六本木は燃えているか? 杉島邦久 『スピードグラファー』
かれこれ二月ほど前に放送が終了した深夜アニメ。「ショータイム」(http://www.showtime.jp/animation/ad.html)ほかで映像配信中です。
かつて戦場カメラマンとして名を馳せた雑賀辰巳は、政界・財界の大物が集う秘密パーティーを潜入取材中、謎の美少女からくちづけを受ける。その直後、雑賀は「ユーフォリア」と呼ばれる超能力者として覚醒。カメラによる爆殺能力・・・・・対象に向けてシャッターを切ると、その対象を爆発させられる・・・・・を得る。ここから逃がして欲しいと懇願する少女、神楽。その真摯な思いに動かされた雑賀は彼女を会場から連れ出すが、財閥天王洲グループの総帥で神楽の母である天王洲神仙と、その懐刀・水天宮の放った追っ手が二人に追いすがる。
カメラを使った超能力とは面白いことを考え付きます。どう科学的にこじつけるのか期待してたのですが、きれいにスルーされました(笑)
まあ、趣味の悪い作品です。デブで禿げた裸のオヤジが、札束をピラピラさせながらおねーちゃんとからみあうような絵が結構出てくるので。そいつをずっと見てた自分も趣味が悪いということになるのでしょうけど。そうした醜い大人の社会の描写が、かえって主役二人の純粋さを際立たせる手法となっています。なんとなく菊地秀行か平井和正、あるいは現代を舞台にした忍法帖、などのイメージを想起させます。
最初は「自分の体の謎を解き明かすために連れて来た」と、己に言い聞かせる雑賀ですが、次第に神楽を愛するようになっていきます(中年なのに)。どちらかというと前半のそういう思慕が見え隠れするような雑賀が気に入っていたんですけど、後半になるとかなり神楽ちゃんにメロメロになってしまっていて、少しがっかりしました(笑)。
その代わり、俄然存在感をましてくるのが宿敵・水天宮。金と出世が目当ての人間と思わせながら、その壮絶な過去と彼の真の目的が明らかになるとき、わたしたちはスタッフがなんであんなに悪趣味な描写にこだわっていたのか、知ることができます。つまり、「今の日本は金と欲に溺れたどうしょうもない国。一遍すべてをぶち壊すしかない」というもの。けれど監督は一方で「こんな社会でも自分たちは生きていかねばならないし、希望を捨てちゃいけない」というメッセージを、雑賀に託しています。このあたりは福井晴敏と似ています。
おしむらくはスケジュールがきつかったのか、絵があれているところが目だった点。副主題化「ひなげしの歌」に合わせて映し出されるEDは、ため息がでるほど美しかったですけど。現在のブロードバンド版ではたぶん修正はいっているはず。
それにしてもGONZOさんは『岩窟王』、本作、『ソルティー・レイ』と、すっかりオヤジアニメ路線をひた走っています。萌え系に押されないよう、がんばっていってほしいものです。
Comments
http://www2r.biglobe.ne.jp/~keitai/yashiro/index.htm
スピグラは未見なのですが、このサイトの感想が、かなり詳しくて濃いです。
浦賀や下田についてのツッコミは見事です。
巌窟王やソルティレイも結構期待しています。
Posted by: 犬塚志乃 | November 26, 2005 06:21 PM
おすすめのサイトみました。どうも美少女系が好きな方のようで。なかなか文章がしっかりしていて読みやすかったです。
>ソルティレイ
は前の二つに比べるとかなり軟派な作風でして、早々に脱落いたしました(笑) 気が向いたらまた観るかもしれません。
Posted by: SGA屋伍一 | November 26, 2005 09:56 PM
どうも、オギャンオス。
軟派なんですか?私はSFとして見ています。
無論美少女もwただそれだけで見るのはツライです。
ボク、ナンパーマンぱわっち。
萌えだけなのか?!設定とか他に見るところはないのか?
という秋葉系が多過ぎです。
大杉漣
Posted by: 犬塚志乃 | November 28, 2005 09:29 PM
>軟派なんですか?私はSFとして見ています。
まあ趣味の問題です。辛い過去を背負ったハードボイルド親父と、某マ○チを彷彿とさせる美少女は取り合わせが悪いかな、と感じたので。そこがいいんじゃないか! という方もいると思いますが。
中田譲二さんの声は渋くていいですけどね。先日ギロロ曹長もやっていると気づき、たまげました。
Posted by: SGA屋伍一 | November 29, 2005 09:56 PM