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March 29, 2006

石川雅之二題 石川雅之 『カタリベ』ほか

本日は『もやしもん』でブレイク街道まっしぐらの石川雅之先生のご本をふたつ。

まずリイドSPコミックスより発売された『カタリベ』(全一巻)という作品。平成10年から11年にかけて別冊ヤングマガジンに発表されました。
時は南北朝時代。高貴な血をひいているため打倒・明朝の御輿として育てられていた少年が、奇妙な因縁から海賊マエカワと出会い、彼と共に戦乱の海を旅するという内容。「カタリベ」とはマエカワが少年に与えた名前。
「時代・歴史もののネタは尽きた」ということがしばしば言われますが、たまに「こんな題材・やり方があったんか」と膝を打つような、斬新な作品が生まれることがあります。この『カタリベ』もその一つ。
山田風太郎先生は南北朝時代の魅力について、「様々な種類の人間がいる」という意のことおっしゃっておられました。身分制度がはっきり定まっていない世の中ゆえ、いろんな生業の人間がごった煮のように混在していたということですね。そして「海洋ロマン時代劇」をやるとしたら、この時代ほど話をひろげやすい期間は他にないわけです。『カタリベ』はこういった南北朝時代の魅力を、存分に発揮させたコミックとなっております。

また石川先生は歴史の隙間をぬうだけでなく、大胆な試みにも挑戦しています。たんねんに調べて再現した世界の中に、超常の存在をこっそり混ぜているのです。主人公を迷わせ助ける「バハン様」なる「神」や、人を秘術によって怪物へと変える「鬼師」なる集団がそれにあたります。
現実と超常の狭間で懸命に生きる少年カタリベ。この主人公、大変素直ないい子なんですけど、なかなかにイライラさせられるキャラでもあります。この子ががんばって何かやると、なんでかそれがことごとく裏目に出て人死にが出るからです。「ぼくがああしなければこんなことにはならなかったのに・・・」うん、そうだね。そのとおりだよ。
これらのフラストレーションは最終回のカタルシスを盛り上げるための布石なのかと思いましたが、諸般の事情のため構想の半分ほどで終了。今回の復刊を気に、是非とも再開を希望する次第であります。


もう一本は『週間石川雅之』(モーニングKC)なる短編集(やはり全一巻)。『カタリベ』がハードでシビアでドロドログチャグチャな作品だとすると、こっちはシュールでファンキーでゆるゆるふんわかな味わい。全体的に「よくもまあこんなしょうもない話にこんな手間ひまかけて」という話が多いです。だがそこがいい。
その合間にしんみるするお話も。特に『フランスの国鳥』という一編はできるだけ多くの人に読んで欲しい逸品。狭い農家の中だけで生きて死ぬことに疑問を覚えたニワトリ親子が、ニワトリを尊ぶ国フランスへ向けて旅に出るというあらすじ。可愛い絵柄で、ほっとするようなさみしくなるような印象を残します。わたしはこの話が『もやしもん』のプロトタイプになったのではと考えております。


色々読んでみて、石川雅之という作家は、現実と非現実のバランスをとるのがうまい人だなあ、と感じました。大人の漫画読者の中にはファンタジックな要素があるとひいてしまう方も多いようですが、そういう層でもすんなり入るこめるような。
だからか『人斬り竜馬』(リイドSpコミックス)に収録されている『届かぬ刃』『二本松少年隊』などは他の作品にくらべ、現実より過ぎて、あまり魅力をかんじませんでした(表題作は未読)。
それはともかく、実に様々な引き出しを持った作家さんであることは事実。まだまだこの先楽しませてもらえそうです。

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