岡山少年野球団 血煙友情編 あさのあつこ 『バッテリーⅢ』
えーと『Ⅱ』をレビューしたのは・・・ 去年の7月じゃん! ずいぶん間が空いてしもうた。天才投手原田巧と、彼の速球に魅せられたチームメイト・永倉豪のぶつかりあいを描くシリーズ三作目。
一作目のレビューはこちら http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2005/05/post_3881.html
ついでに二作目も http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2005/07/post_2f60.html
上級生の起こした騒動で監督が負傷したため、部活停止を言い渡された野球部。その期間がようやく明けて、巧たちは野球をできる喜びをかみしめる。大会に出られぬまま引退となる三年生のため、また校長の野球部に対する不信感を払拭するため、監督は強豪校・横手二中との練習試合を計画する。しかし県下随一の実力を誇る横手と試合を取り決めるのは容易なことではない。そこで監督・戸村やキャプテンの海音寺が考え付いた作戦とは。
二巻では先生や上級生とビシバシぶつかりあい、わたしたちをハラハラさせてくれた巧くん。三巻ではその問題はとりあえず解決しているので、前の巻にあった「やるかやられるか」みたいな緊張感はなく、多少ゆったりしたムードが流れています。だからといってつまらないわけではありません。がんがん読者をひっぱるストーリーは健在で、わたしはほぼ1日でよんでしまいました。本当はもっとじっくり味わって読んだほうがいいんでしょうけど、途中でやめられないんですよ。この話。
今回はようやっと(笑)試合のシーンがあります。部内での練習試合という、極めてスケールの小さい舞台ではありますが。ほのかにめばえたロマンス要素は完全にオミット。巧たちを応援する女性教師小町先生が、ひとりで女ッ気を添えています。この先生、自分の受け持ちである卓球部をほったらかして野球部にかかりっきりで、顧問としては少々問題だと思います。
さて、この巻のキモは、主人公コンビの衝突のくだり。あらすじを読むと「巧と豪の堅かった絆(そうか?)に亀裂が入って!?」とあります。天上天下唯我独尊、「おれ以外はどうでもいい」なタックン。今度は一体どんな暴言を吐いたのやら、と思いましたが、その事情は意外なものでした。
横手二中のキャプテン、門脇と勝負することになった我らがバッテリー。しかし巧は豪のことを心配しため、四球目についセーブした球を投げてしまい、みごとにホームランを打たれてしまいます。
その晩、豪は巧を呼び出し、彼の顔面に鉄拳をおみまいします。これ、考えようによってはかなりひどい。だって巧は豪のことを思いやってあげた(これもかなり異例のことですが)のに、なんでその当人からパンチをもらわなきゃならないのでしょう。
豪は言います。「おまえな、あの四球目のあと、どんな目ぇしておれを見た。わかっとんか。哀れみやがって。」「おれがほんまに戦わんといけん相手はな、横手でも校長でもない。おまえなんじゃ」
友情というにはあまりにも厳しすぎる、二人の関係。そういえば先日『仮面ライダーカブト』にて「友情という言葉は危険」というセリフがありました。情に甘えることは、時として成長をとめてしまったり、自分らしさを失ってしまう恐れがある、ということなのでしょう。
恥ずかしながら、わたしは高校のころ美術部に所属していました。時々互いの作品に対して批評会があったんですが、一癖ある顧問の先生が「どんどん傷つけあいましょう。馴れ合っていてはうまくならんぞ~」みたいなことをよく言っていました。正直アタマにきましたし、いまでもその言葉に納得したわけではありませんが、ひとまわり成長したいのであれば、慰めあうだけでなく、多少のぶつかりあいも必要なんでしょう。そのバランスをとるのが、なかなか難しいわけですが。
この巻ではいままでその多大勢的だったほかのメンバー、沢口や東谷の個性も次第にはっきりしていきます。野球にひたむきな情熱を燃やすキャプテン海音寺、無礼な後輩にもひょうひょうと受け答える策士・野々村も、魅力的なキャラクター。
果たして巧と豪の関係は、これからどうなっていくのか。残り半分となった『バッテリー』に引き続き注目していきたいと思います。
とりあえずおれたちは、なまぬるーく行こうな! ゼンザイ先生!!
Comments
こんにちは♪
TBさせていただきましたが、こちらからも送れていないみたいですね~。困ったものです。
『バッテリーⅢ』。そういえばサブキャラも随分がんばっていましたね。
大分忘れてしまっています('◇')ゞ
SGA屋伍一 さんの記事を読んでいたら、
やっぱり最後まで読みたくなってきました(笑)
Posted by: そら | July 05, 2006 04:06 PM
律儀にご来訪ありがとうございます。TBの件すいません。最近ココログ不都合が多いみたいで
わたしも4巻以降はまだ読んでません。がんばって最終巻(文庫版)が出るまでに追いつきたいです
>サブキャラ
で言うと、上にあげた野々村くんなんかが気に入っております
またそちらに伺いたいと思いますので、どうぞよろしく
Posted by: SGA屋伍一 | July 05, 2006 11:00 PM