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March 08, 2006

風と雲とギャグと 『風雲児たち』を語ってみたい③

今回は『風雲児たち』の概要について語ります。

『冗談新撰組』以降司馬遼太郎に急速にはまっていった先生は、そこでひとつの疑問を感じられたのでした。以下は同人誌『風雲児たち外伝1』より抜粋した文章です。

"司馬氏の幕末作品は、その作品によって主人公が全部違うわけです。『世に棲む日々』(略)だけ読むと、吉田松陰と高杉晋作がいれば明治維新はできます。『花神』を読めば、大村益次郎だけいれば幕府を倒せる。坂本竜馬なんかいなくたってかまわない。どれもこれも、「彼がいればこそ、明治維新はできた」というけど、「なぜ明治維新ができたか」という本質的なものがわからない”"こういった書き方とは違う切り口、全員が同じスタートラインで、「よーい、どん」で始めれば新しい歴史観が見えてくるのではないかと思ったのです”

ですから『風雲児たち』には「主人公はいない」とも言えますし、「主人公は100人いる」とも言えるわけです。ぶっちゃけ、一度でもスポットライトを浴びた人物は、みな主人公と言えるでしょう。だからこそ公平で、横のつながりが見えやすい歴史ドラマになっているのです。これまた私見ですが、この時期掲載紙『コミックトム』には横山光輝氏の『三国志』が連載されていました。あれも一応劉備が主人公なのでしょうけど、彼そっちのけで英雄が入れ替わりたち代わり登場し、主役顔負けの活躍を見せたりします。横山氏の向うを張って「オレ流『幕末三国志』を」なんて企んでたんじゃないかなあ・・・と。見当違いだったらすいません。

みなもと先生は授業中は寝てるかふけてるかという方だったそうなので、歴史に関してははっきり言ってアマチュアな方です。だからこそ『風雲児』は歴史の素人だからこそできる切り口で、歴史の素人にもわかりやすい語り口になっています。たとえば中学校程度で習った江戸期の歴史をざっと概観してみると、幾つか疑問に思うことがあります。
「なぜ幕末において徳川に反旗を翻したのが、薩摩であり長州であったのか」
「黒船が来て幕府は慌てふためくが、それ以前に出島以外に外国船が来ることはなかったのか」
「江戸期においてほとんど忘れ去られた感のある天皇家が、幕末になると急に存在感を増してくるのはなぜか」
わたしの記憶にある限りでは、教科書はこれらの疑問に答えてくれませんでした。「まあ、そういうもんだったんだろ」で流されがちなこの種のクエスチョンに、『風雲児たち』は目からウロコが落ちるような仕方で答えてくれます。前に述べた小松左京氏の言葉じゃないですけど、日本史の授業もこんな風にやってくれたらもっと面白かったんですがねえ。

ただそんな風にあの人物もこの出来事も・・・とやっていくうちに、作品はどんどん膨れ上がり、肝心の幕末にたどりつくまでにかなりの量を要することになってしまいました。しかしこれら一見「寄り道」と思えるものが『風雲児たち』の醍醐味であり、またあとで振り返ってみると、「寄り道」と思えたものが全部伏線になっている。この辺がなんとも歴史と当作品の奥深いところでございます。

さて、極めて重要な点ですが、『風雲児』は歴史モノであると同時に、ギャグ漫画でもあります。竜馬にせよ松蔭にせよ、偉人であることには変わりありませんが、遠くで彼らのジタバタしてる様を見ていたら、きっと笑えたのではないでしょうか。この辺の様子をみなもと先生の筆は非常ににぎやかに、面白おかしく描きます。けれどそれだからこそ、我々は教科書の記号に過ぎなかった彼らに、親しみと愛情を覚えることができるのです。彼らが懸命にジタバタ迷走し、その果てに命を散らす。その切なさ、感動は凡百の史伝からは到底得られるものではありません。
もっともこれらのギャグ、連載開始がかなり前ということもあり、いい加減トウの立っているものも少なくありません。『オレたちひょうきん族』とか『ウゴウゴルーガ』なんかのネタもちらほら。まあそれはそれで、昭和~平成の一発ギャグ史を振り返る、という風に楽しめるかと。幸いリイド版では巻末に脚注ならぬ「ギャグ注」もついてますので、お若いかたたちにも勉強?になるのではないでしょうか。

というところで次回よりは、いよいよ物語の序章である。「関ヶ原」編よりレビューいたしますです。でっきるかなでっきるかな♪

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