まんが妖怪今昔物語 マイク・ミニョーラ 『ヘルボーイ』
たったひとつの地獄を捨てて 生まれ育った地上の世界
鉄の拳で妖怪退治 ヘルボがやらねばだれがやる
ジャイヴアメリカンコミックス、ふっ・・・・ かああつ!!
というわけで今回は先日最新刊『人外魔境』が刊行されたばかりの、『ヘルボーイ』を紹介します。
第二次大戦末期、ナチスが行ったある実験により、魔界から奇妙な少年が召還された。彼はヘルボーイと名づけられ、長じて米国の超常現象捜査局に入局。世界をまたにかけ、様々な怪異に立ち向かっていく。
ま、一言でいうならアメコミ版『ゲゲゲの鬼太郎』ですね。もっぱら短編の方に言える特徴ですが、作者のオリジナルというより、世界各地の様々な民話をアメコミ風にアレンジしたものとなっています。妖怪話って「河童はキュウリがきらい」とか「お化けはヨモギを炊くと逃げる」とか、わからん決まりごとが色々あるじゃないですか。
本作品では民話のそういったシュールなテイストが、非常に大事にされています。
また、日本の第一線にある絵師たち・・・・水木しげる、寺田克也、麻宮騎亜、内藤泰弘、貞本義行etc ・・・がこぞって誉めるのがそのアート。前から漫画家やプロの評者の方たちって、単純なんだけど個性的な線を描く作家を好む傾向があるなあ、と思ってたんですが『ヘルボ』はまさにそういう画風です。やる人によっては「手抜き」と見られかねない大胆な影の塗りつぶしが、すごくかっこいい。
わたし個人としてはこの人の書く野生動物が好きです。この世界では化け物類がどっか愛嬌があるのに対し、なぜか普通の動物の方が鬼気迫るというか、異様な空気を漂わせていたりします。
『ヘルボーイ』はまず小学館プロダクションより第1長編『破滅の種子』、第2長編『魔神覚醒』、第1短編集『縛られた棺』、第2短編集『滅びの右手』、そして特別編『バットマン/ヘルボーイ/スターマン』が刊行。
そのあと少し間隔があってJIVEより第3長編『妖祖召還』、第4長編『人外魔境』が刊行されました。が、小プロ版のほうは第1、第2長編以外は現在入手困難となっています。わたしが特におすすめしたいのは第1短編集『縛られた棺』なんですがね・・・ 特に「屍」の独特な語り口や「聖オーガストの人狼」ラストの美しさは一見の価値あり。復刊よろしく。妖怪や変った民話の好きな方であれば楽しめること間違いなしです。値段が少々あれですが。
画像左がそのヘルボーイ。「ボーイ」というわりにもっさりしたオッサン。このヘルボのきさくで暖かな性格も本作品の魅力のひとつ。
右はわたしがさっき描いたインチキへっぽこヘルボーイ。このイラストを抽選で一名の方に・・・ってだれがいるかああ!!(自爆切れ)
Comments
こんばんは!以前、『ゴーストライダー』の時に、自分用のメモ、ということで、片っ端からアメコミ原作はどれくらいあるのかなあ、と探したのですが、その際に、とある方からオススメされてこの作品は面白いよ、と聞いていました。
SGAさんはさすが、原作で読まれてらっしゃいますね。
SGAさんの好きなのは主にアメコミなんでしょうか?
私も結構映画を見ている中で、アメコミ原作のものって、やけに好きだったりします。
実はSGAさんがケナされていたのでコメントしにくかったのでしたが、『スポーン』もそんなに面白くないのはわかっているのに、決して嫌いになれません(笑)
実はサントラまで持ってます~(爆
で、この漫画やけにアーティスティックで意外でした。
大胆なベタ塗り・・ちょっと怖いくらいですね。
音楽室で夜動いてそうです。
Posted by: とらねこ | February 26, 2008 06:06 PM
>とらねこさま
コメントしづらそうな記事にお返しありがとうございます
>SGAさんの好きなのは主にアメコミなんでしょうか?
映画もアメコミ好きですけど、先にはまったのはアメコミの方なんです。だからどうしてもアメコミ映画に関しては、原作の方が思い入れが深いですかね
英語の読めないアメコミファン・・・
もっとも自分英語あんまり読めませんので、邦訳が出たものしか目を通してません
まるで木に登れない猿のようです・・・・
>スポーン
で、これも原作にあった「哀愁」が薄味になっちゃった気がして、ちょっとがっかりしたのでした。もっとあーもできたんじゃないかこーもできたんじゃないかと。ま、オタクの繰言です。それにしてもあの時の『スポーン』ブームはすごかった・・・ 去るのも早かったけど
>大胆なベタ塗り・・ちょっと怖いくらいですね。
とらねこさんはこういうのが怖いんだ。血みどろは平気なのにね(笑)
わたしゃ血みどろの方が苦手です
Posted by: SGA屋伍一 | February 26, 2008 10:17 PM
こんばんは、トラックバックありがとうございます!
>前から漫画家やプロの評者の方たちって、単純なんだけど個性的な線を描く作家を好む傾向があるなあ
あ~なんかわかりますw
少ない輪郭線で立体感を出すのってすごい難しいんですよ
線をたくさん使って(ハッチングと言います)立体感を付ける方が実は絵かきとしては容易ですからね(^_^;)
漫画家はどれだけ抽象化された洗練された描線をキレイに描けるかがに意識が行っているから、え~こんな少ない線でリアルに見える!っていう技法に影響を受けちゃうのかも・・・
かくいう私も必要最低限の線はひかないようにしているのですが、ベタを使った思い切った陰影はちょっと勇気がなくてやれないですね・・・なんか「自然界に黒なんてねえ!」って言った印象派じゃないんですけどベタ恐怖症なんですよ(^_^;)
Posted by: 田代剛大 | August 22, 2013 12:02 AM
>田代剛大さん
こちらこそコメントありがとうございます!
あてずっぽうで書いたことですが、実際に絵を描く人から賛同いただけるとぐっと説得力が増しますね!
またまたあてずっぽうで書きますがこれでもかというくらい緻密な絵を描く人は「職人タイプ」で、シンプルで独創的な線を描く人は「芸術家タイプ」と言えるかも。絵心のない者としては「どっちもすごいなあ」と言うほかありません
ベタ恐怖症… おぼろげながらわかる気もしますw 思い切ってやってしまうともう修正がきかねえ!みたいな?
Posted by: SGA屋伍一 | August 23, 2013 08:09 PM