怪奇飛蝗男 『仮面ライダー The First』
あの名作が、「平成ライダー」のスタッフの手でよみがえる! というわけで、たぶん全国で細々と公開中のこの作品を。
大学で「水の結晶(何だそりゃ)」を研究していた青年・本郷猛はある日突然、謎の組織「ショッカー」に拉致され、不死身の怪人「ホッパー」に改造されてしまう。ショッカーの尖兵として悪事に精出す猛だったが、ふとしたきっかけから自我を取り戻す。変わってしまった体のことや、誤解から自分を恨むヒロインのことなどに悩みつつも、猛は「仮面ライダー」としてショッカーと戦う道を選ぶ。一方それとは別のところで薄幸の少年少女のラブロマンスが進行。彼らと本編との関わりは?
ん~。この行き当たりばったり的な展開、原作やテレビシリーズへのオマージュなんでしょうかね(笑)。真面目な話、原作マンガを意識したと思われる要素がそこかしこにみられ、白倉プロデューサーの石ノ森氏への傾倒ぶりがうかがえます。またコテコテな恋愛描写等は、オリジナルの発表された70年代テレビドラマを彷彿とさせます。
正直、今回はツッコミどころがいっぱい目に付きました。「いつのまに着替えたんだ」とか「洗脳あますぎだろ」とか。彼らの手がけた「平成ライダー」シリーズにもツッコミどころはいろいろあるんですが、面白さでそれらを吹き飛ばすようなところがありました。それに比べると勢いがやや足らなかったかな、と。スケジュール的に仕方なかったのかもしれませんが、もう少し制作の点でも、尺の点でも時間をかけてほしゅうございました。そうすればよりいいものができたんでは……と思う反面、白倉氏って「原作」の枷がないほうがいい仕事ができるのでは、とも思います。平成ライダーも一応原作付ですが、あれはあってないようなものなので(爆)。
自分がいまひとつノリ切れなかった理由。それは和智正喜氏の手による小説版『仮面ライダー』があまりにもツボにはまってしまったせいもある気がします。恥を忍んでいうと、21世紀に入って読んだ小説で、一番好きな作品。機会があればこちらもいずれ紹介したいです。
あ、いいところもありました。ライダーを含む怪人たちの洗練されたフォルム。低予算ながらスタイリッシュなビジュアルの数々。そして冒頭で述べた薄幸なカップルの存在意義。彼らのエピソードが、この映画を単なる「ヒーローもの」に終らせないものにしています。
決してファンではないのですが、今年に入って板尾創路氏の出る映画を観るのは三度目。板尾氏は出る映画出る映画トラブル続きだったそうですが、本作品は「何事もなく公開を迎えられてよかった」とのこと。おめでとうございます。


Comments
お久しぶりです。
いろいろな感想を見ましたけれど、評価が割れている(良いことです)というよりは、なんだか皆さん見ている部分が全然違いますね。
明るい雰囲気なのかな、となんとなく思ってます。
私的には、「馬鹿でー!」と笑いながら背を叩きたい部分があるらしいので、そこを期待しているのですが、いや、仮面ライダーの悲しみって共有してないからかもしれないです。ごめんなさい...orz
あと、小説版、すごく面白そうです、期待していますw
Posted by: 紅玉石 | December 17, 2005 11:14 PM
こちらこそお久しぶりです。実はそちらのお宅もよく見させてもらってます。かなりマジメな方、というイメージを勝手に抱いております。
>私的には、「馬鹿でー!」と笑いながら背を叩きたい部分があるらしいので、そこを期待しているのですが
そうですね。うん、かなり笑えるところ、あります。白倉&井上氏は真剣に作ってたんじゃないかと思う反面、もしかしたら承知の上でやってたんじゃ、という疑念もあります。
>小説版
ぜひお読みください。女性の視点から見た意見と言うのも気になるので。かなり痛いところ付かれたりして(笑)。今書店ではマニアックなところにしか置いてないので、アマゾン等でお買い求めください。
原作者和智正喜氏のHPはこちらです。
http://www013.upp.so-net.ne.jp/wachim/
Posted by: SGA屋伍一 | December 19, 2005 10:19 PM