谷口悟朗を語りたい 谷口悟朗 『ガン×ソード』ほか
この方以前「谷口悟郎」と紹介しましたが、正確には「悟朗」さんのようです。前者で検索すると、ここの記事がトップで出てきます。恥さらしだね!
えー、これも前から書こう書こうと思いつつ、はや二ヵ月半。アニメ作家谷口悟朗氏について語ります。
最初に彼の監督作品に触れたのは1999年の『無限のリヴァイアス』。わたしのオールタイム・ベスト・アニメの一本であります。衛星軌道上の宇宙開発学校の生徒たちが、あるテロ事件をきっかけに学校内部に隠されていた「リヴァイアス号」もろとも宇宙に放り出される。大人たちが不在の中、少年少女(ウン百人いる)たちは自分たちの生きる道を懸命に探し求めるが・・・・ という話。
このアニメ、冒頭の話に入り込めないうちは「オモロイのかな? これ」なんですが、回が進むにつれ、どんどん目が離せなくなっていってしまうのであります。終わりに向かうにつれどんどん息切れしていく作品が多いなかで、こういう尻上がりにテンションが上がっていく作品はまことに珍しい。ただ、「面白い」というのとはちょっと違うかも。見ていて心が痛いのだけれど、どうにも続きが気になって見ずにはいられない、そんなアニメでした。
谷口氏の第二作『スクライド』、第三作『プラネテス』も、大変気合の入った見ごたえのあるアニメでした。特に前に紹介した『プラネテス』は、漫画原作の力もあるでしょうが、アニメファン、SFファンでなくても十分鑑賞に堪える作品となっています。
三作品に共通するのは「主人公の追い込まれぶり」でしょうか。谷口さんはキャラを精神的にいたぶるのが大変お好きなようで。序盤ののうてんきさはどこへやら、中盤以降で彼らはノイローゼ気味になるほどに、葛藤や自問自答に苦しめられます。何というか「人間の生の感情がビンビン伝わってくる」、そんな作風なんですね。そしてキャラたちが立ちはだかる壁をを乗り越えたとき、我々は非常なカタルシスを得ることができるわけです。
で、昨年秋から始まった最新作『ガン×ソード』も当然期待していたわけですが。
『ガン×ソード』のあらすじ。地球をはるか離れた流刑惑星「エンドレス・イリュージョン」が舞台。結婚式の日に花嫁を謎のカギ爪の男に殺された風来坊・ヴァンは、「鎧」と呼ばれる巨大ロボ「ダン」を駆り、復讐の旅に出た。ひょんなことから行方不明の兄を探す少女・ウエンディが、その旅の道連れとなる。
復讐劇ときたらドロドログチャグチャな内面描写を得意とする彼には、まさしくうってつけの題材。さぞかし『ベルセルク』にも負けないほどのパワーと哀切に満ちたストーリーが展開されるのかと思いきや、これがですねー、むずかしかったんですねー。たまにシリアスなエピソードもあるものの、基本的には突きぬけ過ぎて、かえってひいてしまうようなギャグを連発しながら話は進んできます。いまどきの女の子キャラもいっぱい登場。復讐譚って、そんなにナンパなもんじゃないですよね? そのためシリアスでも喜劇でもない、なんとも中途半端な作品に感じられました。萌え系アニメを主にやっていた脚本家倉田英之氏の色に染められてしまったのかなあ、と考えていましたが、もしかすると富野御大の名作『ダイターン3』『戦闘メカ ザブングル』みたいなものが作りたかったな、と最近気がつきました。
言うまでもありませんがアニメって、基本的に共同作業です。スタッフがかみ合う場合もあるし、そうでない場合もある。黒田洋介氏の脚本や、幸村真氏の原作とは相性が良かったけれど、倉田氏とはミスマッチだった、ということでしょうか。とはいえ、作画のレベル、終盤における盛り上がりや、叙情的なサントラなどは良かったと思います。
あと谷口さん、『リヴァイアス』『スクライド』では「巨大ロボット」や「萌え系ギャル」を馬鹿にしたような描写を度々やってくれてましたが、『ガン×ソード』を見る限りでは、本当は大好きだったのか?と思わずにはいられません。もっと素直になりましょう!
Comments
黒田洋介の脚本が何故か合わない犬塚です。
谷口節ではなく時々ある黒田節、女性を馬鹿にしたような
傲慢ところなどが合わなかったみたいです。
リヴァイアスを
「身体障害者で心にも障害のあった死んだ妹の為に書きました。」
と言ったそうですが、この妹ネタ小説でもたびたび言っていますが
(某小説では作品そっちのけで呪詛をはいていたとか)
ネタというかウソというウワサもあるようです。
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、。
もしウソなら最低なのですが。こういう人が一杯のかけそばを書く
のでしょうか?
Posted by: 犬塚志乃 | June 07, 2006 05:19 PM
わたしが好きな黒田作品というと『トライガン』(アニメ)『リヴァイアス』『スクライド』『ガングレイヴ』ですかね。『マドラックス』は途中で脱落。『大運動会』や『おねがい☆』二部作は観てません。
で、好きな作品ではあんまり>女性を馬鹿にしたような傲慢ところ があるとは感じませんでしたが。人の感じ方というのはそれぞれですが。
>もしウソなら最低なのですが
その話の真偽を確かめようがないので何とも言えません。ただ、わたし個人としては作家と作品は別物と考えております。人格がどうであろうと作品が良いものであればそれでいいです。「かけそば」のようにウソの話を「実話です」と言って発表するのは確かに問題ですけど。
Posted by: SGA屋伍一 | June 07, 2006 08:33 PM
ガンソードはシリアスでも喜劇でもある、とてもメリハリの効いた作品だと思うのですが・・・どうでしょう?
Posted by: 通りすがりの復讐人 | December 09, 2007 06:30 PM
>通りすがりの復讐人さま
はじめまして
ちょっと否定的な記事になってしまって好きな人には申し訳なかったです
ただ、『ガン×ソード』のギャグ部分とシリアス部分のギャップの大きさを「メリハリが利いている」と感じるか、「ちぐはぐだ」と感じるかは人それぞれだと思います。わたしは後者でした
Posted by: SGA屋伍一 | December 11, 2007 12:09 AM