恐竜物語ピースケの冒険 藤子・F・不二雄 『ドラえもん のび太の恐竜2006』
わたしの住んでいる町には一軒だけ映画館があります。今を去ること二十数年前、そこでオリジナルの『のび太の恐竜』を観ました。姉とたまたま観に来ていた、見ず知らずの女の子と三人で。
意地悪されたことがきっかけで、「恐竜の化石を丸ごと」見つけることを宣言したのび太は、努力の甲斐あってみごとに化石の卵を発掘することに成功。タイム風呂敷の力で、のび太はフタバスズキリュウの赤ちゃん「ピー助」を卵からかえします。しかし現代は首長竜が生きていくにはあまりにも狭すぎる時代。意を決したのび太はピー助をタイムマシンで中生代に連れて行くことを決意します。このあとタイムマシンが壊れて恐竜時代を旅することになったり、未来の恐竜ハンターに追われたりと波乱万丈の展開が続きます。
それまで劇場に行ったことなど1、2度しかなかった私に、この映画は測り知れない興奮を与えてくれたのでした。
その後一軒、また一軒と映画館がつぶれていき、残ったのはとうとうその劇場だけに。実はそこも一回廃業したのですけど、「さみしいから」ということで市が援助して、その後も細々と続いています。
さて、『のび太の恐竜』リメイク版が今年公開されることになったものの、なんとなく観そびれてしまったわたしは、少し遅れてその劇場でかかっていることを知り、おもうところあって、久しぶりにそこで観ることにいたしました。薄情なもので最後に入ったのはたしか十年ほど前の『トイ・ストーリー』だったか。
こんなエセ評論家のようなブログをやっていると、ついつい作品を見る目がひねくれてしまったり、話の中に入っていけなかったり、ということがよくあります。そこで今回『2006』ヴァージョンを見るにあたり、わたしは自分にひとつの課題を設けました。それは「よけいな小理屈は一切考えない! ひたすら童心に返って映画を楽しもう!」というもの。さてその結果は・・・75点というとこだったでしょうか(笑)。
しかしこれは今回のスタッフに落ち度があったというわけではなく、わたしのひねくれ度の方が勝っていた、ということにすぎません。この映画は、マジで素晴らしい作品です。少なくとも、ドラえもん一行が人の手がまだ触れていない朝もやの中生代に降り立った時。火口湖の岸から雷竜が姿を現したとき。タケコプターで目を見張るほどの大渓谷を飛翔していた時。友との別れに際し、のび太が「君はこれからいろんなものを見て・・・ いろんなところに行って・・・」とつぶやいた時。わたしは二十数年前のあの時に帰っていたと思います。オリジナルがそうであったように、この新作も今とこれからの子供たちにとって、非常に大きな財産となることでしょう。
新作ではオリジナルの時と、ややラストシーンが異なっています。あの名場面をなぜ、と思いましたが、スタッフロールの最後まで見ると、その真意と、藤子F氏にささげられた深い敬意の念を理解することができます。
ただ残念なのは、観客がわたしひとりで(苦笑)、実際の子供たちの反応を見られなかったこと。いつかどこかのお子さんと、一緒に観てみたいものです。
画像は映画館でくれたオマケのフィギュア。館主らしき老夫婦が笑顔でくださったのが、心に痛かった(笑)。
Comments
こんばんは。
TBさせて頂きました…「のび恐」の話じゃないんですが。
いい本でしたよ。おすすめです。
あと、この「のび恐(のびきょう)」という略し方、SGA851様に教わったのですが、すっごく気に入ってます。何でだろ(笑)
結局「のび恐」は見なかったのですが(どうも、最近のドラちゃんの表情のつけ方が安っぽかったり…あの「あたたかい目」とか!原作は素晴らしかったのに!)…そうですか。及第はしておりますか。DVDでなら見ようと思います。
おまけは欲しかった~(笑)
Posted by: 高野正宗 | June 08, 2006 07:10 PM
>この「のび恐(のびきょう)」という略し方、SGA851様に教わった
そうでしたっけ・・・ わすれてます(またかい)
>及第はしておりますか
えー、まあ時が経つほどに素晴らしかったと思える作品ですねー。わたしとしては。恥を忍んで見に行った甲斐がありました。
前に書いたかもしれないですけど、「アー○引越しセンター」などのドラえもんって、一番きれいで可愛いラインでまとめられてるじゃないですか。今回のドラえもんには最初のころの野暮ったさというか、親父臭さが復元されてましたね。ちゃんと子供っぽいところもあるんですけど。
ピー助の声も良かったです。誰かと思ったら「神童」神木隆之介くんでした。
Posted by: SGA屋伍一 | June 09, 2006 08:17 AM