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May 01, 2006

歴史は夜明かされる 鯨統一郎 『新・世界の七不思議』ほか

本日は朋友ゼンザイ先生より貸していただいたこの本と、その前作についてやります。ともに創元推理文庫より発売中。

東京のとあるうらぶれた一角にある、バー「スリーバレー」。そこではなぜか夜ごと風変わりな歴史談義が行われている。口火を切るのは最近歴史に興味を覚えたバーテンの松永くん。彼の疑問に対してオーソドックスな答えを述べる才媛の早乙女静香。そこへライターの宮田六郎が、あっと驚く珍説を披露。最初は「アホくさ」と思えるその説が、宮田の解説を聞いているうちに、いつのまにか「もしかして」に変わっていく

鯨氏の処女作、『邪馬台国はどこですか?』は、おおむねこんなスタイルで書かれています。扱われている謎はタイトルの通り邪馬台国の位置とか、本能寺の変はなぜ起こったのかといった、誰でも聞いたことのあるメジャーなものばかり。それゆえ今までも数多くの説が唱えられてきたわけですが、鯨氏は作中人物である宮田の口を通して、誰も思いつかなかったような爆笑ものの珍説を提示します。しかしただ笑えるだけでなく、もっともな根拠もちゃんと用意してあるのがスゴイところ。
もちろんまともな学説として唱えるにはちょいと飛躍があったり、論理が強引だったりするところもありますが、ギリギリで「それもアリかな~」と思わせるだけの説得力を有しています。一例を挙げたいところですが、即ネタバレになってしまうのが辛い。もっとも鯨氏も正面切ってそれらの説の正しさを主張する気はないのでしょう。「ま、酒の肴にでも聞いてくんな」というような軽妙な持ち味がこの小説の特徴です。

で、先日待望久しい第二弾が発行されました。タイトルは『新・世界の七不思議』。わりかし統一感のなかった前作に対し、今回は古代史に限定して宮田(鯨)流バカ理論が展開されます。例を挙げるならピラミッド、ナスカの地上絵、はたまたイースター島のモアイ像など。さらに巻末の一編では、それまでの謎の総決算ともいうべき荒業が炸裂します。ちなみに前作とレギュラーが一名変わっていますが、スタイルはまったく一緒。
わたしとしましては前作では明治維新にまつわるエピソードが一番笑え、今作ではピラミッドと地上絵にまつわるエピソードに特に感嘆しました。歴史に関心がおありの方はコント集でも読むような気持で、手にとってみてください。

さて、古代では七不思議とは、もっぱら一群の壮麗な建造物のことを指す言葉だったようです。しかし挙げられているものの中には現在では消失してしまっているものも数多くあり、また地域も限定されています。そこで現在なお残っている遺跡の「七不思議」について考えてみました。ざっとこんなもんかと
・エジプトのピラミッド
・イギリスのストーン・ヘンジ
・ナスカの地上絵
・イースター島のモアイ
・中国の万里の長城
・タイのアンコールワット
・インカのマチュ・ピチュ
他にもっといい案があるという方もおられるかもしれませんが。
UMA系の七不思議や、怪事件の七不思議なんかもちょっと考えてみましたが、いいかげんキリがないのでやめときます。

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