生ける屍の祝祭 金城一紀 『レヴォリューションNO.3』
『GO』で史上最年少で直木賞を受賞した金城一紀氏の連作中編集。『GO』は在日韓国人の少年が主人公でしたが、こちらは日本人の(落ちこぼれ)高校生が語り手&ヒーローとなっております。
有名進学校ばかり集まる新宿区にあって、偏差値が脳死の血圧値と同じ程度の落ちこぼれ高校に通う「僕」は悩んでいた。もうすぐ近隣のお嬢様女子高の文化祭が始まるのに、校内に侵入する手段が何も思い浮かばなかったからだ。
すべては生物の教師Dr. モローの一言から始まった。「きみたち世界を変えてみたくはないか?」 モロー曰く「この世は勉強が得意なやつにとって便利なようにできている」「だから勉強の得意な者の遺伝子(女子)を捕まえてとんでもなく新しい遺伝子を創造すればいい」
その言葉を真に受けた「僕」と47人の仲間は「ザ・ゾンビーズ」というグループを発足。名門女子高、聖和の生徒さんたちと仲良しになるべく、文化祭を利用しようと企んだ。しかしいわれ無き差別を受ける「ゾンビーズ」は聖和から「立ち入り禁止」の通知を申し渡される。非常手段を使ってわずかに敷地内に進入するも、一組のカップルも成立しなかった。翌年も失敗に終わったゾンビーズは、最後の年こそなんとか結果を出すべく策を練るのだが。
このゾンビーズの面々が非常に個性豊か。在日韓国人でめっぽう腕っ節の強い瞬臣。色事にかけては知らぬことの無い混血児のアギー。仲間のためならライオンの檻だろうと平気で入って行くであろうヒロシ。そしてクラス全員カンニングに成功する時でも一人だけばれてしまうような、「最悪のヒキ」を持つ男・山下。
こういうそれぞれ一芸を持つ快男児たちがさっそうと事件を解決していくという話、好きですね。『少年探偵団』とかアンドリュー・ヴァクスのバーク・シリーズとか。
最初はメスを捕まえるという動機だったはずなのに、あれこれ思案を練っているうちに、しまいには「男の意地に賭けて何が何でも女子高に進入する」ことが目的になってしまい、そのハチャメチャぶりたるや読んでいて真に痛快。それなのにどうしたことか、読了した時はなぜか深い感動が胸に染み入る傑作中篇となっております。ウソじゃありません。読んでみればわかります。
この本には続けて後日談である『ラン、ボーイズ、ラン』と、前日談に当たる『異教徒たちの踊り』が収録されています。どちらも大変面白いけれど、表題作があまりに素晴しすぎてやや印象が薄いです。
金城氏の作品はどうも大衆小説に分類されてるみたいですけど、一過性の娯楽にはない深みとインパクトがあります。といって純文学ほど難解でもないし、気取ってもいない。まあジャンルなんかどうだっていいのでしょうけどね。主人公たちは不良少年なのに実際のヤンキーたちとは違って、変にマジメで節度があるところなども好感がもてます。
「ゾンビーズ」が活躍する話は他にまだ二冊ありますが(『フライ、ダディ、フライ』『SPEED』)、ざっと見たところ、やはり両方とも第1作の前日談のようです。なんかそれはちょっと淋しいなーと思うのですが、たぶんわたしは読んでしまうと思います。
ウチの高校の近所にも女子高があって、文化祭の時にはココロが動かないでもありませんでしたが、シャイ・ボーイだったため結局行けませんでした。もっとバカになればよかった(しんみり)。


