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February 24, 2006

さらば故郷よ旅立つ船は 佐藤純彌 『男たちの大和』

少年兵 「武士道と士道の違いを教えてください」
一茂 「武士道とは生きながらいつ死んでもいいという覚悟をすること。士道とは・・・」
内田 「おお! 呼んだか!」

♪こうじょうら~ ひ~とみをとじれ~ば~ 
「死んだらいけん!」

今日はおちゃらけはこのくらいにしといて、青くせ~主張をひとつ。
付き合いで観にいった映画ですが、大した見ごたえでした。
ポスターを見ますといかにも反町隆史が主役みたいですけど、この映画の主役は松山ケンイチ演じる神尾克巳という少年兵。今は年老いた彼が、「大和が沈んだ海へ行きたい」という女性と出会い、当時を振り返るという体裁となっています。
序盤では子供と大して変わらぬような主人公たちが、大和に着任し、軍隊の厳しさに圧倒されつつも、次第にその一員となっていく様子が描かれます。また、物語の中ほどでは、戦局が悪化していく中、死に行く覚悟を決め、家族や愛する人たちに別れを告げる兵士たちの物語が語られます。まあこの辺は既存の「戦記もの」と、それほど差はありません。
どんなに理由をつけようと、戦争というやつは国家が狂ってる状態にあるのだと思います。国を親のように感じているのであれば、たとえそれが狂っているとしても、最後まで面倒をみなければならない。もちろん当時ですら、親だとしてもそこまでする義理はないと思った者だっていたでしょうし、国のことを親とすら思ってない者もいたことでしょう。一方で狂ってなどいない、国はどこまでも正しいと考える者も大勢いたはずです。しかしこの映画に出てくる多くの若者は、先に述べたように感じていたということです。そしてその「親」のわかりやすい目に見える象徴が、「大和」であるというわけ。実物大のセットまで造られた堂々たる大和は、なるほど、大抵の野郎なら胸をときめかせ、「この船となら」と感じさせる説得力を有しています。この映画で「母親」がたくさん出てくるのに「父親」の影が極端に薄いのは、おそらく「大和」が搭乗員たちの父親を表わしているからでしょう。船ってやつは、どちらかといえば女性に例えられることの方が多いですけれど。

明日は最後の戦い、というとき、兵士たちはなんとか自分たちなりに気持ちの整理をつけようとします。少年兵たちは海に向かってたそがれ、下士官たちは酒を飲んで騒ぎ、若い将校らは死の意義について激論を交わします。
しかしいざ戦闘が始まると、兵士たちのそんな気持ちなどおかまいなしに、冷酷な現実が彼らの上に降りかかります。そこにはスローモーションも勇壮なマーチもありません。死に際に気の利いたセリフを言う余裕もありません。先ほどまで会話を交わしていた友は、数秒後にはミンチと化しています。この辺りの描きようは、恐らく『プライベート・ライアン』を意識したものかと思われます。
それぞれにそれなりのドラマを持っていた兵士たちは、ブルドーザーの前のアリンコたちのごとく、容赦なく平等にプチプチと押しつぶされていきます。国家の意思や歴史の流れの前に、一個の人間の存在など、無いも同然なのでしょうか。
生き残ってしまったことに後悔の念を抱いていた老人は、上官に育てられた女性から、彼のその後を聞き、ようやっと「許された」という思いを得ます。体が朽ちようともその記憶が語り継げられる限り、個人の存在には意味がある― そんなメッセージに、わずかな救いを見るわけです。

反町はじめ役者さんたちが、明日は散る儚い花のような印象を与える中で、ひとりだけ強烈に目立っていたのが中村獅童。彼だけがいつもと変わらず、ギラギラと脂ぎっていました。『ラスト・サムライ』や『新選組!!』にも出演していた池松壮亮くんも、現代の若者代表で出ています。

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Comments

 佐藤監督は敦煌の監督でもあったのですね。
何か思いが。
 ハルキパワー。 

Posted by: 犬塚志乃 | March 02, 2006 at 09:50 PM

>敦煌
主演は佐藤浩市でしたね

『風雲児』ファンとしては『おろしや国睡夢譚』がまっさきに思い浮かびます
他には『新幹線大爆破』とか『北京原・・・おっと

Posted by: SGA屋伍一 | March 03, 2006 at 07:58 AM

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