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May 29, 2006

風と雲とギャグと 『風雲児たち』を語ってみたい⑧

前回「今度は大黒屋光太夫について」と書きましたが、その前にひとつやっとくことを忘れてました。
とゆーわけで予定を変更し、今回は「悲劇の老中・田沼意次」についてやります。単行本でいうと潮版9巻から12巻、リイド版でいうと7巻最初から9巻202Pまでの話です。

はるか先を見据えていたにも関らず非業の死を遂げた平賀源内の夢は、なんと時の最高権力者に受け継がれます。彼の名は、田沼意次。八代将軍吉宗に見出され、以後権力の階段を着実に上ってきた田沼は、とうとう老中にまで上りつめます。
この田沼氏、長いこと「賄賂の代表選手」といった風評をうけていましたが、近年の研究により、少しずつその業績の再評価がなされてきています。
吉宗のころまでは大きな問題もなく機能し続けてきた徳川幕府も、いわゆる「田沼時代」に入りますともくもくと暗雲がたなびいてきます。特に「天明の大飢饉」は奥羽だけで十万人もの使者を出した大災害となりました。
田沼は国を豊かにすべく、日本を開国へと導こうとします。しかしその行動は保守派の猛烈な拒否反応を引き起こすことになりました。その先頭に経っていたのが、元白河藩主・松平定信。水と油のごとき二人の争いは、やがて江戸城や御三家をも巻き込み、天下を鳴動させるまでにいたります。

みなもと先生が政治家を評価する基準の一つは「庶民に目をむけているかどうか」だそうです。ゆえに一見俗っぽいようでありながら、民衆のために身を粉にして励む田沼は、真摯で誠実な人間として描かれています。一方、私利私欲はないものの、視野がせまく、法で人々を縛ろうとする松平定信は嫌味っぽいキャラとなっています。
また「庶民が第一」といいながらも、この部分では「大衆の愚かさ」についてもキチンと描写されています。
相次ぐ災害を天の怒りと感じた民衆は、「お上」のせいだ。と、田沼親子に批判の雨をぶちまけます。そしてわかくてさっそうとした定信ちゃんを、英雄がごとく持ち上げます。本当に庶民のことを考えているのはどちらなのかもわからずに、田沼のカゴに石を投げる江戸の人々。それでも「耐えねば・・・」とつぶやく田沼さま。その姿は従来の「私欲の権化」みたいなイメージから、はるかにかけはなれたものです。

結局ご存知の通り、田沼は政争に敗れ、失意のうちにこの世を去ることになります。しかしそれで源内から田沼へと渡された夢が途切れたわけではありません。今度はその夢は、ただ一人の下男へと託されることになります。彼の名は最上徳内。田沼の起案した北方探検隊において身分的には最下層ながら、目を見張るほどの仕事をなしとげた男です。同志のほとんどが定信の前に屈したあとも、なお海外とのあいだの架け橋になるべく、徳内さんは奮闘します。その努力がどのように実を結び、そしてまた受け継がれていったかは本編にて語らんください。

以前読んだ新聞記事に書かれていた話ですが、おフランスで「有能だが腐敗してる政治家と、無能だが清廉な政治家、どちらを選ぶか」という質問をすると、圧倒的に「有能・腐敗」を選ぶ人が多いとか。理由は「腐敗は正せるけど、無能は治しようがないから」とのこと。納得のいくようないかんような(笑)。

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Comments

「腐敗・無能」よりは良いんじゃないかと……(苦笑)。

Posted by: かに | May 29, 2006 at 09:44 AM

おっしゃるとおりで(笑)
>「腐敗・無能」
いろいろ顔が思い浮かびますな・・・
あ、おれもか

Posted by: SGA屋伍一 | May 29, 2006 at 07:34 PM

>腐敗・無能
すいません私もです。あ、そこに「無茶」も加えといて下さい
えー、ややずれるかもしれませんが、高橋克彦先生も、「田沼時代」には並々ならぬこだわりがあるようですね。
浮世絵三部作も結局は田沼時代とは何かというのがテーマかもしれませんし、もっとはっきりそれを描いているのは、この三部作の集大成とも言うべき『だましゑ歌麿』です。そのまんま、中心テーマが「本当に民のためになる政治とは何か」ということで、ぶっちゃけ定信批判です。
これは本当に面白かった。是非みなもと先生にも読んでもらいたいなあなんて思ってます。我々は偶然にも田沼評価の作品を2つ知ることができるわけで、なかなかゼイタクだと思います。

Posted by: 高野正宗 | May 29, 2006 at 10:52 PM

ご謙遜をおっしゃられますなー。秦太さまも、犬塚さまも「あの読書量はすごい」と感心されてましたよ。

>浮世絵三部作も結局は田沼時代とは何かというのがテーマかもしれませんし

そうなんですか。たしか『写楽』『北斎』『広重』でしたよね。番外で『歌麿殺贋事件』というのもあったかな。いずれ山のような宿題を片付けたら、なんとかチャレンジしたいです
田沼さまがよく書かれているものというと、『剣客商売』なんかそうでしたね。わたしが子供のころに読んだ学習マンガでも好意的に書かれてました。田沼さまに対する世間一般のイメージもだいぶ変ったのではないでしょうか

Posted by: SGA屋伍一 | May 30, 2006 at 07:34 AM

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