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January 06, 2006

YANAGI! バロン吉元 『柔侠伝』『昭和柔侠伝』

今日はややマイナーなネタを。近頃廉価版が出された1970年から「漫画アクション」に連載された名作劇画です。

明治38年、日露戦争の勝利に沸き返る帝都に、九州は小倉から一人の青年がやってきた。青年の名は柳勘九朗。かつて講道館に敗れた父の無念を晴らすべく、上京してきたのだった。ところがその闘志は講道館の門人である風変わりな男、矢崎正介との出会いにより、行き場を見失ってしまう。矢崎や彼の妹の千鶴、さらに自由を謳歌する多くの人々と交わるうち、勘九朗は自分の進むべき道について真剣に悩むようになる・・・・・・

メイン二人の名前に講道館と来れば、いやでも富田常雄の『姿三四郎』を思い出さずにはいられません。きっと血沸き肉踊るライバルたちとの激闘が展開される・・・・・・と思いきや、あんまりそういう方向にはいきません。さらに三四郎や矢野正五朗のモデルである西郷四郎や嘉納冶五郎も実名で(チラッとですが)登場するので、いささか混乱します。
物語は主人公である勘九朗だけでなく、明治から大正にかけて生きた多くの市井の人々の肖像をも描きます。バロン先生が描きたかったのはアクションよりも、時代であり、群像であり、セーシュンの彷徨だったということですね。つまりは柔道を切り離してもそれなりに成立するお話なんです。
まあこの「柔」というのは柔道だけでなく、主人公のカラーも意味しているのかもしれません。人に優しく、情に篤く、サラ金太郎なら大喝するところでも「ニカ~ッ」と笑ってギャグに逃げてしまう。こういうの、なんかいいですね。
この傾向は続編である『昭和柔侠伝』においてさらに顕著になります。こちらは勘九朗の息子である勘太郎の物語が語られるわけですが、後半は完全に戦記もの。戦争はいけない、という思いもあるけれど、少年が戦闘機や空戦に対して抱くような純粋な愛情が溢れた漫画となっています。

さて、この『昭和』の方の『柔侠伝』、ちょっと中途半端なところで終わっています。打ち切りにでもなったのだろうか、と思いましたが、単に続々編である『現代柔侠伝』にシフトした、ということだったようです。バロン先生のHP(http://www.baron-yoshimoto.jp/)を見てみますと、このサーガがさらに『男柔侠伝』『日本柔侠伝』へとつながっていったこともわかります。時を隔てて『新柔侠伝』という作品も描かれました。まんず大した大河ドラマだったんですねえ。
『柔侠伝』『昭和柔侠伝』は現在ゴマブックスというあんまり聞かない(失礼)出版社から復刊されています。明治後期から昭和初期といった時代に興味がある方は是非どうぞ。第三部以降は今のところ復刊の予定はないようですが、読みたい気もするし、これでいいという気もするし……

レビューしといてなんですが、じつはいまだにこのマンガ「じゅうきょうでん」と読むのか「にゅうきょうでん」と読むのかわかりません。だってどこにもフリガナがふってないんだもん。ん? それとも「やわらきょうでん」と読むのか?

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