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June 10, 2006

平成ライダーの六年間を振り返る 龍騎編⑤

昭和・平成を問わず、「仮面ライダー」シリーズにおいてもっとも頼りない主人公は? わたしは本編の主人公、城戸真司くんではないかと考えます。他の主人公たちは何かしら特殊技能を持っていたり、あるいは様々な経験をつんでいたりするわけですが、この真司くんにかぎってはそういうものが見当たらない。本当にごくごく普通の(貧乏な)若者です。強いて長所をあげるとするなら、まあ気さくであることとか、正義感が強いとか、餃子を作るのがうまいとか、そんなもんじゃないでしょうか。
そんな彼がライダーになったきっかけは、怪物に母親をさらわれた少女が泣いているところを見たからでした。「オレもライダーになれば、誰かを助けられるのかな」 モンスターと契約し、戦う道を選ぶ真司。しかしこの「戦い」を司る男・神崎士朗は真司に冷酷にもこう告げます。「仮面ライダーとなったものは、最後の一人になるまで戦い続けなければならない」 

平和な社会になに不自由なく育った真司は、わたしたちの等身大的なキャラクターであり、戦後日本で育った若者たちの代表的な存在であると言えます。わたしたちは泥沼化した中東の情勢などを見て、「人間は愚かだ。なぜ争いをやめられないのか」と呟きます。けれどももし彼らから、「家族を殺されたことのないお前になにがわかる」と言われたなら、口をつぐまざるをえないでしょう。

戦い合うライダーたちを止めようとする真司。けれどその言葉はなかなか他のものには伝わりません。ライダーとなった者たちには、それぞれ戦うための理由があったからです。自分の、あるいは大切な人の命のゆえ、単純に戦いを欲するゆえ、生きる目的を見出そうとするゆえ・・・ 自分と彼らの間にある壁にぶちあたる度に、真司くんは深く悩みます。

この『龍騎』は大きな矛盾をはらんだ作品でもありました。ヒーローものの醍醐味というのは、普通正義の味方が悪者をかっこよくやっつけるところにあります。でも真司くんにはそれができません。彼は人を守るためにライダーとなったのだから、例え悪人でも誰かを殺したら、その時点で自分を否定することになってしまうから。
モンスターには無類の強さを誇っていても、同じ人間である王蛇やタイガの攻撃の前にはただ耐えるしかない龍騎。その姿を見ているのはなかなかに辛いものがありました。

最近学校の授業で「なぜ人を殺してはいけないのか」という問に、教師がきちんと答えられなかった、ということがあったそうです。しかし『龍騎』を観るとき、わたしたちは一つの答えを得ることができます。すなわち「殺すものは殺される」ということです。また、戦う意思はなくても力があるというだけで、命を狙われることもあります。そこまでのリスクを背負いながら、真司は他の者に懸命に呼びかけ続けます。そしてその願いが、やがてわずかな者たちの心を動かすようになります。

一年通して何度も傷つき、悩み、絶望し、それでも最後に彼はこう言います。「戦いを止めたい。きっとすげえ辛い思いしたり、させたりすんだろうけど、それでも止めたい。それが正しいとかじゃなくて、オレもライダーの一人として、かなえたい願いが、それなんだ」
個人的にはこの辺が、現時点における平成ライダーの頂点であったと考えています。

次回は恒例?のベストシーンでしめたいと思います。

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