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May 08, 2006

風と雲とギャグと 『風雲児たち』を語ってみたい⑦

公式設定でもなんでもありませんけど、わたしは後ろになにも付かない『風雲児たち』は概ね三つの部分に分けられると考えております。Aパートは冒頭から赤穂浪士討ち入りまで。Bパートは田沼時代と寛政の改革の期間。Cパートは文化文政から最後まで。と、こんな感じかと。
で、特にファンから評判がいいのが、このBパートにあたる部分。それはこんなナレーションとともに始まります。
「誰もいないところで嵐が吹き荒れても その音を耳にするものはない」
「しかしいつかその地へ人がきたとき その確かな爪あとを見るに違いない」
風雲児たち、第1シリーズを巧みに言い表した一文と言えましょう。そんなわけで今回は潮版で5巻から8巻まで、リイド版で4巻89P から6巻のラストまでを扱います。

関ヶ原だ大阪城だと、ビッグな視点から語られていたAパートに比べ、Bパートは非常にひっそりした場面から始まります。名残惜しげに長崎をあとにする一人のオッサン。彼の名は前野良沢。良沢さんの手には一冊の風変わりな本が握り締められておりました。オランダの本でタイトルは『ターヘル・アナトミア』。我々が『解体新書』の名で知っている書物の原書でありました。
良沢先生はこの本を杉田玄白ら数人の仲間ととともに和訳することを決意します。でも彼が知るオランダ語はごくわずかで、ほかのメンバーはもっと知らない。いわば中学生数人がノートにわずかに書きとめられた単語だけをヒントに、一冊原書(しかも医学書)をまるまる完訳しようと試みるようなものです。「そりゃ無理だ!」と誰もが思うにちがいありません。そんな様子がギャグ調で描かれると、絶望度がより増して感じられます。
良沢がすごいのはそれほどまでな難事業を決して諦めなかったところ。彼の異常なまでの(笑)熱意により、翻訳作業は少しづつ進展して参ります。しかしここでひっかかるのは、『解体新書』の著者の名が、一般には杉田玄白とされているということです。なぜ良沢の名は公にならなかったのか。それは彼の職人気質というか、「いい加減なものは世に出せない」という信条のためでした。それに対し、「日本の医学のために一刻もはやく出版するべき」と主張する玄白。
「わたしは名誉欲のためにやってきたのではない 医学のためだ」
決裂した二人は離れた場所で同じセリフを口にします。信ずる道のために親友と袂をわかたねばならない寂寥感。『風雲児』屈指の名シーンです。

この部分では、平行して二人の奇人のお話も語られます。一人はべニョブスキー。人を騙すことが何より好きで、世界各国で悪事を重ねてきた男。彼がたまたま鎖国の日本に立ち寄ったことから、ごく一部の中で大変な騒動が巻き起こることになります。あまり日本史では取り上げられることのない事件ですが、幕府の「ことなかれ」体質がよくあらわれたエピソードとなっています。
そして強烈なのがこのべニョブスキーの生き様。こんなにいい加減で世の中渡っていけるのかと、ほとほとあきれ返ります。なんせ日本にろくに上陸してもいないくせに、「将軍と手をつないで町を歩いた」なんて書いた航海記を出してしまうくらいですから。でもこの航海記、マダガスカルに関してはそれなりに貴重な資料らしいです。むーんw

もう一人はご存知平賀源内。時代に早すぎた男の八面六臂の活躍ぶりと、悲しい末路がみなもと調で描かれます。で、この部分で浮き彫りになるのは「孤独」というキーワードです。
閉ざされた国において「外国」に目を向けた人々は、周囲の無理解・無関心に苦しみながら、無我夢中で戦いつづけなければなりませんでした。それはどこからも助けをあてにできない、辛く厳しい戦いです。しかし彼らの業績はたとえ当時報われなかったとしても、何世代か後の幕末の若者たちにとって、非常に大きな財産となったのでした。

次回は同様に異国の地で孤独な戦いを強いられた大黒屋光太夫についてあつかいます。ダスピダーニャ。

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