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June 28, 2006

山田風太郎に関しては色々言わせてもらいたい⑪ マイ風太郎原体験

こないだ山風のファンサイトである、ますいさんところ(http://moufudiary.blog24.fc2.com/)にお邪魔したとき、「そういえばわたしの山風原体験ってなんだろう」とふと思ったのでした。年バレ覚悟でいってみましょう。
つらつら思い返してみるに、やはりファーストコンタクトはテレビで見た角川映画『魔界転生』(1981)『伊賀忍法帖』(1982)の宣伝じゃなかろうかと。『伊賀』の方はくの一らしき女性の顔がずーっとアップで映っていて、瞳が徐々に怪しく輝いてくる、そんなCM。子供心になんか怖かったのを覚えています。そういえば角川映画のCMってなんかこう無意味におっかないものが多かったですね。
この二作品だいぶあとで鑑賞する機会に恵まれました。『伊賀』は序盤は概ね原作どおりなのに、終わりが近づくにつれ、どんどん逸脱していきます。『魔界』に至っては序盤からオリジナル一直線という感じでした。わたしが『SHINOBI』に寛容なのは先にこれらを観ちゃってたからかもしれません。

その後伝奇作家の菊池秀行氏のエッセイや、『このミステリーがすごい!』で名前を見たりしましたが、いまひとつ食指が動かず。角川文庫の作品一覧で「○○忍法帖」というタイトルがずらーっと並んでるのを見て、「なんかおんなじようなのばっかり書いてる人だなあ」という印象があった(無礼千万)からでしょうか。
結局最初に手にとったのは1992年に毎日新聞社より『柳生十兵衛トリロジー』と銘打って、例の三部作が統一デザインの単行本で出されたとき。広告でそれぞれのあらすじを読んで、「すっごい面白そうじゃないか!」ということにようやく気づいたのですね。それで、図書館で『柳生忍法帖』を借りて、一気に読んでしまったのでした。
しかしわたしが本格的に山風にはまったのはこのもう少しあと、講談社ノベルスより「山田風太郎傑作忍法帖」と銘打ったシリーズが発行されてから。書店の平台に横尾忠則装丁による『甲賀忍法帖』『伊賀忍法帖』『忍びの卍』がずらっと並んでいたのには、なんというか「ただものではない」インパクトがあったのでした。そしてこの三作品がまた、それぞれとても面白かった。このときからわたしは山風にハートを奪われてしまったのでした。

しかし悲しいかな、この時点で入手できる山風作品は非常に限られていました。そこで神田や高田馬場を、足を棒にして絶版本を探しまわることに。そこそこ収穫のあるときもありましたが、大概は時間も労力も無駄にすることの方が多かったです。
そうしている間に出版界では山風復刊ブームが起こり、わたしが苦労して探し出した作品は情け容赦なく次々とリバイバルされていきました。正直「あの苦労はいったいなんだったんだー!」とがっくりきました(笑)。けれどこれでさらに多くの人が容易に読めるようになったわけですから、そういうお尻の穴が小さいことを言っていてはいけません。それにこのブームのおかげで、見つけられなかったレアものも色々読めるようになったわけだし。特に廣済堂さんにはお世話になりました。

一通り読み終えて、山田先生が亡くなられると、わたしもなんだか熱が醒めはじめ、あまり古書店でもチェックしなくなっていきました。が、昨年高野正宗さまがブログで集中的にとりあげられておられるのを読んでいたら、ひさしぶりに「山風魂」が再燃。引っ張り出したり買ったりして、幾つか再読してるうちに、ふたたびそのとりこになってしまっているという次第です。
気になるのは、最近また山風作品が入手困難になりつつあるということ。本屋でもネットでも品切れが目立ちます。各出版社のみなさま、ここらでまたどかーーーーんと再販かけてみましょうよ~
20060628201406画像は講談社ノベルス版。かっこいいです。肝心の『甲賀』がみつからない・・・ こんどゆっくり探すか

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June 26, 2006

平成ライダーの六年間を振り返る 龍騎編⑥

それでは最後はマイベストシーンで閉めたいと思います。例によって完全ネタバレなので未見の方はご了承ください。

・第2話 母親を奪われて泣いている少女。それをじっと見つめ、ある決意をかためる真司。「おれも仮面ライダーになれば・・・」 だからこそ後の蓮に戦いの動機を聞かれるシーンでは「女の子が泣いてたんだ・・・ ほかに理由なんかあるか!」とか言ってほしかったんだが
・第6話 デッキを切り裂かれて怪物に食われるカニライダー・シザース。「仮面ライダー」の名を冠するものがあっさり消滅してしまう衝撃。「カードデッキは全部で13。倒すべきライダーはあと11人。お前を入れてな!」のセリフがまた厳しい
・第12話 記憶を取り戻した蓮は、鏡の中のダークウイングに向けて拳を叩きつける。契約を交わしたモンスターも、彼にとっては忌まわしい存在でしかない。この辺から「嫌なヤツ」だった蓮にも感情移入できるようになった
・第19話 ガイ・芝浦を盾にして、躊躇なくとどめをさす王蛇・浅倉。「こういうもんなんだろ?」 それに対し「こんな・・ こんなことが」とショックを受ける真司。「戦いをやめさせる」ということがどれほど難しいことなのか、よく伝わってくる場面
・第23話 ライア・手塚臨終のシーン 「いまならわかる。雄一、お前は決して後悔なんかしていない」 またしても無力感にさいなまれる真司だが、一視聴者としては手塚のこの言葉のおかげでだいぶ救われた
・お笑いも一つ。第30話 ゾルダ・北岡の元秘書めぐみの回想シーン。北岡は「こんなことしかできないけど・・・」とめぐみの指に、おでんの卵をはめる。「秀一、熱いわ」 それを聞いて「なんていい話なんだ!」とのた打ち回る真司がバカでいい。めぐみ役は後にグラビアでブレイクする森下千里
・第34話ラスト サバイブのカードを渡された真司=龍騎が最初に対峙した相手は、皮肉にも蓮=ナイトだった。「おれは絶対に負けられない! 一つでも誰かの命を奪ったら、お前はもう後戻りできなくなる!」 自分を殺そうとしている相手に、普通こんな言葉が吐けるだろうか? そこが真司の主役たる所以であると考える。
・劇場版 ゲラゲラ笑って消滅する浅倉。「そろそろ死ぬか!」とひとしれず息絶えるファム=美穂。「誰かの命なんていらないんだ!」 そう叫びリュウガに立ち向かっていく真司。一部ではかなり不評だが、ライダー劇場版でもっとも印象深い作品でした
・TVスペシャル こちらはかなり慌しい印象だったが、まあお祭りということで。幾つもの折り重なる「ファイナルベント」の声の中、ナイトサバイブとなって剣をふりかざす真司に、『男組』のラストがオーバーラップ(劇場版もそうでしたが)。わたしは「戦いをやめる」に投票したかったけど、オンエア時用事があってかなわず(涙)
・第40話 「ここが祭りの場所か」 久々の乱戦シーン。香川教授演じるオルタナティブ・ゼロはデザインがもろ好みでした
・第44話 「おれはただ、幸せになりたかっただけなのに・・・・」そう呟き消滅していくインペラー・佐野。第46話 「じゃあどすれば英雄になれるのかな?」 答えがわからず、うつろな目で町をさまようタイガ=東條。ごくささやかな望みが人を狂気や不幸に陥れることもある、というエピソード
・第47話 どうしたらヒロイン・優衣の命を救えるのか。真司がたどり着いた答えは「何も考えなければいいんだ・・・」 これまでの信念を捨て、ナイトに剣を突きつける龍騎。だが優衣は叫ぶ。「わたし、そんな風に助けてもらってもうれしくないよ!」 どちらも少しも悪くなんかないのに、お互いに「ごめん・・・」という二人。鼻水大噴出でした
・第49話のラスト5分。「完全ネタバレ」と書きましたが、やっぱりここはあえて書きません。正直に言うと、ここ十年近くの映像作品で、一番思い入れのある場面。
・最終話 ニヤリと笑い、警官隊に向かって突進していく浅倉。そして最後の力をふりぼって、恵理のもとにたどり着く蓮。彼女が目覚めたとき、蓮は笑みを浮かべて座り込んでいた。「この戦いに正義はない。あるのは純粋な願いだけ・・・・」


おまけ「もし龍騎続編を二時間の映画でやるとしたら」(予告編風に)

突如として鏡の中から現れ、人々を襲うモンスターたち。事件を追う新米記者・城戸真司は奇妙な感覚に囚われる (おかしい。こんなこと、前にもあった気が・・・・)
戸惑う真司の前に現れる、黒衣の男。「思い出せないか、城戸。無理もない」 (あいつの名は、たしか・・・・)
鏡の中から呼びかけてくる、謎の少女。「おねがい真司君、力を貸して。あなたの助けが要るの」 (おれは君を・・・・知っている!?)
そしていま、真紅の龍騎兵がよみがえる
「変身!!」
新作劇場版仮面ライダー龍騎 『DRAGOON AGAIN』 
「それがおれの・・・・ 願いなんだ!」
近日公開予定(あるわけない)

子供たちには向かない話かと思われた『龍騎』でしたが、カードとモンスターというアイテムがきいたのか、グッズ売り上げでは現在までの最高売り上げを記録。そして「白倉三部作」最終作である『555』へとバトンを渡します。
次回はまたいったん『カブト』を語り、その後にレビューする予定(にしてもやっと半分か・・・)。
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June 25, 2006

紫のヅラのひと カート・ウィマー 『ウルトラ・ヴァイオレット』

20060624144027『リベリオン』でアクション映画に新風を巻き起こしたカート・ウィマー監督の最新作。日本では昨日公開されたばかり。すぐに終りそうなんで速攻で見に行きました(笑)
ではあらすじを。

近未来、兵器の開発から偶然発生したウィルスにより、人間は二種類に分かれることになった。感染により短命と引き換えに超人となった「ファージ」と、従来のホモ・サピエンスと。旧人類は感染の拡大を恐れ、ファージを徹底的に迫害する。新人類たちもそれに対抗するため、レジスタンスを組織。地下活動を続けていた。
レジスタンスに所属する超すご腕の女戦士「ヴァイオレット」は、敵側が開発したファージ殲滅の切り札ともいえる新兵器を奪取することに成功。しかしその新兵器の正体とはなんと・・・ というストーリー。

えーこの作品、先日公開された『イーオン・フラックス』とどう違うのでしょう?
答え:大体おんなじです。
ま、ハリウッドでは似たような企画が、たまたま同時期にかち合ってしまうということはよくあること。違うところをなんとか探してみましょう。タイトル・スタッフ・キャスト・・・は当たり前か。あとはヒロインのヘアスタイルとか。そうそう、今回のヒロインは「守るために戦う」。これが『イーオン』と区別できるポイントですね。イーオンさんはたしか復讐と自分の記憶を取り戻すために戦っていたっけな。
で、子供を守るために戦うのはいいんですけど、敵側の兵士は容赦なく皆殺し。少なくみつもっても、ざっと1000人くらいは殺してます。いやー、母性って、ほんッとうに恐ろしいものですね(晴郎調)。アクション映画にはどうも、「子供を守るためならどんな蛮行をやってもOK」というルールがあるようです。でもあまりにやりすぎるのもねえ。あとミラ姉さん、『バイオハザード』の時はあの髪形の成果ボーイッシュでなかなかチャーミングだったんですけど、今回のロングヘアVerはなんでかオカマみたいに見えて仕方ありませんでした。・・・なんでだろう。

他にもあまりにつっこみ所が多く、かなり寛容な心で望むか、あるいはアクションだけに意識を集中するかしないと楽しめないと思います。しかしそのアクションもどうも舞踊的というか、緊張感に欠けるというか。自分は『リベリオン』未見なんですけど、前作にしびれたファンは今回どう思うか知りたいところであります。
強いて印象に残ったアクションをあげるとするなら、重力制御装置を使ったチェイスシーンでしょうか。ビルの壁面をバイクがガラスを撒き散らかして走る映像は、平衡感覚をぐらぐらさせてくれてなかなかインパクトがありました。
あとこの作品で印象深かったのは頻繁に出てくる「血」の描写。これは血しぶきがドバドバ飛び散るということではありません(そういう描写はむしろ抑え目)。この世界では血がいろんなことに使われます。IDの証明や、治療薬、はたまたウィルス兵器など。血ってすごいですね。なんでもできちゃいます。

「なるたけいいところを見つける」というのが当ブログの趣旨ですが、今回はちょっとむずかしかったです(笑)。あんまり期待しないで行くと、意外に楽しめる・・・かもしれません。一応フォローということで。
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June 23, 2006

平成ライダー座談会

その1
20060623231841「えー、本日はみなさんお忙しいところおいでいただき、まことにありがとうございます。
仮面ライダー生誕35周年、我ら平成ライダーも今年で七年目となり、これから一層の発展を願って・・・・」
「まて、アギト
なにかおかしいとは思わないか?」
「・・・・おれ、クウガですから」


20060623200225「でも確かにそうだ。
平成各作品の主人公しか呼んでないから全部で七人のはずなのに、ひい、ふう、みい・・・ 八人いる!」
「どうやら部外者がまぎれこんでいるようだな。敵のスパイである可能性が高いぞ」
「もしや、ミラーモンスターか?」「オルフェノクかも」
「オンドゥルルラギッタンディスカーー!!」


20060623200316「どうだ? この中で見覚えのない顔はあるか?」
「見覚えって言われてもなァ」
「みんな今日初めて会ったばっかしだし」
「おれら先輩たちとちがって、横のつながりとかまったくないからなあ」
「困ったねえ」
「オンドゥルルラギッタンディスカーー!! 」


20060623231929「なに、むずかしく考えることはない
おおむね特撮の敵キャラといのは、ぱっと一目見て、すぐそれとわかるようなやつがほとんどだ。
お互いの顔をひとつひとつ見比べて行けば
おれたちと明らかに違うやつがいるはずだ
そいつが部外者と見ていいんじゃないだろうか」
「なるほど!」

2006062320044620060623200611「よし、みんな整列だ!」「おお!!」

「・・・・・」
「・・・・・」

「・・・・どうやらわかったぜ」
「おれもだ」


20060623200659「さあ!

白状しろ!!」


「ええ!?

おれ!?」


その2
20060623200732「まあ待て待て
おれはたしかに劇中では『ライダー』とよばれたことはないが、公式HPでは一応「仮面ライダー」ということになってるぞ
あ、そうそう、こんな話きいたことあるか? 東北あたりの話なんだがな。
隠れん坊で子供たちが遊んでたら、いつの間にか一人増えてる
コレは「座敷ぼっこ」というものの仕業なんだが・・・・


20060623201527「・・・って、おい! ひとの話聞いてんのか!」

「ふふ。どうやら連中、ムシなみの集中力しか持ち合わせていないらしい」
「ムシのお前がゆーか」
「ナズェミデルンディス!! 」


つづくかどうか


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June 21, 2006

まんが妖怪今昔物語 マイク・ミニョーラ 『ヘルボーイ』

たったひとつの地獄を捨てて 生まれ育った地上の世界
鉄の拳で妖怪退治 ヘルボがやらねばだれがやる

ジャイヴアメリカンコミックス、ふっ・・・・ かああつ!!
というわけで今回は先日最新刊『人外魔境』が刊行されたばかりの、『ヘルボーイ』を紹介します。
第二次大戦末期、ナチスが行ったある実験により、魔界から奇妙な少年が召還された。彼はヘルボーイと名づけられ、長じて米国の超常現象捜査局に入局。世界をまたにかけ、様々な怪異に立ち向かっていく。

ま、一言でいうならアメコミ版『ゲゲゲの鬼太郎』ですね。もっぱら短編の方に言える特徴ですが、作者のオリジナルというより、世界各地の様々な民話をアメコミ風にアレンジしたものとなっています。妖怪話って「河童はキュウリがきらい」とか「お化けはヨモギを炊くと逃げる」とか、わからん決まりごとが色々あるじゃないですか。
本作品では民話のそういったシュールなテイストが、非常に大事にされています。

また、日本の第一線にある絵師たち・・・・水木しげる、寺田克也、麻宮騎亜、内藤泰弘、貞本義行etc ・・・がこぞって誉めるのがそのアート。前から漫画家やプロの評者の方たちって、単純なんだけど個性的な線を描く作家を好む傾向があるなあ、と思ってたんですが『ヘルボ』はまさにそういう画風です。やる人によっては「手抜き」と見られかねない大胆な影の塗りつぶしが、すごくかっこいい。
わたし個人としてはこの人の書く野生動物が好きです。この世界では化け物類がどっか愛嬌があるのに対し、なぜか普通の動物の方が鬼気迫るというか、異様な空気を漂わせていたりします。

『ヘルボーイ』はまず小学館プロダクションより第1長編『破滅の種子』、第2長編『魔神覚醒』、第1短編集『縛られた棺』、第2短編集『滅びの右手』、そして特別編『バットマン/ヘルボーイ/スターマン』が刊行。
そのあと少し間隔があってJIVEより第3長編『妖祖召還』、第4長編『人外魔境』が刊行されました。が、小プロ版のほうは第1、第2長編以外は現在入手困難となっています。わたしが特におすすめしたいのは第1短編集『縛られた棺』なんですがね・・・ 特に「屍」の独特な語り口や「聖オーガストの人狼」ラストの美しさは一見の価値あり。復刊よろしく。妖怪や変った民話の好きな方であれば楽しめること間違いなしです。値段が少々あれですが。

2006062118414520060621183933画像左がそのヘルボーイ。「ボーイ」というわりにもっさりしたオッサン。このヘルボのきさくで暖かな性格も本作品の魅力のひとつ。
右はわたしがさっき描いたインチキへっぽこヘルボーイ。このイラストを抽選で一名の方に・・・ってだれがいるかああ!!(自爆切れ)


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June 19, 2006

戦国鬼嫁日記 ~大河ドラマ『功名が辻』より⑩

こんばんはっす! チヨっす! このコーナーもとうとう10回目だわ。よく続いたもんねー
ところでさあ、やっちゃったわねえ、村上ファンド。ホリエモンもそうだけどさあ、やっぱ人間楽して儲けようとおもっちゃだめ。うちの宿六みたく、長ドス振り回して力ずくで奪ってこなきゃ。え? それも問題あるって?

えーと今回はあたしが一躍カリスマ主婦になった一件と、歴史に名高い「本能ビル襲撃事件」について。サクサク行くよ!
いつのまにやら宿六もそれなりに出世したんだけど、どーゆーわけかアタシたち、いまだにマイカーも持てなかったのよねえ。なぜかっていうと、子分たち食わしてく経費とかが馬鹿になんなかったからなんだけど
そんなある日子供を後ろに乗せて自転車こいでたら、前田さんちの嫌味な奥さんが車で脇を通り過ぎてったのよ。いま流行のレクサスってやつ? 「あーら山内さん、大変ねー」とか言って笑いながら。すんげーアタマに来たわよ
こうなりゃ思い切り高い車買ってやる!と心に誓ったわ。ただ問題はカネ。どっかから降ってこないかなーと思ったら降ってきたのよ。これが。こないだ死んだ叔父貴の保険。これが降りてきてさー。こんなこともあるもんねー。
そこへ帰ってきた宿六。「ちょっといい中古のベンツ見つけたんだけどさー。とても手が出ねーよ」って言うじゃない? あたしは宿六の前に降ろしてきたキャッシュぼーんと叩きつけて「おら、これで買ってこいよ」って言ってやったの。宿六ポカーンとしてた。そりゃいきなり大金が出てきたってのもあるだろうけど、アタシが宿六にプレゼントっていうのが信じられなかったみたい。自分で言うのもなんだけど。
でもいつまでもボーっとされてるのもウザイんで、「とっとと行けや!!」つってお尻ひっぱたいてやった。ようやく宿六も実感沸いたみたいで、「ありがとう。これで出入りの時もすぐに逃げられるよ!」って感激してた。
この話がどっからもれたのか評判になって、家田荘子さんとかシバとかいう爺さんが取材に来るようになったの。ほんであたしら夫婦は一躍世間の脚光を浴びるようになったわけ。うははは。見たかマツ公。

そんな我が家が超ハッピーだったころ、すんげー事件が起きた。なんとあのボスがやられたって言うじゃない!? ほんでやったのがあの明智さんだって!? あたしゃアゴがはずれそうになったわよ。これが下克上ってやつ? なんか戦国時代みたい!! 
でもねー、いま思えばいろいろ思い当たるフシはあった。ほらミッチーってインテリじゃない? まあ極道にはあんまりむいてなかったのよね。最初のうちは法律に詳しかったから、ボスも喜んで重宝してたけど、最近はぶつかりあう・・・っていうか一方的にミッチーがぶつけられることも多かったみたい。ミッチーも黙って「はいはい」って言っときゃいいのにクソマジメなもんだから、いちいち「それは違法です」とか「それではあそこに迷惑が」とか意見して、そのたびに張り倒されてたって話。それなのにボスときたら、翌日はけろっとして「おお、あれ頼むよ」なんて感じだから、こりゃたまったもんじゃないわよねー。
そんな日々が続くうちに、ミッチーのアタマはどんどん髪が薄くなっていったの。それを見てボスは「キンカンキンカン」「はげめ。ぎゃははは」なんて喜ぶ始末。ミッチーにしてみりゃ「だれのせいでこんなんなったと思ってんだあ!」ってとこよねー。コレが直接の動機ね。まちがいない。

そんなわけでボスがお忍びでホテルに泊まってるところへ、ミッチーはズバッと奇襲をかけたわけ。ボスはあっという間に追い詰められた。あの人が少しでも人の心がわかる人だったら、こうはならなかったでしょうねー。最後は手榴弾巻きつけて壮烈爆死だったそうよ。最後の言葉は「マイドリーム・フォーエヴァー」だったっていう話。
こうなってみるとあの人もちょっと可哀想。成り行きで天下統一しなきゃならなくなったわけだけど、本当はずっと横浜でチャカぶっぱなして騒いでいたかったんじゃないかしら。

その後もいろいろすったもんだがありまして。それについてはまた次回。アテブレーべ・オブリガード。

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June 18, 2006

彫刻はなぜ壊される 法月綸太郎 『生首に聞いてみろ』

なにこの怖いタイトル。ひい! 今夜もうトイレに行けない! ・・・・という感じですが、中身はごくごくまっとうな本格推理小説。あらすじからいってみましょう。

探偵兼作家の法月綸太郎は、知人の個展で高名な彫刻家川島伊作の娘、江知佳と知り合う。ほどなくして川島は病死。彼は死の直前に、娘をモデルにした石膏像を完成させていた。ところが何者かの手により、石膏像の首が切断され、持ち去られてしまう。事件の解明を依頼された綸太郎は推理を巡らすが、それをあざ笑うかのようにさらなる事件が起こる。

法月作品の特色のひとつは緻密な論理性にあります。この作品ではまず彫刻の首がなぜ切断されたのかをめぐり、様々な推理が展開されます。「誰が」「どうやって」「何の目的で」 たくさんの可能性が検討され、さらには「そもそも首は最初から作られていたのか」という疑問まで検討されます。その答えも出ぬうちに、今度は人間の頭部が切断されるという事件が発生。先の事件といかなる関わりがあるのか。冷静にメモでもとりながら読まないと、頭がこんがらがること請け合いです。
ここで重要なポイントとなるのが、二つの彫刻の技法「アウトサイド・キャスティング」と「インサイド・キャスティング」。非常に丁寧な解説がなされていますが、正直門外漢が理解するには少々努力を要します。ですがこの部分を理解しないことには、解決編でのカタルシスが大幅にダウンしてしまうので、これから読まれる方はがんばってトライしてみてください。

タイトルは都筑道夫氏の名作『なめくじに聞いてみろ』から取られたとのこと。また悪質ないたずらかと思われたことが、本物の殺人事件に発展して・・・という流れは高木彬光氏の『人形はなぜ殺される』を連想させます。このあたり、法月氏の先達に対する並々ならぬ畏敬の念が伺えます。

作者について少々。法月綸太郎氏は90年代初め、講談社ノベルスが提唱した「新本格」の担い手として、『密閉教室』という作品でデビュー。先にデビューした綾辻行人氏と並んで、本格推理ファンから大いに期待されると共に、アンチ本格から「またこんな時代錯誤的なものを」と色々バッシングされたりもしました。
そのバッシングの影響をもろに受けてしまったせいか、4作目『頼子のために』から法月作品はカラーが変ってきます。普通本格推理の探偵というものは事件を冷静かつ客観的に観察・推理・解決しなければならないため、当事者からは一歩距離を置いていることがほとんどです。感情を乱されることのほとんどない言わば「超人」みたいな存在。法月作品もそれまでは探偵が無邪気に推理をめぐらせるそういうスタイルだったんですが、途中から謎解き役がどんどん事件に深入りして苦しみ悩むようなパターンが多くなってきます。こういうのはどちらかというと、ハードボイルド系にありがちな展開です。しかしその両者を折衷したような作風が一種独特な空気を帯びるようになり、法月氏は当初叩いていた評論家からも高い評価を得るようになってきました。ところが今度は作家・法月綸太郎が慢性的なスランプに悩まされるようになり、ファンは長い間やきもきさせられることになります。

で、この『生首に聞いてみろ』はファンにしてみれば『二の悲劇』以来十年ぶり(笑)の、待望の新作長編だったわけです。発表されるやいなや、持ち前の精密なロジックが高い評価を得て、『このミステリーがすごい!』第1位、週間文春ミステリー第2位と華々しい成績を収めました。
えー、でもです。ずっとおっかけてる立場から言わせてもらいますと、今回は先に述べた法月作品の持ち味である「センチメンタリズム」がちょっと足らなかったかなあ、と。いつもの探偵・法月氏だったら、悲劇的な展開に海より深く悩んでいたと思んですが、今回はわりと立ち直りが早いような。悩めばいいというもんでもないですけど、「法月綸太郎ならではの作品」とは少々言いがたいものを感じました。

けれど世評が証明してるように、ミステリとして一級品であることは確か。これを読んで作家・法月綸太郎に興味を抱かれた方は、『密閉教室』『頼子のために』『一の悲劇』等も手にとってみられて下さい。
角川書店より発売中。わたしはハードカバーで買ってしまったんで、当分文庫化はしないでください。

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June 17, 2006

おモチは何から出来るのか 是枝裕和 『花よりもなほ』

『誰も知らない』で国際的な評価を得た是枝裕和監督の最新作。現在絶賛公開中であります。

時は元禄年間。父の仇を追って江戸へ出てきた若き侍、青木宗左衛門が主人公。敵を探さにゃなんないんだけど、あんまり熱心ではない。理由は簡単。腕に覚えがまるきりないから。
裏長屋の連中と戯れたり、若い後家さんにほれたりしてるうちに、ますますやる気をなくす宗左衛門。ところが不幸なことに、目指す仇を見つけてしまったからさあ大変。勝負を挑もうにも、足がすくんで近づくのもままならない。
一方そのころ長屋の一角では、播磨から出てきた怪しい浪人の一団が集まり、不穏な計画を進めていた・・・

映画評なんかでは「時代劇の形をとった現代劇」とよく書かれてました。でもこれ、どこをどう見ても時代劇ですよ。だって今の日本に侍とかあだ討ちとか存在しないし。強いて当時の武士に近い存在といえば、自衛隊のみなさんとかですかねえ。一応有事に備えて訓練してるけど、本当に有事があったら困る。そんなところがよく似てます。
観ていて思ったのは「日本人ってあだ討ち話が好きだよな~」ということ。曽我兄弟しかり、鍵屋の辻しかり。
いまわが国は隣国と緊張した関係にあるわけですが、「やられたらやりかえせ」という声が強くなってきてるのも、そういう気質から来てるのかな、と思ったりします。
ただ実際に「やりかえして」すかっと解決するかといえば、とてもそうは言えません。「復讐はあくまでフィクションの中で楽しむだけにしておきましょう」というメッセージを、作品から感じました。

もう一点目をひくのは、長屋のばばっちい描写。画面の中から「ぷ~ん」とにおい立つようです。とくに排泄にかんする部分を、これほどまで強調した作品は近年まれでしょう。監督がなぜこれほどまでに「う○こ」を前面に出したのかは正直よくわかりません。「人間はきれいなだけでは生きていけない。ばっちいところ、俗な部分も全部ひっくるめてこそ人間なんだ」ということなんでしょうか。

主演はV6は岡田准一くん。『木更津キャッツアイ』『タイガー&ドラゴン』など、にぎやかな役が印象深い彼ですが、今回は落ち着いた演技を見せてくれます。って言うか、今回あんまりしゃべりません。
また、ダメ人間ぞろいの裏長屋の連中を、古田新太、上島竜平らがそのまんまに(失礼)巧みに演じてました。なんでかガラの悪い赤○浪士の方たち(遠藤憲一、寺島進など)も印象的です。その中に某鬼平と同じ名前の人がいるんですが、まさかあの人だったとは・・・ やられました。

そういうわけでなかなか好感のもてる映画でした。ただテンポはかなり緩め。眠くなりそうなときはコーヒー片手に鑑賞されてください。
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June 16, 2006

適当掲示板30&帰ってきたある日のSGA屋伍一

このしょうもないコーナーもとうとう30回目。毎度ありがとうございます。ご意見ご感想、その他よろず受け付けております。

あれから一年・・・ あの笑撃と感動がよみがえる・・・
ではご覧ください。

Usatann1_3_thumb薄暗くカビ臭い部屋で、独りうなだれているこの男の名はSGA屋伍一。

(おれももうすぐ33歳。いつまでもこんなんでいいのだろうか・・・・・)
胸のうちに問い掛けるが、無論答える者はいない。
そしてこんな日は、過去のつらい記憶が彼を責めさいなむ。

20060616191056実はつい最近、珍しいことに彼に急接近してきた女子がいたのだ。
(ふふふ。モテる男はつらいぜ!)

だがその幸せ、と言うか勘違いは長くは続かなかった。
ほどなくして彼女の本命は別の男であることが判明したのだ。
(そ、そんなんありか!) 
ショックにうちのめされるSGA


Usa3_2_thumbそんな時彼の悲しみを癒してくれるのは、やっぱりサッ○ロドラフトワン。
言っておくが、サッ○ロからは一銭ももらっていない。

考えてみりゃ、ちょっとくらいくれたっていいんじゃないのか?
サッ○ロさん、連絡お待ちしてます。


Usa4_2_thumb「・・・でもまあ、具体的に行動起こす前にわかって良かったよな」
そう、物事はいい方に考えよう。
恋はあせらず。

しかしそろそろ悠長に構えていられるトシでもないことも、また確かだ。


つづく・・・ かは気分次第

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June 14, 2006

風と雲とギャグと 『風雲児たち』を語ってみたい⑨

「コーダユ!!」

というわけで今回はわたしが無印版『風雲児たち』でもっとも偏愛するエピソード、「大黒屋光太夫編」についていかせていただきます。潮版で9巻から16巻、リイド版で7巻から12巻100Pまでのはなし。

天明二年秋、駿河沖で一艘の船が嵐にもみくちゃにされておりました。船の名は神昌丸。船長の名は伊勢の商人大黒屋光太夫。なんとか嵐は乗り切ったものの、陸地がどこだかわからない。八ヶ月も海原をさまよった挙句、船はアリューシャン列島のとある島に流れ着きます。日本に仲間を連れて帰るため、光太夫は血のにじむような苦労を重ね、海を渡り、雪原を走ります。やがて少しずつ開けていく帰国への道。だがその間にも、仲間は一人、また一人と脱落していくのでした。

これ、すげえ話ですよ。鎖国の世の中で、ごく平凡な商人だった一人の男が、ユーラシア大陸をえんえんと横断して、ついにはロシア皇帝と謁見を果たすとこまでいくわけですから。これをすごいと言わずしてなんと言う!? まさに歴史における一つの奇跡ということできます。

自分はこの光太夫という人物、この漫画で知りました。だもんで初登場の嵐のシーンでは、「この人が後でジョン万次郎になるのかなあ」と相当アホなことを考えておりました。あとで知ったことですが、この光太夫の物語は先に井上靖先生が、『おろしや国酔夢譚』という本で著されてます。後に緒方拳主演で映画が作られたりもしました。でもですねー、読んで一番感動するのはやはりこの『風雲児』ヴァージョンだと思うのですよ。
なんでかっていうと、それはやはりこれがギャグ主体で描かれてるからなんです。光太夫たちに次々に降りかかる逆境はあまりにも絶望的で、本当にもう笑うしかないような状況。しかし一行は「ほとんどヤケ」みたいな気合いで乗り越えていきます。それがギャグ調で描かれることによって、とてもストレートに表現されてるんですね。
そして「ギャグだけど泣ける」、このカラーがもっともよく表れてるのも、この光太夫のパートだと思います。ともに泣き、ともに笑いあった仲間が脱落していく場面は、涙なくしては読めません。

「光太夫どん・・・・・・」「お前そのかっこウ・・・・・・ まさか・・・・・・・・・ まだなんだろ?」「何とかいってく・・・・・・」

号泣です。それしかありません。君も読め! そして泣け!!
・・・すいません。えー、ぶっちゃけこの光太夫パートは他の部分とあんまり関りません。ただ、彼らが帰ってきたとき、幕府高官の前でいう一言「このお二方が日本を代表する大学者である・・・・・・と」
この一言と、そして異国に残った仲間が成し遂げたある仕事。そのためにこの物語は語られねばならなかったのだと思います。

コーダユさんはたまたま嵐に遭遇してしまったがゆえに、歴史に名を残すことになりました。大石蔵之助と一緒で、何事もなければそのまま誰にしられることもない、普通の生涯を送ったことでしょう。けれどいくつかの偶然が、彼を希代の風雲児としてしまった。でも彼は本当は伊勢で平凡な商人として、ささやかに一生を終りたかったのだと思います。
日本兵としてロシアに渡り、戦争が終ってもずーっとそこにとどまっていたある男性が、ついこないだとうとう帰国したというニュースを聞きました。なぜ帰らなかったのか?という問に、その男性は「それが運命だと思った」と答えました。色々状況等違う点はあるでしょうけど、その話を聞いたとき、わたしは光太夫とロシアに骨を埋めた漂流者たちのことを、ふと思い出したのでした。

次回は「寛政の奇人」林子平と高山彦九郎についてやらせていただきます。

 


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June 12, 2006

山田風太郎に関しては色々言わせてもらいたい⑩ 『警視庁草紙』

今日は少し前に再読了したこの本を。「明治もの」の記念すべき第1作。何度か『警視庁草子』と書いてたかもしれませんが、ただしくは『草紙』です。毎度もっさけなかこつでごわ。

明治6年、西郷隆盛が野に下ったところから物語は始まります。首都東京の治安を守るため、新政府は川路利良を長官とする「警視庁」を設立。しかしその「野暮」なやり方に反感を覚える者も数多くいた。その一人でかつての南町奉行駒井相模守は、元同心千羽兵士郎らと語らい、警視庁に対し再三に渡っていたずらをしかける。彼らに「粋な計らい」とは何かを教えるために・・・

『警視庁草紙』の際立った特徴は、まずこの明治6~10年という時代設定。一応「明治」となってはいますが、ついこないだまで「江戸」だった年代です。そのため「明治もの」とはいっても、まだ半分江戸時代みたいな独特の空気が、行間から漂ってきます。そして物語の終る明治10年は、西南戦争が勃発した年。維新はなったけれどもまだまだ世の中は収まらない。主人公兵四郎らの、言ってみればのんきないたずらと平行して、内紛にいたる緊迫した情勢も合間合間に語られていきます。

それまで忍法帖で人気を博していた山田先生にとって、この作品は大きな方向転換と言えました。恐らく半端じゃない意気込みで執筆されていたものと思われます。そのせいか、この『警視庁草紙』は、他の「明治もの」とくらべて、大変密度が濃く、その意気込みが凝りに凝ったプロットにあらわれている気がします。中期・後期の明治作品なんかは、もうちょっとあっさりしていてスイスイ読めます。

わたしが特に感銘を受けたエピソードは次の三篇。
・「明治牡丹灯篭」 いわゆる第1話。人情味と意外性を両立させた密室殺人事件。怪談を理論的に解決し、また怪談に戻すという、「京極堂」を先取りしたようなお話。
・「妖恋高橋お伝」 実在した毒婦、お伝の壮絶な恋の物語。最後の1ページに、女の執念の怖さがみなぎっております。
・「吉五郎流恨録」 サブキャラの吉五郎がメインのエピソード。同じ日に死罪・流罪・釈放となった三人の男。その一人であるスリ名人吉五郎の運命が、他の二人の手によって動かされていく。

新選組のあの人や、あの文豪も特別出演。以前「明治もの」マイベストは『幻灯辻馬車』『地の果ての獄』『エドの舞踏会』と書きましたが、再読了してみると『エド』よりこちらの方が上かも・・・・ 『エド』も十分面白い作品ですが。
『警視庁草紙』は現在ちくま文庫より刊行。大書店かネットで・・・と言いたいところですが、最近「明治もの」、品切れが目立つようになってきました。これは『知る・楽しむ』のせいか? 見つけたら速攻ゲットをおすすめします。
タイムリーなことに今月21日より、以前NHKで製作されたドラマ版が再放送されるとのこと。前はなんとなくスルーしてしまいましたが、今回はちょっとおっかけてみようと思ってます。
20060612195537画像はわたしが十年くらい前に入手した文春文庫版(1982・83発行)
シュールなデザインです。


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June 10, 2006

平成ライダーの六年間を振り返る 龍騎編⑤

昭和・平成を問わず、「仮面ライダー」シリーズにおいてもっとも頼りない主人公は? わたしは本編の主人公、城戸真司くんではないかと考えます。他の主人公たちは何かしら特殊技能を持っていたり、あるいは様々な経験をつんでいたりするわけですが、この真司くんにかぎってはそういうものが見当たらない。本当にごくごく普通の(貧乏な)若者です。強いて長所をあげるとするなら、まあ気さくであることとか、正義感が強いとか、餃子を作るのがうまいとか、そんなもんじゃないでしょうか。
そんな彼がライダーになったきっかけは、怪物に母親をさらわれた少女が泣いているところを見たからでした。「オレもライダーになれば、誰かを助けられるのかな」 モンスターと契約し、戦う道を選ぶ真司。しかしこの「戦い」を司る男・神崎士朗は真司に冷酷にもこう告げます。「仮面ライダーとなったものは、最後の一人になるまで戦い続けなければならない」 

平和な社会になに不自由なく育った真司は、わたしたちの等身大的なキャラクターであり、戦後日本で育った若者たちの代表的な存在であると言えます。わたしたちは泥沼化した中東の情勢などを見て、「人間は愚かだ。なぜ争いをやめられないのか」と呟きます。けれどももし彼らから、「家族を殺されたことのないお前になにがわかる」と言われたなら、口をつぐまざるをえないでしょう。

戦い合うライダーたちを止めようとする真司。けれどその言葉はなかなか他のものには伝わりません。ライダーとなった者たちには、それぞれ戦うための理由があったからです。自分の、あるいは大切な人の命のゆえ、単純に戦いを欲するゆえ、生きる目的を見出そうとするゆえ・・・ 自分と彼らの間にある壁にぶちあたる度に、真司くんは深く悩みます。

この『龍騎』は大きな矛盾をはらんだ作品でもありました。ヒーローものの醍醐味というのは、普通正義の味方が悪者をかっこよくやっつけるところにあります。でも真司くんにはそれができません。彼は人を守るためにライダーとなったのだから、例え悪人でも誰かを殺したら、その時点で自分を否定することになってしまうから。
モンスターには無類の強さを誇っていても、同じ人間である王蛇やタイガの攻撃の前にはただ耐えるしかない龍騎。その姿を見ているのはなかなかに辛いものがありました。

最近学校の授業で「なぜ人を殺してはいけないのか」という問に、教師がきちんと答えられなかった、ということがあったそうです。しかし『龍騎』を観るとき、わたしたちは一つの答えを得ることができます。すなわち「殺すものは殺される」ということです。また、戦う意思はなくても力があるというだけで、命を狙われることもあります。そこまでのリスクを背負いながら、真司は他の者に懸命に呼びかけ続けます。そしてその願いが、やがてわずかな者たちの心を動かすようになります。

一年通して何度も傷つき、悩み、絶望し、それでも最後に彼はこう言います。「戦いを止めたい。きっとすげえ辛い思いしたり、させたりすんだろうけど、それでも止めたい。それが正しいとかじゃなくて、オレもライダーの一人として、かなえたい願いが、それなんだ」
個人的にはこの辺が、現時点における平成ライダーの頂点であったと考えています。

次回は恒例?のベストシーンでしめたいと思います。

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June 09, 2006

憎まれっ子、世をはかなむ 中島哲也 『嫌われ松子の一生』

たった一つの命を燃やし 愛しつくした波乱の生涯
鉄のハートで包んで砕く マチャーンがやらねば誰がやる

原作は山田宗樹氏のミステリー(そうか?)小説。愛を求める孤独な女性に降りかかる、苛酷な運命。言うなれば現代版『女の一生』もしくは『テス』ですね。先ごろ新聞にバーンと出ていた幻冬舎の広告も「松子の悲しみを感じてください! そして思い切り泣いてください!」とそんな感じでした。
このことを踏まえて、映画の公式サイトのトップページをご覧ください。
http://kiraware.goo.ne.jp/index.html
・・・なんか違うよな。あきらかに。

あらすじを。とある地方都市で教師として働いていた松子は、みなから慕われる明るい女性だった。しかし修学旅行の際にある不祥事が起きたことから、彼女の人生は修羅場と化していく。
恋人の自殺、不倫、殺人、収監、自殺未遂・・・ どんなに不幸に見舞われても、希望を失わない我らが松子。彼女に平安の日は訪れるのか?

えーと、これ本当に原作の雰囲気を出したいのであれば、少なくとも5、6時間くらいは必要だったと思います。けれど映画はよほどの大作でないかぎり、二時間くらいと相場が決まっているもの。どんな可哀相なお話も、早回しにしたり、無理に不幸を詰め込んだりすると、なんでか喜劇になってしまうんですよね(矢口史靖監督のデビュー作『裸足のピクニック』もそんな感じでした)。そういうわけで中島監督は「こうなったらギャグでいこう」と開き直られたようです。オリジナルにほれ込んで松子役を志願した中谷美紀さんも、さぞや面食らったことでしょう。原作者山田宗樹氏も激怒したのでは・・・と思いきや「心から感謝します」とのコメント。いよッ! 太っ腹!

他の方の感想など見てみますと、あんだけハチャメチャな映画なのに、「感動した」「励まされた」というものがけっこうあります。それはこの映画が喜劇ではあるけれど、本質的に原作と変らないから(未読だが←こら)ではないでしょうか。まえによそで書いた例えと一緒で恐縮ですが、要するにヴァイオリン用に書かれた楽曲を、エレキギターでギャンギャンかき鳴らしてみた、そんな感じかと。聞こえようはだいぶ違いますけど、弾いてる曲は同じなわけです。
あと、松子さんってなんつーか、どっかの弱小球団みたいなんですよね。どんなに敵わなそうな相手(男)にも、常に全力でぶつかっていく。どんなにひどいケガをしても、一向にひるむことなく。で、毎回メタメタにやられてしまう(笑)。それでもまたすぐに「次は勝つぞ!」と立ち上がっていく。そういうチームって無条件で応援してやりたくなりますよね。観ていて痛々しくもありますが。

で、松子さんが愛した男たちの面子がこれまたすごい。谷原章介、クドカン、劇団ひとり、武田真治、ジャンプ亭ジャンプ、キャシャーン、内海光司(光GENJI)・・・・ よくもまあ、こんなに「濃い」人ばかり集めたものです。『黄金の七人』ならぬ『濃厚の七人』ですな。

『嫌われ松子の一生』は全国にて絶賛公開中。こちらでも一応絶賛しときましたが、絶対このセンスについていけない人もたくさんいると思います。頭の固めの人は、できたら見る前に脳ミソを重曹につけてからご覧になってください。
20060701082344

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June 07, 2006

仮面らいだー カブトくんヒビキさん 07の巻

スーパー戦隊シリーズ30周年に寄せて

その1
20060606212649夏を制する森の王者!

唯我独尊!

カブトレッド!!

(どかーん!)


20060606212815鋼を貫く黄金の槍!

一撃必殺!

ハチイエロー!!

(ぼかーん!)


20060606213105蒼穹を裂く魔弾の射手!

百発百中!

トンボブルー!!

(ずどーん!)


20060606213226生きとし生ける全てのものと!

我ら、昆虫戦隊

ムシレンジャー!!

(ずごどかぼかーん!!!!)


Krkh021_1Krkh034b_1「貴様らに問う
ライダーとしての誇りはあるか」

「ヒビキさんにそんなこと言われたかないですね
つーん」

「なんだとおお!!」
イブ「違和感度30%ってとこですかね」


その2
20060606213344魂の鼓動を刻め!

炎のドラマー!

タイコパープル!!

(どんつくどんつく)


20060606213358戦場に吹く一陣の風!

クールな笛吹き!

ペットブルー!!

(ぷっぷくぷー)


20060606213433転がり続ける岩の如く!

電光のギタリスト!

エレキグリーン!!

(ぎゅおぎゅおぎゅいーん)


20060606213725鳴り響け、浄めの音!

我ら、音撃戦隊

オニレンジャー!!

(どんぱかぎゅおーん!!!!)


2006060621382520060606214148「違和感度90%ってとこですかね」
「チームワークは抜群なん・・・うわ」
ドカ

「コラァ!! なぜオレを入れーん!!」
「だって色とかかぶってるし」
「なんだとおお!!」


次回は久しぶりに特別企画(つっても大したことはない)の予定

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June 05, 2006

あのクロスカウンターをもう一度 ちばてつや 『あしたのジョー』

あの不朽の名作『あしたのジョー』をわたしごときが語っちゃってもいいんでしょうか? ダメです! でもやっちゃお~っと。

なんでいま『ジョー』なのかというと、先月の連休のおり、本を整理してたら意地になって全号買った『ジョー&飛雄馬』が出てきまして。ついつい読みふけってしまったからという、真に私的な理由。
あらすじはいまさら説明するまでもありませんね。時は70年代、ふらりと東京のドヤ街にながれついた少年ジョーが、いささかくたびれたトレーナー丹下段平と出会い、ボクシングに足を踏み入れていく。マンガ黄金期に青春・少年時代を送った方たちにマンガベスト10を作らせると、だいたいこの作品が1位になります。

わたしはアニメで親しんでいた口ですが、全編通読してみて驚いたのは、『ジョー』にしろ『巨人の星』にしろ、「すかっとさわやかに大勝利!」という場面は、本当に片手で数えられるくらいしかないということ。あとの大部分、ジョー&飛雄馬がどうしているかというと、ひたすら苦悩しているか、あるいは練習しているかです。
ジョーは強大な敵に、周囲の無理解に、思うようにことが運ばないことに、ただただ苦しみ悩みます。それが一番どん底までいってしまったのが、ご存知ライバル・力石の死の直後のあたり。リングで嘔吐し、酒場で袋叩きにされ、しまいにはドサ周りにまで身を落とすジョー。この部分が「なにもそこまで」というくらい、丁寧というか、しつこい(笑)。たしかアニメではかなりしょられていたように記憶しています。

なんでジョーがそこまで苦悩しなければならなかったのか。それは70年代という時代に大きな原因があるのでは、と考えています。それまでは割りと「出世して金持ちになれば、幸せになれる」というのが当たり前でした。しかしこのころになると、「必ずしもそうではない」ということに気づく人が増え始めます。日本の成長も曲がり角を向かえ、様々な問題や暗い事件も多数発生するようになります。
ジョーと段平の当初の目的は「泪橋を笑って渡る」、つまりボクシングで成功することでした。そうすれば社会の勝ち組となり、「笑って」暮らせる日々が送れると、段平や作者は思ったのでしょう。
しかしライバル力石を故意でないにせよ殺してしまったジョーは、もはやそうした望みがもてなくなってしまいます。自分の「あした」がわからなくなってしまったジョーは、あてどもなくさまよい、苦悩するほかありませんでした。
結局ジョーを救ったのは、自分を苦しめていたボクシングだけでした。「幸せになるため」から、「いかに純粋に生き抜くか」に目標を切り替え、ジョーは再び前に進みはじめます。その目に、前半で見られた無邪気さはもう見受けられません。ひとなみの家庭を持つことすら諦めて、ただひたすらボクシングに打ち込む彼は、まるで修行僧を思わせるところすらあります。その姿があまりにもまばゆいために、21世紀に入った今でも『あしたのジョー』はよみつがれているのでしょう。

漫画家にして研究者でもあるみなもと太郎先生の説によりますと、「『宮本武蔵』が『姿三四郎』に受けつがれ、それが『イガグリくん』、そしてジョー&飛雄馬につながっていった」とのことです。いままた曲がり角にきている日本で、質・人気共にど真ん中を行っているコミックが『宮本武蔵』=『バガボンド』というのも、なんだか興味深いところでありますね。

個人的に好きなシーンを二つ。
全体の中でもやや最後の方の金竜飛戦。壮絶な過去を背負った金におびえるジョーを救ったのは、力石の面影だった
「自ら進んで地獄を克服した男がいたんだ」「同じ条件で」「人間の尊厳を 男の紋章ってやつを」「つらぬき通して死んでいった男をおれは身近に知っていたんじゃねえかっ」

もうひとつは前半の方。めでたく少年院を出所することになったジョー。出て行く際、よせばいいのに作業中の少年たちをからかったため、看守らも巻き込んで盛大な泥投げ合戦が始まる。
一通り終った後で「ふーすっきりしたぜ」「元気でな」 そう言って、風のように去っていくジョー。
その後残されたものたちのなんと淋しげなこと
「奇妙なやつだよ・・・ 矢吹ってやつは」 


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June 03, 2006

戦国鬼嫁日記 ~大河ドラマ『功名が辻』より⑨

ういっす! チヨっす! いよいよ始まるわね~ ワールドカップ。みんなはジーコジャパンでは誰応援してる? わたしはねえ、もちろん中田・・・だったんだけど、こないだちょっと気になる噂聞いちゃってさあ。彼の趣味、じつは「ビックリマンチョコのシールを集めること」なんだって! 冗談かと思ったらどうもマジらしいのよ。もうクールなイメージが台無し。この話は聞かナカッタことにしとくわ。

えー、そいじゃ行きますか。今回の「鬼嫁日記」は織田興業の内部崩壊について。
このころ育ての父のおじさんが亡くなったり、ようやくあたしにも女の子が生まれたりといろいろ忙しかったんだけど、組の内部も相当やばいことになってたみたいで。はたからはわかんなかったでしょうね~。だっていよいよ全国制覇まであと二、三歩ってところで、飛ぶ鳥落とす勢いに見えただろうから。
ほら、ウチのボスってバリバリのワンマンじゃない? 組が成長してる段階ではそれも「頼りがいがある」って感じなんだけど、組織がいいかげん大所帯になってくると、それだけじゃどうにもなんないこともいろいろあんのよ。とくに大きなグループって、かかる費用も天井知らずだから。
ただでさえ苦しいそんな時に、安土ってとこにキンキラキンのど派手な自社ビルなんか建てちゃったもんだから、もう組の財政は火の車。しかもいっこうに周りの意見を聞く様子もないもんだから、傘下の組織には敵に寝返るやつらもちらほら出始めた。もちろんボスがそういう連中を許すはずもなく、裏切り者は片っ端から血祭りにあげられた。この世にはねえ、絶対におこらしちゃいけない人ってのがいるのよ。和田アキ子とか。
まあそれはわからないでもないんだけど、今度はベテランの幹部までどんどんリストラはじめちゃったのよ。「だってお前らもう使えないし」とか言って。さすがのあたしもそりゃヒドイ、と思ったわ。これでますますボスの人望はなくなっちゃった。キナくせえ~空気が安土ビルの中に流れ出してきたわけよ。
なのにそんなことおかまいなしに、大姉御と明智さんは昼メロをやりだす始末。ちょっと! あたしをさしおいてそういうことやんないでよ! 当然ボスは烈火のごとく怒り出すかと思いきや、これがまるで見て見ぬフリ。肝心な時にシオシオになってどうすんのよ! まあなんつーか、何にも気にしないようでいて、意外に繊細な人だったってことなのかしらねえ。

このころ売り上げをのばすために、組ではかなりあこぎな商売もやることになったもんで、宿六も相当落ち込んでた。貧しい家族を闇金まがいの商法でだましてさ、ちっちゃな子供から、布団ひきはがすようなことまでしなくちゃなんなくて。あーもー極道って、ホント因果な商売よねー。
そうそう、このころ長い付き合いだった竹中さんもお亡くなりに。この人はいろいろ利用させてもらったから、ちょいと心が痛んだけれど、あっちもあたしみたいな美女の役に立てて、けっこう嬉しかったんじゃないかしら? ただ、竹中さんの後任としてきた人が、まるでモアイみたいな顔だったのにはがっかりしたわねえ。竹中さんだって美形ってわけじゃないけど、かろうじて男前の部類に入るルックスだったから。なんで今年はこんなにオヤジ&ブ男ばっかりなのかしら? 去年まではジャ○ーズクラスがいっぱいいたっていうじゃない? 納得いかねーよ、N○K!!

そんなわけでいよいよ切羽詰ってきた織田興業。次回はあたしのヘソクリの話と、本能ビル事件まで・・・行けるかなあ。ま、予定は未定ということで! アウフヴィダゼーエン!(ドイツ語!)

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June 02, 2006

岡山少年野球団 血煙友情編 あさのあつこ 『バッテリーⅢ』

えーと『Ⅱ』をレビューしたのは・・・ 去年の7月じゃん! ずいぶん間が空いてしもうた。天才投手原田巧と、彼の速球に魅せられたチームメイト・永倉豪のぶつかりあいを描くシリーズ三作目。
一作目のレビューはこちら http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2005/05/post_3881.html
ついでに二作目も http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2005/07/post_2f60.html

上級生の起こした騒動で監督が負傷したため、部活停止を言い渡された野球部。その期間がようやく明けて、巧たちは野球をできる喜びをかみしめる。大会に出られぬまま引退となる三年生のため、また校長の野球部に対する不信感を払拭するため、監督は強豪校・横手二中との練習試合を計画する。しかし県下随一の実力を誇る横手と試合を取り決めるのは容易なことではない。そこで監督・戸村やキャプテンの海音寺が考え付いた作戦とは。

二巻では先生や上級生とビシバシぶつかりあい、わたしたちをハラハラさせてくれた巧くん。三巻ではその問題はとりあえず解決しているので、前の巻にあった「やるかやられるか」みたいな緊張感はなく、多少ゆったりしたムードが流れています。だからといってつまらないわけではありません。がんがん読者をひっぱるストーリーは健在で、わたしはほぼ1日でよんでしまいました。本当はもっとじっくり味わって読んだほうがいいんでしょうけど、途中でやめられないんですよ。この話。
今回はようやっと(笑)試合のシーンがあります。部内での練習試合という、極めてスケールの小さい舞台ではありますが。ほのかにめばえたロマンス要素は完全にオミット。巧たちを応援する女性教師小町先生が、ひとりで女ッ気を添えています。この先生、自分の受け持ちである卓球部をほったらかして野球部にかかりっきりで、顧問としては少々問題だと思います。

さて、この巻のキモは、主人公コンビの衝突のくだり。あらすじを読むと「巧と豪の堅かった絆(そうか?)に亀裂が入って!?」とあります。天上天下唯我独尊、「おれ以外はどうでもいい」なタックン。今度は一体どんな暴言を吐いたのやら、と思いましたが、その事情は意外なものでした。
横手二中のキャプテン、門脇と勝負することになった我らがバッテリー。しかし巧は豪のことを心配しため、四球目についセーブした球を投げてしまい、みごとにホームランを打たれてしまいます。
その晩、豪は巧を呼び出し、彼の顔面に鉄拳をおみまいします。これ、考えようによってはかなりひどい。だって巧は豪のことを思いやってあげた(これもかなり異例のことですが)のに、なんでその当人からパンチをもらわなきゃならないのでしょう。
豪は言います。「おまえな、あの四球目のあと、どんな目ぇしておれを見た。わかっとんか。哀れみやがって。」「おれがほんまに戦わんといけん相手はな、横手でも校長でもない。おまえなんじゃ」
友情というにはあまりにも厳しすぎる、二人の関係。そういえば先日『仮面ライダーカブト』にて「友情という言葉は危険」というセリフがありました。情に甘えることは、時として成長をとめてしまったり、自分らしさを失ってしまう恐れがある、ということなのでしょう。
恥ずかしながら、わたしは高校のころ美術部に所属していました。時々互いの作品に対して批評会があったんですが、一癖ある顧問の先生が「どんどん傷つけあいましょう。馴れ合っていてはうまくならんぞ~」みたいなことをよく言っていました。正直アタマにきましたし、いまでもその言葉に納得したわけではありませんが、ひとまわり成長したいのであれば、慰めあうだけでなく、多少のぶつかりあいも必要なんでしょう。そのバランスをとるのが、なかなか難しいわけですが。

この巻ではいままでその多大勢的だったほかのメンバー、沢口や東谷の個性も次第にはっきりしていきます。野球にひたむきな情熱を燃やすキャプテン海音寺、無礼な後輩にもひょうひょうと受け答える策士・野々村も、魅力的なキャラクター。
果たして巧と豪の関係は、これからどうなっていくのか。残り半分となった『バッテリー』に引き続き注目していきたいと思います。
とりあえずおれたちは、なまぬるーく行こうな! ゼンザイ先生!!

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