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March 31, 2006

生ける屍の祝祭 金城一紀 『レヴォリューションNO.3』

『GO』で史上最年少で直木賞を受賞した金城一紀氏の連作中編集。『GO』は在日韓国人の少年が主人公でしたが、こちらは日本人の(落ちこぼれ)高校生が語り手&ヒーローとなっております。

有名進学校ばかり集まる新宿区にあって、偏差値が脳死の血圧値と同じ程度の落ちこぼれ高校に通う「僕」は悩んでいた。もうすぐ近隣のお嬢様女子高の文化祭が始まるのに、校内に侵入する手段が何も思い浮かばなかったからだ。
すべては生物の教師Dr. モローの一言から始まった。「きみたち世界を変えてみたくはないか?」 モロー曰く「この世は勉強が得意なやつにとって便利なようにできている」「だから勉強の得意な者の遺伝子(女子)を捕まえてとんでもなく新しい遺伝子を創造すればいい」
その言葉を真に受けた「僕」と47人の仲間は「ザ・ゾンビーズ」というグループを発足。名門女子高、聖和の生徒さんたちと仲良しになるべく、文化祭を利用しようと企んだ。しかしいわれ無き差別を受ける「ゾンビーズ」は聖和から「立ち入り禁止」の通知を申し渡される。非常手段を使ってわずかに敷地内に進入するも、一組のカップルも成立しなかった。翌年も失敗に終わったゾンビーズは、最後の年こそなんとか結果を出すべく策を練るのだが。

このゾンビーズの面々が非常に個性豊か。在日韓国人でめっぽう腕っ節の強い瞬臣。色事にかけては知らぬことの無い混血児のアギー。仲間のためならライオンの檻だろうと平気で入って行くであろうヒロシ。そしてクラス全員カンニングに成功する時でも一人だけばれてしまうような、「最悪のヒキ」を持つ男・山下。
こういうそれぞれ一芸を持つ快男児たちがさっそうと事件を解決していくという話、好きですね。『少年探偵団』とかアンドリュー・ヴァクスのバーク・シリーズとか。
最初はメスを捕まえるという動機だったはずなのに、あれこれ思案を練っているうちに、しまいには「男の意地に賭けて何が何でも女子高に進入する」ことが目的になってしまい、そのハチャメチャぶりたるや読んでいて真に痛快。それなのにどうしたことか、読了した時はなぜか深い感動が胸に染み入る傑作中篇となっております。ウソじゃありません。読んでみればわかります。
この本には続けて後日談である『ラン、ボーイズ、ラン』と、前日談に当たる『異教徒たちの踊り』が収録されています。どちらも大変面白いけれど、表題作があまりに素晴しすぎてやや印象が薄いです。

金城氏の作品はどうも大衆小説に分類されてるみたいですけど、一過性の娯楽にはない深みとインパクトがあります。といって純文学ほど難解でもないし、気取ってもいない。まあジャンルなんかどうだっていいのでしょうけどね。主人公たちは不良少年なのに実際のヤンキーたちとは違って、変にマジメで節度があるところなども好感がもてます。
「ゾンビーズ」が活躍する話は他にまだ二冊ありますが(『フライ、ダディ、フライ』『SPEED』)、ざっと見たところ、やはり両方とも第1作の前日談のようです。なんかそれはちょっと淋しいなーと思うのですが、たぶんわたしは読んでしまうと思います。

ウチの高校の近所にも女子高があって、文化祭の時にはココロが動かないでもありませんでしたが、シャイ・ボーイだったため結局行けませんでした。もっとバカになればよかった(しんみり)。

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Comments

ゾンビーズはある意味、「理想の高校生活」ですよねぇ…高校時代をはるかに通りすぎた大人が読むと、ぁーもっと面白いことやっとくんだったたという「しまった感」があふれ出てきます。
私は「異教徒…」のお話がいちばん好きですね。生きてく上での、最も大切なことが、示されているようでロマンを感じます。
ところで。ガンダム類もお好きなんですね。連邦派/ジオン派、どちらですか~。

Posted by: ほーりぃ | May 16, 2006 at 12:52 PM

はじめまして

>ぁーもっと面白いことやっとくんだったたという「しまった感」があふれ出てきます。

ありますねえ。あーしときゃよかったこーしときゃよかったと、十年以上経っているのにウダウダ考えてたりします。一方で若さに任せて暴走してしまった苦い経験も(笑)

>私は「異教徒…」のお話がいちばん好きですね

ですか。作中に出てくる童話?は強烈ですね。人はそこまで信念を貫き通せるものなのか。

ゾンビーズの面々では、みなかっこいい中にあって、一人いつもさえない山下くんに、特に親近感を抱いてます。

>ガンダム
まあ好きといえば好きかな、というレベルです。
信条でいえば連邦派、MSでいえばジオン派ですね。

Posted by: SGA屋伍一 | May 16, 2006 at 09:29 PM

>人はそこまで信念を貫き通せるものなのか。

異国から流れ着いた男にとって、あの踊りは、「絶対的な価値を持つ、自分だけのもの」なんだと思うんです。人間に生まれたからには、それを見つけるのが最も大切な仕事のうちの一つなんじゃないかと。現実には、死んじゃったら元も子もないとは思いますが、寓話としてはサイコー。
でね、リトル軍曹が言ったでしょ。踊りの邪魔をした王と、その王国がどうなったかなんて、どうでも良いことなんだよ、って。そこがまた素敵じゃないですか。外野の連中は適当にあしらっておこう、そんな事よりも、自分にとっては踊り続ける方が大事。こんな美学を実行出来る人ってあまりいないけど、もしいたら速攻友達にしたいですね。。。

Posted by: ほーりぃ | May 17, 2006 at 12:52 PM

ほれこんでますねー

>人間に生まれたからには、それを見つけるのが最も大切な仕事のうちの一つなんじゃないかと。

自分もなんとか死ぬまでに見つけたいもんです。おっしゃるように、見つけたとしても、外野の声を気にせずに貫いていくのは相当大変でしょうけど。でもその情熱が本物なら、きっと続けていけるんでしょう。
この寓話を語るのが「ヒロシ」くんであるところがまた泣かせます。

今日たまたま「韓国民団と朝鮮総連が和解」なんてニュースがありましたが、舜臣や『GO』の杉原だったらなんて言うかな、と少し考えたりしました。

Posted by: SGA屋伍一 | May 17, 2006 at 08:37 PM

>今日たまたま「韓国民団と朝鮮総連が和解」なんてニュースがありましたが

あー、ニュース番組で見てちょっと、びっくりしましたよ。って言っても、どんな確執があって、どういう経緯で和解に至ったかよく知らないのですが…(恥)
民族の問題というのは、ぐぅたら日本人には理解しにくいものではありますが、それによって舜臣や杉原達が泣いてるのね、と思うと、口がへの字になります…仲良くしたかったんならそう言えば良いのに、や~ね~、等というノリが通じない世界って大変そうですよね。

Posted by: ほーりぃ | May 18, 2006 at 12:50 PM

自分もあんまり経緯とか、くわしくは知らないんですけど。とりあえず和解したんなら、こんどはそれを持続させるよう励んでほしいもんですね。次世代への負担にならぬよう

舜臣、杉原はたぶん
「どうでもいいよ」
「男同士抱き合うなんてキモいね」
とか言いそう
杉原父はわけもなく怒り出しそう(笑)。

Posted by: SGA屋伍一 | May 19, 2006 at 08:26 AM

「どうでもいいよ」
「男同士抱き合うなんてキモいね」

ぅっ…そうかも(笑)
杉原父もそうですけど、金城ワールドに出てくるおっちゃん達って、可愛くて良いです。多少の凶暴性はありますが、まぁご愛嬌ってことで。。。
格闘家好きだし。(←関係ないか)

Posted by: ほーりぃ | May 23, 2006 at 12:42 PM

重ね重ね返信ありがとうございます。

>金城ワールドに出てくるおっちゃん達

杉原父のほかは、モロー先生とか『フライ、ダディ、フライ』の父ちゃんなどが思い浮かびますが、『フライ~』はまだ未読です。そのうちがんばって読みます
杉原父は原作と映画でちょい印象が異なりますね。原作の方がもう少しインテリっぽい感じがします。でも映画の山崎務はとてもインパクト大だったので、自分としては映画版の方が気に入ってます。評論家?の三留まゆみさんは「小説版の方が好き」と何かに書いておられました。

Posted by: SGA屋伍一 | May 23, 2006 at 06:08 PM

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