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March 31, 2006

生ける屍の祝祭 金城一紀 『レヴォリューションNO.3』

『GO』で史上最年少で直木賞を受賞した金城一紀氏の連作中編集。『GO』は在日韓国人の少年が主人公でしたが、こちらは日本人の(落ちこぼれ)高校生が語り手&ヒーローとなっております。

有名進学校ばかり集まる新宿区にあって、偏差値が脳死の血圧値と同じ程度の落ちこぼれ高校に通う「僕」は悩んでいた。もうすぐ近隣のお嬢様女子高の文化祭が始まるのに、校内に侵入する手段が何も思い浮かばなかったからだ。
すべては生物の教師Dr. モローの一言から始まった。「きみたち世界を変えてみたくはないか?」 モロー曰く「この世は勉強が得意なやつにとって便利なようにできている」「だから勉強の得意な者の遺伝子(女子)を捕まえてとんでもなく新しい遺伝子を創造すればいい」
その言葉を真に受けた「僕」と47人の仲間は「ザ・ゾンビーズ」というグループを発足。名門女子高、聖和の生徒さんたちと仲良しになるべく、文化祭を利用しようと企んだ。しかしいわれ無き差別を受ける「ゾンビーズ」は聖和から「立ち入り禁止」の通知を申し渡される。非常手段を使ってわずかに敷地内に進入するも、一組のカップルも成立しなかった。翌年も失敗に終わったゾンビーズは、最後の年こそなんとか結果を出すべく策を練るのだが。

このゾンビーズの面々が非常に個性豊か。在日韓国人でめっぽう腕っ節の強い瞬臣。色事にかけては知らぬことの無い混血児のアギー。仲間のためならライオンの檻だろうと平気で入って行くであろうヒロシ。そしてクラス全員カンニングに成功する時でも一人だけばれてしまうような、「最悪のヒキ」を持つ男・山下。
こういうそれぞれ一芸を持つ快男児たちがさっそうと事件を解決していくという話、好きですね。『少年探偵団』とかアンドリュー・ヴァクスのバーク・シリーズとか。
最初はメスを捕まえるという動機だったはずなのに、あれこれ思案を練っているうちに、しまいには「男の意地に賭けて何が何でも女子高に進入する」ことが目的になってしまい、そのハチャメチャぶりたるや読んでいて真に痛快。それなのにどうしたことか、読了した時はなぜか深い感動が胸に染み入る傑作中篇となっております。ウソじゃありません。読んでみればわかります。
この本には続けて後日談である『ラン、ボーイズ、ラン』と、前日談に当たる『異教徒たちの踊り』が収録されています。どちらも大変面白いけれど、表題作があまりに素晴しすぎてやや印象が薄いです。

金城氏の作品はどうも大衆小説に分類されてるみたいですけど、一過性の娯楽にはない深みとインパクトがあります。といって純文学ほど難解でもないし、気取ってもいない。まあジャンルなんかどうだっていいのでしょうけどね。主人公たちは不良少年なのに実際のヤンキーたちとは違って、変にマジメで節度があるところなども好感がもてます。
「ゾンビーズ」が活躍する話は他にまだ二冊ありますが(『フライ、ダディ、フライ』『SPEED』)、ざっと見たところ、やはり両方とも第1作の前日談のようです。なんかそれはちょっと淋しいなーと思うのですが、たぶんわたしは読んでしまうと思います。

ウチの高校の近所にも女子高があって、文化祭の時にはココロが動かないでもありませんでしたが、シャイ・ボーイだったため結局行けませんでした。もっとバカになればよかった(しんみり)。

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March 29, 2006

石川雅之二題 石川雅之 『カタリベ』ほか

本日は『もやしもん』でブレイク街道まっしぐらの石川雅之先生のご本をふたつ。

まずリイドSPコミックスより発売された『カタリベ』(全一巻)という作品。平成10年から11年にかけて別冊ヤングマガジンに発表されました。
時は南北朝時代。高貴な血をひいているため打倒・明朝の御輿として育てられていた少年が、奇妙な因縁から海賊マエカワと出会い、彼と共に戦乱の海を旅するという内容。「カタリベ」とはマエカワが少年に与えた名前。
「時代・歴史もののネタは尽きた」ということがしばしば言われますが、たまに「こんな題材・やり方があったんか」と膝を打つような、斬新な作品が生まれることがあります。この『カタリベ』もその一つ。
山田風太郎先生は南北朝時代の魅力について、「様々な種類の人間がいる」という意のことおっしゃっておられました。身分制度がはっきり定まっていない世の中ゆえ、いろんな生業の人間がごった煮のように混在していたということですね。そして「海洋ロマン時代劇」をやるとしたら、この時代ほど話をひろげやすい期間は他にないわけです。『カタリベ』はこういった南北朝時代の魅力を、存分に発揮させたコミックとなっております。

また石川先生は歴史の隙間をぬうだけでなく、大胆な試みにも挑戦しています。たんねんに調べて再現した世界の中に、超常の存在をこっそり混ぜているのです。主人公を迷わせ助ける「バハン様」なる「神」や、人を秘術によって怪物へと変える「鬼師」なる集団がそれにあたります。
現実と超常の狭間で懸命に生きる少年カタリベ。この主人公、大変素直ないい子なんですけど、なかなかにイライラさせられるキャラでもあります。この子ががんばって何かやると、なんでかそれがことごとく裏目に出て人死にが出るからです。「ぼくがああしなければこんなことにはならなかったのに・・・」うん、そうだね。そのとおりだよ。
これらのフラストレーションは最終回のカタルシスを盛り上げるための布石なのかと思いましたが、諸般の事情のため構想の半分ほどで終了。今回の復刊を気に、是非とも再開を希望する次第であります。


もう一本は『週間石川雅之』(モーニングKC)なる短編集(やはり全一巻)。『カタリベ』がハードでシビアでドロドログチャグチャな作品だとすると、こっちはシュールでファンキーでゆるゆるふんわかな味わい。全体的に「よくもまあこんなしょうもない話にこんな手間ひまかけて」という話が多いです。だがそこがいい。
その合間にしんみるするお話も。特に『フランスの国鳥』という一編はできるだけ多くの人に読んで欲しい逸品。狭い農家の中だけで生きて死ぬことに疑問を覚えたニワトリ親子が、ニワトリを尊ぶ国フランスへ向けて旅に出るというあらすじ。可愛い絵柄で、ほっとするようなさみしくなるような印象を残します。わたしはこの話が『もやしもん』のプロトタイプになったのではと考えております。


色々読んでみて、石川雅之という作家は、現実と非現実のバランスをとるのがうまい人だなあ、と感じました。大人の漫画読者の中にはファンタジックな要素があるとひいてしまう方も多いようですが、そういう層でもすんなり入るこめるような。
だからか『人斬り竜馬』(リイドSpコミックス)に収録されている『届かぬ刃』『二本松少年隊』などは他の作品にくらべ、現実より過ぎて、あまり魅力をかんじませんでした(表題作は未読)。
それはともかく、実に様々な引き出しを持った作家さんであることは事実。まだまだこの先楽しませてもらえそうです。

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March 27, 2006

戦国鬼嫁日記 ~大河ドラマ『功名が辻』より⑤

はーい、みなさん、こんばんは。やってくれたわねえ、王ジャパン。ところでWBCの「C」って、一体どこが「クラシック」なの? 米国球界が色々苦シックなってきてるのはよくわかるけどさ。・・・・あー、始めるわね、第五回。今日は「金ヶ崎の戦い」について。

今川に続いて因縁浅からぬ斎藤家も滅ぼしたボス。いよいよ次は全国の極道を統合して、その頂点に立つ計画を進め始めたの。ただ力はあっても、いきなり「今日からワシがトップじゃあ!!」と言ったって、みんなついてくるもんじゃないわよねえ。やっぱりそれなりの「権威の公認」、つーもんが必要なのよ。で、その「権威」が全国極道連盟の会長を代々務めてきた足利家。この役職、そんなに実権のあるもんじゃなくなってたんだけど、まあ極道の人たちって、昔からの伝統とかに弱いところとかあるからね。それなりに後ろ盾としては使えたのよ。

で、その時の会長が義昭とかいうボンクラ。この人はもともとこの世界の人じゃなくてね。芝居の脚本とか書いてたんだって。他になり手がいなかったもんで、しかたなく担ぎ出されて会長になったみたい。
ほんで、うちの明智さんが昔この義昭といい仲だったの。あの人、芝居とか芸術とかでも知られた顔だったし。男同士でできてたっていう噂もあんのよ。ぶっちゃけ芸術の方面って、そっちの人も多いらしいから。
ボスは明智さんのつてで義昭を見方に付けて、いよいよ極道のトップに就こうと京都へ向けて旅立った。なんで京都かって? うーん、よくわかんないんだけど、京都って昔から極道の聖地だったみたい。もっとミヤビなとこだったと思ってたけど。

で、その道の途中に、滋賀の浅井組の領地を通ることになった。前に言ったボスのじゃじゃ馬の妹がとついだのが、ここ。さすがによそのうちだから彼女も最初はしおらしくしてたんだって。そしたらムコの長政くんが、嫁・・・イチって言うんだけど、変な名前よね・・・にすかりメロメロになっちゃったみたいで。この長政くん、悪い子じゃないんだけど坊ちゃんだけにフワフワしたとこがあってさあ。まあ世間知らず同士、よく出来たカップルだわ。
んで、ボスがそこを通る時、浅いさんちと仲がよくてウチのボスとは仲の悪い朝倉組がなんくせをつけてきたの。「わしらと信長と、どっちが大切なの?」って。一応同盟組んでても長政くんちのお父さんや親戚も、ボスが上に立つのはいい気がしない。そのうえ朝倉さんちとは付き合いも長い。決定を迫られた長ちゃんは
「うーん。義兄さんは殺したくないし、オヤジの顔もつぶせない。どうしたらいいんだろう? でも一番大事なのは君さ! 」「やーん、長政さまーん」とか言ってたそうよ。本当バカップルってむかつくわよね。

結局オヤジどもに押し切られて、長政くんは織田に向けて攻撃の準備を進め始めた。「このままじゃお兄ちゃんがあぶない」 そう思ったバカップル嫁は、ボスに危機を知らせるために、あるものを速達で送ってきた。そのモノってえのが、なんでか子供を産んだハムスター。どうも「(お)フクロのネズミ」っていうことを言いたかったみたいなんだけど、わかりにくいわよねー。解読に手間取ったせいで、織田組は逃げ出すのがいささか遅れることになったって話だし。
そこで問題なのが「しんがり」を誰がやるか。これねー。難しいのよねー。族の仲間が逃げられるようにパトカーを牽制して、自分も捕まらないようにしないといけないんだから・・・って微妙に話ずれてる?
まあとにかく誰もやりたがらなかったんだけど、ここで他と差をつけるべく、サルの兄貴が「俺たちにおまかせを!」とか言っちゃった。おかげで宿六も付き合わされることに。宿六はこの時、敵の幹部とガチンコして深手を負って、半死半生だったから「こりゃ死んだな」って思ったって。実際敵に威圧感を与えるために、みんなゾンビのコスプレしてたって言うし。アホらしくてすぐやめたみたいだけど。

サル兄貴と部下たちは、みんな腹をくくってこのしんがりに望んだ。けれどボスの弟分の吉宗・・・じゃなくて家康さんがサポートに来てくれたおかげで、なんとか逃げ延びることができたわけ。
そのあと宿六たちがどうなったかと言うと・・・ あ! むかつく事思い出した! 前回の胸騒ぎの原因はこれか! むかつくその話は、じゃあ次回ね! ヤドロックー!! どこ行ったー!! フンガー!!

(実際の商品とは異なる場合がございます)

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March 26, 2006

変えるべき処 富野由悠季 『機動戦士ZガンダムⅢ 星の鼓動は愛』

昨年の夏から続いていた「新訳Zプロジェクト」完結編でございます。
一作目では自分のことだけでいっぱいいっぱいだったカミーユ君が、第二作では恋をすることで人を思いやるようになり、この度の第三作では一気に時代の局面を決定する役割を託されることになります。
これまで「できるだけ多くのキャラ・メカを拾っていく」という方針で来た新訳Zですが、さすがに今回は無理だったようで。キリマンジャロ作戦・ダカール演説・ロザミア絡みのエピソード・サイコガンダムMKⅡなどはまとめてカットされました。せめてあともう一時間あれば・・・・ 同じことだったかな。

印象にのこったのは前半のややこしい政治劇ですかね。エゥーゴとティターンズの攻防に割り込んでくるアクシズ。相手より優位に立つために両勢力は、なんとかしてこの第三者を自分の側に引き入れようと画策します。当面の敵に勝つためには、ポリシーの違う相手とも手を組まねばならない。これが老獪な政治ってもんなのかもしれませんが、「大人って不潔!」とカツ君が怒るのも無理ないですね。勝敗を決定したコロニーレーザーだって、もとはといえば敵が開発した武器ですし(あ、ガンダムMKⅡも・・・)。

で、やはり今回の「新訳」で一番話題になったのは、例の「健康的にした」というラストシーン。これがねー、ちょっとねー。「健康的」が悪いわけではないんですよ。いろいろはしょられた他は本当にそこしか変わってないので、いかにも「急遽そこだけ差し替えました」という風に見えてしまうんです(わたしがオリジナルの方に馴染んでしまっているせいもあると思いますが)。ただ、本当に「健康的」にしたいのであれば、カツやジェリド、エマなども生かす方向でいかないといけないんじゃないかと。

もともとこの『Zガンダム』という作品、富野御大はやりたくてやったものじゃなかったそうです。「最近ウチもパッとしないし、ガンダムの続編でも作って盛り上げてよ」ということで、半ば強引にやらされたものだったとか。そんな風にただでさえ気乗りしないのに、ファンの評判は悪い、上はあれこれ言う。しまいにブチ切れた富野さんが「てめえら、みんな星になっちまえーッ!!」と言ったかどうかわかりませんが、そういった怨念がああいう展開、ああいうラストになって表れたんじゃないかと。
今回、いくらか丸くなった富野さんが「新訳Z」をやろうと思った理由としては、当時のファンに「あの時は大人気なくてゴメンネ」というものがあると思います。けれど、あの時監督が生の感情を叩きつけていたからこそ、『Zガンダム』は多大なエネルギーを持つ作品になり、世代を超えて愛されるようになったのではないでしょうか。そしてあの救いようのないラストが、図らずも戦争の無常、悲惨さをストレートに訴える役割を果たしていたと思います。

監督はもうこれで決着、みたいなことを言ってますが、ハマーン様は健在だし、なんかすっきりしません。『ZZ』をやれ、とは言いませんが、せめてもう一本、「真の完結編」となる作品を作って欲しいですね。

『恋人たち』を観にいった時は午前中の上映だったせいか、若い女性、親子連れ、と客層がかなりばらけていましたが、今回(夕方の回)は見るからに同年代の野郎ばっかりで、さながら同窓会といった風情がありました。友よ、心にオタクの炎は燃えているか。

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March 25, 2006

適当掲示板25&Oさんとの対話

毎度どうもっす。当ブログに関するご意見ご感想、その他よろず受け付けております。

あー、今回もこれといってネタがありません。そういうわけである日の同僚との会話を、多少脚色を加えつつお送りいたします。

bbs25b
この人がOさん(代理)


「SGAさん、昨日お休みだったよね

何してたの?」


bbs20-2「はあ、

一人で映画観に行って本屋行って・・・

あとは寝てました」


bbs25b
「ちょっとちょっと

30過ぎの独身男がそれじゃあさびしすぎるよ


恋人とかいないの?」


bbs20-2(大きなお世話だよ)
「えー、あまり出会いとかないものですから。ははは」

(出会い系には前痛い目にあったけどな)
※前回参照


bbs25b
「しょうがないなあ、もう

ちょうどいい、今度合コンあるんだ。
一緒に行こう

はい、これチケット」


bbs20-4「え、いいんんですか!?

Oさんっていい人ですね!

・・・ってこれ、“男だけの”って書いてあるじゃないですか!」


bbs25
「ま、何事も経験だよ

むふふふふ

むふ」


なんとか丁重にお断り申し上げました。どうも、ただ酒を飲むためのいけにえが欲しかったようです

Oさん、いい加減火遊びはお控えください。娘さんももう中学ですし


こっそり普通の日記はじめました
http://d.hatena.ne.jp/sga851/

よかったらどうぞ

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March 24, 2006

風と雲とギャグと 『風雲児たち』を語ってみたい④

それではいよいよ本編の解説をば。今回は潮版1~2巻、リイド版1から2巻106Pのお話

「世界の存在を忘れ 四つの島でできた国のみを天下と信じ 三百年におよぶ長い時間を眠りつづけた国があった」「やがて-その国に目覚めが訪れる時 それまでのうめあわせをせまるかのように おびただしい数の風雲児たちが群がりいでたのである-」

『風雲児たち』はこのナレーションを持って始まります。じゃあさっそく「1853年、黒船来航!」となるのかと思うとさにあらず。「話は四百年前にさかのぼる-」 これですから(笑)
なぜ「幕末のチャンバラをやる」のが目的のこの漫画が、1600年の関ヶ原の戦いから始まらねばならないのか。それは前回挙げたクエスチョンの一つ・・・・「なぜ幕末において徳川に反旗を翻したのが、薩摩であり長州であったのか」 こいつの答えを出すためには、「関ヶ原」はどうしても避けて通れないイベントだったからなんですね。

関ヶ原の戦いに関しての一般のイメージと申しますと「徳川家康率いる東軍と、石田三成率いる西軍ががっぷり四つに組み合う。しばらく戦況は膠着していたが、西軍は小早川秀秋の突然の裏切りにより大崩。結果東軍の大勝利に終わった」とまあ、こんなところかと。確かに大筋はそうなんですが、このとき戦いに参加していた大名・武将たちには実に様々な思惑・誤算があったのでございます。
たとえば後に反幕府勢力となる長州・薩摩・土佐。この三つの藩は、そろって西軍に属していました。では戦いにおいてどんな役割を果たしたのかというと、これが何もしていない(笑) わざわざ中国・九州・四国からやってきたのに、なんでただ「ぼーっ」と戦を眺めていたのか。それぞれ複雑、あるいはアホな理由があったんですが、それに関しては本編をどうぞご覧ください。あとやはり半幕府勢力としてオマケのようにあげられる肥前鍋島藩。彼らも西軍でしたが、爆笑もんのせこい手口を使い、なんとか難を逃れました。どんな風にしてごまかしたのかは、ファンサイト『風雲児たち』長屋(http://fuunji.net/tuuhan/tuuhan2005huyu.html)で通販されている『風雲児外伝11 日本宰相伝』に書かれています。
ここで特筆しておきたいのは薩摩藩。戦いがほぼ終わりに近づいた時、彼ら(約千六百名)の帰路の前には、すでに十万余の軍勢が立ちふさがっていました。反対側に逃げれば慣れない土地で迷った挙句散りぢりになってしまうのは目に見えている。そこで彼らが選んだ方策とは- 歴史上類を見ない「○○○への○○」は、ギャグ調で描かれてはいますが、背筋を走るものがございます。

さて、戦いは終わりましたが、家康の敗者に対する制裁はなおも続きます。西軍に属していたほとんどの大名が改易、追放されました。薩摩・長州は一体どうやって取り潰しを免れたのか。そして君主の追放された土佐に望む悲劇とは。土佐に関するエピソードには、今話題の「あの人」も登場。イメージダウンまちがいなしです。そして戦後処理が終わるころには、幕府に対するぬぐってもぬぐいきれない深い怨念が、敗者たちの胸の奥にしかと宿されることになったのでした。そしてその怨念は、厚いベールに覆われたまま、長い時を越えて子孫たちに受け継がれていきます。

この部分に挿入される天皇に関する考察も、なかなか興味深いです。西洋・中国などでは、権力者が交代するとき、大抵旧体制の支配者は皆殺しにされます。それに対し、天皇家はいつの時代も権力者たちの庇護の下にあり、約二千年存在し続けてきました。天皇家が乱世を生き延びてこられたのは、いかなる理由によるものなのか。それはまことに「日本人らしい」ものの考え方のためーと先生は主張されます。


ここまで読んで「是非これらの答えが知りたい」というあなた、いますぐ大書店かAMAZON へGOです。たぶんワイド版の方が入手しやすいかと思われますが、表紙にだまされないように(笑) 次回は二代将軍秀忠の恋物語を中心にレビューいたします。


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March 22, 2006

まだ終わらない大晦日 三谷幸喜 『THE 有頂天ホテル』

大好評につきもうちょっと公開するようですが、いまのうちにやっときます。

学生のころ、保養所でバイトしてたことがあります。普段は7、8人くらいしか客が来ないのに、大晦日に限っては百人くらい入りました。「いくら何でも差がありすぎだ」と思ったものでした。つまり、何が言いたいのかと申しますと、「宿泊施設にとって、大晦日は死ぬほど忙しい日」ということです。そんなただでさえてんてこまいなところへ、授賞式は行われる、記者たちが押し寄せてくる、総支配人は自分のことしか頭に無い、服は盗まれる、ペットは逃げ出す、不法侵入者はいる、部屋を嵐のように散らかす、自殺しようとする者までいる・・・・ 従業員にしてみれば、「いっそ殺せ」と言いたくなるような、そんな地獄の二時間ちょいを描いたムービーです。

ひねくれ者のようでいて、いつも健康的なメッセージをなげかけてくる三谷さん。今回は「夢をあきらめないで」ということがメインテーマになっているようです。ずっと成功続きのように思われている三谷さんですが、お若いころはそれこそ挫折の連続だったそうです。そういう背景を知ると、メッセージにもそれなりの重みが出てくるというもの。

以下は役にたたない感想、予備知識をダラダラと。思い切りネタバレしてます。

・主役の役所広司演じる新堂さん。夢をあきらめ別の仕事をしていたあるとき、別れた妻と再会。必死でいまの境遇をごまかそうとする・・・ この設定、企画ものとして三谷さんが書いたドラマ『三番テーブルの客』を思い出させます。『三番・・・』の方は元夫がウソがばれてた、と気づいたところで終わるのですが、こちらではその後も描かれます。ですから、ウン年越しの『三番・・・』完結編ということもできるかもしれません。また「しんどう」という名前は演劇『ショー・マスト・ゴー・オン』の主人公(舞台監督という設定)を思い出させます。性格はまるで違いますが。
役所氏のシーンで一番印象に残ったのは、無理矢理授賞式で受賞者でもないのにスピーチまでやりだしてしまう場面。痛々しくて見てられませんでした(笑)。

・今回のメインヒロインは松たかこ嬢ということになるのでしょうが、YOUと篠原涼子の毒気に食われてあまり目立たなかった気がします。個人的に萌えたのは役所さんにからむ元・妻役の原田美枝子さんと、現・補佐役の戸田恵子さん。いよいよオレも熟女道か。

・一番笑ったシーンは佐藤浩市(汚職代議士)が香取慎吾(ベルボーイ)に「ありがとおおお」と迫ってる後ろで、篠原涼子(コールガール)が「あたし鴨が食べたーい」と言ってる場面。『新選組!』を観てないとわからんところではありますが。面倒なんで数えませんでしたが、今回かなりのキャストが『新選組!』および『HR』とかぶっています。なぜか『CASSHERN』からも三名ばかし重複。『HR』といえば、慎吾くんのラッキーアイテムがめぐりめぐって自分に戻ってくるというくだり、同じエピソードがありましたが、『HR』よりも凝っていて、スケールもアップしてます。

・マイベストキャラクターはホテル探偵を演じる石井正則氏。最初は「自分の世界に酔いすぎ」と思いましたが、いつのまにかかっこよく思えてくるから不思議。鉄パイプかなんかもって総支配人を追っかけまわすところが特に決まってました。他に印象に残った男優というと、髪の生え際が相当ヤバイことになってる唐沢寿明とオダギリジョー。この二人は仮面ライダー経験者という点でも共通してます。もっとも唐沢氏の方は中に入ってただけで、素顔は見せてませんが。

・東京サンシャインボーイズの面々も相変わらず出てきます。と言っても、今回は本当にチョイ役のチョイ役ばっかり。比較的出番が多かったのは大会社の社長令息を演じる近藤芳正氏・・・と思ったら、この人は正式な「サンシャイン」のメンバーではないそうで。次回作は舞台『ハゲレット』・・・ってなめてんのか! フランスに留学してたという梶原善氏の姿を久々に見られたのは良かった。

偶然が多い、クライマックスがややだれるなどの難点もありますが、素直に笑えて、元気の出る映画。一家の平和と健康のために、是非。

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March 21, 2006

燃えるポエム野朗 ~三月のポエム

(3月21日のポエム)
pm060321
WBCと言ったら

普通はヘビー級王者タイトルマッチとかだ思うのだが

如何


三回も負けてるのに優勝とは釈然としませんが
でもまあカストロ球団相手によくやりました


(3月14日のポエム)
bbs18-2-4ある日 ママンが言った

「あなたの その 飛び出ている鼻毛をお抜きなさい

 そんなことでは 百年の恋も冷めてしまうわ」と


ぼくは言った

「そんなことで冷めてしまう恋は

 真実(ほんとう)の恋じゃない」

愛は永遠


(3月7日のポエム)
bbs23-6春なのに 物憂げですよ

春なのに 涙がこぼれます

春なのに 春なのに 鼻水ばかりです

(※30歳以上推奨)

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March 20, 2006

平成ライダーの六年間を振り返る 龍騎編①

えー、そいじゃ『龍騎』についてやるとしますか。これも最初は印象悪かったです。まず龍騎のデザインを見たときに、「なんじゃこのライブで使うデカいマイクみたいな奴は」と思ったし、「鏡の中からモンスター」という発想には「対象年齢ダウン?」と感じられましたし。しかし観終わってみると、平成ライダーだけにとどまらず、全特撮作品でもっとも思い入れのある作品となりました。2002年は大概の日本人にとって「日韓共催ワールドカップ」の年でしょうけど、わたしにとっては『龍騎』の年であります。

鏡の中から怪物が現れ、人々をさらう事件がひそかに起こっていた。事件を追っていたジャーナリスト志望の青年・城戸真司は、怪物を難なく退治する謎の怪人・仮面ライダーナイトを目撃し、ショックを受ける。親を奪われ泣いている少女の姿に心動かされた真司は、ナイトのパートナーらしき少女・優衣の助けにより、自らも仮面ライダー龍騎となる。しかしその直後、真司の前に現れた正体不明の男・神崎はこう告げた。「仮面ライダーは最後の一人になるまで戦い合わねばならない。その代わり、勝ち残ったものはどんな願いもかなえることができる」
そして真司とナイト・蓮の前に次々と現れるライダーたち。「オレたちは戦い合うべきじゃない。この力は人々を守るためのものだ」と主張する真司の声は、しかし彼らには届かない。果たして最後に勝ち残るのは一体誰なのか?

今回は『龍騎』の元となったと思われる三つのモノについて説明します。
まず石ノ森章太郎が自分で書いた原作版『仮面ライダー』の第4話「十三人の仮面ライダー」。前にも書きましたが、本郷猛と寸分違わぬ姿をした十二人の仮面ライダーが、ショッカーの刺客として本郷を襲撃するというエピソードです。このエピソードは、仮面ライダーがもともとはショッカーの作った人間兵器であることを思い出させます。作中では1号2号である本郷と一文字のみがショッカーの洗脳を脱したということになってますが、もし他のライダー全てに自我があったとしたらどうなるのか? この発想を発展させたものが『龍騎』のメインコンセプトとなったものと思われます。白倉プロデューサーは「あんまり意識してない」とか言ってたそうですが、現場はみんな意識してたそうですし、「13RIDERS」なんて番外編まで作っておいて、そりゃないだろう、と思います。

二つ目はやはり石ノ森先生の漫画『番長惑星』。所謂「リュウ三部作」の最後の作品。ひょんなことからパラレルワールドに迷いこんでしまった主人公リュウ。そこは我々の世界と非常によく似ているものの、なんと殺人が合法化されていた。己の優越性をしめすために、嬉々として殺し合いに興じるものたち。そしてリュウも、その戦いに巻き込まれていく。「人殺しはいけない」と自分に懸命に言い聞かせるリュウ。けれども周囲全てがそれを「良し」としていたとしたら、我々はなおもその信条を守ることができるでしょうか。『龍騎』では様々な価値観を持つキャラクターが現れ、我々にそれを問いかけます。

三つ目はこの前年に起きたNY貿易センター破壊テロ。飛行機を乗っ取ったテロリストも、報復としてイラクを空爆する米国も、「われこそは正義」とさかんに主張します。しかし我々の目からみて、どちらも正義からは程遠いと思わざるをえません。百人いれば百通りの正義がある。それでも最も広く「正義」として信じられているものあるか。あったとして、それは本当に「正義」と言えるのか。『龍騎』はうっかりすると全ヒーロー番組を否定しかねないこの問題に関し、果敢に挑戦を挑んでいます。

「戦わなければ生き残れない」
次回はこの作品の副主人公とも言えるナイト・秋山蓮と、ゾルダ・北岡秀一について語ります。

ryuki1ryuki2これが問題の「龍騎」(右はややアレンジあり)

スダレ仮面とかデンセンマンとか
色々言われてました

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March 19, 2006

仮面らいだー カブトくんヒビキさん 02の巻

携帯変えました。こころもちハイヴィジョンでお送りします。

krkh02-1krkh02-1b「やいやいカブト! てめえ、ヒーローのくせに公衆の面前でいきなり脱ぐとはふてえ野郎だ! べらんめえ!(←江戸っ子)」

「待ってくれ ヒビキさん
これにはわけがあるんだ」


krkh02-2akrkh02-2b「オレたち昆虫は
こうやって脱皮することによって
幼虫から成虫になるように
本能によって義務付けられているんだ

別に裸体を自慢したいわけじゃない」


krkh02-3akrkh02-3b「ふふ。うまく言い逃れたつもりだろうがそうはいかんぞ
青年はそういう風に幼虫から成虫にいたる過程を
日本語でなんと言うか知っているかな?」

(もしかして・・・ ドキドキ)

krkh02-4a
krkh02-4b「ズバリ
"変態”
と言うのだッ!!」

「ああッ!!」

イブ 「・・・あほくさ」


全然関係ありませんが、昨日『ウォレスとグルミット 兎男の恐怖』観てきました。覚悟はしていましたが、あまりの面白さに腰が抜けました。

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March 18, 2006

山田風太郎に関しては色々言わせてもらいたい⑦ 『魔群の通過』

ではマイベスト山田風太郎作品『魔群の通過』を紹介いたします。ベストなんだけど、「好き」というのとはちょっと違う。「もっとも思い入れが深い」「一番印象に残っている」・・・この微妙なニュアンス、わかって!

内容を一言で申しますと「幕末における水戸天狗党の長征とその結末」について描いた小説ですね。水戸といえば普通は納豆か黄門様が思い浮かぶものですが、実はここの藩、江戸期を通じて「尊皇思想」が最も濃ゆいところだったのでございます。将軍家の親藩でありながら、「一番偉いのは天皇だよね」と言い続ける矛盾。その矛盾が、幕末において壮絶なる内紛へとつながっていきます。
時代的にはリードしていたはずだったのに、時期尚早のため敗れた尊皇派・天狗党は、せめて自分たちの志を帝に知ってもらおうと、京都へ向けて行軍します。しかし彼らはお尋ね者。行く先々で放火の歓迎を受けるのは必定。そこで道なき山々を掻き分けながら、筆舌に尽くしがたいほどの苦しい旅を強いられます。彼らは京都にたどり着けるのか。そして旅の終わりに待ち受けるものとは。

タイトルを見ますと、いかにも化けモンがウジャウジャ出てきそうなお話を想像します。しかし山風のキャリアの中では、かなり史実に近い作品。ストーリーは天狗党のリーダー・武田耕雲斎が四男で、当時十五歳だった源五郎くんの回想という形で語られます。この語り口がまことに情感豊かで、話を読み易いものにしています。
史実に近いといっても、そこは山風。隙間を縫って印象深い創作を幾つも盛り込んでいる・・・と思われますが、どれがどこまでそうなのか、正直不明です。もともとそれが作風の人ですが、特にこの作品ではそれがわかりにくいものとなっています。この小説の重要な要素である、「いかつい男たちの中にあった二丁の賓客用のカゴ」。このカゴが実在したのは確かですが、果たして中身は作中にあった通りなのか? たぶんウソだと思いますけど、もしかすると、もしかして?

この小説は「歴史」よりも「人間」を描いた作品だとわたしは考えます。人間の意地、弱さ、純粋さ、残酷さ、滑稽さ、悲しさ、愚かさ、恐ろしさが、全てこの300ページの中に含まれています。そして登場する群像の、なんと印象深いこと。きさくで爽快な青年でありながら、悪鬼と忌み嫌われた田中愿蔵。党を脱走したのち、数奇な運命をたどる田中平八。仏門でありながら党に加わった豪放な僧、全海。まるで中国史か戦国時代の軍師のような山国兵部。武士と言うにはあまりにも幼すぎた丑之助少年。天狗党を追いつめる復讐の鬼、市川三左衛門。その後ろに控え、冷酷無情な処断を下し続ける幕軍総督・田沼玄蕃頭。
そして物語の軸となる三人の男女・・・ 源五郎の「甥」で、まっすぐすぎる少年、武田金次郎。市川の娘、お登世。田沼の愛妾、おゆん。この本を読んだのもかれこれ十年ほど前になりますが、どの人物もはっきりと記憶に残されております。

「維新史最大のタブー」と言われる水戸天狗党。なにがそんなにヤバかったのか、読めばわかります。『魔群の通過』は現在 廣済堂文庫より発売中。

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March 17, 2006

谷口悟朗を語りたい 谷口悟朗 『ガン×ソード』ほか

この方以前「谷口悟郎」と紹介しましたが、正確には「悟朗」さんのようです。前者で検索すると、ここの記事がトップで出てきます。恥さらしだね!

えー、これも前から書こう書こうと思いつつ、はや二ヵ月半。アニメ作家谷口悟朗氏について語ります。
最初に彼の監督作品に触れたのは1999年の『無限のリヴァイアス』。わたしのオールタイム・ベスト・アニメの一本であります。衛星軌道上の宇宙開発学校の生徒たちが、あるテロ事件をきっかけに学校内部に隠されていた「リヴァイアス号」もろとも宇宙に放り出される。大人たちが不在の中、少年少女(ウン百人いる)たちは自分たちの生きる道を懸命に探し求めるが・・・・ という話。
このアニメ、冒頭の話に入り込めないうちは「オモロイのかな? これ」なんですが、回が進むにつれ、どんどん目が離せなくなっていってしまうのであります。終わりに向かうにつれどんどん息切れしていく作品が多いなかで、こういう尻上がりにテンションが上がっていく作品はまことに珍しい。ただ、「面白い」というのとはちょっと違うかも。見ていて心が痛いのだけれど、どうにも続きが気になって見ずにはいられない、そんなアニメでした。

谷口氏の第二作『スクライド』、第三作『プラネテス』も、大変気合の入った見ごたえのあるアニメでした。特に前に紹介した『プラネテス』は、漫画原作の力もあるでしょうが、アニメファン、SFファンでなくても十分鑑賞に堪える作品となっています。
三作品に共通するのは「主人公の追い込まれぶり」でしょうか。谷口さんはキャラを精神的にいたぶるのが大変お好きなようで。序盤ののうてんきさはどこへやら、中盤以降で彼らはノイローゼ気味になるほどに、葛藤や自問自答に苦しめられます。何というか「人間の生の感情がビンビン伝わってくる」、そんな作風なんですね。そしてキャラたちが立ちはだかる壁をを乗り越えたとき、我々は非常なカタルシスを得ることができるわけです。
で、昨年秋から始まった最新作『ガン×ソード』も当然期待していたわけですが。

『ガン×ソード』のあらすじ。地球をはるか離れた流刑惑星「エンドレス・イリュージョン」が舞台。結婚式の日に花嫁を謎のカギ爪の男に殺された風来坊・ヴァンは、「鎧」と呼ばれる巨大ロボ「ダン」を駆り、復讐の旅に出た。ひょんなことから行方不明の兄を探す少女・ウエンディが、その旅の道連れとなる。
復讐劇ときたらドロドログチャグチャな内面描写を得意とする彼には、まさしくうってつけの題材。さぞかし『ベルセルク』にも負けないほどのパワーと哀切に満ちたストーリーが展開されるのかと思いきや、これがですねー、むずかしかったんですねー。たまにシリアスなエピソードもあるものの、基本的には突きぬけ過ぎて、かえってひいてしまうようなギャグを連発しながら話は進んできます。いまどきの女の子キャラもいっぱい登場。復讐譚って、そんなにナンパなもんじゃないですよね? そのためシリアスでも喜劇でもない、なんとも中途半端な作品に感じられました。萌え系アニメを主にやっていた脚本家倉田英之氏の色に染められてしまったのかなあ、と考えていましたが、もしかすると富野御大の名作『ダイターン3』『戦闘メカ ザブングル』みたいなものが作りたかったな、と最近気がつきました。

言うまでもありませんがアニメって、基本的に共同作業です。スタッフがかみ合う場合もあるし、そうでない場合もある。黒田洋介氏の脚本や、幸村真氏の原作とは相性が良かったけれど、倉田氏とはミスマッチだった、ということでしょうか。とはいえ、作画のレベル、終盤における盛り上がりや、叙情的なサントラなどは良かったと思います。
あと谷口さん、『リヴァイアス』『スクライド』では「巨大ロボット」や「萌え系ギャル」を馬鹿にしたような描写を度々やってくれてましたが、『ガン×ソード』を見る限りでは、本当は大好きだったのか?と思わずにはいられません。もっと素直になりましょう!

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March 15, 2006

戦国鬼嫁日記 ~大河ドラマ『功名が辻』より④

またちょい前の話で悪いけどさあ、やっちゃったわねえ。永田議員。たまにこういう人いるわよねえ。攻めることばっかり考えてて、攻められることはまるで眼中にない人。あ、そう言えばウチのボスも・・・・

あー、そいじゃ始めるわね。「戦国鬼嫁日記」。今日は「宿六と愉快な仲間たち」について語っちゃうんだから! もう!
とにもかくにも結ばれたあたしと宿六。本当はふたりっきりのスイートホームに住みたかったんだけどさ。小さいながらも一家を構えてるわけだし、そういうわけにはいかないのよね。極道の妻って辛いわ。ハア。
宿六と姑については前に話したわよね。あと宿六には弟がいてさあ。こいつがイケメンのくせにしょっぱなから憎まれ口叩いてくれちゃって、ちょっとカチンときたわね。まあ、あれも美しすぎる義姉への照れ隠しなんでしょうけど。最近見ないけどまた登山にでも行ったのかしら。
宿六の「ファミリー」としては、あと二人、先代から仕えてくれてるオッサンらがいるの。一人は吉兵衛。昔はカリスマ教師としてならしてたらしいんだけど、教育の現場に絶望したのか、こっちの世界へ。でもかつてのクセがぬけないのか、すぐに授業始めようとすんのよ。はっきり言って超ウザイ。メンド臭いから「ハイハイ」って聞いてるけどねー。そうそう、実は教員免状ならあたしも持ってんのよ。
もう一人は新衛門。こっちはこっちでフーテンの義兄の愚痴と、嫁の自慢ばっかし。笑点の座布団運びなみに子供ばっかし作っちゃってさ、うちに7人全部連れてきちゃって、たまったもんじゃなかったわ。ただ奥さん、やっぱり無理がたたったのか、こないだぽっくり往っちゃった。お気の毒よねえ。そしたらやんちゃざかりの次男坊がグレちゃって、悪さばっかりするようになった。最初はさすがに可哀想だからガマンしてたんだけど、ある日とうとうブチ切れて、逆さ吊りにしてビシバシ折檻してやったの。それ以後は言うこと聞くようになったわ。やっぱ子供は叩いて教えないとね!

えっと次は宿六の、普通の会社でいうところの同僚ね。ひとりは中村。もともとお笑い志望でツッコミやってたせいいか、口がメチャクチャ悪い。宿六もつい頭に来て取っ組み合いになることも多いみたい。趣味はアメフト。
それをなだめてくれるのが、堀尾さん。この人は他の二人よか少し年食ってるみたい。前に敵対組織のスパイやってたことがあるらしいんだけど、ガチョウだかアヒルだかいう組員にそれがばれて、あやうく殺されかけたとか。あとこの人、前にどっかであったような気がしてならないんだけど、どうにも思い出せないのよねー。ま、いっか。
中村も堀尾さんもそれぞれ奥さんがいるんだけど、未だに名前も顔も覚えてない。わかるでしょう? あたしそういうの苦手なのよ。

サル兄貴のことは話したわよね。そのカミさんが、あたしの姉貴分にあたる、ねね姉さん。可愛らしい名前だけど、年は相当食ってる。バブルのころは相当いい思いしてたらしいのよ。同じ名字の相方と組んで、いろんなところにひっぱりダコだったんだって。兄貴と結婚した時はみんな「なんであんなのと」っておもったらしいわ。でもね、これが後々「史上最大のサキモノ買い」と言われるようになったんだから、世の中本当にわからないわ。
あとはボス関係ね。ボスにも当然嫁さんがいます。前に話した斎藤の家の人。この人がなんていうか、影も幸も薄そう。きっと旦那で苦労するタイプね。って言うか、もうしてんだけど。あとボスには相当じゃじゃ馬な妹がいたんだけど、こないだ琵琶湖のほとりに嫁にいったわ。甘やかされて育ったみたいだから、いまごろきっと色々苦労してるでしょうねー。
ボスの配下にはサル兄貴のほかに、柴田さんて言う若頭や、前田なんとかとかいう人がいます。柴田さんはバリバリの武闘派で、このチームの前だと木下一家もちょい肩身狭い。前田何とかの方はよく知らないんだけど、みんな、この夫婦があたしらにそっくりだって言うのよ。冗談じゃないわ! あたしの方が断然美しいに決まってんでしょ! あと最近明智さんとかいう人がリクルートされて入ってきた。いま流行のインテリやくざってやつね。頭が回るからボスには重く用いられてんだけど、ちょっと出世が早すぎて、仲間うちからやっかみもちらほら。

えーと、こんなもんかしら。つーか、もう疲れたからこれ以上やりたくないわね。次回はボスが妹さんの嫁ぎ先に乗り込んでいった話。あんまり期待しないで待ってて。ん? なんか妙な胸騒ぎがするんだけど。・・・? とりあえずバイビビビ。

(実際の商品とはいささか異なる場合があります)

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March 13, 2006

五輪地獄変 スティーブン・スピルバーグ 『ミュンヘン』

最近マジメな映画ばっかり観てるなあ。おれ、こんなんでいいのかなあ(バカ映画ファンとして)

というわけでスピルバーグの「本当にあったヤバイ話」シリーズ最新作、『ミュンヘン』をお送りします。
1972年のドイツはミュンヘン。オリンピックが華やか開催されていたその時、選手宿舎でイスラエルのアスリートたち数名が、パレスチナ系テロリストによって殺害されるという陰惨な事件がおきる。事件に対して世間の扱いが小さいことに納得のいかないイスラエル政府は、極秘裏に計画の首謀者たちを葬るチームを組織。モサド出身のアブナーと、ヨーロッパに住む市井のユダヤ人たちがそのメンバーに選ばれる。ハプニングが絶えないものの、着実に標的を消していくアブナーたち。しかし彼らの存在はやがて敵対勢力に知られることになり、アブナーたちもまた追われる立場になっていく。

最近のスピルバーグ作品は、あえてオーソドックスな起承転結を廃し、いくつかの同じくらいヤマのエピソードを順々に語っていくような傾向が見られます。まあ構成的によくまとまった話というのは「スカッ」と忘れられ易いので、ショッキングな映像をダラダラと連射することで「そう簡単には忘れさせへんぞー 心に刻みこんじゃるぞー」というねらいがあるのかもしれません。

政府が主人公に「キミたちと我々は表向きは関係ないことになってるから。何かあっても我々は知らんぷりを決め込むから」と申し渡す場面は、まるで『スパイ大作戦』か『隠密同心』。じゃあ、さぞかしすご腕の連中が集まるのかと思いきや、これが「こないだまで普通の市民でした」みたいなオッサンばっかし(でも殺る気はまんまん)。アブナーだけが唯一特殊部隊出身なんですが、彼にしてからが見るからに怪しい組織の情報を鵜呑みにしてたりとか、私怨で標的の数を増やしちゃったりとか、アマチュア精神丸出しでことに当たっております。ただこういう描写は「冷酷無比に思えるテロリストたち(パレスチナ側も含む)も、もともとそうだったわけではない」ということを我々に訴えかけています。

興味深いのはやはり民族感情というやつでしょうか。例の事件の情報をテレビで見ながら、アブナーは「オレには関係ないし」みたいなことを言います。しかし政府から命令が下されるやいなや、彼は単なる仕事以上の熱心さでミッションを遂行します。こういう風に民族に対する思いというのは、普段クールに装っていたりしても、心の中で巨木のようにどっしりと根をおろしているものなのかもしれません。日本国に対してそれほど愛情を持っていないわたしですら、スポーツでは日本代表を応援しますし、国際世論で母国が悪く言われてるといい気はしません。まして20世紀半ばまで祖国というものがなく、世界中に散らばっていたユダヤ人たちにとって、心のよりどころとなっていたものは、まさしくその民族感情以外の何ものでもないでしょう。

主人公に情報を提供してくれる男がこんなことを言います。「キミらユダヤ人は停滞を嫌う。常に邁進し続けることを望む」 そういった気質がロスチャイルド家を産み、アインシュタインを産み、そしてスピルバーグを育んだ土壌となったのでしょう。しかしそういった精神が「軍事行動」「報復テロ」に向けられしまうと、とんでもないことになってしまうわけで。というか、もうなってるわけですが。
日本もアジアにおいては今のところ憎まれ役NO.1です。憎まれ役の大先輩であるユダヤ人の例から、色々学べることは多いのではないでしょうか。

この作品、『映画○宝』の名物コーナーで、珍しく町山・柳下両氏がそろって「UP!」評価を下していました。でも本文を読むと、いったいどこをほめてるのかさっぱりわからない(笑)。ただ「最初に殺された標的はテロと無関係だった」「主人公らはサブのチームで、メインのチームはしょっぱなから大失敗して全員とっつかまってしまった」などシャレにならない真相が色々書いてあって参考になりました。ちなみに映画のベースとなったのは『標的は十一人』というノンフィクションだそうです。

それにしても最近のスピルバーグは本当によく働きますね。仕事もいいけど、家族も大事にね!

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March 11, 2006

適当掲示板24&ニャンコ先生との対話 苦闘編

いつものアレです。当ブログに関するご意見ご感想、その他よろず受け付けております。
さて、今回はとくにこれといったネタがありません。ちかごろ出かけたところと言えば映画館とか、ゼンザイ先生の家とかそれくらい。
そんなときはコレ↓でお茶を濁すことにいたします

bbs24SGAよ

元気そうでなによりじゃ

最近の世の中の動きはどうじゃ?


bbs20-2は。

やはり民主党の永田議員に関する、例の詐欺メール事件が

未だに尾を引いていて、メディアを騒がせているようです


bbs24左様か

IT社会もけっこうなことじゃが、それに付随する問題もまた様々じゃな

ところでSGA。お主はメール等で痛い目にあったことはあるのか?


bbs20-2は。実は・・・・

「ワタシお金もヒマももてあましてるの。よかったら一度お会いしませんか? うっふ~ん」
なんてメールが届いたので、ホイホイと指定の場所に行ってみましたところ・・・

bbs20-3・・・・

ふんふん

それで?


bbs20-4チンピラ風のオヤジ数人に取り囲まれ

ボコボコにされた挙句

有り金全部持っていかれました


bbs20-3バカか、おまえは

それで

いったい幾ら巻き上げられた?


bbs20-2まあもともと貧乏なので

250円くらいしか持ってませんでした

やつらもさぞがっかりしたことでしょう。ふふふ、ふふ


bbs24まあ、不幸中の幸いというやつじゃの

時にSGA、

例の「ネコ年」創設の件、その後どうなっておる?


bbs20-4は。全身全霊を持ってことにあたってはおりますが

やはり想像以上に難しく

なかなか先に進めない状態でして・・・ お許しを


bbs20-5ええい、この役立たずが!

今後何か進展があるまで、

ワシの前に姿を見せるな!


どうしてわたしばかりが、こんな理不尽な目にあわねばならないのでしょう?
とりあえず今日は「ジュラシック・パーク3」でも観て寝ます。
おやすみなさい。

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March 10, 2006

兵士ビンビン物語 サム・メンデス 『ジャーヘッド』

20061229174053
あ。公開今日くらいまでだわ(笑)

なんとなく海兵隊に入ったのんきな青年、スオフォード。幸か不幸か、彼が入隊してまもなくフセインがクェートに侵攻。湾岸戦争が勃発する。中東に派遣され、激戦を覚悟していた彼らを待っていたのは、演習と暇つぶしばかりの毎日。そんな状態が半年も経ったころ、とうとう実戦に参加せよとの命令が彼らに下る。

タイトルはカリカリに刈り上げた海兵さんの頭がビン(ジャー)に似ていることから来ています。ジャーって炊飯器のことだとばかり思ってました。最近のアメリカさんの戦い方は、高性能のレーダーで敵の拠点を探り、しかる後にピンポイントで空爆というのが主流のようです(誤爆もけっこうあると聞きますが)。そんな戦闘において、歩兵さんたちのやることはほとんどありません。
"戦争映画なのに戦闘シーンはごくわずか。あとは兵士たちが行き場の無いエネルギーをもてあます描写がほとんど。そんな映画が面白いのか? これが面白いんである”と、某紙の映画評にはありました。なるほど、予告編とかみるとなかなか独特の絵が映されていて、確かに面白そう。そんなわけで観にいったわけですが。

はっきり言って騙されました(笑)。大体冷静に考えて、退屈に参っている人々の様子をえんえんとみせられて、面白いと思いますか? 面 白 い わ け が な い。主人公に感情移入すればするほど、「おれ、こんなところで映画みてていいのかなあ。もっと他でやらなきゃいけないことがあるんじゃないのかなあ」という気分にさせられます。体育会系特有の下ネタ百連発にも、いいかげん辟易しました。
ただ、「実際の湾岸戦争がどんなものだったのか?」ということを勉強するうえでは、大変優れた教材だと思います。あと、むさくるしいやろうどもを、暑苦しい場所にずーっとかためて置いておくとどんな風になるか・・・ということもよくわかる作品になっております。

ワタシがうっかりこの映画を観に行ってしまった他の理由としては、次の二作品がなかなか面白かった、ということもあります。

『スリー・キングス』 湾岸戦争終了直前、このまま帰っても生活はジリ貧ということに気づいた三人の兵士。フセインの隠し財産をかすめとろうと砂漠を探索しているうちに、いつの間にか難民たちを守る立ち場になってしまう。舞台は同じ湾岸戦争でありますが、こちらは『ジャー』よりも物語の起伏があり、テンポもいい。社会派っぽいテーマも盛り込んであります。ジョージ・クルーニー主演。

『ロード・トゥ・パーディション』 『ジャー』のサム・メンデス監督がこれより前に手がけた作品。一ことで言うと『ゴッドファーザー』+『子連れ狼』。全ての長男にささげられるべき映画。「静かな狂気」という点では共通しているものの、方向性のかなり違うお話。

同じ日にもう一本観た映画が『ミュンヘン』だったため、わたしのハートはさらにげんなりしてしまったのでした。いや、こちらは別に駄作だったというわけではないのですが。近日レビューする予定。

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March 08, 2006

風と雲とギャグと 『風雲児たち』を語ってみたい③

今回は『風雲児たち』の概要について語ります。

『冗談新撰組』以降司馬遼太郎に急速にはまっていった先生は、そこでひとつの疑問を感じられたのでした。以下は同人誌『風雲児たち外伝1』より抜粋した文章です。

"司馬氏の幕末作品は、その作品によって主人公が全部違うわけです。『世に棲む日々』(略)だけ読むと、吉田松陰と高杉晋作がいれば明治維新はできます。『花神』を読めば、大村益次郎だけいれば幕府を倒せる。坂本竜馬なんかいなくたってかまわない。どれもこれも、「彼がいればこそ、明治維新はできた」というけど、「なぜ明治維新ができたか」という本質的なものがわからない”"こういった書き方とは違う切り口、全員が同じスタートラインで、「よーい、どん」で始めれば新しい歴史観が見えてくるのではないかと思ったのです”

ですから『風雲児たち』には「主人公はいない」とも言えますし、「主人公は100人いる」とも言えるわけです。ぶっちゃけ、一度でもスポットライトを浴びた人物は、みな主人公と言えるでしょう。だからこそ公平で、横のつながりが見えやすい歴史ドラマになっているのです。これまた私見ですが、この時期掲載紙『コミックトム』には横山光輝氏の『三国志』が連載されていました。あれも一応劉備が主人公なのでしょうけど、彼そっちのけで英雄が入れ替わりたち代わり登場し、主役顔負けの活躍を見せたりします。横山氏の向うを張って「オレ流『幕末三国志』を」なんて企んでたんじゃないかなあ・・・と。見当違いだったらすいません。

みなもと先生は授業中は寝てるかふけてるかという方だったそうなので、歴史に関してははっきり言ってアマチュアな方です。だからこそ『風雲児』は歴史の素人だからこそできる切り口で、歴史の素人にもわかりやすい語り口になっています。たとえば中学校程度で習った江戸期の歴史をざっと概観してみると、幾つか疑問に思うことがあります。
「なぜ幕末において徳川に反旗を翻したのが、薩摩であり長州であったのか」
「黒船が来て幕府は慌てふためくが、それ以前に出島以外に外国船が来ることはなかったのか」
「江戸期においてほとんど忘れ去られた感のある天皇家が、幕末になると急に存在感を増してくるのはなぜか」
わたしの記憶にある限りでは、教科書はこれらの疑問に答えてくれませんでした。「まあ、そういうもんだったんだろ」で流されがちなこの種のクエスチョンに、『風雲児たち』は目からウロコが落ちるような仕方で答えてくれます。前に述べた小松左京氏の言葉じゃないですけど、日本史の授業もこんな風にやってくれたらもっと面白かったんですがねえ。

ただそんな風にあの人物もこの出来事も・・・とやっていくうちに、作品はどんどん膨れ上がり、肝心の幕末にたどりつくまでにかなりの量を要することになってしまいました。しかしこれら一見「寄り道」と思えるものが『風雲児たち』の醍醐味であり、またあとで振り返ってみると、「寄り道」と思えたものが全部伏線になっている。この辺がなんとも歴史と当作品の奥深いところでございます。

さて、極めて重要な点ですが、『風雲児』は歴史モノであると同時に、ギャグ漫画でもあります。竜馬にせよ松蔭にせよ、偉人であることには変わりありませんが、遠くで彼らのジタバタしてる様を見ていたら、きっと笑えたのではないでしょうか。この辺の様子をみなもと先生の筆は非常ににぎやかに、面白おかしく描きます。けれどそれだからこそ、我々は教科書の記号に過ぎなかった彼らに、親しみと愛情を覚えることができるのです。彼らが懸命にジタバタ迷走し、その果てに命を散らす。その切なさ、感動は凡百の史伝からは到底得られるものではありません。
もっともこれらのギャグ、連載開始がかなり前ということもあり、いい加減トウの立っているものも少なくありません。『オレたちひょうきん族』とか『ウゴウゴルーガ』なんかのネタもちらほら。まあそれはそれで、昭和~平成の一発ギャグ史を振り返る、という風に楽しめるかと。幸いリイド版では巻末に脚注ならぬ「ギャグ注」もついてますので、お若いかたたちにも勉強?になるのではないでしょうか。

というところで次回よりは、いよいよ物語の序章である。「関ヶ原」編よりレビューいたしますです。でっきるかなでっきるかな♪

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March 06, 2006

重甲ビーライダー 仮面ライダーカブトを語る①

むかしむかし、しぶやのもりに、つかまえられれば「おうさま」になれるという「でんせつのかぶとむし」がすんでいました。おばあちゃんからそのはなしをきいていた「てんどうそうじ」は、いっしょうけんめいどりょくして、そのかぶとむしをつかまえることにせいこうします。あといっぽのところでかぶとむしをさきにとられてしまった「かがみくん」は、てんどうからそれををうばおうとしますが、いつのまにかなかよしになってしまいます。しかしひみつそしき「ぜくと」は、「へいみんが『かぶと』をもつのはゆるされない!」とおこって、てんどうにこうげきをしかけてきます。

すいません。ところどころウソです。
というわけで平成ライダーシリーズ最新作「カブト」、現在までに6話を消化しましたが、いや、面白いです。わたしテレビ番組はほとんど録画視聴なんですが、久々にその日のうちに見ないと気がすまない作品です。
最初は印象よくなかったんですよ。常に「斬新」「挑戦」を追い求めている本シリーズにしては、今回のこれは名前といいデザインといい、いかにも保守的というか、スポンサー主導っぽいなあと。しかしやっぱり実際に見てみないことには、面白さはわからないものです。
まじめなあらすじを。宇宙より飛来した隕石により、渋谷の町が瓦礫と化してから十年。隕石に伴ってやってきたと思われる怪生物「ワーム」が、人間を襲い、その人間に擬態して社会に潜むようになっていた。その存在を感知していた秘密組織「ゼクト」は、ワームに対抗する切り札として「マスクドライダーシステム」を開発。しかしそれが実際に戦闘に投入される直前、システムのキーである「カブトゼクター」は、突如としてその場に現れた謎の男の手に渡ってしまう。

本作品で特徴的なのは、まず「すごく"ムシ”っぽい!」というところ。組織(insectから取った?)の名前、擬態や脱皮といった怪人の能力、OPや予告のデザインなど、「ムシ」を思わせる記号があちらこちらにちりばめられています。また本作品のライダー&怪人たちは、「クロックアップ」と呼ばれる超加速能力を有しています。単純に『サイボーグ009』や第4作『555』からの流れと考えることもできますが、ここは「ムシ」というキーワードで考えてみましょう。
どこまで本当の話かわかりませんが、大きな動物と小さな動物とでは、流れる時間の感覚が違うらしいです。たとえば我々からしてみれば、「ネズミは二年くらいしか生きられなくて可哀想だな」とか思うわけじゃないですか。ところがネズミにとっては二年という時間が、我々の60年くらいに感じられるらしいのです。『カブト』におけるこの「クロックアップ」というアイデアは、「昆虫の時間感覚を人間の大きさで再現してみたらどうなるか」という発想を発展・誇張したものだと思われます。この時間のズレを表現した奇抜な映像が、『カブト』の魅力の一つですね。

もう一点特徴的なのは、主人公・天道総司のキャラ造形。この天道という男、「おれが最強」とか「地球は自分を中心に回っている」というセリフからもわかるように、かなり自信満々の「オレ様」野郎です。最近のスポーツ漫画などにはよく見られる例ですが、ヒーロー物としてはかなり異色の設定。
この性格は彼が敬愛してやまない「おばあちゃん」によりはぐくまれたもののようですが、理由としてはもうひとつ、「彼が大災害を経験している」ということもあるように思えます。
大地震にせよ大津波にせよ、あまりにも破壊的なエネルギーを身をもって味わってしまったら・・・ もしかすると「自分は強い」ということを強烈に思い込まないと、圧倒的な無力感に飲み込まれてしまいそうになる。そういう人もいるかもしれません。もちろんそれで万事OKかといえば、はなはだ疑問ではあります。恐らくこれから主人公はそういう点で試されていくのでしょう。
戦争やテロはなんとか回避しているわが国も、こと自然災害という点では無縁ではいられません。それに直面した時我々はどう心を保てばばよいのか、またそれを経験した人にどう接していけばよいのか― それが『カブト』における裏テーマではないかと踏んでいます。

『カブト』にはもう一点、大きな謎があります。それは「主人公はなぜあんなに"サバ”にこだわるのか」ということ。『シャンゼリオン』へのオマージュなのか? はたまた「サバはあたる」というゲンかつぎなのか?
とりあえずおいしいサバの味噌煮が作りたい人は、公式サイト「まかない」のページ(http://www.tv-asahi.co.jp/kabuto/12_recipe/01/index.html)へGOだ!
(オレはめんどいからパスだ!)
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March 05, 2006

仮面らいだー カブトくんヒビキさん 01の巻

そういうわけで新展開です

krkh01-1
「オフに入ったことですし
今日はじっくり後輩の活躍でも見学するとしますか

「おう」


krkh01-2
「あ、始まりましたね」

「♪キミの存在 戦うたび 生まれ変わる
Yu-鬼・・・ こんなところで仕事してたのか・・・」


krkh01-3「天の道を行き
あーたらこーたら
悪を倒せと俺を呼ぶ!
変身!」

「(Henshin)」
krkh01-4「キャスト、オフ!」

「(Cast Off )」

かぽーん


krkh01-5「ふー
なかなかすごかったですね」

「ああ
恐ろしいやつだ、カブト・・・」


krkh01-1
「公衆の面前でいきなり脱ぐとはな」

「ちがうでしょ」

たぶん続く

またこんなしょうもない記事が記念すべき250本目
おめでたい、オレ


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March 04, 2006

ヤング遠山金四郎 市川森一 『夢暦長崎奉行』

去年のいまごろ予告に出して、今年の正月に読了した本をいまごろレビュー。マイペースにもほどがあるってもんです。はい。

あらすじ。文化九年、かつてロシア大使を相手に一歩も退かぬ見事な交渉を見せたことで名をはせた遠山左衛門尉景晋(かげみち)は、今度は奉行として長崎の地に足を踏み入れる。景晋はひそかに供の者として、息子の金四郎を同行させていた。ある事情で家を出て、無頼の生活を送っていた金四郎に、別の環境で「人生のやり直しをさせてやりたい」という思いからであった。しかし景晋には密貿易で私腹を肥やす大名・島津重豪など政敵も多く、彼らは遠山父子を罠にかけんと陰謀をめぐらす。

みなさんは遠山の金さんが実在の人物だって知ってました? わたしはマンガ『風雲児たち』を読むまで架空の人だとばかり思ってました。お白州で毎回脱いでたというのはさすがにウソでしょうけど、人情味溢れる名奉行だったことは確かなようです。で、金さんの親父、この方がまた面白い人でして、役人の登用試験でトップ合格してたりとか、探検家間宮林蔵の上司だったりとか、トリビア満載な人物でございます。このキャラ立ちまくりな二人が、さらに長崎という個性的な土地を舞台に大活躍するのですから、これは期待するなという方が無理。日本であって日本でない長崎の独特な風物に加え、すれ違いが続いていた父子の不器用なコミュニケーションやなども読みどころの一つです。
作品の前半はいわゆる連作形式。遠山親子が長崎の地で遭遇する幾つかの風変わりな事件が描かれます。二通りの説がある金さんの入れ墨について、その異なる説を見事に融合させたエピソードなどが心憎い。後半は異国船を巡る知られざる騒動「シャルロッテ事件」を題材に、長崎の地を守らんと奔走する二人の活躍が描かれます。

原作は脚本家の市川森一さん。代表作は「ウルトラセブン」・・・って他にもあんだろ・・・ まあ特撮から文芸作品、大河ドラマまで、幅広くしかも独自なカラーで手がけておられる方ですね。じつはこの作品、かれこれ十年ほど前にNHKで放映されたドラマの原作でもあるのです(主に前半)。セガレの方はジョーの相棒だった葛山信吾さんが、オヤジの方は「キケロのジョー」こと小林稔侍さんが演じておられました。
ドラマでは罠にはまった金さんが泣く泣く長崎を去るというちょっと納得のいかない結末でしたが、こちらはもう少しさっぱりした終わり方となっています。ただもう少し親子の絆をどーんと深めるような盛り上がりがほしかったなあ・・・というのは無いものねだりか。

この作品、光文社よりハードカバー(二分冊)、文庫本(一冊)で出版されていたのですが、ここのところ絶版状態でした。ところがタイムリーなことに昨年11月に長崎歴史博物館より復刊。7&Yなんかで扱っているので、ご興味おありの方はそちらで検索してみてください。

「その方怠慢に加え投げやりな仕事振り、まことにもって不届きゆえ、市中引き回しの上獄門磔申し渡す」
お奉行、そいつはあんまりだ!

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March 01, 2006

4回回ってワンと鳴く 川原泉 『銀のロマンティック・・・わはは』

五輪終了記念。十五年くらい前に姉の影響で読んでいた川原泉作品の一編。そういえば少女漫画レビューは初めてか? こっ恥ずかしいぜ! YEAH! 現在は白泉社文庫版『甲子園の空に笑え』に収録されていて、そちらの方が手に入りやすい模様。

日本を代表するスピードスケーター・景浦は、競技中の事故がもとで、走者としての生命を絶たれる。それでもスケートがやめられず、地元のリンクで悶々と滑っていた彼は、ある日ニヤけながら三回転半ジャンプを飛ぶ由良という変な少女と出会う。彼女はバレエ・ダンサーを父に持ち、自分もその道を歩んでいたが、実はスケートの方が好きだったのだ。そのリンクの所有者で、フィギュアの指導者でもある××兄妹(すいません、名前忘れました)は、二人に本格的にペアでやってみないかと持ちかける。「あほくさ」と一笑に付した景浦だったが、競技への飢えと恩師の言葉に心を動かされ、再びアスリートとしてリンクの上に立つ決意をする。

当時はおろか今でさえフィギュアの知識など皆無なわたしですが、それでもこのマンガから幾つか教わったこともあります。たとえば、4回転ジャンプというのはフィギュアスケーターたちにとって、永年の見果てぬ夢であったこと(だから、日本人がそれに成功したと聞いたときは驚いた)、また日本にはどうやらペアの競技者はいないらしい(でも作中ではそれなりにいることになってます)ということなど。

このマンガがすごいのは、パートナーとの出会い、衝突、逆境とその克服、さらなる逆境、さらなる・・・と、普通なら5冊以上かかるであろうお話をたった一巻で、しかもほどよいテンポで描ききっているところ。ただこれは、全編コメディ調の、細かいコマ割りだからこそ出来たことと言えるかもしれません。
川原作品は紛れもなく「少女漫画」であり、恋愛の要素も確かにあるんですが、それはお笑いの合間合間に、非常にささやかに描かれます。わたしの記憶が確かならば、ベッドシーンはもちろんキスシーンのひとつもなかったはずです。
そんなわけで「美しい脚」を手に入れるために高野山の荒行に挑んだりとか、女が男を持ち上げたりとか、到底マジメなマンガとは言いがたいんですが、クライマックスではそれら全てを飲み込むほどの(というか、それらのお笑いがあったればこその?)、大きな感動を呼び起こします。
ラストページで二人が立ち尽くす真っ白な風景。その向うに、私たちは無限の空間をみるわけです。

「目指したのは 銀のロマンティック あまりにもまぶしすぎて もう何も見えない」(この辺うろ覚え 許して)

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