お母さんは心配性 楳図かずお 『洗礼』
某ファンサイトで話題を振っておいて恐縮ですけど、わたし楳図作品は苦手です。理由は簡単、怖いから(笑)
そんなわけで今まで読んだ作品というと、『漂流教室』(大傑作!)に『まことちゃん』くらい。で、なぜにこの『洗礼』を手に取ったかと申しますと、ミステリー作家の綾辻行人氏が何かで誉めておられたので。夜中にトイレに行けなくなったらどうしよう、と悩みつつ鑑賞いたしました。
子役の頃からスター街道を歩んできた名女優・若草いずみは、日々自分の容貌が衰えていくことに、病的な恐れを抱いていた。もう一度若さを取り戻すことはできないのか? 悩むいずみに、幼い頃から彼女が頼りにしていた医師は、「女の子をこさえて、その子の体にあなたの脳を入れてしまえばいいんですよ」といらんことを言ってしまう。そしてその考えを実行すべく、本当に子供をこさえてしまういずみ。果たしてこの「若返り」は成功するのか? また、生贄として用意された、いたいけな少女の運命は?
タイトルは、おそらく洗礼が本来持つ意義……「一度死んでよみがえる」からきているのでしょう。まあ、色々な意味であぶない話です。どこがどうやばいのかはここでは少し言いはばかられるので、ご自分でお確かめください。いくら規制が今よりも緩やかな時代だったとはいえ、こんなマンガを少女誌にのせて、よく問題にならなかったものです。
中盤ではヒロインが望みをかなえるべく、邪魔者をあの手この手で罠に落とし入れる描写がえんえんと続きます。これだけ悪の限りを尽くしておいて、「わたしはただ、平凡な女の幸せが欲しいの!」なんて言ったりするから笑えます。
そして待ち受ける驚愕の結末に、あなたは泣くか? 怒るか? 爆笑するか? 子供というのはか弱く、かつ純真な存在です。しかしだからこそ恐ろしい存在とも言える。そんなことを教えられました。
『洗礼』は最近コンビニで上下にまとめた廉価版が出ていましたが、もう見かけなくなりました。たぶん、ブッ○オフの方にぼちぼち出回るころかと思います。そして次はやはり名作の誉れ高い『おろち』がスタンバイ。『洗礼』では大丈夫でしたが、今度こそおしっこをもらしてしまいそうな気がします。
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