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January 18, 2006

山田風太郎に関しては色々言わせてもらいたい⑥ その他諸々編

宿題が続きます。

「明治もの」を一通り書き終えられたあと、山田先生の目は戦国初期へと向けられていたようです。しかしながらこの「南北朝もの」は、『室町お伽草子』ほか3作品ほどが書かれたところで打ち止めとなってしまいました。さしもの山風といえども、老衰には勝てなかったのでございます。無情。
最後の長編は南北朝ものでありながら忍法帖でもあり、「柳生十兵衛三部作」の完結編でもあった『柳生十兵衛死す』でした。

推理小説、忍法帖、明治もの、南北朝もの・・・と紹介してまいりましたが、これらのカテゴリーに入らない時代小説も幾つかあります。いずれも王道からは大きく外れた山風ならではの作品となっています。
特に評価の高いものあげるなら、滝沢馬琴の現実と『八犬伝』の虚構が交差する『八犬傳』、ブラックな視点から戦国最大の英雄を語る『妖説太閤記』でしょうか。『一夢庵風流記』に先駆けて前田慶次郎にスポットをあてた『叛旗兵』なども注目に値します。

日記・ノンフィクションの分野においても、山風は優れた本を幾つも著しています。そちら方面の作品も幾つか紹介いたしましょう。正直に申しますと、この辺ほとんど未読。うう。いまさらながら「色々言える」身分ではないことを痛感いたします。そういうわけで以下の文章はいろんなところからの受け売りです。
・『人間臨終図鑑』 
 古今東西の著名人の死に様を享年別に採集したもの。全三冊。ところどころにおしゃれでシビアな山風独自の警句が織り込まれています。
・『同日同刻』
 1945年8月15日のあの刻。日本各地で何がどうなっていたのかパラレルにつづった作品。生前これをもとにNHKでドキュメントが製作されたこともありました。

そして
・『戦中派不戦日記』
日本最大の暗黒時代。病気のため「列外」とされ、内地にとどまった山田青年の青春と懊悩の軌跡。記録文学として各方面から高い評価を得ました。

ご存命の間に戦前の3年のことが書かれた『戦中派虫けら日記』も出版されました。ただ先生は自分の日記が公に出されることに多少抵抗があったようで、「これ以外はもう絶対に出さない」と何かで言っておられた記憶があります。
ところが死後、「さらに読みたい」という要望が多数あったのか、戦後7年分の日記も次々と刊行されてしまいました。こうなるとプライバシーもへったくれもありません。巨星の宿命とでも言うべきでしょうか。

途切れ途切れで山田風太郎の足跡を俯瞰して参りました。これより先はまったく脈絡もなく思いついた順、読んだ順にレビューしたいと思います。とりあえず買ったまま積んであるのは『忍法創世記』『忍者黒白草子』『エドの舞踏会』など。『警視庁草子』『幻灯辻馬車』も折に触れつまみ読みしております。

次回はマイベスト山風作品『魔群の通過 天狗党叙事詩』について書く予定です。「予定」って便利な言葉ですね。

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Comments

どうもです。
>『魔群の通過 天狗党叙事詩』
これ、今日義母に送ります(笑)自分じゃ買う気ないのに、わざわざ送るために古本で買いました。村上豊さんの表紙の文春文庫(単行本の方が字が大きいけど、本って邪魔だし…)。
結婚してから知ったのですが、義母は天狗党の末裔らしいです(笑)尤も、あの死の行進の前には脱けていて、現在に至っているようなのですが。
天狗党に関するものには興味を持っているみたいで、『天狗争乱』(だったっけ)なんかも読んでたと聴いたので。
但し、山風の他の作品に興味を持って、「こんなもん読んどるのかあの嫁は」とかバレても知りません(笑)我ながらギャンブルだなー(笑)
ついでに、この義母、藤田東湖の遠い親戚らしいです。
ワンダー婚姻。
以上、フライング天狗党でした。

Posted by: 高野正宗 | January 20, 2006 at 08:50 AM

毎度です。
>義母は天狗党の末裔らしいです(笑
>この義母、藤田東湖の遠い親戚らしいです。

な、なんですとー!!
開国を悲願とした男の子孫と、攘夷にこだわり続けた者の末裔がそれと知らずにめぐり合い、結ばれたわけで・・・
うーむ。世が世ならマヂで「ろみおとじゅりえっと」だったかもしれませんね。ろまんす。
そう言えば淳庵さまは書生派の末裔だそうです。

>フライング天狗党
ナイスです。連中はそれこそ「地べたを這いずり回った」という表現がしっくりする集団ではございますが。

Posted by: SGA屋伍一 | January 20, 2006 at 10:42 PM

 「幻燈辻馬車」、大型書店(三省堂、ジュンク堂)2軒まわって、2軒とも上巻しかないというのはどういうこと? 迷った末、いざとなったらネットで注文すればいいと思い、上巻だけ購入したのだけれど、今日ネット書店を検索した結果今は取り扱っていないときた。下巻はどこに行ったら買えるか、ちょっと不安になってきた。まだ行っていない本屋に足を運んで探します。
 火曜日の「知るを楽しむ」半分寝ながら見ました。鹿島茂って人、本で読んでいるイメージと全然違う。もっと不真面目(失礼)な人かと思っていたのに。

Posted by: kakakai | January 22, 2006 at 09:41 PM

>「幻燈辻馬車」
>下巻はどこに行ったら買えるか
あらら。昨年秋に東京に行ったときはまだ並んでたんですがねえ。わたしもオンラインざーっと見てみましたが、大体上巻しか残ってませんね。とりあえず一件扱っているサイト見つけましたが
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4480033440.html
「品切れの場合もある」とか。一応トライされてみてください

岡本喜八氏の遺志を組んで誰か映画化してくれるなら、ドバッと増刷かかるのでしょうが・・・

>鹿島茂って人
わたしも一回目見逃しました。二回目は今晩にでも録画したのを見るつもり。こちらの方は仏文学者さんみたいですね。著作リストから山風はちょっと連想できませんね。『明治波濤歌』で川路利良がフランスを旅する話があるみたいですが。

Posted by: SGA屋伍一 | January 23, 2006 at 12:43 PM

ああっ!もったいないっ!!
いきなり失礼しました。
第1回が正にその、『波濤歌』なのですよ!あの例の、川路の列車内脱○事件。多分これがらみの人選でもあるでしょう。
これは私が説明するよりテキストを入手された方が一万光年ぐらい速いです(意味不明)。NHKのHPからどうぞ。送料65円の流石親方日の丸。テキストが余りに充実していて、読むだけでもいっか、という気分になるぐらいです(笑)
鹿島さんって、初めて拝見したのですが、喋り方がいかにも大学の先生って感じの、「なんとかがー、なんとかなのでえー」(で、語尾が尻上がり)という喋り方をするんですね(笑)
2回目も1回目同様、何より嬉しいのは、生きてる動いてる喋ってる山風を見られることですかね。
お坊ちゃんだし、大人の風がある気なお写真なので、ゆったり喋る人かと勝手に想像していたのですが、実際は物凄く急き込んだ喋り方なので驚きました。いかにも頭の回転に口がついていかないのがもどかしいという感じの。頭の回転の速い人は早口だっていうのは本当なんだなあと思いました。
繰り返しますがテキストは必携です!(国営放送の回し者ではありません(笑))

Posted by: 高野正宗 | January 23, 2006 at 06:40 PM

連投失礼致します。
再放送は「1週間後の朝早く」ですので…1回目のはもう終ってますが(夏ぐらいまでは1ヵ月後に再放送してくれたんですが)、見逃した場合はそちらをチェック。あと、送料65円が日の丸ってのは冗談で、単に第三種郵便だからだと思います(笑)まとめて頼んでもこのお値段ですから、他の号も狙い目です。特に今回は山風と乱歩の抱き合わせっていう渾身の(というか命知らずな)号ですし(笑)即買いで、ついでに志ん生とか上方歌舞伎とか漱石と落語の号とか、買ってしまいました。

Posted by: 高野正宗 | January 23, 2006 at 06:50 PM

 再放送は朝5時10分くらいから。第1回は半分寝ながら、それで見ました。本放送は自分ちのサイトでコメントしたとおり、見逃したんですけどね。執念で早起きしました。そのうちに総合テレビで午前10時くらいからまとめて再放送しそうです。今週は瀬戸内寂聴さんの回のよう。番組は、一昔前の人間大学講座のイメージで見始めたら、アニメーションあり、過去ドラマの挿入あり、本人のインタビュー映像ありで、ちょいとびっくり。今時のテレビ講座はただ講義をするだけじゃなく、ビジュアルでも見せないと視聴者がついてこないのでしょうか。大宅壮一氏が一億総はくち(変換しても出ないのは差別用語ってことでしょうか?)化と言ったのも頷けます。鹿島さんの語りは眠気を誘いますが。エッセイみたく面白いのを期待したんですけどね、しゃべりも。
 「幻燈辻馬車」は見つからないけど、司馬遼太郎の「翔ぶが如く」(大河は半分くらい見たけどほとんど覚えていない。西田敏行が西郷隆盛で、大久保を加賀丈史がやって、菅原文太が何の役か忘れたけど出てたような気がする)の1巻だけを買ってきました。
 仕方がないからいっしょに買った「波濤歌」の方(こっちは上下そろってました)を先に読もう。

Posted by: kakakai | January 23, 2006 at 08:26 PM

>高野正宗さま
>『波濤歌』
実は明治もので唯一未読の長編です。というか、これ短編集らしいですね。今回これほどクローズアップされるとは思いませんでした。川路の旦那は『明治断頭台』にも出てきますし、原胤昭とならんでお気にいりのキャラだったようですね。

>テキスト
買ったほうが良さそうですね。近所に売ってないかな。最近オンライン購入ですら面倒くさいワタシ。


>kakakai さま
>今時のテレビ講座はただ講義をするだけじゃなく、ビジュアルでも見せないと視聴者がついてこないのでしょうか
そうですね。まあ絵もあったほうが教えやすいといば教えやすい。ただわたしも含めて昨今の若い人は「ひとの話をじっと聞く」訓練が必要のような気がします。

>鹿島さんの語りは眠気を誘いますが
わたしは聞いていて「山風ってそんなに高尚だったんだ!」と思いました(笑) わたしは山風作品のバカっぽいところも好きなんで、そのあたりも強調してほしいです。

>司馬遼太郎の「翔ぶが如く
これも未読です。ほとんど「野に下って」以降がメインだとか。感想などお待ちしてます。

Posted by: SGA屋伍一 | January 23, 2006 at 09:45 PM

 「幻燈辻馬車」の下巻は楽天のフリマで手に入れました。上下巻セットで1000円。上巻はもっているので必要なかったんですけど、私が読み終えた本よりも届いた本の方が出版年が古いのに美しかったので、そっちを大事にとっておこう。

Posted by: kakakai | January 28, 2006 at 02:35 AM

入手できてよかったですね。ただ上巻はもったいなかったというか。
ちくま版の下巻には「幻灯」の後半のほかに別の短編も3つほど収録されているようです。もし見つけたら買っておいて損はないかも。

わたしが持っているのはやはり古書店でみつけた文春文庫版です。表紙イラストが極めてシンプル。

Posted by: SGA屋伍一 | January 28, 2006 at 07:59 PM

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