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June 12, 2006

山田風太郎に関しては色々言わせてもらいたい⑩ 『警視庁草紙』

今日は少し前に再読了したこの本を。「明治もの」の記念すべき第1作。何度か『警視庁草子』と書いてたかもしれませんが、ただしくは『草紙』です。毎度もっさけなかこつでごわ。

明治6年、西郷隆盛が野に下ったところから物語は始まります。首都東京の治安を守るため、新政府は川路利良を長官とする「警視庁」を設立。しかしその「野暮」なやり方に反感を覚える者も数多くいた。その一人でかつての南町奉行駒井相模守は、元同心千羽兵士郎らと語らい、警視庁に対し再三に渡っていたずらをしかける。彼らに「粋な計らい」とは何かを教えるために・・・

『警視庁草紙』の際立った特徴は、まずこの明治6~10年という時代設定。一応「明治」となってはいますが、ついこないだまで「江戸」だった年代です。そのため「明治もの」とはいっても、まだ半分江戸時代みたいな独特の空気が、行間から漂ってきます。そして物語の終る明治10年は、西南戦争が勃発した年。維新はなったけれどもまだまだ世の中は収まらない。主人公兵四郎らの、言ってみればのんきないたずらと平行して、内紛にいたる緊迫した情勢も合間合間に語られていきます。

それまで忍法帖で人気を博していた山田先生にとって、この作品は大きな方向転換と言えました。恐らく半端じゃない意気込みで執筆されていたものと思われます。そのせいか、この『警視庁草紙』は、他の「明治もの」とくらべて、大変密度が濃く、その意気込みが凝りに凝ったプロットにあらわれている気がします。中期・後期の明治作品なんかは、もうちょっとあっさりしていてスイスイ読めます。

わたしが特に感銘を受けたエピソードは次の三篇。
・「明治牡丹灯篭」 いわゆる第1話。人情味と意外性を両立させた密室殺人事件。怪談を理論的に解決し、また怪談に戻すという、「京極堂」を先取りしたようなお話。
・「妖恋高橋お伝」 実在した毒婦、お伝の壮絶な恋の物語。最後の1ページに、女の執念の怖さがみなぎっております。
・「吉五郎流恨録」 サブキャラの吉五郎がメインのエピソード。同じ日に死罪・流罪・釈放となった三人の男。その一人であるスリ名人吉五郎の運命が、他の二人の手によって動かされていく。

新選組のあの人や、あの文豪も特別出演。以前「明治もの」マイベストは『幻灯辻馬車』『地の果ての獄』『エドの舞踏会』と書きましたが、再読了してみると『エド』よりこちらの方が上かも・・・・ 『エド』も十分面白い作品ですが。
『警視庁草紙』は現在ちくま文庫より刊行。大書店かネットで・・・と言いたいところですが、最近「明治もの」、品切れが目立つようになってきました。これは『知る・楽しむ』のせいか? 見つけたら速攻ゲットをおすすめします。
タイムリーなことに今月21日より、以前NHKで製作されたドラマ版が再放送されるとのこと。前はなんとなくスルーしてしまいましたが、今回はちょっとおっかけてみようと思ってます。
20060612195537画像はわたしが十年くらい前に入手した文春文庫版(1982・83発行)
シュールなデザインです。


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Comments

お久しぶりです。
>タイムリーなことに今月21日より、以前NHKで製作されたドラマ版が再放送される
すてきな情報ありがとうございます!
受信料払ってませんが、見ます。
というか、そろそろ払わないといかんだろう……。
罰金は嫌だ。
近藤正臣の川路というのが今ひとつぴんときませんが。
写真で見る限りもっとごついイメージ。

明治ものはやっと断頭台まで読み終わりました。
エドの舞踏会だけが手に入ってません。
ちくま文庫でとしぶとく探しているのですがなかなか見つかりません。文春で手を打つことにしようか。

Posted by: kakakai | June 12, 2006 at 09:22 PM

復活されたようですね。嬉しいです。
受信料、自分は最後いつ払ったかな(汗)
情報はこちらに書いてあったんですが
http://www3.nhk.or.jp/drama/html_saihousou.html
※番組変更により、放送日時が変更となる可能性がございます。
なんて書いてありますね。油断できん・・・・

>明治ものはやっと断頭台まで読み終わりました。

ということはあと半分くらいでしょうかね。『断頭台』は確かコテコテの推理小説でしたね。

上の記事にも書きましたが、最近本当にちくま版見かけなくなりました(忍法帖短編全集はあるけど)。ここらでバーンと増刷かけてくれるとありがたいですねえ。わたしは『地の果ての獄』『明治波濤歌』が欲しいです。


Posted by: SGA屋伍一 | June 13, 2006 at 07:57 AM

こんにちは。
『警視庁草紙』はいいですよね〜、あの一つ一つの短編が
長編並にボリュームがあって読み応えがありますよね。


NHKドラマが再放送されるとのことですが、
兵四郎の髪型が違うのがどうしても納得できないので
あまり乗り気で見ることができなかったりします(汗)


文春文庫版の表紙カッコいいですね♪
『エドの舞踏会』は人気ありますが
個人的にはあまり好きではなかったりします。

Posted by: ますい | June 13, 2006 at 06:59 PM

>あまり乗り気で見ることができなかったりします(汗)

あー、わたしもそんなに期待はしてません。ただあの世界をどういう風に実写化したのかなー、ということに興味があります。ただ「このキャラはこう!」という確固としたイメージがある人はつらいでしょうね。自分はあんまりそういうこだわりとかないので

>文春文庫版の表紙カッコいいですね♪

いいですよね、これ。『幻灯辻馬車』も古ーい文春文庫版で持ってるんですが、こっちはもっとシンプルです

>『エドの舞踏会』は人気ありますが
個人的にはあまり好きではなかったりします。

『エド』は男性視点から書かれた女性の物語ですからね。女性からしてみれば色々不満があるんでしょうか。あー、でもますい様は『くの一忍法帖』はOKなんでしたっけ? 『くの一』ほどヒロインたちがはっちゃけてないのがご不満なのでしょうか。またそちらのサイトなどでレビュー書いていただけたら嬉しいです。


Posted by: SGA屋伍一 | June 13, 2006 at 10:17 PM

やっぱりせっかくだから見てみようかな〜と迷っています(笑)
でも最初に「人も獣も天地の虫」からってどうなんだろう…。


『エドの舞踏会』は男性視点から描かれているとは
私はあまり感じないのですが、なんだか風太郎にしては無難というか当たり障りがないというか優等生みたいな作品で好きではないんですよ。


どちらかと言うと私が風太郎に求めているフェミニズムは『くノ一』とか『棺の中の悦楽』とか『黒衣の聖母』なんですよ。

Posted by: ますい | June 14, 2006 at 07:55 PM

>でも最初に「人も獣も天地の虫」からってどうなんだろう…。

あ、そうなんですか。やっぱり全エピソードはやらないでしょうね。やるにやれないものもあるだろうし(笑)。でも『怪談牡丹灯篭』はやらないとまずいですよね。どうなんだろ

>なんだか風太郎にしては無難というか当たり障りがないというか優等生みたいな作品

なるほど。確かに予定調和というか、収まるところに収まるような印象はありますね

>私が風太郎に求めているフェミニズムは『くノ一』とか『棺の中の悦楽』とか『黒衣の聖母』なんですよ。

たしか橋本治氏が「風太郎は本当の意味で差別をしない人」と語っておられました。でもそこまで見抜くことができる人はなかなかいません。お見それしました

Posted by: SGA屋伍一 | June 14, 2006 at 10:18 PM

>ドラマ
「私のこだわり人物伝」で、ちょろっと映像が出ていましたよ。
川路殿が近藤正臣で。まあドラマはドラマで。
いいタイミングでいい場面が使われていたんですよ。
ラストのあの台詞が、そのまんまやっているんだ~とか驚きました。
しかしこの時期に、ひそっとやるもんですな(笑)
観るぞ。受信料は毎年1年分前払いしてるし!(笑)(この方がお得!)

Posted by: 高野正宗 | June 15, 2006 at 12:08 AM

>「私のこだわり人物伝」で、ちょろっと映像が出ていましたよ。

あー、わたしも記憶してます。川路さんとお奉行が、日本のこれからについて静かに激論してるところでしたよね。
なんか独特の雰囲気があったので見ときゃよかったな~、と思ってたんです。教育に続いて総合でも山風プッシュ始めるのでしょうか
問題はいつ見られるか、だな~ 録画したままどっかへ忘れないようにしないと(ありうる・・・)

Posted by: SGA屋伍一 | June 15, 2006 at 07:39 AM

「明治牡丹灯篭」はやらないようです。
そのほか、「痴女の用心棒」が「天女の用心棒」になってたり
原作の素晴らしいサブタイトルがビミョーになってる点も不満が(笑)


『エドの舞踏会』についてはブログ等で何か書くつもりでいます。
ありがとうございます!

Posted by: ますい | June 15, 2006 at 03:42 PM

>「明治牡丹灯篭」はやらないようです

あら残念・・・ なにかコードに引っかかるようなところでもあったんでしょうか。というか「痴女の用心棒」の方がNHK的にまずいと思うんですけど

>原作の素晴らしいサブタイトルがビミョーになってる点も不満が(笑)

ドラマのタイトル自体が『からくり事件帖』ですからね・・・ 考えてみると「警視庁」+「(お伽)草紙」ってなかなか個性的なタイトルですよね。ていうか、誰も思いつかないと思います。

レビュー楽しみにしています。

Posted by: SGA屋伍一 | June 16, 2006 at 08:40 AM

>※番組変更により、放送日時が変更となる可能性がございます。
>なんて書いてありますね。油断できん・・・・

早速、変更あったみたいです。昨日の新聞で週間のTV番組チェックしていたら、水曜日はまだ「花へんろ」になっていました。「からくり事件帖」は木曜日からです。

Posted by: kakakai | June 19, 2006 at 08:11 AM

情報ありがとうございます。
当日になるまで安心できませんね。こりゃ
この枠過去の名作ドラマをずっとやるみたいですね。市川森一氏の『夢暦長崎奉行』なんかやらないかなあ

Posted by: SGA屋伍一 | June 19, 2006 at 08:32 AM

>過去の名作ドラマ
ナニ、聞き捨てなりませんな。
このDVD全盛の世の中、「草紙」も「夢暦」もBOXになってくれないかと思いますが、まだ無理っぽいので放映に期待。
私も番組表チェックして、アレ?でした。油断なりませんな~。

Posted by: 高野正宗 | June 19, 2006 at 07:01 PM

>「草紙」も「夢暦」もBOXになってくれないかと思いますが

それもいいですけどBOXって高いですよね・・・ 二万三万当たり前・・・

NHK名作つながりでいうと、『からくり事件帖』の脚本はわたしが好きだった『武蔵坊弁慶』の杉山義法氏なので、その辺も期待してます

Posted by: SGA屋伍一 | June 19, 2006 at 07:55 PM

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