということで、こちらにはノコギリをもたせてみました。あまりそうは見えませんけどそういうことにしておいてください
趣味は昼寝。好物はマグロ(なげやり)


20060702201355三匹目は「ペン太くん」(っんとーにやる気ないな)
頭に王冠を頂いているのは、彼が皇帝というやんごとなきご身分だからです
ただ、南極には皇帝がうじゃうじゃいるそうなので、あんまり大したことはありません
手に持っているのはアイスキャンデー
お約束です


200607022015044番手。名は「バッ太くん」
・・・さすがにこれは某所から警告が来そうだ・・・
億が一、これらのキャラクターが商品化されることになっても、彼だけは登録抹消された幻のキャラとなることでしょう
人知れず悪と戦う孤高の男。だがそのアンコ型の体型からは、最近の不摂生ぶりがうかがえます
色はいわゆる桜島カラーということで


200607022014305番手はこないだ好評を頂いた「ナスカくん」
こいつも「差別ネタギリギリ」という点ではかなり危ないです

口の中に蛇を飼っているというちょっと非常識な御仁ですが、なんせ千年以上前の人間なんで、理解しづらいのも無理はありません

趣味は部族闘争


20060621183933_1トリを飾るのは「ヘルボさん」
これまでのキャラとは一線を画す、大人の魅力でせまります

彼も本当は版権とかまずいんですが、海の向うのキャラなのでたぶん大丈夫・・・かなあ
趣味は妖怪退治
口癖は「やれやれ」


画像はどれも紙に書いたものを携帯でとったものです。「なぜPCで描かない?」とお思いのことでしょう。すいません。わたしにはむずかしすぎます。
これから記事の端々にちょこちょこ出てくるかもしれません。出てこないかもしれません。要するに気分次第ということです。失礼しました


20060702202617製作はSGA屋伍一でした


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July 01, 2006

風と雲とギャグと 『風雲児たち』を語ってみたい⑩

今日は無印版『風雲児たち』前半を象徴するようなコンビ、林子平と高山彦九郎について。潮版でいうと5巻から16巻、リイド版でいうと4巻89Pから12巻100Pまでのおはなし。

一見天下泰平とも見える江戸中期、「この国は危ない!」と真剣に考える二人の男がいました。一人は仙台藩士林子平。諸国を漫遊し、多くの知識と教養を身につけた子平は、日本がいつ外国に攻め込まれてもおかしくないことに気づきます。四方が海に囲まれたこの「海国」を守るためにはどうしたらよいか、子平はその対策を論じた『海国兵談』なる書物を著して幕府に意見します。
もう一人は上州郷士高山彦九郎。もともと先祖が新田義貞(らしい)であることから天皇への崇敬の念が篤かった彼は、東北での飢饉の惨状を目にするにあたり、「天皇に政権を戻させることが」この悲劇を無くすことにつながると考えます。
異なる意見に対し不寛容だった時の権力者・松平定信が、彼らを黙って見過ごすわけはありませんでした。真に国のためを思い行動した二人に対し、幕府は容赦ない弾圧をもって報います。

この二人、戦前・戦後まもなくくらいは普通に義務教育で教えられる人物だったようですが、わたしはこのマンガを読むまで全然知りませんでした。自分の無知も省みず、「オリジナルのキャラかしら」なんて思ったものです。
彼らが義務教育から敬遠されることになったのは、恐らくその思想にあると思われます。片や軍国主義、片や天皇崇拝で片付けてしまう人も多いでしょうから。たしかに彼らの主張にはいささか限界があり、やりようによっては大いに国家に弊害をもたらすものです。みなもと先生も作中でそのことをきちんと述べておられました。でも先生が子平・彦九郎を好意的に描いているのは、二人のその無私の精神に心打たれたからではとわたしは考えます。家庭の幸せを持つことすらあきらめ、天下万民のために身をなげうってまで信念を貫くその姿は、時代を超えてわたしたちの胸を強く打ちます。
さしあたって平和な時代において彼らの言い分は、大洪水の前のノアの如く、多くの人々にとって「狂気」と見えたかもしれません。もう一人蒲生君平なる思想家も加え、後に「寛政の三奇人」と呼ばれる所以ですが。
たしかに二人が生きた時代に、その思想はあまり要をなさないものでした。しかし彼らが没した後、日本は徐々に欧米列強の驚異を無視できなくなっていきます。幕末にいたり、志士たちが新たな日本を築くために礎としたのは、子平・彦九郎の思想であり、生き様でありったにちがいありません。

毎度このレビューを描いていて思うのは、「どうしてこんなに堅苦しくなってしまうのか」ということ。そしてそのたびに強調してますが、「このマンガはギャグマンガでもある」ということ。
子平も彦九郎も尊敬すべき人物でありますが、太平の世にこれほど面白い人物もまためずらしい。日本全国をまたにかけ、一揆に加わったり、暴徒を鎮圧したり、様々な人物と交友を深め合い、かと思えば長期にわたりひきこもってしまったりする。そのめまぐるしい人生を、未読のかたたちはぜひ堪能していただきたい。

わたしが最初にこの作品の名を知ったのは、アニメ雑誌『OUT』 のレビューだったことは先に述べました。そこには、子平さんのこんな川柳が紹介されていました。

この首(こうべ) 飛ぶか飛ばぬか 明けの春

男子と生まれたからには、一回くらいこんな名句を詠んでみたいものです。はい。

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