聖杯はこちら! ダン・ブラウン 『ダ・ヴィンチ・コード』
ようやく冬眠から覚めました・・・ ってまだ全然寒いやん!
初ボケをかましたところで、本年度の一発目は、ゼンザイ先生から「冬休みの課題図書だ」と渡されたこの作品。一年位前に世を騒がせ、近々映画公開も控えている歴史ミステリーです。
宗教象徴学(つーもんがあるらしいです)の権威、ロバート・ラングトンは訪仏中、会見することになっていたルーヴル美術館の館長、ジャック・ソニエールが殺害されたとの報せを受ける。警察に誘われて現場に来た彼が見たものは、全裸で(・・・)大の字になって横たわるソニエールの遺骸と、その近くに書かれたダ・ヴィンチに関する暗号文だった。警察に下手人と疑われ、身を拘束されそうになるラングトンだったが、その窮地をソニエールの娘ソフィアに救われる。暗号文が示す秘宝のありかを求めて、さまざまな考察を深めるラングトン。警察や秘密結社の魔の手をかいくぐり、彼は「秘宝」を見つけ出すことができるのか?
ダ・ヴィンチといえばエジソンと同じくらいみんなが知ってる有名人です。しかしその実態は厚いヴェールにに包まれ、不明な点も多いとか。この物語はまずダ・ヴィンチの名作『最後の晩餐』にはあるメッセージがこめられていると主張し、そこから彼が会長を務めた「シオン修道会」設立の目的、さらに「聖杯」とは何か?という謎へと踏み込んで行きます。
そこでどうしても引合いにだされるのが、「世界で最も偉大な人」と言われるキリスト。幾分教会の影響力が弱まっているとはいえ、この方の存在は西欧の人々の心になお大きなウエイトを占めているようです。20世紀以降、それまで「神」とされてきたキリストの正体について、多くの議論がなされてきました。絶対神なのか? 神からの使者なのか? 一介の賢人だったのか? それとも希代の山師だったのか? そもそも実在したのか? ダンさんはこの作品を通じて自分なりの答えを提示しています。たぶんその答えは、ローマ・カトリックの機嫌を大層損ることになるでしょうが、怯むことなく自説を掲げるダンさんはいい度胸してますね。
えー、ただこの本に書かれている学説、どこまで信じていいものやら。一応「全て事実に基づいている」と巻頭に掲げられてはいますが。
ミステリーとしてはなかなかよくできてます。幾重にもひねられた暗号文、スリルあふれる逃亡劇、逆転につぐ逆転・・・・・・などなど。上下あわせて600ページ、一気に読めちゃいます。しかし娯楽小説として面白ければ面白いほど、学説の真実味は薄れていきます(笑)。
たとえば、ここに一本の健康ジュースがあったとします。飲んでみると、すごく美味い。でも健康にいいものって基本的にまずいものがほとんどですよね。本当に体にいいのか少々疑わしくなってくる。本作品も物語を面白くするために些か事実を誇張してるのでは・・・とひねくれものとしては考えてしまいます。ちゃんとした学術書だったらもっと信憑性も感じられたんだろうけどなあ。でもそうしたらこんなに多くの人に読まれることもなかったろうしなあ(自分もまず読まないだろうしなあ)。むずかしいものですね。
ちなみにダン・ブラウン氏の一作目、『天使と悪魔』は聖書の宇宙創世の記述を、科学的に分析した内容だそうです。こちらもすでに読了されたゼンザイ先生によりますと、「話の風呂敷がでかすぎてわけわからん」とのこと。『ダ・ヴィンチ・コード』がヒットしたのは、時空を超えて多くのファンを持つ「万能の人」・レオナルドさんがモチーフだったからこそかもしれませんね。
というわけで宿題できました。ゼンザイ先生、ご褒美に何かおごってもらえるんですよね? ぼく、焼肉とか食べたいなあ。
Comments
宿題、お疲れさまでした。
レンタル期間は約1週間。せわしない年末だけにどうかな? と思ってましたが、一晩で上下巻読み終えるとは、さすがSGA屋さん!
ヒマなんですねぇ…。
まあ、内容に関しては当然この本は賛否両論あるでしょうね。特に宗教論のくだりに関しては。
ただ、私としてはあくまで‘娯楽’小説として、大変面白く読めました。この本は構成が上手いと思いますよ。知的好奇心をあおりつつ論証を重ね、適度なタイミングでアクションシーンを展開し、頭を休ませる。その繰り返し。
ダ・ヴィンチやキリスト教などのネームヴァリューもあると思いますが、
「How to ベストセラー本」みたしな小説だなあ、と感じました。
まあ、美術史も宗教論も元々私は全く分かってはいませんけど、
時には歴史ミステリーを夢想してみるのも一興かな、と思いました。
>「天使と悪魔」
いやー、この本はすごいですよ。登場人物たちの暴れっぷりが。
そういや、「容疑者Xの献身」読了しましたよ。
>焼肉とか食べたいなあ。
えーっと、たしか年末の映画ベスト10、38作(うわぁ…)という稀にみる大混戦となりながら、見事1位を当てましたが、当然ピタリ賞があるんでしょうね。
その賞金の一部を焼肉代に替えたいと思います。
入金頂き次第、ぜひ行きましょうね!
Posted by: ゼンザイ | January 07, 2006 09:38 AM
>ヒマなんですねぇ…。
し、失敬な! あなたが「一週間以内に読め」というから、寝る間も惜しんで一生懸命トライしたんじゃないですか!
>知的好奇心をあおりつつ論証を重ね、適度なタイミングでアクションシーンを展開し、頭を休ませる。その繰り返し。
>「How to ベストセラー本」
なるほど。ベストセラーにはウンチクと読みやすさが大事ということですね。よっしゃ、おいらも一発狙ってみっぺよ!
>時には歴史ミステリーを夢想してみるのも一興かな、と思いました。
さいですか。こういうノリの話ってほかになにがあったかな?
思いつくところでは『写楽殺人事件』『邪馬台国はどこですか?』などなど
>登場人物たちの暴れっぷりが
ラングトン先生が機関銃振り回したりするんでしょうか
>見事1位を当てましたが、当然ピタリ賞があるんでしょうね。
そう来たか・・・
じゃあ君は焼肉をおごり、わたしはチーズバーガーをおごるということで、万事解決、めでたしめでたしだね!
Posted by: SGA屋伍一 | January 07, 2006 09:28 PM
映画(トム・ハンクス主演)の予告が流れ始めましたが、
期待できそうですか?
ちなみに、原作は読んでないです。有名だけど分厚過ぎて手が出ませんわ…。
Posted by: ハル | January 11, 2006 06:44 PM
>期待できそうですか?
う~ん、どうでしょう(長島風)
この作品は構成もいいですけど、ウンチクも重要な部分なので、そのウンチクを映像だけで表現していくのはやや厳しいかもしれません。
ガンダルフことイアン・マッケランも出るようです
>有名だけど分厚過ぎて手が出ませんわ…。
確かに分厚いですけどわりかしスイスイ読めますよ。ダ・ヴィンチに興味がおありでしたら是非どうぞ。
Posted by: SGA屋伍一 | January 11, 2006 09:47 PM
えー、ご無沙汰してます、ゼンザイです(っといっても互いに本名の時は最近頻繁に しゃべってるなぁ、まあほとんど私の一方的な話に無理やりつきあわせているだけですが‥ すまん、自覚しています‥)。
お詫びついでに、末席を汚そうかと思いましたが、うーん、最近のキミの記事の内容、正直よく分からないんだよなあ‥(「風雲児たち」はキミのおかげで分かるけど、しょっぱなに書くのは、はばかられます)。
ということで、またこの記事で‥。
>ラングトン先生が機関銃振り回したりするんでしょうか。
とんでもない! 空だって飛んじゃいますよ、ラングドン。
さすが、宗教象徴学会のインディ・ジョーンズ!
>思いつくところでは‥『邪馬台国はどこですか?』などなど
そういえば、続編みたいなの出てましたね。この前買いました。
>見事1位を当てましたが、当然ピタリ賞があるんでしょうね。
お持ちしております。
え? その前に迷惑料払えって! うーーん、そうね、考えとく。
Posted by: ゼンザイ | February 06, 2006 10:49 PM
やあ、先生
今日は気持ちよく寝ているところを起こしてくれてどうもありがとう
>最近のキミの記事の内容、正直よく分からないんだよなあ‥
へいへい。マニアックでえろうすんまへんな
>空だって飛んじゃいますよ、ラングドン。
飛行機に乗るとかいうオチでしょうか?
>そういえば、続編みたいなの出てましたね。この前買いました
『新・世界の七不思議』だったかな? 面白かったら貸してください
>まあほとんど私の一方的な話に無理やりつきあわせているだけですが‥ すまん、自覚しています‥)。
何イッテンダ! 俺タチ親友ジャナイカ!
ま、それと金の問題は、また別の話だけんど
Posted by: SGA屋伍一 | February 07, 2006 05:54 PM
友人に借りてやっと読みました(笑)
>「How to ベストセラー本」
うまいっ。ゼンザイ様。そう。私も、ネタバレしないよう気をつけてそのへん指摘してみましたが、この一言でよかったんだ(笑)
まったくねー。詳しく書けないのが残念ですが、全部パターンですよね。
TBさせて頂きました ご嘉納のほど
Posted by: 高野正宗 | June 22, 2006 09:33 PM
TB、1回失敗したのですができました。
この記事の頃は、一時期セキュリティが厳しくなっていた頃に当たりますね。コメント投稿の時に文字入力が必要だったり。その設定が生きているので、TBを送る時も、送る側(私の方)の記事の中に、この記事のParmalink(記事個別のURL)が記載されていない記事は受け付けないようです。
ちと無理矢理ですが、この記事のParmalink
http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2006/01/post_2dac.html
を入れて送ったら成功しました。
もしかして「送りたいのに送れない」方がいるかもしれません。全体を再構成するなどして、一時期の記事のセキュリティの設定もゆるめに戻した方がいいかも(いやセキュリティなのでいいですが)。
Posted by: 高野正宗 | June 22, 2006 09:51 PM
お手数かけてもうしわけありません。ウチでは特にいま規制とかしてないんですけどねえ。管理画面でもその辺を調節できないのか一寸見てみたのですがわかりませんでした。こういうときITオンチはつらいです。
>>「How to ベストセラー本」
ですねえ。これを利用してわたしも『ゲンナイ・コード』とか『ヤマフウ・コード』とか書いてみようかしら
『シャラク・コード』は高橋克彦先生がすでに・・・・
記事読ませていただきました。近いうちにお邪魔します
Posted by: SGA屋伍一 | June 23, 2006 09:04 AM