キツイお別れ フランク・ミラー 『シン・シティ:ハード・グッドバイ』
先日公開された映画『シン・シティ』の、第1パートの原作にあたるコミックです。
その怪物のような容貌のため、生まれてこのかた女に縁の無かった男、マーヴ。力だけが物を言う町“シン・シティ”でゴロつく彼に、ある日謎の美女が接近してくる。いぶかしがりながらも、女を受け入れるマーヴ。しかしその翌日、女は彼の隣りで死体となっていた。女殺しの犯人と目され、警察に追われながらも、マーヴは女の仇を討つことを固く誓う。
昔からおおよそハンサムとはいえないような主人公を、すごいカワイコちゃんが勝手に好きになってくれるという話はよくあります。古くはチャップリンやキートン、新しくは『電車男』など。で、そういう「モテナイ君」が持っている唯一の武器が、日本では“やさしさ”だったりするわけですが、米国ではそれが「腕っ節」であったり「闘魂」だったりします。
死んだヒロインのために全てを捧げて巨悪に立ち向かうマーヴ。彼女だって本当は打算があってマーヴに近づいていったわけですが、その事を知っても彼は「俺に何かを与えてくれた。存在さえ知らなかった何かをな」と姿勢を変えません。そのあまりの純情バカぶりに、目頭が熱くなる作品です。
絵について。以前ミラー先生の『バットマン:イヤーワン』について語ったとき、「アメコミのいいところは色がついているところ」と述べましたが、困ったことにこの作品、全編モノクロです。基本的にオールカラーのアメコミで、なぜあえてこのようなスタイルをとったのか。それはやはり小島剛夕をはじめとする日本の劇画・マンガの影響に負うところが大きいかと思われます。ただミラー先生が言われるには「日本のマンガはヒトコマに含められている情報・時間の量が少ない。対してアメコミは詰め込みすぎな傾向にある。それでこの作品はその中間をねらった」とのこと。あんましそうは思えませんでした(笑)が、マンガ好きな方はその辺注目してよまれると面白いかもしれません。
結論は「青年よ、闘志を抱け」。もしくは「ブサとオタこそ、筋肉を持て!」。わたしもまた筋トレ始めよっかな。とりあえず三日くらい。
こうなるとやはり他のパートの原作も読んでみたいものですが、どうやらJIVEさんにアメコミから撤退の気配が。いや! まだわたし別れたくない!
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