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March 13, 2006

五輪地獄変 スティーブン・スピルバーグ 『ミュンヘン』

最近マジメな映画ばっかり観てるなあ。おれ、こんなんでいいのかなあ(バカ映画ファンとして)

というわけでスピルバーグの「本当にあったヤバイ話」シリーズ最新作、『ミュンヘン』をお送りします。
1972年のドイツはミュンヘン。オリンピックが華やか開催されていたその時、選手宿舎でイスラエルのアスリートたち数名が、パレスチナ系テロリストによって殺害されるという陰惨な事件がおきる。事件に対して世間の扱いが小さいことに納得のいかないイスラエル政府は、極秘裏に計画の首謀者たちを葬るチームを組織。モサド出身のアブナーと、ヨーロッパに住む市井のユダヤ人たちがそのメンバーに選ばれる。ハプニングが絶えないものの、着実に標的を消していくアブナーたち。しかし彼らの存在はやがて敵対勢力に知られることになり、アブナーたちもまた追われる立場になっていく。

最近のスピルバーグ作品は、あえてオーソドックスな起承転結を廃し、いくつかの同じくらいヤマのエピソードを順々に語っていくような傾向が見られます。まあ構成的によくまとまった話というのは「スカッ」と忘れられ易いので、ショッキングな映像をダラダラと連射することで「そう簡単には忘れさせへんぞー 心に刻みこんじゃるぞー」というねらいがあるのかもしれません。

政府が主人公に「キミたちと我々は表向きは関係ないことになってるから。何かあっても我々は知らんぷりを決め込むから」と申し渡す場面は、まるで『スパイ大作戦』か『隠密同心』。じゃあ、さぞかしすご腕の連中が集まるのかと思いきや、これが「こないだまで普通の市民でした」みたいなオッサンばっかし(でも殺る気はまんまん)。アブナーだけが唯一特殊部隊出身なんですが、彼にしてからが見るからに怪しい組織の情報を鵜呑みにしてたりとか、私怨で標的の数を増やしちゃったりとか、アマチュア精神丸出しでことに当たっております。ただこういう描写は「冷酷無比に思えるテロリストたち(パレスチナ側も含む)も、もともとそうだったわけではない」ということを我々に訴えかけています。

興味深いのはやはり民族感情というやつでしょうか。例の事件の情報をテレビで見ながら、アブナーは「オレには関係ないし」みたいなことを言います。しかし政府から命令が下されるやいなや、彼は単なる仕事以上の熱心さでミッションを遂行します。こういう風に民族に対する思いというのは、普段クールに装っていたりしても、心の中で巨木のようにどっしりと根をおろしているものなのかもしれません。日本国に対してそれほど愛情を持っていないわたしですら、スポーツでは日本代表を応援しますし、国際世論で母国が悪く言われてるといい気はしません。まして20世紀半ばまで祖国というものがなく、世界中に散らばっていたユダヤ人たちにとって、心のよりどころとなっていたものは、まさしくその民族感情以外の何ものでもないでしょう。

主人公に情報を提供してくれる男がこんなことを言います。「キミらユダヤ人は停滞を嫌う。常に邁進し続けることを望む」 そういった気質がロスチャイルド家を産み、アインシュタインを産み、そしてスピルバーグを育んだ土壌となったのでしょう。しかしそういった精神が「軍事行動」「報復テロ」に向けられしまうと、とんでもないことになってしまうわけで。というか、もうなってるわけですが。
日本もアジアにおいては今のところ憎まれ役NO.1です。憎まれ役の大先輩であるユダヤ人の例から、色々学べることは多いのではないでしょうか。

この作品、『映画○宝』の名物コーナーで、珍しく町山・柳下両氏がそろって「UP!」評価を下していました。でも本文を読むと、いったいどこをほめてるのかさっぱりわからない(笑)。ただ「最初に殺された標的はテロと無関係だった」「主人公らはサブのチームで、メインのチームはしょっぱなから大失敗して全員とっつかまってしまった」などシャレにならない真相が色々書いてあって参考になりました。ちなみに映画のベースとなったのは『標的は十一人』というノンフィクションだそうです。

それにしても最近のスピルバーグは本当によく働きますね。仕事もいいけど、家族も大事にね!

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Comments

ミュンヘン残念ながらまだ見ていません。
ですがスピルバーグは「ボクはユダヤ人という事を意識した事は
あまりないよ」と言ってましたが小さい頃スピルくんが好物のエビを
食べている時ユダヤ教の司祭(?)たちが来てエビを隠しました。
 ユダヤ教ではエビを食べてはいけないそうで司祭たちに
「エビを食っただろ?」といわれてもママは「いえ食べていません」
と必死にごまかしたそうです。
 これでは、意識するなという方が無理かもしれません。
 本文でもSGA様が言ってますが、民族性はにじみ出てしまう物
なんでしょうか。あまり政治には関心のなさそうなスピルバーグでも。
 >ショッキングな映像
 スピル=宮崎駿という人が時々いますが、ヒュ-マンな内容に
見えて残酷描写も好き、が似てると言いますが、起承転結がなく
ショッキングな映像を流しつづける所ももしかしたら似てるかもしれ
ませんね。
 
 サイト開設しました。入力しておきますがリンクしても良いでしょう
か?

Posted by: 犬塚志乃 | March 16, 2006 at 11:58 PM

どうもです。

>ミュンヘン

きついし、娯楽作品というには程遠いですけど、現在の中東関連にご興味がおありでしたら、見ておいて損はないかと

>エビ

たしか所謂旧約聖書の一部分に、「食べていいもの」「いけないもの」が列挙されてるんですよね。最初は遊牧生活で「あたり易いもの」を食べないように、という配慮だったものが、、「きまりだから守らなきゃいけない」となってしまったようです。

宮崎氏もスピさんも「家族向け」からこっちに「悪趣味」にシフトしてるという点では、確かに似てますね。ただ、宮さんはまだ辛うじて「家族向け」で通ると思います。『ゲド戦記』の予告見ましたが、なかなかに地味そうで(笑)イイ感じです。

>サイト開設しました。

おめでとうございます。リンクOKです。後ほどお邪魔させていただきますね。

Posted by: SGA屋伍一 | March 17, 2006 at 08:01 AM

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